エンタプライズ発信〜メールマガジン【№44】2014. 12

師走。何かと多忙な時節でもあります。そしてまたインフルエンザが気がかりなころです。年の瀬ですから新年への準備があったりで、とかくデパート・スーパーやDIYへ出かけることが増えます。さて、各所にはトイレがあり、そこには温風式ハンドドライヤー(ジェットエア)なるものがよくあります。この利器、英国研究機関のリサーチでは、従来のペーパータオルよりもはるかに多くの細菌を拡散することがわかりました。空中に浮遊している細菌の量を測定したところ、ペーパータオルの場合より27倍だったというのです。また使用後5分以上経過しても周囲には細菌の48%が残存しており、15分後も細菌が検出されたことから、知らないうちに細菌を自ら拡散している可能性も、他人の手の細菌をあびている可能性もあるのです。時には、ドライヤーの箱内に触れてしまうと雑菌ウヨウヨだなと怪訝に思ったものですが、触れるまでもなく、空気中に舞っているとなれば、人様のやったあとは息を止めたまま(手も洗わず?)トイレ外に出るしかなさそうです。半面、人様に迷惑を掛けないためには使用も憚れることに…。一見簡便で乾くのも速いので重宝していましたが、利便性には功罪がつきまとうものだ、と巷間のXmasムードが漂う中、神妙な面持ちの編集子でした。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

      TOPICS
【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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【TOPICS】

◆日本カイロプラクターズ協会(JAC)が啓蒙ビデオ、パンフを制作◆

日本カイロプラクターズ協会(JAC)は利用者によくわかるカイロプラクティック案内のパンフレットを作製し、会員を中心に頒布を始めた。A4判の三つ折で手に取りやすいソフトなイメージで意匠を凝らしている。また映像ビデオも制作し、カイロプラクティックとは、カイロプラクティック教育ほかのフェーズで正しい啓蒙・理解と普及をめざしている。現在、販売の詳細は未定。日本カイロプラクターズ協会(JAC)のHP内の「活動紹介映像」で閲覧が可能。http://www.jac-chiro.org/

◆日本統合医療学会2014 〜パシフィコ横浜で開催 12/20-21◆

今年で18回目を迎える日本統合医療学会。今年は「統合医療の世紀—健康長寿社会の実現」をテーマに新たな健康指標を創造する(大会長塩田清二氏:昭和大学医学部顕微解剖学教授)。期日は12月20日(土)〜21日(日)、会場はパシフィコ横浜・会議センター(西区みなとみらい1-1)において開催される。本大会は第17回日本アロマセラピー学会学術総会と共同で開催する(合同シンポジウムも併催)。好評の統合医療女性の会プログラムでは「働く女性のこころとからだのクライシス」をテーマに、対馬ルリ子氏(対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長)、水島広子氏(慶応義塾大学医学部精神科医・医学博士)を演者に開かれることになっている。大会概要:http://imj2014.com/

◆アクティベータメソッド・セミナーが開催される◆

アクティベータ・ネットワーク・ジャパン(ANJ)は12月7日から2日間にわたってベーシック/アドバンスセミナーを開催した。アクティベータ治療は、神経系の働きの悪い箇所を分析し、脊椎を中心として筋骨格系の関節部位や筋に対しアクティベータ器で適切な振動刺激を与え、人体の神経エネルギーを調整することで症状の軽減や消失などを図ることができる。アメリカでは7割以上のカイロプラクターが用いているテクニックだ。
会場となった東京・浜松町の味覚糖ビルには柔整師、鍼灸師、カイロプラクターをはじめ約60名の参加者を得て、座学および実技演習を行い、多岐にわたる技術修得に余念なく取り組んだ。次回は来年2/1(日)-2(月)の予定で大阪市において開かれることになっており、ANJではベーシック課程参加者を募っている。http://activator.blogdehp.ne.jp/


◎連載vol.2

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


早すぎる分野(はじめに)〜つづき〜

5)高感度の光度計やサーモグラフィーが開発されたことで、細胞、組織、臓器・器官および全身から放出される光や熱のパターンを記録することが可能になった。
6)分子から放出または吸収されるエネルギーは、分光分析によって測定することができ、ホルモンとレセプターの相互作用、抗原抗体反応、そしてアレルギー反応において、分子の活動にエネルギーが果たす役割も、分光分析によって解明することができる。分光分析は、薬物療法、ホメオパシー、アロマセラピーおよび薬用植物療法の基礎をなす分析法である。
7)細胞生物学の研究から、生体機能をコントロールしているものは、神経系の活動やホルモンの働き以外にもあることがわかってきた。核、細胞骨格および細胞外基質は、連続体を形成することによって情報を交換しあっている。この生体マトリックスという連続体には、固体物理学的反応や、電子および光子によってもたらされる“振動”といった特性がある。このような特性は、外傷治癒や疾病に対する防御反応といった統合的機能に重要な役割を果たしている。
種々の形態のエネルギーが吸収されて全身に伝わり、あらゆる細胞に作用するメカニズムは、テンセグリティー(tensegrity)の概念で説明することができる。生体マトリックスを伝わる運動や張力などのエネルギーが代謝反応を引き起こし、また遺伝物質と相互に作用しあうのである。生体マトリックスを構成する分子の振動は、細胞の活動や成長因子、あるいは発癌物質や感情の影響を受ける。
8)生体マトリックスの振動には、レーザーに似たコヒーレント波が含まれている。生体の多くの組織には、厳密な規則性や結晶性が認められるが、この構造がコヒーレントな振動を作りだし、特定のエネルギーに対する高い感受性を生み出している。

以上、これまでの研究から、電気、磁気、弾性、音、熱、重力および光という各種のエネルギーが生体においてそれぞれ重要な役割を果たしていることが明らかになったが、そこから言えることは、いずれかのエネルギーだけが「治癒力」や「生命力」と呼べるものではないということである。生体にはいくつものエネルギー系が存在し、どれらの系はさまざまな形で影響を及ぼしあっている。したがって「生きている」とか「健康である」といった状態は、既知のものも未知のものも合わせたあらゆるエネルギー系が総合的に調和し、協力しあいながら機能を果たしている状態ということができる。もはや、治癒力や生命力は存在するのか—-という議論の時代は終わり、生物のエネルギーと構造と機能の相互作用を研究する時代に入っているのだ。(つづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』小社刊2004)


★連載エッセイ ⑫☆

“こころ” と “からだ”  …… 臨床にモノ思う。

保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「身体のバランス」と「心のバランス」

身体のバランスは正常に保てているでしょうか?
現代は、山あり谷ありの複雑な自然な環境とは異なり、ほとんどの道は舗装され、バリアフリーで、障害物が少ない安全な環境で毎日の生活を送っています。そのため知らず知らずのうちにバランス感覚は退化して、その機能が低下している可能性があります。
ご存知のように、身体のバランス感覚をテストする簡単な方法があります。両足でまっすぐに立ち、次に片方の太ももが床と平行になるぐらいに挙げて、片足立ちをします。30秒ぐらい保持します(転倒しそうになったらすぐに足を床に着けましょう)。あまりふらつきがなければ、少し休んで、今度は目を閉じて、片足立ちを30秒ぐらい保持します。ふらつきがなければ、身体のバランス感覚は正常です。
もしも、大きくふらついたり、挙げた足が床に数回着くようでしたら平衡感覚の調整機能に異常が生じている可能性があります。平衡感覚には三半規管や小脳の機能が関わっていますので、そのような異常がある場合には、専門医での診察や当院での治療をお勧めします

さて、「心のバランス」ですが、正常であるかどうかの判断はとても複雑です。一つの判断基準として「感情」があります。感情には「外に現れる感情」と「内で処理される感情」があります。また、自分で自覚しやすい「顕在的感情」と、自覚しにくい「潜在的感情」があります。感情の性質から分類すると「意欲」や「義務」などの意思的感情、「喜び」や「連帯感」などの肯定的感情、「恐怖」や「逃避」などの否定的感情があります。

一般的には“否定的な感情は無くして肯定的な感情を持つようにしましょう”という教えがありますが、それは、心のバランスから考えると不自然かもしれません。喜怒哀楽の感情は外に現われるか否かにかかわらず、生きた人間としてその感情が日常の生活の中で現われないということは、心のバランスが保てていない可能性があります。
また「怒り」の感情は良くないと言われています。その感情が一時的ではなく長引いてしまう感情になると、人間関係だけでなく身体にも影響を及ぼします。しかし、子供をしつけるときには時には激怒して大切なことを気づかせて、次の日にはケロッとして、喜んで笑顔で接するということもあるでしょう。そのような強弱のある感情やバリエーション豊富な感情の中で、豊かな心が育まれるのかもしれません。
ドラマや落語でも面白い内容には、笑わせたり、驚かせたり、泣かせたりして、喜怒哀楽の感情を巧みに表現して人間味を感じさせてくれます。論語の中で「中庸」という言葉があるように、過大、あるいは過少にならずに何事もほどほどにバランスを保つことが大切だと説かれています。身体も心の感情も、偏らずに幅広く動かすことが身も心も豊かになる秘訣になるようです。


《 連載26 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


漁師や樵(きこり)が医学を自分のものとする 〜つづき〜

全部で1821句からなる68体(6文字および8文字の2行で一句となる)長篇詩は、「漁樵」「前言」「導入…運気・本草・医宗・脈」「入門…運気・傷寒・婦科・児科」「人師」「問答」「結語」から構成され、漁師と樵のほかに、妻纏、子縛、明月、清風などの人物が登場する。中国の医学書からの引用は原文のまま置かれているが、音楽性豊かな字喃(チュノム:ベトナムの民族文字)により綴られた“問答”が、医学知識の普及に役立ち、その大衆化に貢献したことは確実であろう。

  薬の仕事も一通りは出来るようになった
  それ以外のことも心配する必要はない
  それにしても、世のなかには不通(ばか)な人が多い
  というのも、基(もと)から勉強しないからである
  儒学を二、三語齧って嘘を言ったり
  医書を適当に論じて金を取ったり
  地理の本を開いて方向を見たり……
  それほどの才能でもないのに、自分だけはそう思っていない

医学についての知識を身につけた漁師と樵は、世のなかにはいい加減なことが横行していることを指摘している。これは自分たちの成果を確認し、世の風潮を他山の石と考えたものであろう。こうして先生(実はグエン・ディン・チウ自身のこと)のおかげで家伝の医学を教えてもらい、どんな病気でも治すことできるようになった漁師と樵は、必要な医学書を携えて立ち去り、グエン・ディン・チウは次のような「結語」で『漁樵問答』締めくくっている。

  彼らの職業は今では大変有名になった
  どんな病気でも、すぐに治すことができる
  あちこちの名医のことも知っている
  二人の中で、儒と医の言葉は一体になった
  官は愛し、民は従う
  この書は、世の人を助けるためのものである
  もはや、言うべきことも無くなった
  後世のために、ただ置いておこう
(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(19)

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■議論の余地がない真実とされる信念、学説、慣行という腰痛分野における「聖域」を侵した双生児研究の業績は大きい。輝かしい賞を数多く受賞しているにもかかわらず、腰への物理的負荷が椎間板変性の危険因子だとする見方は変わらない。目を覚ませ。http://1.usa.gov/vUFBka
……姿勢によって椎間板にかかる圧力を測定したナケムソン(Nachemson)の有名な研究をサイトに掲載している人がいます。ナケムソンは後に椎間板にかかる圧力と腰痛は無関係だと断言していることも同時に伝えるべきです。それを怠っているということはすなわち、自分は勉強不足だと公言しているに等しい行為です。恥ずかしい話です。

■これまで職場での身体的負荷(重量物の取り扱い、不自然な姿勢での作業など)、自動車の振動、喫煙などが椎間板変性を加速すると考えられていたが、一卵性双生児を対象とした比較研究によって身体的負荷よりもむしろ遺伝子の影響が大きいことを発見。http://1.usa.gov/iPsKBC
……国際腰椎学会のボルボ賞を受賞した研究です。素人ならともかく専門家が知らないはずはありません。

■体重差のある(平均13Kg)一卵性双生児を対象にMRIで腰椎を比較した結果、体重が重い方が腰椎の骨密度が高く、椎間板の状態も良好だった。仕事やスポーツによる累積的かつ反復性の生体力学的負荷が椎間板にダメージを与えるわけではない。http://1.usa.gov/ldX4Zv
……仕事やスポーツを怖れてはいけません。腰への負担はむしろ腰痛を予防してくれます。

■フィンランドの男性双生児600例を対象とした研究によって、BMI高値、引き上げ筋力が強い、作業強度が高いといった因子はすべて椎間板変性を遅らせるらしいということが、椎間板のMRI信号強度スコアから証明された。http://1.usa.gov/m8HAed
……骨密度と同じように椎間板を若々しく保ちたいなら負荷をかけることです。このように従来の考え方は誤りだったことが証明されています。頭を切り替えましょう。

■腰痛分野における遺伝学的影響の研究はまだ初期段階だが、椎間板変性に関する従来の仮説が誤りであることを証明すれば、より有用な仮説に向かって研究が進み、時代遅れの考え方に基づく効果が実証されていない予防法を刷新できる。http://1.usa.gov/jbLioe
……これまで散々いわれてきた腰痛の予防法は誤りです。明確な根拠のある事実に目を向けましょう。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (44)

       根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】

2. 腰に関わる障害

身体の異常の代表的なものといえば、腰痛を抜きには語れない。腰は脚と関係し、膝、足、肩、首、手と全身へ影響する。腰痛の原因は大きく2つある。大腰筋と腹部の筋の緊張なのだが、もっと大きな原因は悪い姿勢にある。

1)立ったり座ったりするときに痛い
立つときは必ず次の3つの動作が行なわれる。
①まず身体を前屈するときに異常が出る。
・腹筋に力が入る。腹直筋および腹部両脇を斜め前下へ走る外腹斜筋である。両筋に対する操作法は本連載№36の「8.腕の動きから 〜背部から胸部・腹部への連動」を参照。
・さらに身体内部で重要な大腰筋の操作をする。
②足で踏ん張る
大腿の前の大腿四頭筋、ふくらはぎの腓腹筋の役割である。これは大腰筋の操作と腓腹筋の操作を行なう(№21の「3)-2 内腿部上側からの操作」を参照)。
③膝、腰を伸ばす
ここでは大腿四頭筋(前述)およびお尻の部分を構成する中・小殿筋の操体法を行なう(№24 3.-1を参照)。
④大腿直筋の操作を行なう。
腰骨(腸骨)の前から走る二関節筋である大腿直筋が硬いときは、この操作を行なう。

立つ、座る、ボールを投げる、打つなどのときも、腰の前屈、回旋動作を伴うから、大腰筋、外腹斜筋に注意して欲しい。これはまた、肩の痛み、膝の痛みなどに関わることが多いので注目度の高い操体法である。

2)ギックリ腰

「魔女の一突き」と言われるギックリ腰。この名前が市民権を得ている昨今、冬場の寒波では腰にきて当たり前と言われるくらい姿勢が乱れることになる。
①電車が来たので急に走り出したらギク!
②立っていて、物を取ろうと急に腰を上げたときギク!
③寝ていて、さっと起き上がろうとしたときギク!
④玄関に座って、出されたお茶に手を伸ばしたときギク!
など、起き上がることさえできなくて、救急車で搬送されることも多い。これらの場合は、ほとんどが以前から兆候がある。悪い姿勢で疲れているのだ。
動けないときは、寝たままで大腰筋の操体法、また外腹斜筋に対しても行なうとよい。これだけで動作はある程度ラクになる。(つづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■「好転反応」にご用心 消費者庁


健康食品などで発疹や下痢といった健康被害があらわれた時に「それは好転反応」「毒素が出ている」などと事業者らから言われ、利用継続を勧められる事例が相次いでいると消費者庁が発表した。「セールストークの場合がある。説明をうのみにせず、利用を中止して医師に相談してほしい」と注意喚起している。「好転反応」という言葉は「回復に向かう過程の一時的現象」という意味で使われているが、日本医学会監修の医学用語辞典には掲載されていないという。
12月10日付の発表によると、健康食品や化粧品、健康器具、美容エステなどで健康被害が出た際、継続利用を促されたという相談や情報は2009年4月以降339件寄せられている。このうち100件は利用を続けた結果、症状が継続・悪化していた。その100件を商品やサービスで分類すると、化粧品が33件、健康食品32件、健康器具23件と続いた。1カ月以上症状が続いたという相談も16件あった。(朝日新聞 12/11)


NEWS ■腹部触診の追加、腰痛の長期予後改善に有用


オーストラリア・マッコーリー大学のJohn Panagopoulos氏らは、腰痛に対する標準的な理学療法に腹部触診(visceral manipulation)を加えることで腰痛は改善するのか、無作為化プラセボ対照比較試験を行い検討した。その結果、腹部触診の追加は短期的には腰痛を改善しないものの、1年後の評価では臨床的に意義のある改善が認められたという。
検討は、理学療法クリニックで治療を受けている腰痛患者64例で、標準的な理学療法+腹部触診群(32例)および標準的な理学療法+プラセボ腹部触診(32例)に無作為に割り付けて追跡評価を行った。
主要評価項目は、6週後の疼痛強度(数値的評価スケール0〜10で測定)とし、副次的評価項目は、2週・52週後の疼痛強度、2週・6週・52週後の機能障害(ローランド・モリス障害質問票で測定)、および2・6・52週後の機能(患者特異的機能スケールで測定)であった。主な結果は以下のとおり。
・腹部触診の追加は、主要評価項目である6週後の疼痛に影響しなかった(-0.12、95%信頼区間[CI]:-1.45〜1.21)。
・2週後の疼痛、2・6・52週後の機能障害および機能については、治療群間で有意差は認められなかった。
・52週後は、理学療法+腹部触診群が、+プラセボ群よりも疼痛が軽減していた(平均1.57、95%CI:0.32〜2.82)。
(ケアネット 12/10)


NEWS ■痛みのない「針なし注射器」の開発に成功 芝浦工大


針を使わずに気泡の圧力で試薬や遺伝子を体内に届けられる「針なし注射器」の開発に、芝浦工業大学機械工学科の山西陽子准教授が成功した。直接皮膚に押し当てるだけで、痛みを伴わずに試薬や遺伝子を目的の場所へ高精度に輸送できるという。
新開発の針なし注射器は、高速で発射した気泡がはじける力で皮膚に微細な穴を空け、その穴から、試薬をまとった微細な気泡を注入する。気泡のガスは収縮し、試薬だけが患部に届く。穴の直径は4μメートルほどで、細胞へのダメージも少なくて済む。
2012年に開発した「マイクロバブルインジェクションメス」を改良して開発した。マイクロバブルインジェクションメスは、液中で微細な気泡を連続して打ち出し、マイクロレベルの微細な穴を空けると同時に、試薬をまとった気泡を輸送できるメス。メスを覆うガラス製のシェルの位置を前方に突き出すことで細胞と気泡導入部との密着性を向上させ、空気中で使用できるようにした。
薬剤を皮下注射する際に利用できるほか、植物細胞を含むあらゆる固さの細胞への遺伝子導入・治療など、幅広い用途に使用できるという。今後はデバイス構造の最適化、試薬の導入量、痛み、穿孔深度の評価を行い、企業と連携するなどして実用化を目指す。(ITmediaニュース 12/4)


NEWS ■はやり「病は気から」か!?


大阪大学免疫学フロンティア研究センターの研究グループは、交感神経から分泌される神経伝達物質・ノルアドレナリンが免疫に及ぼす影響をリンパ球の体内動態に注目して解析。その結果、交感神経が炎症性疾患の病態にも関わることを突き止めたと発表した。
今回の研究によって、交感神経からの入力がβ2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のクロストークを介してリンパ球の体内動態を制御することが明らかになり、さらにこのメカニズムが炎症性疾患の病態にも関与することが示された。結果によると、ストレスが加わることによって交感神経が興奮すると、炎症性疾患の症状が「良くなる」ことが示唆されたという。
これは、「ストレスが健康に悪影響を及ぼす」という一般的な考え方からすると逆説的な印象を受ける結果だが、免疫本来の役割は、病原体の感染から我々の体を守ることである。そのため免疫反応が過剰に起こってしまった結果が炎症性疾患へとつながる。つまり免疫は、我々の体にとって良い方向にも悪い方向にも作用する「諸刃の剣」とも言える。
したがって、同研究で明らかになった交感神経によるリンパ球の体内動態の制御は、ストレスが加わった際に感染防御という免疫の本来の機能が損なわれた結果であり、「ストレスによって免疫力が低下する」ことの一因となる可能性があるとしている。(Qlife Pro 12/4)


NEWS ■危険ドラッグ「個人の自由だ」… 4大学で6.5%の回答


関西、関西学院、同志社、立命館の4大学が、今春入学の1年生に行った違法薬物に関する意識調査で、危険ドラッグの使用について回答者のうち1590人(7.1%)が「個人の自由だ」「1回くらいなら構わない」と答えていたことがわかった。4大学は、学生の間に危険ドラッグを受け入れる風潮があるとして、教育活動を強化する考えだ。
意識調査は4月、4大学が2万6450人に実施し、回答率は85%だった。危険ドラッグについては9割が「絶対に使うべきでないし、許されない」としたが、一方で1456人(6.5%)が「他人に迷惑をかけなければ個人の自由だ」、134人(0.6%)が「1回くらいなら心や体に害がないので構わない」と答えたという。(読売新聞 11/27)


NEWS ■肥満は認知能力を低下させる?


体重が増えるほど、脳が収縮する可能性がある。60代を対象とした8年におよぶ最新の研究から、肥満体の被験者では、大脳辺縁系の一部である海馬が1年で2%近く収縮していることが明らかになった。その収縮率はアルツハイマー病に匹敵する。標準体重の被験者では、記憶を司る海馬の収縮率が肥満体の被験者のおよそ半分。11月18日、首都ワシントンD.C.で開かれた北米神経科学学会の記者会見で、オーストラリア国立大学の神経科学者ニコラス・チェルビンらが発表した。
同氏らは、磁気共鳴画像法(MRI)を使って60代のボランティア400人の脳を調査した。実験当初から肥満の被験者の海馬は、標準体重を少し超えた被験者のものより小さかった(米国疾病予防管理センターの指標では、身長175センチで体重が77〜92キロあれば太り過ぎ、92キロを超えると肥満と見なされる)。
また、肥満の被験者の海馬が最初から小さかっただけでなく、細身の被験者よりも速く収縮していくことが明らかになった。その収縮率は、記憶喪失や気分変動、集中力と意思決定力の低下につながるとチェルビン氏は警告した。(ナショナルジオグラフィックニュース 11/20)


NEWS■日本人の4割は不眠症の疑い……寝る前のスマホも懸念材料


製薬会社のMSDは今年8月、人口比に基づく全国の20-70代の男女7827人にインターネット調査を実施。世界共通の不眠症判定法「アテネ不眠尺度(AIS)」を用いて、寝つきの良さ、日中の眠気、睡眠時間や睡眠の質の満足度などについて尋ねた。その結果、「不眠症の疑いがある」人は38.1%、「不眠症の疑いが少しある」人は18.4%だった。「疑いなし」は38.9%、「不眠症の治療中」は4.7%。
調査では、睡眠の質を低下させている原因として、「不規則な生活をしている」「ストレスがある」「多忙である」などで自分に当てはまる感覚についても尋ねた。不眠症の重症度が高いほど、該当項目が多く、特に「ストレスがある」と答えたのは、「疑いなし」層では19.5%だったが、「疑いあり」は58.5%、「治療中」は65.7%と高かった。同じように、就寝時に「不安感」「憂鬱な気持ち」「緊張感」といったマイナスの感情を抱いている割合も、不眠症状に応じて高まる傾向があった。
さらに、就寝前に脳の覚醒を引き起こすとされる行動をしているかも尋ねたところ、「PC・タブレット・スマートフォンを操作する」「考え事をする」「ゲームをする」などで、不眠症の疑いのある層はない層に比べて有意に高い結果が出た。(医療介護CBニュース 11/11)


NEWS ■アルツハイマー、血液から判明……国立長寿医療研究センター


アルツハイマー病につながるたんぱく質「アミロイドベータ」が脳に異常に蓄積しているかどうか、血液から判定する方法を発見したと、国立長寿医療研究センター(愛知)などの研究チームが日本学士院発行の11/11付の学術誌に発表する。治療薬開発に役立つと考えられるほか、将来はアルツハイマー病発症前の検査に使える可能性もあるという。同センター研究所の柳沢勝彦副所長、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一・島津製作所シニアフェローらが共同で研究を行った。
研究チームは血液中に脳から流れ出したとみられるアミロイドベータに似たたんぱく質「APP669-711」があることを発見。血中のアミロイドベータの量と比較し、脳へのアミロイドベータ蓄積の有無を判断することに成功した。患者ら62人の血液を調べ、現在、蓄積の診断に用いられている陽電子放射断層撮影(PET)と比較したところ、92.5%の確率で蓄積を判定できた。
アルツハイマー病はアミロイドベータの蓄積から始まり、神経細胞の機能低下、認知症などの発症と長期間かけて進行する。研究チームは、今回の検査法で発症前の患者を集められれば、発症を防ぐ薬の開発に役立つとしている。検査法の実用化も目指す。(時事通信 11/11)


■次号のメールマガジンは2015年1月10日ごろです。お楽しみに。


[発行]産学社エンタプライズ