エンタプライズ発信〜メールマガジン【№77】 2017. 9
今年、医療系分野の流行語になりそうな「睡眠負債」。負債という言葉はあまりなじみませんが、ヒトの睡眠・覚醒のメカニズムから考えると、十分すぎるほど眠っても「寝だめ」はできませんので、仮に寝だめを「睡眠の貯金」だとすると、睡眠不足は「睡眠の借金」とも言えます。そのため「睡眠負債」と呼ぶようです。日々臨床に追われていると睡眠時間は確保しにくいものです。そんなときは昼寝を徹底的に活用しましょう、と睡眠医学では提唱します。昼寝の基本は、①平日に20分眠る「パワー・ナップ」と、②休日に1時間半眠る「ホリデー・ナップ」だと言います(nap;うたた寝・仮眠)。パワー・ナップは、正午から15時までの間にとる20分の昼寝。理想は午後の眠気がピークとなる14〜16時が望ましいのですが、仕事的には無理なことが多いので意図して食後でも良いとのことです。ホリデー・ナップは、休日にとる90分の昼寝です。90分というのは、睡眠のリズムでちょうど目覚めやすい時間です。ただし、遅い時間帯に仮眠すると夜の睡眠に悪影響が出るので、午後3〜4時までには起きてくださいと注意を促しています。睡眠負債を減らすためのそのほかの重要な取り組みとして、本コラムでも何度か紹介していますが、24時間社会となった現代では、夜にも明るい光を浴びてしまいます。夜の明るい光は、睡眠ホルモン・メラトニンの分泌を抑えて、睡眠の質を悪くします。夜にはなるべく強い光を浴びないよう強調しています。中でも「ブルーライト」と呼ばれる青い光は、メラトニンの分泌をより強く減らします。ブルーライトは、電子メディアの画面からたくさん出ています。眠る1時間前、遅くとも30分前には、テレビやパソコン、スマートフォンは見ないようにしましょう。読者諸兄もご承知のように、睡眠不足が重なるとがんや認知症、うつ病などに連関する可能性が高くなります。短い睡眠時間=寝不足(睡眠負債)とは必ずしも言えませんが、睡眠負債を減らして脳をすっきりさせ、日中のパフォーマンスを十全に発揮したいものです。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【4】伝統医学をシルクロードに求めて 〜くらしのなかの中医学〜
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
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Information -1
第22回となる日本構造医学会学術会議が10月8日(日)、学士会館(東京都千代田区)を会場に開催される。人体の全体性の理解を目指して一般医学の未解明領域を補填すべく体系を組み立ててきた構造医学。演者が個々の現場で遭遇した問題等について討論し学びあえる学術会議を目指している。
【日程】10月8日(日)12:30〜17:00
【会場】学士会館(千代田区神田錦町3-28)
・詳細は096-212-8288 事務局まで
Information -2
新しい診査法に基づく臨床から、妊産婦のバランス状態が胎児の発育にも影響を及ぼすことがわかってきました。また腰が曲がってくる時期によくみられる口の中のトラブルの仕組みが解明され、その解決方法も確立されつつあります。直立歯科医学の視点から、〝バランスよくまっすぐ立つ〟をサポートする歯科医療とヘルスプロモーションを提唱します。
テーマ『下顎平衡機能から見るヘルスプロモーション 〜マイナス0歳から高齢期まで〜』
開催日時 10月14日(土)〜15日(日)
場 所 東京大学 福武ホール地下2階『福武ラーニングシアター』(東京都文京区本郷7)
お問合せ TEL:0985-69-2149 E-mail:chokuritsu-exo@ab.auone-net.jp
Information -3
テーマ『温故知新〜JACの過去から未来へ』
日程:11月19日(日)〜20日(月)
時間:11/19 10時〜 11/20 9時30分〜
場所:アクロス福岡(福岡市中央区天神1)
特別講演:五十嵐由樹DC 「足腰が及ぼす全身への影響:歩行から運動パフォーマンスアップへのカイロプラクティックアプローチ」
お問合せ:03-3578-9390 Email:info@jac-chiro.org
④
老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
長生きするための古い免疫
[安保] 沖縄で100歳老人の免疫力を調査した研究があるのですが、そうしたらみんな自己抗体の値がすごく高かった。SLE(全身性エリテマトーデス)とかリウマチ患者並みの自己抗体が出ていました。病気ではないけれど、自分の細胞を攻撃する抗体を多く持っていたわけです。この自己抗体は、自分の体を守るために増えたと考えられます。つまり老人たちの体は、「古い免疫」にしっかり守られるようになっていたんですね。
[太田] 古い免疫というのは自然免疫のことですよね。
[安保] はい。免疫には、古い免疫(自然免疫)と若いころの免疫(獲得免疫)があります。若いころと歳をとってからでは免疫系に変化が起こるのです。若いころは活動も活発だし、人生経験が少ないほど外部のウイルスや細菌に対する免疫もついていない。だから免疫機能としては外部の敵から身を守ることが重要です。免疫細胞(B細胞やT細胞と呼ばれるリンパ球)は、骨髄や胸腺で育つのですが、特に胸腺は老化が速く、加齢により脂肪に変化し、若いころの免疫系は衰えていきます。
その代わり、歳をとってからは「NK細胞」など古いタイプの免疫細胞が増えてきます。これらの免疫細胞にはがん細胞やウイルス感染細胞を異常自己として攻撃する力が備わっています。つまり古い免疫(自然免疫)ですね。
[太田] NK細胞や胸腺外分化T細胞は、腸管や肝臓に多い免疫細胞ですね。
[安保] 腸管や肝臓に多いのは、人間の祖先がまだ海に住んでいたころの名残りと考えられます。海の中に住んでいたころは、地上のように空中をさまよう外敵がいなかったから、水中から敵が侵入しやすい腸管や肝臓に免疫細胞が集まっていたのでしょう。
[太田] はるか昔から存在する免疫システムだから「古い免疫」というわけですね。歳をとると外部からのウイルスなどには大抵の免疫ができているから、むしろ体内の異常に対応できる免疫が重要ですよね。
[安保] はい。歳をとると若いころの免疫(獲得免疫)は減りますが、古い免疫(自然免疫)は強化されます。沖縄100歳老人の長寿の秘密は、古い免疫にしっかり守られていたということです。
[太田] 100歳まで生きる人はもともと免疫力が強いのだろうけど、腸内環境も整っているのかもしれないですね。
[安保] 沖縄に住む40-60代の人(43名)と100歳老人たちの白血球分布を調べたら、老人たちに古いタイプの免疫細胞が顕著に増えていました。
[太田] 古い免疫系が強化されるという現象は、沖縄という地域性は関係ないですよね。ほかの県の100歳老人にもこれは当てはまるでしょうね。
[安保] そうだと思います。当時100歳老人を60人も集めることができる場所と言えば沖縄県しかなかったということです。(笑い)
連載vol.35
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
エネルギー医学の台頭
水源にたどり着くためには、流れに逆らわなければならない。(マルティン・ルター)
科学界や医学界から「部外者」扱いされ続けた何十年もの時を経て、生命や健康をエネルギーによって説明しようとする模索・研究が、いま大きく花開こうとしている。すべての医学はエネルギー医学であり、エネルギー的アプローチが、医学という分野全体の将来を握るカギであるという認識が大いに高まりつつある。
この変化は大きな時代の流れによってもたらされたとはいえ、この潮流そのものもまた興味深い。1つの潮流は、電気や磁気をはじめ、光や音なども細胞の活動に影響を及ぼし、種々の組織の治癒を促す有効な手段であることが、医学関係者に認められはじめたことである。
私が「暗黒の時代」と呼ぶ1910年ごろから1950年代の間は、「エネルギー医学」を持ち出しただけで学会からつまはじきにされる傾向があったが、その後の臨床研究からいろいろな形態のエネルギーが生体の治癒反応を「急加速」させると再認識され出したのである。
第2の潮流としては、国民の補完代替医療に対する関心が急激に高まり、アメリカをはじめ世界各国で従来医学との統合が進んだことが挙げられる。鍼、アロマテラピー、カイロプラクティック、ヒーリングタッチ、ホメオパシー、ロルフィングなどなど、これらエネルギー療法が日常の医療の中に取り入れられるようになったのだ。統合の進み方は、国や地域によって驚くほど速いところもあれば、まだこれからというところもある。しかし方向性は明らかだ。多くの人が補完代替医療を支持し、エネルギー療法を望み、実費を負担してでもそれらの手法による治療を受けようとしているのである。
そして第3の潮流をつくりだしているのが、身体能力の向上を目指す人々だ。つまり世界のトップクラスのアスリートやアーティスト、および彼らのトレーニングや健康管理などに携わる人たちである。人間の限界に挑む人々は、さらなる能力の向上を常に求めているので、それを可能にするあらゆる理論や手法を進んで受け入れようとする。したがって、新しい解釈や発想が見つかれば、彼らはすぐにでも実践に移して効果を試そうとするのである。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))
連載エッセイ ㊺☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
アレルギー症状(喘息)の改善
経 緯
7歳の男の子が喘息の症状を訴えて母親とともに来院。病院でも治療を受けており、発作の際には吸引ステロイド薬も使用しているという。先々で喘息の検査入院を予定しているとのことだった。1年と3か月前に鼻水や咳などのアレルギー症状で当院を利用したことがあり、2回ほど通院していただき、その後は症状が改善していたとのこと。遠方から帰省した際の来院なので、今回も限られた時間での通院だった。
1回目の施術
エネルギーブロックの検査では、免疫系と頭部全体の反応点に陽性反応が示された。病院ではダニなどのアレルゲンの数値が高かったとのことだったが、前回、当院でダニなどのアレルゲンに対する治療をした効果が継続しているためなのか、当院の検査では陽性反応が示されなかった。誤作動記憶の原因を検査してみると、大脳辺縁系→信念が示され、「自省心」や「忠誠心」などのキーワードで反応が示された。母親に心当たりを質問しながら、本人にも認識してもらい施術を行った。
2回目の施術
9日後の2回目のエネルギーブロックの検査では、1回目と同様に免疫系と頭部全体の反応点に陽性反応が示された。2回目でも、大脳辺縁系→信念で示されたが、1回目と異なる「慈悲心」や「警戒心」などのキーワードが示された。
3回目の施術
4日後の3回目のエネルギーブロックの検査では、前回と前々回に免疫系と頭部全体の反応点に示されていた陽性反応が消失しており、母親によると喘息の症状もだいぶ落ち着いているとのことだった。呼吸器系以外に小麦粉のアレルギー症状が気になるとのことだったので、アレルゲン情報の検査をしてみると、小麦粉で陽性反応が示された。加えてそのアレルゲン情報との組み合わせで、信念に関係するキーワードも示されたので、アレルゲンと大脳辺縁系との組み合わせで施術を行った。
考 察
アレルギー症状が改善する際、単に物質的なアレルゲンや環境的なアレルゲンだけでなく、その背後の誤作動記憶に関連する大脳辺縁系の潜在感情や信念などの検査が鍵となる。無意識に関係する大脳辺縁系へのアプローチは本質的に症状を改善する上でとても重要である。
今回紹介したのは7歳の男の子である。この年齢にはむずかしい質問かもしれないと思案したが、母親のサポートもあり、しっかりと内容を認識しているという印象を与えてくれた。付き添ってくれた母親も当院でのアレルギーの治療経験があり、1回だけの治療で改善した経験やPCRTの治療コンセプトや検査目的をしっかりと理解していただいている様子だった。通常の医療とは異なる考え方で施術を行う場合、できるだけ患者さんの立場で分かりやすく説明し、納得されたうえで施術をすすめることが、早期の改善につながるということを改めて感じさせられた症例だった。
これはいつも感じることであるが、病院で行われているアレルゲンの検査結果は、客観性があることは明らかである。しかしながら、当院での検査結果や患者さんが訴える症状と一致していないことも少なくはない。病院でのアレルギー検査結果は参考にしているが、基本的には身体を使った生体反応検査法を基準に施術を進めていくことを基本としており、信頼関係に基づいて治療が継続される限りほとんどの症例でいい結果がでている。おそらくアレルギー症状にはメンタル面などいろいろな要因が関係していることが考えられるが、今後の研究課題でもある。
《連載59》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
異国の地で、年を単位として滞在するケースは海外赴任者や留学生以外ではあまり多くないだろう。筆者は中国へは100数十回は行っているが、天津での2年間が最長記録である(1981-83)。家族連れということもあり、中国内の旅行はよくしたが、日本へは1度も帰らなかった。この間、「日常」となった中国で、中国人の生活のなかの医学や健康についての知恵や知識をよく観察させてもらった。この項は、日本中国医療普及協会の機関誌に連載したものである。
1989年6月の「天安門」の後の2回目の中国渡航は、前回ほどではないにしても、やはり何か気乗りしない旅であった。前回の長春は10月のことで、飛行場のタラップからターミナルの中まで、まだ小銃を肩にした兵士の姿があった。だが今度の西安は12月であり、それを見なかったためか、いくらか安心した。
それにしても中国民航も様変わりしたものだ。国際線は今まで同様、「中国民航」と名乗っているが、国内線は地区別に分けられ、西安航空や西北航空などになった。サービスも以前よりは良くなったようだ。今回初めてであるが、機内で潤津香口糖(ルンチンシアンコウタン)をもらった。一種のハーブキャンディである。名刺ほどの大きさの袋に7-8粒ほど入っていた。程よい甘さのなかにある種の薬味が感じられるのである。
飛行機が着陸体勢に入る直前に配られた潤津香口糖は、タイミングといい、実際上の効果といい、上等なサービスと言えるだろう。日本の航空会社の国際線では、激しくなった競争のせいか、それ以外に知恵がないせいか、やたらとビールなどをふるまう。乗客もそれが高級なサービスだと考えているようだ。
「李時珍」牌の潤津香口糖には4つの効能があった。「神を提げて脳を醒まし」、「口臭を消し除き」、「喉を潤し津を生じ」、「熱を清め渇きを止める」、というもの。その背景にある薬剤が、効能の順に、羅漢果、烏梅、海藻、高山の茶と薄荷であることも、袋の裏にゴマほどの字で書かれている。それも中国語と英語で…。「純天然の薬草糖である」という結びの文句が、大いに気に入った。
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(52)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■郵便局員に対する腰痛教室(脊椎力学・姿勢・荷物の正しい持ち上げ方に関する教育)の有効性を調査した結果、腰痛発症率・欠勤日数、復職後の再発率のいずれも減少しなかったことから、腰痛教室は時間と費用の無駄であることが判明。http://1.usa.gov/SUrpwE
……従来の考え方に基づく腰痛教室(教育プログラム)が腰痛の予防に役立つという証拠がほとんどないにもかかわらず多くの企業が腰痛教室を主な予防法として採用してきたのは、腰痛にかかるコストが高く効果的な治療法がないためですが、腰痛教室を単独で全従業員に適用したとしても腰痛発症率が減少することはなく、結局は無駄な努力に終わるということです。
■3つのビスケット工場を対象に心理社会的教育パンフレット(腰痛に対する恐怖心を打ち砕く内容)の有効性を1年間にわたって追跡調査した結果、教育パンフレットを使用した工場は腰痛発症率と欠勤日数が大幅に減少したことを確認。http://1.usa.gov/VPdkFb
……これは新たな腰痛概念に基づくパンフレット群、従来の腰痛概念に基づくパンフレット群、パンフレットを配布しない群を比較した研究で、腰痛に対する誤った信念と恐怖回避行動を是正することの有効性が証明されたわけです。生体力学に基づく人間工学的介入では為し得なかったことです。
■突発性側彎症に対する保存療法(装具治療1459名・側方体表電気刺激322名・経過観察129名)に関する研究をメタ分析した結果、装具を1日23時間装着した群だけが治療に成功することが判明。短時間装着や他の方法は無効。http://1.usa.gov/PNGT4s
……成功率の内訳は、側方電気刺激群が39%、経過観察群が49%、1日8時間装着群が60%、1日16時間装着群が62%、1日23時間装着群が93%でした。前者の4群間に有意差は認められなかったことから、装具療法が有効とはいえ1日23時間装着できなければ時間の浪費でしかないということです。
■大手保険会社のデータベースから腰痛による労災補償に関するデータ(10万6961名)を分析した結果、補償請求は全体の10%でありながら補償額は全体の86%を占め、1ヶ月間休職した労災患者の50%は6ヶ月後も休職していた。http://1.usa.gov/QOScw3
……この研究では腰痛による就労障害の自然経過も明らかになりました。すなわち、1年間休職していた患者が2年以内に復職できる可能性は40%であるということです。だからこそ腰痛になってもできるだけ仕事を休まず、何が何でも急性期のうちに解決しなければならないのです。
■現在のX線所見の報告書(椎間板変性・分離症・分離辷り症・二分脊椎・腰仙移行椎・ショイエルマン病)は患者を不安にさせ、不必要な活動制限や思い込み、不必要な治療へと追い込む恐れがあるため、挿入文を追記することを推奨する。http://1.usa.gov/X086so
……【軽微な椎間板変性】この所見を有する者の半数は腰痛がないので今の症状とは無関係かもしれない。【進行した椎間板変性】この所見を有する者の40%は腰痛がないので今の症状とは無関係かもしれない。【脊椎分離症】この所見を有する者の半数は腰痛がないので今の症状とは無関係かもしれない。【脊椎分離・辷り症】この所見を有する者の半数は腰痛がないので今の症状とは無関係かもしれない。【二分脊椎】この所見を有する者の半数は腰痛がないので今の症状とは無関係かもしれない。【腰仙移行椎】この所見を有する者の半数は腰痛がないので今の症状とは無関係かもしれない。【ショイエルマン病】この所見を有する者の40%以上は腰痛がないので今の症状とは無関係かもしれない。
N E W S
限局性のがんに対して代替療法のみで治療することを選択した患者では、死亡リスクが高まる可能性のあることが新たな研究で報告された。研究の筆頭著者である米イェール大学医学大学院、イェールがんセンターのSkyler Johnson氏は「実績のある従来のがん治療の代わりに代替療法を選んだ場合、生存率が低下することを示唆するエビデンスが得られた。がん治療が生存率に及ぼす影響について医師や患者が話し合う際に、この情報を活用してほしい」と話している。
研究著者らによると、がんの代替療法にどの程度の効果があるかを検討した研究は、これまでほとんどなかったという。同センター放射線治療科准教授のJames Yu氏は「効果も実績もない代替療法のみを受けた
後、がんが進行した状態でわれわれのクリニックを受診する患者があまりに多いことから、この問題に関心を抱くようになった」と話す。
今回の研究では、米国内のがん患者のデータベースから、限局性の乳がんまたは前立腺がん、肺がん、大腸がんと診断され、代替療法のみを受けることを選択した患者280人を特定。これらの患者とがんの状態や年齢などが同様であり、従来のがん治療(化学療法、外科手術、放射線療法、ホルモン療法など)のみを受けた患者560人を1対2の割合で一致させて比較した。追跡期間は2004年から2013年までとした。(9/7 tms-net)
1日5時間以上TVを視聴し、週3時間以下しか身体活動をしないと報告した高齢者は、およそ10年後に歩行不能または歩行困難に陥っているリスクが3倍高まるようだ、という米国ジョージワシントン大学からの研究報告。
研究チームは、NIH-AARP食事と健康研究のデータを解析した。6つの州と2つのメトロポリタン地域に住む50-71歳の男女を1995-1996年から追跡調査した。研究開始時にTV視聴時間、運動習慣、ガーデニング、家事その他の身体活動が調べられ、その後約10年間追跡調査した。
研究終了までに、開始時には健康だった参加者の約30%が、移動障害を持つ歩行困難または歩行不能を報告した。データ解析の結果、1日5時間以上TVを視聴する者は、1日2時間以下の者に比べて、モビリティ障害を報告するリスクが65%高かった。この関係は、彼らの総身体活動時間およびその他のモビリティ障害のリスク因子とは関係なくみられた。
総座位時間とTV視聴時間が上昇しかつ身体活動時間が週3時間以下の場合は特に有害であったという。最も身体活動量の多い群(週7時間以上)は、1日の座位時間が6時間以下の場合、モビリティ障害のリスクがさらに高まることはなかった。他方、全ての身体活動レベルにおいて、TV視聴時間の増加は、用量作用的に歩行障害のリスクを増加させた。(9/5 tms-net)
英国のレスター大学、ラフバラ大学の研究者らによる報告で、中年期の人で歩く速度がゆっくりであるような場合には、一般的な同年代の集団に比べて心疾患リスクが高くなる可能性があるようだという研究。
2006年から2010年までに集められた英国バイオバンク情報に蓄積された50万人のデータのうち、疾患既往のなかった420,727件の成人の情報を解析した。追跡された平均6.3年の期間中、8,598件の死亡事象があり、1,654件が心疾患によるもので、また4,850件ががんによるものであった。
歩行速度が速いか遅いかと、将来がんになったり心疾患リスクからの死亡が関連しているという事が、本研究の注目すべき視点である。歩行がゆっくりなものは心疾患リスクが歩行が速いものに比べて約2倍高いようだ。この関連性は男女ともに見られ、喫煙やBMI、食事、どの程度のテレビ視聴時間があったかなどの、その他の因子とは独立して存在していたのである。この事は習慣的な歩行ペースが心疾患による死亡リスクの独立した予見因子であることを示唆するものだ。(9/4 tms-net)
アジア大陸の砂が季節風で日本に運ばれてくる黄砂が観測された翌日に急性心筋梗塞が発症するリスクが高くなることが、熊本大と国立環境研究所などの研究でわかった。研究チームが9月4日、発表した。
急性心筋梗塞は、心臓の筋肉に酸素を送る冠動脈が詰まり、突然胸などに激しい痛みが起きる。研究チームは、2010年4月から15年3月末までに熊本県内で発症した急性心筋梗塞の患者3713人のデータと、その間に41日間観測された黄砂との関連を調べた。
その結果、黄砂が飛来した翌日に急性心筋梗塞を発症した人数は、黄砂がなかった日の翌日に発症した人の数と比べて1.46倍高かった。また、急性心筋梗塞を発症しやすい要因と併せてみると、慢性腎臓病の人が黄砂観測の翌日に発症するリスクは2.07倍、糖尿病の人で1.79倍、75歳以上で1.71倍それぞれ高かった。
黄砂が急性心筋梗塞を引き起こす仕組みはわかっていないという。熊本大の小島淳特任准教授は「黄砂やそれに付着した汚染物質を吸い込むことで、体内で酸化ストレスや炎症を起こすと推定される。もともと心筋梗塞を起こすリスクの高い人は黄砂が発症を引き起こすきっかけになっている可能性がある」と話す。(9/4 朝日新聞)
医療従事者が「肥満は恥ずべきこと」という考え方に基づいて差別的な態度で肥満患者に対応すると、患者の心身の健康が損なわれる可能性があるというレビュー結果が、米国心理学会のシンポジウムで報告された。このレビューは、米コネチカット大学心理学教授のJoan Chrisler氏が最近の研究をまとめたもの。
Chrisler氏は「たとえ肥満者を励ましたい、あるいは行動を変えさせたいという意図であっても、医療従事者が失礼な態度をとったり、医療の現場で肥満を理由に恥をかかせたりすることは患者にストレスを与え、受診の遅れや治療の中断につながる可能性もある」と話している。
医療従事者の中に過体重や肥満に対するネガティブな感情があると、無自覚のうちに態度に表れ、患者は差別的な扱いを受けていると感じてしまう。「例えば、太っている患者に触れるのをためらったり、患者の体重を記録するときに首を振ったり舌打ちしたりすることだ。こうした経験が重なると、患者は偏見を持たれていると感じるようになる可能性がある」と同氏は説明している。
過体重や肥満に対する考え方は、医師の治療決定にも影響するという。例えば、過去の複数の研究で、過体重の患者に投与される抗菌薬や化学療法薬の用量は不十分である場合が少なくないことが示されている。他の研究では、医師が平均的な体重の患者に対してはCT検査や血液検査、理学療法を勧めるのに対し、太っている患者には繰り返し減量を勧めがちだという実態も明らかにされている。同氏は「病態が同じであるにもかかわらず、体重によって異なる治療を勧めることは非倫理的であり、医療過誤の一種といえる」としている。(9/1 tms-net)
米大リーグでエンゼルスのトラウト、アストロズのコレアに続いて、8月22日の試合でレッドソックスのブラッドリーも同じけがに見舞われた。ヘッドスライディングをした際に左手親指を負傷し、故障者リスト入りとなった。
米国のスポーツ医学会が2011年から15年までのメジャーとマイナーの試合で頭と足から滑る選手を比較した結果、二塁ベース上での負傷は他の塁より約4倍も多く、手をけがする確率は膝や足首をけがするよりほぼ2倍高かったという。研究をまとめたキャンプ博士はニューヨーク・タイムズ紙の取材に「(二塁へ滑り込んだトラウトのけがは)まさに典型的な例だ」と話した。
ヘッドスライディングは走塁の見せ場の一つだが、7月に復帰したトラウトや今もリハビリ中のコレアはともに1カ月半ほど離脱を余儀なくされた。チームにとっての痛手は大きい。マーリンズのイチローはけがを防ぐため頭から滑り込まないことで知られる。カブスのマドン監督は地元紙に対し「選手を守るため、禁止することを考えてもいいのかもしれない」と語った。(8/30 共同通信)
ヨガと瞑想を行う事によって多くの人がポジティヴな健康効果を得られていると報告しており、精神的にも身体的にも有益であると考えている。しかしながら、これらの活動がどのように精神と身体の健全性に影響を与えるかについては、まだまだ解明すべき点がたくさんある。南カリフォルニア大学の研究者らが、ヨガと瞑想によって脳由来神経因子(BDNF)、視床下部-下垂体-副腎系(HPA)、そして炎症性マーカーがどのような影響を受けるのかについて検討した。被験者に3ヶ月間集中的にヨガと瞑想を行わせたところ、これらの活動がBDNFシグナリング、コルチゾール活性、免疫性マーカーなどに有益な作用をもたらしただけでなく、被験者自身の主観的健康性についても良い影響を与えたようだ。
本研究では、被験者らは3ヶ月のヨガ及び瞑想の介入の前後での状態が測定された。介入にはイシャーヨガと瞑想の他、菜食性の食事法なども含まれていた。ヨガ実践は姿勢の固定、呼吸のコントロール、座位での瞑想などが、いわゆるマントラを繰り返し、呼吸し、頭の中を空にしていき身体感覚を研ぎ澄ますといった事を行いながら実施された。研究者らは精神的指標、脳由来神経因子、唾液中の概日性コルチゾルレベル、抗炎症性及び炎症性サイトカインについて測定された。さらに研究者らはマインドフルネス、没頭性、うつ傾向、不安感などの心理的変数のデータも収集し、心理的改善と生理学的変化の関連性についても検討した結果である。(8/30 tms-net)
毎日、自己体重計測をした女子大学生は、BMI・体脂肪が低下したと予想できるという米国ドレクセル大学とペンシルバニア大学等からの報告。毎日、自己体重計測をしなかった者は、減少しなかったという。
先行研究では、体重測定は、肥満者の初期の体重減少後の体重増加を効果的に防止する可能性を示唆している。今回の研究では、体重減少プログラムに登録されなかった女性において、一貫した体重計測が、体重増加を防止することが可能かどうか検討したという。
研究では、294人の女性(様々な体重)を登録し、ベースライン、6ヵ月、2年の時点で、それらのBMI・体脂肪率を測定した。BMIは身長と体重で決定、体脂肪率は二重エネルギーX線吸収法(DXA)で測定した。対象者は、自己体重計測習慣についてのアンケートを行なった。結果は、毎日の自己体重計測をした女性は、体重増加しなかっただけでなく、実際に体重減少したという。毎日体重計測をしなかった群(BMIの変化がほとんど認められなかった)と比し、2年後、BMIの変化は少なかったが、有意差が認められた。(8/24 tms-net)
夜眠るときに部屋が明るいと、うつの症状につながりやすくなるとする調査結果を、奈良県立医科大の研究チームがまとめた。明るいことで眠りの質が落ちて体のリズムが乱れるなどして、心の不調につながっているらしい。世界的にも珍しい調査で、結果は米国の疫学専門誌電子版で速報された。
奈良県明日香村や香芝市などに住む60歳以上の男女863人の協力を得て、2010年から14年にかけて寝室にセンサーを設置。寝床に入ってから出るまでの明るさを計測した。健康などに関する質問にもこたえてもらい、その後の経過を2年間ほど追った。
期間中、寝室が「暗め」(平均0.4ルクス)だった710人のうち52人、「明るめ」(同12.4ルクス)だった153人のうち21人が、新たにうつ症状を発症した。年齢や性別、世帯収入などが影響しないよう調整して分析すると、「明るめ」の人たちは「暗め」の人たちの約1.9倍、うつ症状を起こしやすかった。(8/21 朝日新聞)
■次号のメールマガジンは2017年10月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ