エンタプライズ発信〜メールマガジン【№75】 2017. 7

ヒアリ(火蟻)が5月下旬に兵庫県尼崎市で、中国からの貨物コンテナ内において国内で初めて見つかりました。その後、名古屋港や大阪南港、横浜港、東京港でも確認されました。横浜港では700匹以上のヒアリを確認し駆除したと言いますが、女王アリはまだ見つかっていないため、巣を作って繁殖している可能性があるようです。港などの国内で陸揚げされた海外発のコンテナ数は2015年が約865万個とされており、これをすべて点検するとなると途方もない時間とコスト、人件費が毎年必要になります。宅配便レベルの荷の大きさではないので、とても現実的な対応策とは言えません。この神出鬼没のヒアリに刺されると、15〜20分くらいで「呼吸困難」「血圧低下」「全身のじんましん」「強い腹痛」などの症状が出ます。死に至るケースは稀だとされています。またヒアリは都市化した人が多く住んでいる所に棲息傾向があり、縁石沿いを好んで巣を作るという習性があるそうです。現時点では蔓延化していないため臆病になる必要はありませんが、万が一刺された時のために「ひありおくやみ」という合言葉知っておくと良いと言います。「ひ」…ひやす。まず刺された局所を冷やして炎症を少し抑える。「あ」…あらう。局所の毒を洗い流す。「り」…リスクを知る。刺された危険をちゃんと理解する。「おく」…おくすり。抗ヒスタミン薬などを適切に使う。「や」…やすむ。動くと毒が回るので観察するために活動を控える。「み」…みまもる。周囲の人はしっかり見守ってほしい。専門家に言わせれば、ヒアリはいつ上陸してもおかしくない状況であったようですが、ヒト環境の生態系を狂わせてしまう危険性もあります。上陸や繁殖を許さないための水際対策が急務となっています。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【4】伝統医学をシルクロードに求めて 〜チベット医学
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
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Information

『KBS東医宝鑑』の監訳者が長野・松本市で韓方を語る 7/23

小社刊『KBS東医宝鑑』の主翻訳者・市川剛氏が、長野県松本市で開催される「渡来人まつり」で、世界文化遺産に登録されている韓方医学のルーツ「東医宝鑑」について講演を行う。「健康寿命延伸のヒントがこの講演会で得られることが期待できる」と主催者側は準備を進めている。概要は以下のとおり。

◇第12回 渡来人まつり講演会
演題「東医宝艦と韓方の今」 講師 市川 剛氏
・日 時 7月23日(日)14:00-16:30
・会 場 松本市第3地区公民館2階大会議室(長野県松本市中央4-7)
・資料代 800円(当日1,000円)
・連絡先 李春浩 携帯090-1691-4485

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

ヒトの寿命はミトコンドリアの寿命

[太田]:代謝速度を考えた場合、動物によってミトコンドリアの能力が異なるので体の大きさだけでは決められません。人間の寿命が120歳なのは、年齢とともにミトコンドリアの活性化能力がどんどん落ちていって、120年くらいでゼロになるから、とここでは言っておきましょう。
[安保]:エネルギーをつくることができなくなって死を迎えるわけですね。人間が生きるためにはエネルギーが必要で、エネルギーはミトコンドリアによってつくられています。だからミトコンドリアの寿命が人間の寿命と捉えることもできますね。
[太田]:ミトコンドリアが持つDNAも、酸化力を持つ活性酸素にさらされて加齢とともに複製エラーが増えてきます。エラーが蓄積されればエネルギー代謝は衰えていきます。ミトコンドリアDNAの変異は老化の原因のひとつなのです。老化と言えば、テロメアの話も面白いですね。
[安保]:テロメア (telomere) というのは染色体の末端にあって、細胞分裂で短くなるという……
[太田]:はい。テロメアは細胞分裂ごとに一定の長さずつ切り取られていき、ヒトの細胞の場合は50回程度の分裂で限界の長さに達します。約50回という寿命の回数券を使い果たして細胞は死を迎えるわけです。
[安保]:がん細胞にはテロメラーゼという酵素が働いてテロメアを再び延ばすから、細胞分裂を繰り返すことができるという研究は、2009年にノーベル賞をとっています。
[太田]:テロメアについては2011年にも興味深い研究論文が発表されました。テロメアが短くなるとミトコンドリアが減少し、活性酸素が増えて老化が進むのだそうです。
[安保]:ということは、ミトコンドリアを増やせばテロメアが延びるかもしれない。なかなか面白い研究だなあ。(テロメアについては末尾のNEWS欄にも解説あり)

寿命は遺伝? それとも環境?

[太田]:寿命や老化について、遺伝的要因と環境的要因のどちらが多く関わっているのかという質問をよく受けます。
[安保]:遺伝的要因が大きければ、いくら努力しても無駄と考えてしまいますよね。環境的要因というのは生活習慣のことだから、改善の余地はいくらでもある。
[太田]:その比率は1対3なのですが、さてどちらが1で、どちらが3でしょう? と答を言う前に聞くようにしています。
[安保]:それは面白いねえ。悲観的な人は遺伝的な要因が3だと思うし、楽観的な人は環境的要因が3と答えるんじゃないの?
[太田]:そうなんですよ。どちらを選ぶかでその人の性格が見えてしまうところがありますね(笑)。それで答は、遺伝的要因が1で環境的要因が3です。双子の寿命研究などから、そういうことがだんだん明らかになってきました。
[安保]:それを聞いてホッとする人は多いんじゃないの(笑)。なんでも遺伝で決まっていたら夢がなくなってしまうし、味気ない人生ですよね。
(次号へつづく)
(出所:『安保流×太田流 老いない人の健康術』産学社刊2016)


連載vol.31

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

道を開くエネルギー医学(つづき)

さて、前著『エネルギー医学の原理』を刊行の際、最も私を感激させたのは出版元のジョージ・クォーシャからの「読者は目からうろこが落ちる思いをするだろう」という言葉だった。私たちを取り巻く数々の深刻な問題に対処していくには、視点を改める必要がある。問題を生み出した考え方にいつまでも従っていたのでは解決が望めないことは明らかだ。
ではエネルギーに対する視点を変えれば何がどのように変わっていくのだろうか。新しい科学をつくりだすには謙虚な姿勢が必要だ。科学への畏怖と感謝の念を取り戻さなければならない。私が望んでいるのは、決して過去の発見の誤りを証明することではない。生命を探るうえでの新しい道を切り開き、科学の新たな可能性を求めようとしているだけだ。それは科学者のあるべき姿だと思う。
「科学者は興味だけで仕事をするべきではない」といった意見は科学をまったく理解していない証左である。新しい道はすでに開かれている。「生きた生命」を探求しつづけてきた多くの科学者や霊能者たちが、多くの素晴らしい発見を成し遂げているからだ。ただ「エネルギー」という言葉のまわりには、長いあいだ偏見と誤解がつきまとってきたので、新発見がたくさん眠る宝の山に科学者が踏み込めなかっただけなのである。

パズルを埋めるピース

私たちは今のところ、言ってみればジグソーパズルを半分まで完成させたような状態にある。このままパズルを続けても、たしかにある程度まで完成に近づけるであろう。まだ散らばっているピースをはめ込んでいけば、全体像の何割かは見えてくるはずだ。しかしまだ足りないピースを見つけてパズルを埋めつくすまでは、明確な全体像は出来あがらない。「エネルギー」というピースをこれまで置き去りにしつづけてきた私たちは、今ようやくこのピースをパズルにはめ込むことができるのだ。
たとえば、ボディワーク、エネルギー療法、運動療法などのセラピストは、健康状態の改善や疾病・外傷の治療に、有効で誰もが安心できる優れた手法を開発してきたにもかかわらず、ほとんど評価されることはなかった。また、電気、磁気、光、音などを測定する器具を用いて生体エネルギー的特性を調べてきた人々も異端的扱いを受けてきた。これらのアプローチは、いずれも生命の謎を解く重要なヒントをもたらしていたのに「代替医療」だの「非論理的」だの、ひどいときには「エネルギー論」などというレッテルを貼られて、正当に取り上げられることがなかったのである。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))


連載エッセイ ㊸☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「ふらつき」がずいぶん改善しました!

「今まで手すりを持たないと階段を歩けなかったのが、手すりを持たなくても階段をすたすた上り下りできるようになりました」
「1回の治療でこんなに良くなるなんてすごいですね」
3回目の施術前に、上記の喜びの声をいただいた。

来院当初、腰痛、足や臀部の痛み、歩行困難などを訴えていた。様々な症状を抱えておられたので、最初は患者さんが最も改善したい症状から治療を行った。その症状もある程度改善したので、ふらつきの症状を見ることにした。
PCRTの生体反応検査で左右の眼球運動と、左右の聴覚刺激で陽性反応が示された。小脳系に関する検査では陰性反応が示されたので、ふらつきの症状は三半規管に関係する平衡感覚の機能異常が疑われた。平衡感覚に関係する 「誤作動記憶」を検査してみると、

・大脳辺縁系→信念→慈悲心
・大脳辺縁系→信念→自尊心
・大脳辺縁系→信念→復讐心

「復讐心」で反応が示された場合、大きく分けると「自分自身に対して」なのか「他人か」に別れる。普通は認識し難い心なので、他人の場合は、「誰か許せない人が心の奥で記憶されているはずなのですが、思い当たる人はいませんか?」と質問してみた。
その質問に対して、思い当たる内容を考えようとする人は、たいてい心当たりが見つかる。最初から考えもせずに「許せない人なんていません」というような答えが返ってくる人は、そのような質問を受けたくないのか、答えたくない人が多い。言い換えると自分自身の無意識に素直に気づいて、本質的な健康やさらなる成長につなげたいというところまでは望んでいないのである。そのような患者さんには、それ以上の質問や検査は行わずに、他の施術に切り替える。

本症例の患者さんも、そのキーワードで陽性反応が示されたことに、一瞬、「えっ」という表情をされたが、「頭では許せても、心の奥で棘のようにひっかかっているような人はいませんか?」という質問で、
「いますね。口では言えないけど、心の奥でチクショ〜と思っている人ですね」
と思い当たる人を思い浮かべてもらうと、生体反応検査で陽性反応が示された。そこでPCRT施術を行うと、最初の検査で示されていた左右の眼球運動や聴覚刺激の陽性反応が消失した。そして、次の日の3回目の施術前に冒頭の喜びの声を聞かせていただいた。ふらつきの症状が1回の施術で改善された症例の一コマである。
注)本症例のように1回の施術でふらつき症状が改善されたからといって、ふらつき症状の患者がすべて1回の施術で治るとは限らないので、あえて明記しておきたい。


《連載57》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)

ヒマラヤに開花したチベット医学
 〜チベット医学のバイブル『ギュー・シ』(つづき)

しかもこのタントラ(医典)は薬師仏(チベット語ではメンギーラ)によって説かれているものであるから、帰依を前提としてのみ拝聴することができるのである。仏教では、欲が深いこと(貪欲)、怒ること(瞋恚=しんに)、愚かなこと(愚痴)を一括して三毒という。薬師仏の身体から発せられる青色の光は、そうした三つの精神上の毒を消してしまうのである。
このように興味深い『ギュー・シ』の内容は展開されていくのであるが、残念なことに目下のところ日本語の全訳はない。そのチベット語自体が難解であることに加え、内容が多岐にわたるため、『ギュー・シ』はチョモランマ峰(エベレスト)のように雲の彼方に超然と聳えているのである。

『四部医典タンカ全集』の創出

難解であればこそ、別の途も開けるというもの。チベットにはタンカという絵画の伝統がある。タンカは仏画であり、絵釈き(えとき)である。それはチベットのどこの寺院でも見られるもので、仏たちであったり、極楽であり地獄だったりもする。寺院を中心として医学が発達し、ダライ・ラマ制度が成立したあとは、政治や軍事までも寺院に集中したチベットにあって、医学書である『ギュー・シ』がタンカという絵の形をとったとしても、それは何の不思議でもない。『四部医典タンカ全集』の成立である。
ダライ・ラマ五世は、ある意味ではソンツェン大王にも比せられる存在である。1642年、チベットの政治と宗教を統合する座に就いたダライ・ラマ五世は、「ガンデン・ポタン」として知られる行政組織をつくることに成功した。それは20世紀のダライ・ラマ十四世まで引き継がれた組織である。首都はそれまでのサキャからラサに移され、ソンツェン大王の宮殿跡にポタラ宮の造成を開始したのであった。中国の清朝の順治帝は北京にダライを招いて、元首として待遇し、宗教上の師として接したほどである。五世ダライの死が、その後の19年間も隠し続けられたことも、存在の大きさを物語るものであった。(次号につづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(50)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■AHCPR(米国医療政策研究局)の成人の急性腰痛診療ガイドラインに従うとX線画像検査は45%の患者に行なうことになるが、ESR(赤血球血沈降速度)を調べることによって悪性腫瘍の検出能力を落とさずにX線画像検査の実施率を22%に抑えられる。http://1.usa.gov/SlHCjf
……アメリカの医療政策研究局が発表した腰痛診療ガイドラインに従うと45%の患者がX線を用いた画像検査が行なわれてしまうという危惧があります。そのような不必要な放射線被曝を避けるには血沈値の測定が有効だという論文ですが、日本の画像検査実施率はほぼ100%です。日本の医療が世界の常識とどれだけかけ離れているかがご理解いただけるかと思います。

■腰痛疾患で再手術を受けた患者179名を対象とした研究によると、手術の成功率は2回目で45%(20%は悪化)、3回目では25%(25%は悪化)、4回目では15%(45%は悪化)あることが判明。最初の手術が最後のチャンス。http://1.usa.gov/QMz2p0
……再手術によって症状が改善しない見込みが50%以上あると聞かされても患者は手術を選択するでしょうか?医師自身が患者だったらこれほど確率の低い賭けに乗るでしょうか? だからこそ腰椎手術は最初の手術
が最後のチャンスだといわれるのです。

■2ヶ月以上病欠中の慢性腰痛患者975名を対象に教育プログラム群と標準的治療群を比較したRCT(ランダム化比較試験)によると、200日後における復職率は前者が70%だったのに対して後者は40%だった。新たな腰痛概念に基づくアドバイスはきわめて有効。http://1.usa.gov/TYcE2e
……従来の常識を忘れて活動を再開しても危険はないこと、腰をかばって薄氷の上を歩くように恐る恐る歩かないこと、これまでに学んだ人間工学的に正しい腰の使い方を忘れること、むしろ身体を動かすと治癒が促進されることを教えるだけで従来の治療をはるかに凌ぐ成績が得られました。この効果は3年後も依然として保たれていたといいます。国際腰椎学会で最優秀論文賞を受賞した研究ですから、この事実を知らないか適切なアドバイスができない医療関係者は腰痛患者から手を引くべきです。治癒の妨げになります。

■慢性頚部根性痛(3ヶ月以上持続)患者81名を対象に頚部椎間板切除術か固定術群・各種理学療法群・頚椎カラー群を比較した世界初のRCT(ランダム化比較試験)の結果、手術には保存療法を上回る効果がほとんどないことが判明。http://1.usa.gov/PVsSUC
……注意深い保存療法にもかかわらず頚部痛や上肢痛が3ヶ月以上続く患者には手術が必要だと考えられてきましたが、この研究によって手術の適応ではないことが示されたことになります。

■画像所見と非特異的腰痛に関する体系的レビューを実施した結果、X線撮影で確認できる異常所見(脊椎分離症・脊椎辷り症・潜在性二分脊椎・腰仙移行椎・変形性脊椎症・ショイエルマン病)と非特異的腰痛との間に関連性は認められない。http://1.usa.gov/PVQhW8
……ただし脊椎変性(椎間狭小&骨棘&硬化像)は非特異的腰痛と関連性がありましたが、研究にバイアスがあった可能性を捨て切れないため、脊椎変性と非特異的腰痛の因果関係を示すエビデンス(科学的証拠)はないと結論しています。X線画像を眺めているのはよい暇つぶしにはなっても、レッドフラッグのない腰痛患者にはほとんど役に立たないということです。

■椎間板手術を要するほど重度の坐骨神経痛患者30名と健常者46名を対象にMRIで両者の違いを調べたところ、有痛性椎間板ヘルニア例は同程度の無痛性椎間板ヘルニア例よりリラックスしている時間が短かったことが明らかとなる。http://1.usa.gov/QNWWDM
……同時に、有痛性病変では椎間板変性の程度がより進行していることが明らかになったものの、結論にいたるまでのエビデンス(科学的根拠)が不足しているとしています。

 N  E  W  S

NEWS■大量飲酒で細胞の老化(テロメア短縮)が進む可能性

大量飲酒を繰り返していると細胞の老化が進み、心疾患や糖尿病、がん、認知症といった加齢に関連する健康問題のリスクが高まることが、神戸大学大学院医学研究科の山木愛久氏らの研究で示唆された。研究では、41〜85歳のアルコール依存症患者134人と、年齢を一致させたアルコール依存症でない対照者121人からDNA検体を採取して比較した。その結果、アルコール依存症患者ではテロメアが短縮していることが明らかになった。
テロメアとは、染色体の末端についている蛋白質のキャップのようなもので、老化と全般的な健康の指標とされている。テロメアは細胞が分裂するたびに少しずつ失われていくため、加齢に伴って短くなる。そのため、やがて染色体はテロメアによる保護を失い、細胞は上手く機能しなくなって分裂できなくなる。ただ、加齢以外の要因でテロメアが短くなる場合もある。
山木氏は、「今回の研究でアルコール依存症患者ではテロメアの長さが短縮していることが分かった。これは大量飲酒が細胞レベルで生物学的な老化を引き起こすことを示唆している。一般の人にとっても、大量飲酒はテロメアを短縮させるのだという事実を心に留めておくことは健康に生きていくための助けとなるだろう」と述べている。(7/11 HealthDayNews)

NEWS ■要注意! トイレでスマホは痔のリスク

女性専門の肛門外科・胃腸内科「日本橋レディースクリニック」(東京都中央区)の野澤真木子院長に聞きました。(概要)
便意を感じた時に、トイレにスマートフォン(スマホ)や漫画、本、新聞などを持って入っていないでしょうか。可能な限りこのような習慣は控えましょう。なぜなら、トイレに座っていきむ時間が長いと、いぼ痔(痔核)を大きくすることにつながるからです。便を出そうと思っていきみ過ぎたり、硬い便を思い切り出そうと長時間奮闘したりすると、肛門周辺がうっ血し、いぼ痔になりやすくなります。長時間座り続けるなど同じ姿勢でいきみを繰り返すだけでもいぼ痔になるリスクは高くなります。トイレに長居は無用です。トイレに座る時間は、毎回2〜3分以内にしましょう。
普及している温水洗浄便座の使い方にも、注意が必要です。排便の後、気持ちがいいからといって、高温かつ水流の強いお湯を肛門に長時間当て過ぎたために、皮膚炎を起こす人がいるからです。温水便座はあまり使わないようにするか、使用する際は水流を弱くし、お湯の温度も低温にして、短い時間だけ肛門周辺に当てる程度にしましょう。排便後は、トイレットペーパーで拭く程度で十分です。何度も強くこすり過ぎたり、薬液のついたおしり拭きを使ったりすることは、トラブルの原因になります。
大人の女性にとって洗顔の際、ごしごし顔をこすらないのは“常識”ですが、おしりも同じです。おしりも拭き過ぎたり洗い過ぎたりすると皮膚のバリアが壊れてトラブルを起こしやすくなります。かゆみが出るのは不潔だからではありません。むしろ、洗い過ぎ、こすり過ぎによって皮膚炎を起こし、かゆみを誘発している場合が多いのです。(7/9 毎日新聞=一部)

NEWS ■「スマホ操作1日5時間以上」で手根管症候群リスク増大か

スマートフォンなどの携帯型電子機器を長時間使用すると、手指に痛みやしびれをもたらす手根管症候群のリスクが高まる可能性が、香港理工大学医療技術・情報学部のPeter White氏らによる研究で示された。今回、White氏らは香港の大学生48人を対象に、スマートフォンやタブレット端末、ゲーム用機器などの携帯型端末の長時間使用が手根管症候群リスクを高めるのかどうか調べた。
このうち半数は1日当たりの端末の使用時間が平均5時間以上のヘビーユーザーで、残る半数は5時間未満のユーザーだった。全ての学生に対し、首や肩、背中、肘、手首および手の疼痛または不快感に関する質問票に答えてもらったほか、手首部分の超音波検査やファレンテストなどの理学的検査も実施した。
その結果、1日5時間以上のヘビーユーザーは5時間未満のユーザーと比べて理学的検査で陽性となる割合が高く、自己評価による手首や手の疼痛が強い割合も高かった。筋骨格の疼痛や不快感を訴える学生の割合は、5時間未満のユーザーの12%に対してヘビーユーザーでは54%に上った。また、ヘビーユーザーでは正中神経の断面積が有意に大きかった。さらに使用時間が長いほど手首および手の疼痛は強く長期間続くことも分かった。
この結果を踏まえ、White氏らは「携帯型端末の操作で必要とされるクリックやスワイプ、スクロール、タップ、プレスといった指の動作が繰り返されることによって、正中神経が膨張したり、圧迫されたりするのではないか」と考察。「携帯型の端末を使用する際には注意が必要」と結論づけている。また、同氏は「手根管症候群リスクをできるだけ抑えるには、携帯型端末の操作時にできるだけ手首を真っすぐにしておくとよい」と助言している。(7/6 HealthDayNews)

NEWS ■ヒアリに刺された!! アドレナリン注射を―厚労省

強い毒を持つ南米原産の「ヒアリ」が見つかった問題で、厚生労働省は、このアリに刺された場合の医療的な留意事項を都道府県に事務連絡した。刺された人がアナフィラキシー症状を起こした場合、アドレナリンを注射するといった適切な救急処置を行う必要性を挙げている。
事務連絡では、ヒアリは極めて攻撃性が強く、刺された際には、アルカロイド毒によって、熱感を伴う非常に激しい痛みがあり、水疱状に腫れ、その後、膿が出るといった症状を説明している。また、毒に含まれる成分に対してアレルギー反応を引き起こすケースがあるとし、「局所的または全身にかゆみを伴う発疹が出現する」などと説明。欧米ではアナフィラキシー症例が報告されていることに触れ、適切な救急処置を取る必要があるとしている。(7/5 CBnews)

NEWS ■腰痛に対するヨガの効果は理学療法に匹敵

慢性の腰痛がある人は、ヨガを行うと理学療法と同程度の症状緩和が得られる可能性があることが、米ボストン大学医学部准教授のRobert Saper氏らの研究で分かった。12週間にわたってヨガまたは理学療法を実施した人では疼痛の低減が報告され、この改善は1年間維持されたという。
今回の研究は、補完代替医療を利用する機会の少ない患者に着目。低収入で民族的マイノリティであり、12週間以上続く慢性腰痛のある患者320人(平均年齢46歳)を対象とした。被験者は、週1回のヨガクラスに12回参加する群、理学療法を15セッション受ける群、または腰痛管理に関する本を受け取る“教育”群のいずれかにランダムに割りつけられた。ヨガ群は12週以降、ヨガクラス継続群またはDVDやマニュアルを用いた自宅練習群に分けられた。
12週目の時点で、ヨガ群と理学療法群ではいずれも教育群よりも大きな改善が認められた。臨床的に意味のある(つまり日常生活に変化がみられるような)疼痛と障害の改善がみられた患者の割合は、教育群の23%に対し、ヨガ群では48%、理学療法群では37%だった。なお、ヨガ群と理学療法群の間には統計的に有意な差はなかった。
Saper氏はヨガや理学療法には費用面の問題があると指摘。さらに「ヨガには多くのスタイルがある。今回検討したヨガクラスは、一定の規格を設け、椅子などの道具を用いた穏やかなポーズと呼吸法、瞑想を含むものであった。一般的に行われているヨガクラスは、ひどい痛みのある患者には適さない可能性もある」と話している。(7/3 HealthDayNews=一部)

NEWS ■脳卒中後のリハビリに乗馬療法や音楽療法が有効

脳卒中を発症してから長期間が経過した患者を対象とした研究から、リハビリテーションとして「乗馬療法」や、リズムと音楽を組み合わせた「リズム音楽療法」を実施することで身体機能や認知機能が改善する可能性が示された。
この研究は、ニューカッスル大学(オーストラリア)のMichael Nilsson氏らが実施したもの。脳卒中発症後にできるだけ早くリハビリを行うことが重要であることは知られているが、発症から長期間が経過した後も引き続きリハビリを行うことで、一定の効果が得られる可能性が示された。また、その手段として専門スタッフの指導の下で行う乗馬療法やリズム音楽療法が有望であることも分かった。
研究の対象は、スウェーデンの大学病院で治療を受けた、発症から10カ月以上5年以内の脳卒中患者123人。これらの患者を乗馬療法群、リズム音楽療法群、標準治療を行う対照群のいずれかに41人ずつランダムに割り付けた。乗馬療法およびリズム音楽療法は1週間に2回のペースで12週間実施。それぞれ乗馬療法を専門とする理学療法士および作業療法士、あるいはリズム音楽療法を専門とするセラピストが主導した。
その結果、これらのリハビリが終了してから6カ月後のバランス能力と移動能力は、対照群よりも乗馬療法群とリズム音楽療法群の方が優れていた。また、身体機能や日常生活動作、移動能力、コミュニケーションといったさまざまな面で「回復した」と感じている患者の割合も、対照群の22%に対して乗馬療法群では56%、リズム音楽療法群では43%と高かった。
Nilsson氏らによると、乗馬療法では馬の動きによって健康な人が歩行するときと同様の「感覚運動の経験」が得られるほか、精神的・社会的なつながりがもたらされるといった効果も期待されているという。また、リズム音楽療法にも身体や感覚、精神を刺激する効果があると考えられている。(6/30 HealthDayNews=一部)

NEWS ■サイクリングで心も身体も健やかに―米専門家

自転車で戸外を走るサイクリングは健康全般に良い影響をもたらし、体力や筋力を向上させ、精神面も安定させるなど、心にも身体にもベネフィットがあることから、米ペンシルベニア州立大学のAlan Adelman 氏は、日常の移動手段には車ではなく自転車を使うよう強く勧めている。
同氏によると、心血管に好影響をもたらす運動量として、20分間以上の中強度運動を週に3〜5回行うことが推奨されているが、さまざまな地形を自転車で走るインターバルトレーニングはこの運動量に相当するという。同大学フィットネスセンターに所属し運動生理学を専門とするDeborah Tregea氏は「たとえ緩やかな坂であっても、坂を上って下る運動は、最近人気が高まっている高強度インターバルトレーニングになり、身体を鍛えるのに適している」と述べている。
さらに、どの年代でも行えるサイクリングは家族や友達と一緒に楽しめるほか、日光を浴び、新鮮な空気を吸い、風を全身で感じることができる。また、走るスピードを変えたり、距離を伸ばすなど目標を立てたり、新しい風景や音、匂いに触れることは日常生活に変化をもたらし、身体面と同様に精神面でも有益性が高いという。「運動すると多くの人は気分が高まり、精神的な心地良さを感じるようになる」と、Adelman氏は述べている。(6/30 HealthDayNews)

NEWS ■歩行速度の低下は認知障害のサインか

年齢を重ねるにつれて、高齢者の動作が少しずつ遅くなるのは珍しいことではない。しかし、高齢者の歩行速度の低下は認知障害のサインである可能性が、米ピッツバーグ大学疫学部のAndrea Rosso氏らによる研究で示唆された。
Rosso氏は「通常、医師は患者の歩行速度の低下に気づいても身体機能の問題と考え、理学療法を勧める場合が多い。しかし、脳の病態が歩行速度の低下に関与している可能性も考慮し、認知機能の評価についても検討する必要があるかもしれない」としている。
今回の研究は、研究開始時に認知機能が正常だった70〜79歳の男女175人を対象に実施された。14年間以上にわたって複数回、歩行速度を評価したほか、研究開始から10年後または11年後にはMRIにより脳の特定の領域の容積を測定。さらに14年後には認知機能を評価した。
その結果、追跡期間中に歩行速度が低下した高齢者では、14年後に認知障害がみられる可能性とともに、脳の右側の海馬領域が萎縮する可能性が高いことが示された。この領域は記憶のほか、安静時や運動時に空間に対する姿勢を制御する空間識を司っているという。
Rosso氏らは「歩行速度の低下は、追加の検査を必要とする認知機能の低下を示す兆候である可能性があるため、医師は高齢患者の歩行速度を時々チェックして、変化がないかどうか確認すべき」と指摘。また同氏は「認知症の予防と早期治療は全世界で課題となっているが、現在行われているスクリーニング法は侵襲性が高く、費用も高い。それに対し、今回われわれが検討した検査法はストップウォッチとテープ、18フィート(約5.5m)の廊下があれば実施でき、年1回5分ほどの時間しかかからない」と強調している。(6/29 HealthDayNews)

NEWS ■家庭血圧計の測定値、7割に誤差―カナダ調査

健康管理のために家庭血圧計を使用している高齢者は珍しくないが、その測定値の約7割に5mmHg以上の誤差があったとするカナダの小規模研究の結果が「American Journal of Hypertension」 7月号に掲載された。
アルバータ大学のJennifer Ringrose氏率いる研究チームは今回、オシロメトリック法の家庭血圧計を自宅に保有し、上腕の周囲長が25〜43cmで収縮期血圧(SBP)80〜220mmHg、拡張期血圧(DBP)50〜120mmHgの患者85人(平均年齢66.4歳)を対象に研究を実施。家庭血圧計で測定した血圧値と、訓練を受けた測定者がゴールドスタンダードである水銀式血圧計で測定した血圧値を比較した。
その結果、家庭血圧計による測定値の69%で5mmHg以上の誤差があり、10mmHg以上の誤差も29%で認められた。Ringrose氏は「血圧値が不正確であることによって、健康に深刻な影響が及ぶ可能性がある」と指摘。その上で、「監視と高血圧治療によってそうした状況は回避できる。また、われわれは家庭血圧計の測定値が正確であるかどうかを確認しておく必要がある」と述べている。
しかし、既に家庭血圧計を購入して使用している場合、それは無駄ではない。Ringrose氏によると、「家庭血圧計の測定値を血圧管理の主な指標とする場合は、その前にクリニックでの測定値と比べておく」「複数回の測定値に基づいて治療を決定する」ことなどによって、家庭血圧計による誤差を最小限にとどめることができるという。「家庭血圧計は患者自身に血圧を管理する力を持たせるツールとなるだけでなく、医師が患者の全般的な状態を把握する上で極めて有用だ」と同氏は強調している。(6/24 HealthDayNews)


■次号のメールマガジンは2017年8月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)


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