エンタプライズ発信〜メールマガジン【№63】 2016. 7

九州・四国・中国・関西・東海では梅雨が明けました。夏本番ということで体の方はというと、エアコンをかけて寝ればだるさが残るし、エアコンを切れば暑くて起きてしまう。良質な睡眠がとれないだけでも体にとってはダメージで、疲労回復も代謝も落ちがちになります。でも、そんな過酷な季節なのに夏太りする人が増えているようです、だいぶ以前は「夏痩せ」なんて言われていましたが、近年では冷房のきいたところにいる時間が長くなって汗をかきにくくなり、基礎代謝が低下したり、食べ過ぎ・飲み過ぎなどという理由で体重増になる人がよくいます。言うまでもありませんが、冷たい飲み物ばかり飲んでいると内臓を冷やすことになり、水分の代謝がうまくいかなくなりむくみなどが生じます。ビールやワインなどアルコール自体もかなりの高カロリーですが、お酒には食欲増進作用があるので、ついぞ脂肪分の多いおつまみを食べ過ぎてしまいます。他面、暑すぎて食欲が落ちると、食事の回数が減ったり偏った好きな食物を適当に食べる傾向になります。実はこれもまた太る原因となります。「飢餓状態」といって、食べた物が代謝されず体内に蓄えられてしまうからです。この夏太り対策としては、朝昼晩と適宜・適量に食事をとり、ビタミンB1/B2などを多く含む食べ物で栄養バランスをとると良いようです。そしてカロリー消費にはこまめに体を動かすしかありません。室内、部屋の中でもできるストレッチやカビの生えやすい水回りの清掃などで汗をかいたらいかがでしょうか。ともあれ夏のピークをいいコンディションで乗り越えましょう。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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【TOPIC】

「心身条件反射療法(PCRT)研究会」 中級1を開催

心身条件反射療法(ニューロ・パターン・セラピー;PCRT)研究会・中級1が、7月10日-11日にわたって東京・浜松町で開催された。代表の保井志之DCをはじめ4人のインストラクターによる実践ワークは、反射系(頭蓋・顎関節)、大脳辺縁系、PCRTプロトコルに沿った手順、生体反応検査に分別され、参加者は自分の関心事ほか苦手のカテゴリに的を絞れる受講態勢。座学では経絡、チャクラ、肉体内外のエネルギーブロックの検査および調整法により無意識のメンタル系の誤作動記憶を幅広く特定する方法を学べたと高評であった。
研究会情報の照会先:http://www.mindbody.jp/


◎連載vol.21

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


《 Extra issue 》 〜エピローグ〜

・環境中の電磁波が生体の細胞や分子の活動に対して影響を及ぼすことは、多くの科学者の認めるところとなってきた。生体組織の絶妙な構造を作り出している分子が、単なる化合物として扱われる生物学は終わり、生体分子の化学反応よりも、原子レベルの物理学的反応に主眼をおいた新しい生物学の時代が到来したのである。生化学反応により生み出される物質は、物理学的作用によって厳密にコントロールされているとみられる。
・過去10年間に、「低エネルギー非電離放射線が生体組織の反応を引き起こす、あるいは変化させる」という仮説を証明する事実が次々と明らかにされてきた。
・多くの研究所で行われてきた動物実験から、極超低周波磁気および電気が生物学的反応を引き起こすことが証明された。
・外界からの電気および電磁気が生物の様々な機能に作用し変化させることは誰もが認めている。
・生体電気化学や生体磁気に関する研究の第一人者たちも、外界からの電磁波による細胞カルシウムイオン輸送の変化を認める人は多い。
・酵素が関係する反応そのものがエネルギー場に影響されやすい。
・反応基質となる分子同士が遭遇する確率は、弱い磁場の作用によって変化しうる。
・細胞のどのような反応を引き起こすにも足りないとみなされる微弱なエネルギーであっても、増幅されれば反応のコントロールシステムに変化を引き起こす。そうすると細胞の代謝エネルギーを必要とするような、無視できない生理学的反応が起きる。
・近年、電磁エネルギーの応用が進んだことにより、医学の多くの分野が大きく発展した。

以上に挙げた文献以外にも、これらの研究者たちによる新しい見解の生物物理学的意義および医学的意義について丹念に分析したレビューがある。
科学者間の同意は「環境中の微弱なエネルギーは生物に作用を及ぼさない」という見解から、「外界からのエネルギーの作用は極めて重要で、正確な作用機序を明らかにする研究がぜひとも必要である」という見解に変わった。
一方、電磁パルス治療から鍼灸療法、あるいはポラリティ・セラピー、霊気、ハーブ療法、アロマセラピーといった種々のエネルギー療法では、外界からのエネルギーに対する生体の感受性を、セラピストたちが日々実感してきたわけだが、現代の研究者らによる発見は、偶然にもセラピストたちの日常経験を裏付ける根拠となったのである。しかし新しい概念が登場したからといってこれまでに確立された生理学的・生化学的・分子生理学的知識を捨てる必要はない。すべての知識を総合・統合することによって生命やヒーリングといったものが、構造的にも機能的にもより詳細に解明されることだろう。生命体の定義にも、半導体、量子力学、液晶、生物学的コヒーレンスなどという固体物理および化学の概念を取り入れることができるのだ。(次号につづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉛☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「部分」と「全体」との調和

先日、偶然にも同じような原因パターンを抱えた患者お二人が来院された。主な症状は関節痛。原因となる本質な無意識的な思考パターン、すなわち「誤作動記憶」の性質が同じだった。
症状の原因から結果の大まかな流れをまとめると、無意識的な思考パターン⇒神経系への誤作動記憶⇒筋肉・関節の機能障害⇒症状、となる。

一人目の患者さんは、股関節と腰の痛みを訴えて来院。趣味でダンスをしている患者さん。以前はラテンを熱心に練習していたが、最近になってモダンバレエを練習しているとのこと。
「練習の際にはどこを意識していますか」と尋ねてみると、背筋を意識しているとのこと。PCRTの検査をしてみると、神経系に誤作動があることを示す陽性反応が示される。
今度は、「ご自分が理想となる全体的なイメージはできますか」と尋ねると、最初は「???、あ〜プロの人が踊っているイメージならできます」という。「では、ご自分がプロの人のように踊っているかのようなイメージをしてみましょうか」
PCRTの検査をしてみると誤作動反応は示さない。「部分だけ意識しすぎるとパフォーマンスが悪くなるので、全体的な理想のイメージをしたほうがいいですね」

二人目の患者さんは、肘関節の痛みを訴えて来院。高校の水泳部に所属しており、最近、本で腕の使い方や腕の働きに関係する筋肉の使い方の情報を独学で学んだとのこと。
「泳ぐときはどこを意識していますか」と尋ねると、水をかく際の腕の使い方だという。そのイメージでPCRTの検査をしてみると誤作動反応を示した。
「部分的な技術ではなく、理想的な泳ぎになる全体的なパフォーマンスを意識して泳ぐイメージではどうですか」
そのイメージでPCRTの検査をしてみると誤作動反応は示さない。ということは、運動の種目は異なっても、共通する点は、部分的な技術改善を試みて練習すると、かえってパフォーマンスも偏り、神経や筋肉の働きが不調和になって、関節痛や筋肉痛などの症状を生じやすくなるということになる。

これは多くのスポーツ障害に共通する原因の一つである。パフォーマンスを向上させるために、指導者や教本などから様々な技術論を得たり、学んだりすることで、いつの間にか意識が身体の「部分」ばかりに偏って、「全体」との調和が保てなくなる。そして、かえってパフォーマンスが悪くなったり、故障しやすくなったりする事例は少なくはないと思われる。
スポーツの技術を向上させるための部分的な指導を受けることも大切だが、「部分」と「全体」との調和は必須条件。むしろ、理想の全体的なパフォーマンスを先にイメージして、後から身体の部分がそのイメージについてくるという思考の方が、自然にバランスがとれて技術も向上できていくようだ。
人生におけるパフォーマンスという大きなゴールにおいても、同じようなことが言えるのではなかろうか? 例えば人生において、仕事、家族、お金、家や車、健康、人間関係など
様々な課題がある。どれも大切な課題であるが、もしも、お金や物質面だけの豊かさばかりに目を向け、健康面や人間関係をおろそかにしてしまうと、人生全体のバランスはどうなるだろうか。
大切なのは、自分にとっての人生をどのように過ごしていきたいのかという「全体」と、それを可能にさせる「部分」との調和ということになるだろう。「部分」と「全体」との調和は、スポーツに限らず、人生全体にも影響を及ぼすということを、常に意識しておく必要があるようだ。


《連載45》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


6. 日本編 〜杉山和一小伝〜

<小伝4>(つづき)

太陽がかなり高く昇ったころ、ようやく和一は息を吹き返した。7日間の断食を終えたばかりのところへ、全身を強く打ったものだから、何としても起き上がることができない。杖を求めて、両手で地面をまさぐる。と、1本の短い竹の棒と、ひと握りの松葉を握りしめている自分に気がついた。こんな細い竹では杖の代わりにもなりはしないと、それを捨てようとしたとき、和一の頭に閃いたものがあった。
——-竹の棒と松の葉と……これだ、管(くだ)を通して針を刺せばよい!
思わず知らず、和一は立ち上がっていた。
坂を転げ落ちた和一が全身を強打した石は、臥牛石と呼ばれている。寄り添うように並んだ大きな二つの石が、大きさも形も、臥(ね)そべった牛にそっくりだからである。この石の近くで拾い物をすると幸運が訪れるというので、いまでは「福石」と名づけられている。福石の周囲は拾う物もないほど、いつもきれいに片づいている。

<小伝5>

管針の術を自分のものにしてからの杉山和一は別人のようになった。再び江戸の琢一師匠のところに身を寄せ、修業を再開した。
使おうと思う針よりも少し短い鉄の管に、針を通して、経穴の上に置く。中指で反動をつけながら、人差し指の腹を用いて、ポンポンと針の柄を軽くたたく。こうすれば何の苦もなく経穴に針を差し込むことができる。あとは管を取り去って、必要な深さまで針を刺せばよい。これまでの、中国伝来の捻針(針をひねりながら刺す)に較べて本当に簡単だ。これには師匠もすっかり感心して、「俺も真似させてもらうよ」という始末である。この管針術は現在まで伝えられ、針師の95%以上が用いている。
以前はあれほど難解だった医学書も、今ではすらすらと暗記できるようになった。やがて琢一師匠のところであらかたのものを吸収した和一は、京都へ行き、入江豊明のもとで修行を続けた。豊明の父・良明は山瀬琢一の師匠にあたる。
京都での修業の後、針管にますます自信を強めた和一は、江戸に帰り、京橋、次いで麹町で針医を開業した。針管の評判は良く、患者が門前に市をなすほどであったという。和一はまた治療のかたわら、数多くの弟子をとり、針医として養成していった。その成果ともいうべき杉山流三部作は、今日も臨床上の意義を持つ。弟子のほとんどが盲人であったことは言うまでもない。和一の江の島弁財天に対する感謝の気持ちは強く、毎月1回の参詣は後々まで欠かさなかった。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(38)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■パラセタモール(アセトアミノフェン)やNSAID単独で十分な疼痛コントロールができない場合は、パラセタモール+弱オピオイド(麻薬系鎮痛薬)の配合剤が有効かもしれないが便秘と嗜眠傾向がある。http://amzn.to/Hk8veA
……逆に言うと、便秘と眠気に耐えられるのであれば、アセトアミノフェンと弱オピオイドを試みても良いということです。

■筋弛緩薬は急性腰痛を効果的に軽減する。筋弛緩薬とNSAIDとの比較結果は一貫しておらず、筋弛緩薬とパラセタモール(アセトアミノフェン)との比較試験は行なわれていない。http://amzn.to/Hk8veA
……最近の腰痛診療ガイドラインでも急性腰痛に筋弛緩剤を推奨していますが、なぜか慢性腰痛には無効なため推奨していません。

■強オピオイド(麻薬系鎮痛薬)は、より安全性の高いアセトアミノフェンやアスピリンなどのNSAIDほどの腰痛軽減効果はない。強オピオイドには、反応時間短縮・判断力低下・嗜眠・身体依存などの副作用がある。http://amzn.to/Hk8veA
……がんの痛みに対して最も強力な鎮痛効果があるモルヒネ(強オピオイド)が急性腰痛に効かないなんて不思議ですね。腰痛は未だに謎だらけです。

■抗うつ薬は慢性腰痛の治療に広く用いられてきたが、その有効性に関するエビデンスはほとんどなく、急性腰痛に対する抗うつ薬の有効性に関するエビデンスは入手できていない。http://amzn.to/Hk8veA
……急性腰痛に対する評価は最新の腰痛診療ガイドラインでも変わっていませんが、その後のRCT(ランダム化比較試験)の蓄積により慢性腰痛には抗うつ剤が推奨されています。

■急性または再発性腰下肢痛に対する治療としての安静臥床(2〜7日間)は、疼痛緩和・回復速度・ADL(日常生活動作)改善・欠勤日数という点で、プラシーボや通常の活動より効果がない。http://amzn.to/Hk8veA
……腰痛には安静第一と考えているのは世界広しといえども日本だけかもしれません。せめてこの誤った常識だけでも頭の中から消去してください。急性腰痛を慢性化させてしまいます。

■必要に応じて鎮痛剤を投与し、安静臥床を守らせて「痛みの程度に応じて」通常の活動に戻るかどうかを決めさせる「従来型」の治療と比較して、通常の活動を維持するよう指導した場合は、急性発作時の症状がより早く回復する。http://amzn.to/Hk8veA
……腰痛概念の劇的な転換に伴い、その対処法も大きく変わりました。いつまでも時代遅れの治療をしていると回復が遅れるばかりでなく、悪くすると訴えられる可能性もあります。医療関係者の方は情報のアップデートを急いでください。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (63)

根本 良一(療動研究所主宰)

【 連動操体法の応用編 】

6. 乳腺症、乳が出ない(継続)

症例:胸が痛み
46歳。主婦。6か月前ぐらいから右の胸に痛みがあるが、時々楽になることもある。乳房にしこりがあるので病院で検診したがどこも異常はない。肋間神経痛でしょうと言われた。
乳房を自分でそっと触ってみると、やはりコリコリしたところがある。手遅れになったら嫌なので、別の病院でも調べてみた。マンモグラフィーで診たところ、大丈夫だと思うが念のため細胞をとってみましょうとなった。乳房に穿孔し細胞診をしたが異常はなかった。安心したが、薬を飲むだけで痛みは取れない。
腰は痛くないという。乳房の大きな人で、ちょっと気を遣って背中を丸くしている。姿勢は良くない。そのほか、①下腿は硬く、②大腿二頭筋も硬い。さらに③内腿も硬く、④胸部側方の肋間に圧痛があり、⑤乳腺にもコリコリと硬結がある。さらに外腹斜筋も硬く、いつ腰痛が起きても不思議でない状態であった。
①②の状況から、大腿筋の操作、③-⑤の様子から内腿部の操作、腹部の筋を操作、これを上・中・下にわたり行なった。特に乳腺への、上腕の角度を合わせて行なった。
これで乳房のしこりはなくなり、胸の痛みも翌日には解消した。またこんなことにならないようにと2日後に来院した。やはり姿勢が悪い。ここが根本と姿勢矯正のアドバイスをしっかりと行なった。

乳腺症は肋間神経の乳腺枝の影響によるもので、姿勢が悪いとき、頸背部に緊張のあるときに起こる。このとき、上記の操作により、肋間神経の処置および大腰筋、外腹斜筋を調整して姿勢を正す、という取り組みになる。再発しないように、姿勢の重要性について患者教育することは大切である。


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■寝過ぎも寝不足も男性の糖尿病リスクを高める

男性では、過眠と睡眠不足のどちらも糖尿病リスクを高めることが、欧州の新しい研究で示された。一方で、女性ではこうした傾向はみられなかったという。「たとえ健康であっても、寝過ぎや睡眠不足は健康に有害でありうる。今回の研究では、健康の鍵を握る“糖代謝”に、睡眠の質がどれほど重要な役割を担っているのかが示された」と、研究を主導したアムステルダム自由大学医療センター(オランダ)のFemke Rutters氏は述べている。
今回の研究では、欧州14カ国の健康な成人800人近く(平均年齢44歳、女性が約6割)を対象に、睡眠時間とインスリン感受性や膵β細胞機能との関連を検討した。対象者の1日の平均睡眠時間は7.3時間であった。その結果、男性では、睡眠時間が1日7時間と平均レベルであった人に比べて、睡眠時間が最も長かった群と最も短かった群では、ともにインスリン感受性や膵β細胞機能が低下しており、これらが糖尿病リスクの上昇につながることがわかった。
しかし、女性では逆に、睡眠時間が平均レベルだった人に比べて、睡眠時間が最長あるいは最短だった群では、インスリンへの反応性が高く、膵β細胞機能も高まっていることが判明した。これらの知見から、睡眠障害は、女性では糖尿病リスクを高める要因とはならない可能性が示唆されるという。
同氏らによると、この研究は、睡眠障害が糖尿病リスクに及ぼす影響には性差があることを示した初めてのものだが、睡眠障害と男性の糖尿病リスク上昇との因果関係を証明したわけではないとしている。
社会や生活習慣の変化に伴って、1日の平均睡眠時間は、過去50年間で1.5〜2時間短くなっており、糖尿病の有病率はその間、倍以上に上昇していると、同氏らは指摘している。
(7/12 HealthDay News)


NEWS ■国保保険料、最大1.7倍の差…都市部68市区調査

自営業者や非正社員らが入る国民健康保険(国保)の保険料は、都市部の政令指定都市、中核市の中でも、最大で約1.7倍の開きがあることがわかった。かかる医療費や、保険を運営する自治体の支援状況などに違いがあるためだ。全国では保険料収入が増えずに苦しむ国保が多い。比較的豊かな都市部でみても格差がついている。
朝日新聞社が全国20の政令指定都市と47の中核市、東京都中央区の計68市区に聞き取り調査した。年収400万円の40歳代夫婦と高校生、中学生の子ども2人の4人家族で、給与所得者の世帯主が年間支払う医療と介護の2016年度の保険料を対象にした。
最も保険料が低いのは岐阜市の約35万7千円(年収の8.9%)で、最も高いのは山口県下関市の約59万2千円(同14.8%)。この違いには、(1)使われる医療費、(2)加入者の所得、(3)市の財政的支援である「法定外繰入金」の額、(4)積立金の取り崩しの額、(5)保険料の徴収率――などが影響する。
厚生労働省によると、岐阜市の国保加入者の1人あたり医療費は年間約33万9千円(14年度)と、下関市の約42万5千円(同)の約8割だった。岐阜市の法定外繰入金は、14年度に国保加入者1人あたり約1万4千円あったが、下関市の場合は約4千円。医療費が低く、支援が手厚い自治体の保険料が低くなる傾向だ。岐阜市には扶養家族が多い人の保険料負担を減らす独自の仕組みもある。これがないと、10万円以上跳ね上がる計算だ。
(7/4 朝日新聞)


NEWS ■学校教育9年以下、握力弱い、認知リスク2倍に…国立長寿研

糖尿病や心臓病の持病があったり、握力が弱かったりする人は、認知症を発症するリスクが高い、との調査結果を国立長寿医療研究センターなどのチームがまとめた。8つの危険要因をリスト化。「該当する人に、重点的に生活習慣改善などの支援をすべきだ」との提言を行った。
チームは、愛知、秋田、石川の3県で、計約3300人を3〜16年追跡した4つの研究をもとに、認知症のリスク要因を分析した。
その結果、脳卒中の経験がある人は、ない人に比べ、認知症のリスクが2.6倍高かった。糖尿病、心臓病の持病がある人は、それぞれリスクが1.7倍、1.5倍だった。体力や筋力の目安の握力が26キロ未満の男性、18キロ未満の女性も2.1倍だった。学校教育の年数が9年以下の人のリスクは、9年を超える人の2倍だった。また、うつ傾向がある人のリスクは、ない人の1.6倍。難聴の人は1.4倍だった。
そのほか、介護危険度の簡易チェックで「認知機能低下の恐れあり」と判定された人は、認知症に2.5倍なりやすかった。アポE4多型という認知症のリスクを高める遺伝子を持つ人も、認知機能が低下する傾向があった。調査をまとめた名古屋学芸大学の下方浩史教授は「予防には、普段から頭を使い、生活習慣病やうつを予防し、体力維持に努めることが重要だ」と話す。
(7/4 読売新聞)


NEWS ■「骨格矯正で小顔」根拠なし=9業者に措置命令

頭蓋骨のゆがみを矯正することで小顔になり、効果が持続するとの根拠のない表示をしたとして、消費者庁は7月1日までに、景品表示法違反(優良誤認)で、全国で20店以上の小顔矯正サロンを展開する「シンメトリー」(福岡市)など9業者に、再発防止などを求める措置命令を出した。ほかに処分を受けたのは、「ナチュラルビューティラボ」(東京都渋谷区)など。
同庁によると、各業者はウェブサイトに「骨の形ごと矯正」「形状記憶する」などと表示し、施術で顔が小さくなり、効果が持続すると宣伝していた。しかし、形成外科医など複数の専門家に確認したところ、「下顎以外の骨はくっついており、皮膚や筋肉が押されて顔の形が変わっても頭蓋骨が動くことはない」と回答があり、表示に合理的根拠はないと判断した。
(7/1 時事通信)


NEWS ■歯が少ない高齢者、引きこもりリスク増–東北大学など調査
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歯が少なく、入れ歯を使わない高齢者ほど、引きこもり状態になるリスクが高いとの調査結果を東北大学などの研究チームが6月28日に発表した。歯の健康状態が悪いと、人との会話や食事をためらいがちになり、外出機会が減ってしまう可能性があるという。
愛知県内に住む65歳以上の4390人を、自分の歯が20本以上残っている人、19本以下で入れ歯を使っている人、19本以下で使っていない人の3グループごとに4年間追跡した。週1回も外出しない引きこもり状態になった割合は、歯が20本以上の人では4.4%だったのに対し、19本以下の入れ歯使用では8.8%、入れ歯を使わないと9.7%だった。65〜74歳の場合、歯が19本以下で入れ歯を使わない人が引きこもり状態になるリスクは、年齢や所得などを調整すると、20本以上の人の1.78倍になった。
東北大学の相田潤准教授(歯科公衆衛生学)は、「高齢者にとっては歯が少なく入れ歯を使わないことが引きこもり状態へのリスクを高める。健康な歯を保つことで防止につながる可能性もある」と話している。
(6/29 朝日新聞)


NEWS ■65歳以上人口、4分の1超―2015年国勢調査

総務省が6月29日に発表した2015年国勢調査抽出速報集計結果によると、総人口に占める65歳以上人口の割合は調査開始以来最高となる26.7%で、初めて総人口の4分の1を超えた。全都道府県で65歳以上人口の割合が15歳未満人口の割合を上回り、高齢化が進む現状が改めて浮き彫りとなった。
65歳以上の人口は3342万人で、総人口に占める割合は05年、10年の調査に続き3回連続で世界最高。前回調査から3.7ポイント上昇しており、総務省は「この5年間で『団塊の世代』が65歳以上となり、割合が大きくなった」(統計局)と分析している。一方、15歳未満の人口は1586万人で、総人口に占める割合は12.7%と、世界で最も低い水準となった。
(6/29 時事通信)


NEWS ■<医療>コーヒーと漢方薬、アウトな飲み合わせ

昨年末、「エナジードリンク」と呼ばれるカフェイン入り清涼飲料水を大量に飲んだ男性が、カフェイン中毒で死亡する事件がありました。カフェインは飲料や薬などさまざまなものに含まれており、飲み合わせによって意図せず大量摂取してしまう可能性もあります。危険を避けるためにどんなことに気をつければよいでしょうか。漢方が専門の日本薬科大学学長、丁宗鐵さんに聞きました。
—–精製されたカフェインは、医薬品として片頭痛の治療に用いる処方薬や市販の風邪薬や眠気覚ましの市販薬などに含まれています。また、食品添加物として使用が認められており、適度な苦みによって食品の味をよくする目的でコーラなどの清涼飲料水やドリンクなどに添加されたり、サプリメントの原料として使われたりしています。
カフェインは、心血管や中枢神経を刺激して覚醒させる作用があります。そのため、適量を摂取すると体の活動量が盛んになって元気が出ます。しかし、短時間で大量に摂取すると頭痛、めまい、胃けいれん、吐き気、嘔吐などの急性症状が現れます。過剰摂取によって中毒になると興奮して眠れなくなったり、動悸がしたりするなど全身に症状が及んで危険な状態になり、摂取量によっては死に至ることもあります。
カフェインは取り方によっては体にリスクがありますが、国内では今のところ、食品における1日の摂取許容量は設定されていません。海外の状況を参考にすると、健康な成人では、1日の摂取量の目安は400mgといわれています。これをコーヒーに換算するとマグカップ3杯分になります。カフェインは主に嗜好飲料に多く含まれています。表示されているカフェインの量をチェックし、目安量を超えないようにしましょう。
また頭痛薬などの薬には、1錠に100〜300mgのカフェインが含まれます。サプリメントにも高濃度のカフェインが含まれる商品があります。薬やサプリメントを通じて大量摂取をしてしまうと、それだけで1日の目安量を超えることがあります。カフェイン入りの嗜好飲料を大量に飲みながらこれらを併用するのは、とても危険です。
カフェインの摂取については、薬に含まれる他の成分との相互作用も重要です。漢方薬では、生薬の麻黄(まおう)に含まれるエフェドリンに気をつけてください。カフェインと一緒に摂取すると相乗作用で効果が高まるためです。漢方薬は副作用がないと思われがちですが、知らずに飲み合わせると脈が速くなったり、動悸がしたり、血圧が上昇したりすることがあります。麻黄は葛根湯や麻黄湯などに含まれる生薬で、これらの漢方薬は風邪薬としてよく使われます。服用するときは、カフェイン入りの嗜好飲料は控えるようにしてください。また、気管支ぜんそくに使われる気管支拡張薬にもエフェドリンのような作用のものがあります。これについても、カフェインが含まれるものとの飲み合わせには注意が必要です。
(6/26 毎日新聞)


NEWS ■<うつ病>やっぱり!? 腸内「善玉菌」が少ない人ほど…

うつ病の人は健康な人と比べて、ビフィズス菌など「善玉菌」の数が腸内に少なく、菌数が一定以下だとうつ病患者の割合が高くなるとの研究結果を、国立精神・神経医療研究センターとヤクルトの共同チームがまとめ、オランダの科学誌に発表した。腸内細菌は近年、脳の機能に影響を与えるとの研究発表が相次いでおり、チームは善玉菌の減少がうつ病発症のリスクを高める可能性があるとみている。
うつ病患者は医療機関の受診者だけで推計約73万人おり、実際はその数倍いるとされる。チームはうつ病患者43人と健康な57人を対象に、体にいいとされる腸内の善玉菌数を調べた。その結果、ビフィズス菌の便1グラム当たりの量(中央値)は、うつ病患者で約32億個、健康な人では約100億個。ラクトバチルス菌(同)は、うつ病患者が79万個、健康な人が398万個だった。また、ビフィズス菌が約34億個以下、ラクトバチルス菌が約309万個以下の人はうつ病の割合が高くなり、発症リスクはそれぞれ約3倍、2.5倍になると分析した。
腸内細菌の関与が指摘され、ストレスなどで悪化する「過敏性腸症候群」を患っている割合も、うつ病の人は高かった。チームは今後、乳酸菌飲料などの摂取でうつ病が改善するかどうかや、菌の種類による効果の違いを研究する予定で、同センターの功刀浩・疾病研究第3部長は「医薬品開発にもつなげたい」と話す。
(6/19 毎日新聞)


NEWS ■糖尿病になると脳の海馬が萎縮…九州大学チーム

糖尿病になると記憶にかかわる脳の海馬の萎縮が進むことが、福岡県久山町の住民を対象とした九州大学チームの研究で示された。海馬の萎縮は認知症患者の脳でもよく観察されており、チームは「糖尿病の人は認知症を発症していなくても脳の異変が始まっている可能性がある」と指摘する。
久山町では九大が長期的な疫学調査を実施しており、糖尿病の人はそうでない人に比べて認知症のリスクが2倍ほど高まるとの結果が出ている。今回は実際に脳がダメージを受けていることを示す内容で、米国で6月14日まで行われた米糖尿病学会で発表した。
町内に住む65歳以上の人を対象に頭部のMRIで脳の容積を測定し、糖尿病の有無との関係を調べた。1238人が参加し、うち286人が糖尿病だった。脳の大きさには個人差があるため、「頭蓋骨の内側の容積に占める脳の容積の割合」を指標に、脳の縮み具合を評価。年齢差などが影響しないよう統計的に処理すると、糖尿病歴が長いほど脳の容積が小さくなる傾向だった。
中でも記憶と関係が深く、脳の奥の方にある海馬の容積をみると、糖尿病歴が10〜16年だと糖尿病でない人に比べて約3%、17年以上だと約6%小さいという結果が出た。
(6/16 朝日新聞)


■次号のメールマガジンは2016年8月10日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ