エンタプライズ発信〜メールマガジン【№126】 2021. 10
全国的に気温がぐっと下がってきました。同時に体を動かす機会が減ってくる時期とも言えます。現代人に冷え性が多いことはよく知られていますが、この運動不足による筋肉量の減少をはじめとして、ほかにもストレスによる自律神経の乱れ、さらに習慣的に冷たい飲み物・食べ物をとることによる内臓血流の低下などとの因果関係が挙げられます。 いまの日本人の平均体温は、60年前と比べて約0.7度も低くなっていて、男性よりも女性の方が多いとされているのは筋肉量が少ないのも原因の一つ。筋肉量が落ちると代謝が落ち、体内で熱を作る力が弱くなり、やがて冷えにつながります。また、運動不足の人が水分を過剰摂取すると、水分が体内にたまりがちになって冷えを惹起します。 冷え性の改善にあたっては、第2の心臓である腓腹部(ふくらはぎ)の筋肉が特に重要です。ふくらはぎの筋肉には、ミルキングアクションという血液の循環機能があります。この機能が衰えると、下半身に溜まっている血液が心臓に戻りにくくなるため、下半身や足先が冷えやすくなるのです。そのため、冷えを改善するには、ふくらはぎを中心としたエクササイズがお勧めです。手軽にできる「つま先立ち」を繰り返す運動が有効です。立った状態でつま先立ちをくり返します。ポイントは、踵を下ろす際、床につかないようにすること。加えて「つま先の上げ下ろし」運動を行うことも効果的です。これらを併せて行うことで、より足先の冷えの改善が期待できるほか、ふくらはぎの引き締め効果も得られます。就寝前、布団に入ると手足の冷えを感じやすい患者さんもいるでしょう。手先・足先の冷えは、眠りを妨げる大きな原因となります。今すぐ手足を温めたいというときに効果的なストレッチは、寝たまま手足の指をグーパーするだけ。まずは手の指からゆっくりと行いましょう。ポイントはパーにするときは指が反るのを意識して大きく開くことです。いずれのエクササイズも心地よい範囲内で行うことをお勧めします。
★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━★☆★
【1】 エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【2】 “こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【3】 からだの外から内を知る〜現代社会の身近な健康科学〜
【4】 円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】 N・E・W・S
連載vol.84
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
抵抗の小さい経絡(つづき)
生体の情報処理システムには微小管以外にも、もう一つ重要な端末が存在する。それは細胞の表面だ。数年前に細胞と細胞外基質のインターフェイスに関する文献を取りあげ、インターフェイスとなる物質をリストアップしたことがある。その当時、細胞の内外を結ぶ重要な物質としてフィブロネクチンが発見されていた。その後、フィブロネクチンと同様に細胞内外のインターフェイスとなるビンキュリンやタリンなどが細胞膜の中から見つかった。
経穴を種々のコンポーネントから成る集積回路として見なすなら、注目したいことは中心の空洞もコンポーネントの一部に含まれていることである。水平方向に伸びる「絡」と分枝の存在はつまびらかではないがこれらの支線が本線と周囲の組織を結ぶことによって、情報とエネルギーが運ばれることは想像できうる。ただし鍼療法の経絡そのものは、放射活性物質をトレーサーとした数多くの研究から、液体が通過できる空洞であることが確認されている。
結 論
鍼療法をはじめとする補完代替療法と、外科を含めた西洋医学的手法には、一つの共通点がある。それはどちらの手法にも「生体マトリックス」というシステムが関与しているということだ。近年の研究は、このシステムに備わった多様な半導体的特性を証明しており、これらの特性によって今日まで謎とされてきた生物学的現象を証明できると考えられる。
本項でこれまでに生物物理学の論文を示した概念などから、経絡の本質について科学的仮説を導いてみたが、生物物理学の領域では細胞質と細胞外基質の力学的性質や自己集合、あるいは葉緑体やミトコンドリアにおける電子輸送といった概念が定着しつつある。
一方、生体組織の量子力学的性質や半導体的性質は、生物物理学の領域でも最新の研究テーマであり、「従来」生物学の概念として取り込まれるには至っていない。生体の仕組みを量子力学的に解明しようとする研究は、最近になってやや行き詰っている感があるが、それは生体組織に多量に含まれる水のせいで実験系や理論が複雑になってきたからだ。水は生体の各所に存在する物質である。また水は小さな分子であるにもかかわらず、非常に複雑で多様な性質をもっている。しかし水の存在がもたらした問題は、適切な分析法の開発や生体の構造あるいは機能に対する水の役割の解明によって徐々に解決されつつある。そして生体の普遍的な物質である水の不思議な性質を解明することが、生物学や医学の多くの謎を解くカギとなるであろう。(この項つづく)
(出典『エネルギー療法と潜在能力』 小社刊2005 )
連載エッセイ 93☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
歯科の噛み合わせ基準による意味づけ問題(上編)
30代後半の男性が、1ヶ月半ほど前に問題のなかった歯を大きく削られてから、歯の痛み、吐き気、耳鳴り、顎の痛み、左肩の痛み、左膝の痛み、左前腕の痺れ感が生じたという。常に違和感があり、食べることへの恐怖感、集中力の問題が生じており、食事をした後に症状が悪化する傾向があるという。現在通院している歯科医院は、最初に歯を削られた医院から数えて3医院目で、噛み合わせなどを専門に治療するという。そこで、噛み合わせの高さを調整してもらうと良くなるという。
当院での初回の顎関節の検査で、歯を噛み合わせたり、口を開けたり、顎を左右ずらしたりして生体反応検査を行うと、顎関節に関係するすべての機能異常検査で陽性反応を示す。他にも症状を訴える膝や前腕部、さらには三半規管部においても明らかに生体エネルギーブロックの陽性反応が示されていた。
2回目の施術後には、久しぶりに食事しても吐き気がなく、腹に力が入る感じがしたという。その後、3日おきに治療を継続。5回目の施術日には「昨日から急に良くなった」と言われ、最初に来院された時よりも表情も明らかに良くなっているのがうかがえた。7回目の施術では、顎関節症に関係する誤作動反応も示されなくなっていた。
その後、歯科医での咬合の検査を受けるとのことで一旦施術を中断。当院に通院してから5回目くらいから噛み合わせの反応は消失し続けており、他の症状以外は顎に関係する症状もしばらく訴えることはなかったが、3週間ぶりで10回目の治療に来院された際に噛み合わせが悪いとのこと。当院での噛み合わせの反応を見てみると陽性反応が示されない。
通常、当院の検査で陽性反応が示されない場合、症状が消失していることであり、このように検査反応と患者の訴えが一致しない場合、何らかの「意味づけ」が関係していることが多い。そこで、患者さんに「何を基準に噛み合わせが良くないと判断していますか」と尋ねると、現在通院している噛み合わせが専門の歯科医のところで噛み合わせが良くないという判断だったらしい。そのことから、その歯科医の考えにかなり傾倒していることがうかがえた。
詳しく聞いてみると、「歯が万病の元」など、歯の噛み合わせが様々な症状に関係するという思想のもとで治療をされている先生で、オーリング検査も使っているという。この歯科の先生に限らず、噛み合わせや歯が健康のすべてかのように語ることを聞くことがあるが、様々な施術法を長年研究してきた一人の治療家として、いささか危ない思想に思える。
カイロプラクティックの業界においても第1頚椎のバランスがすべてかのように語るカイロプラクターも少なくはない。あるいは、病気の原因は歯の金属の詰め物によると主張する歯科医もいる。しかしながら、そのような機械論的な思想には矛盾がたくさんある。 噛み合わせの問題の多くは、神経系を含む様々な生体エネルギーブロックや心身のバランス異常の結果であり、多くの場合は主たる原因ではない。
(下編へつづく)
からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜
安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)
4)睡 眠
a)眠りのリズム(つづき)
肉体の疲労はレム睡眠において回復されると言われ、脳の疲労は深い眠りの段階、すなわちノンレム睡眠でなければ回復されないと言われています。考えてみると、フロイトは「夢の中にこそその人の心の奥底に潜んでいる深層心理が現れる」としました。先に述べたアルファ波の時期というのは深層心理を浮き出し、脳や神経、疲れた肉体を洗濯する時期なのかもしれません。
また人間工学では、人が一晩に打つ寝返りの回数は20‐30回と推測されています。地震計の原理を応用した装置を用いた実験によって、人が睡眠中に全然動かない時間は7‐12分、平均して11分30秒と推定されています。言い換えれば、人は睡眠中、多かれ少なかれ体を動かしながら眠っていることになります。そしてこのような時期は、ある程度寝返りを打ったり、緊張したりすることによって肉体の洗濯をする時期ということはできないでしょうか。筆者は、「眠り」とはもっと複雑なものであり、表裏一体となって脳や神経、そして肉体の疲労の回復を図るもののように思うのです。
b)「眠り」のリズムの不調
睡眠〜目覚めなど、24時間を周期とする概日リズム(circadian rhythm)を司る中枢である「生物時計」は、視神経(視束)交叉上にある視交叉上核に存在することが1972年に米国の医学チームによって証明されています。
この生物時計が刻むリズムは、地球の自転によって明暗が交代することに関係していて、実際には24時間より長くなるため、睡眠相は後退し、夜更かしをしがちになります。そうした睡眠〜目覚めのリズムの位相の後退を、睡眠相後退症候群と呼びます。この場合、目覚めのあと2600ルクス以上の白色蛍光灯の強い光を1時間ほど浴びせる高照度光療法を継続することによって、生物時計も次第にリセットされるようです。
ただ、もともと不眠を訴える人の多くは、床についてから寝つくまでの時間である入眠潜時が長かったり、途中で目覚める中途覚醒の回数が多かったりすることを自ら過大評価してしまっている場合が多く、実際の総睡眠時間は一般の人とほとんど差がないと言います。高齢者などで外見上睡眠時間に差があるように見受けられる場合も、実際には昼間の居眠りなどにより、朝早く目覚めてしまう早朝覚醒が起こっているだけで、睡眠時間に大差はないということです。
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
インフォームド・コンセント
倫理規定:
私たちが以下のワークを行うためにはクライアントからのインフォームド・コンセントが必要です。
1)基本的なトリートメントや私たちが施術するマニュアル・セラピー
2)クライアントの会陰部や肛門または女性の胸部周辺へのワーク
3)クライアントにとって敏感だったり、特定のクライアントに症状を誘発させるような身体の部位やその付近へのワーク
4)契約にある、もしくはクライアントが私たちから受ける施術などに期待しているものとはまた別のワーク
すなわちインフォームド・コンセントを得るということは、クライアントが私たちのワークについての効果や副作用について知っていることを意味します。例えば、身体が自然に治るときは、症状は良くなる前に、一度悪化するということ(好転反応)を彼らは伝えられていなければなりません。また私たちがある特定の治療を行う理由や、どうして敏感な身体の部位に施術するのかという理由をクライアントは知る必要があります。そして彼らはそのときに、私たちの説明を理解できるような状態でなければなりません。例えば彼らが深く変容意識に入っている場合は理解できないかもしれません。
履 行:
施術者の中には、ワークを始める前に新しいクライアントから書面で同意書をもらう人もいます。その同意書には、ワークの一般的な効果の説明や、また効果の保証はないことを確認したり、これは医療行為ではなくまた診断も行わないという内容などが書かれています。その書類にクライアントに署名してもらえれば施術者にとって防衛になります。その書類は法的な効力は持たないのですが、訴訟を防止する効果がありうるのです。
最初に質問票へ記入してもらうインタビューのときに、書面か口頭でワークの禁忌についての話をしておくべきです。また場合によっては会陰部周辺をワークするなど、クライアントを脅かす部位にワークするときは、事前に説明して同意を得ておくようにしましょう。さらにあなたが事前に同意した方法以外のやり方を行使するときは、その方法と意義を説明してからトライアルすることを勧めます。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The Educated Heart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )
N E W S
コロナウイルスのパンデミックにより、うつ病や不安障害に苦しむ患者の数は世界で4分の1以上増加した。こうした論文が権威的な医学誌「ランセット」に掲載された。
論文は、2020年に世界でパンデミックが起きなかった場合、うつ病患者の数は1億9300万人になったはずだが、実際には現在、その28%増の2億4600万人に達していると指摘している。
不安障害の患者数は、予想の2億9800万人を26%超える3億7400万人となった。性別で見ると女性の方が心理的な問題をより多く抱えており、重症のうつ病が3500万件、不安障害の場合、5200万件近くを占めている。また若年層でもうつ症状の増加が見られている。(10/16 Sputnik日本)
パソコンに長時間向かうとき、メガネに小さな装置を付けるだけで、姿勢が良くなる――。東北大学発のベンチャー企業「weCAN」(仙台市青葉区)が、肩こりなどに悩む人の姿勢改善を促す装置を開発中だ。今年中の商品化をめざしている。その名も「美姿勢メガネ」。フレームに親指の先くらいの部品(8.4グラム)を外付けすると、センサーが頭の角度やパソコン画面との距離を測り、背骨の角度を推定。連動するアプリをスマホやパソコンにダウンロードしておけば、無理のない姿勢か、猫背になっていないか、リアルタイムで確かめられる。蓄積したデータをもとに、姿勢の点数もつけてくれる。
悪い姿勢を感知すると、使っているパソコンの画面を赤くして見えづらくするモードもある。仕事を一時中断させ、「背筋を伸ばして!」と警告するしかけだ。発案者は、同社代表の高橋佑生さん(27)。東北大学工学部在学時の2017年に開発にとりかかった
きっかけは、所属するNPOで子どもたちにプログラミングを教えていた時、多くの子が前かがみでパソコンに熱中していたこと。「注意しなくても、自発的に姿勢を良くする仕組みをつくれないか」と考えた。20年3月からは、東北大学医学部整形外科教室の協力も得ている。
日頃から肩こりに悩む記者(23)が、試作段階のものを実際に使ってみた。装置は軽く、違和感はない。横にアプリを起動させたスマホを置き、いつものようにパソコンに向かうと、スマホに「首に負担がかかっているかもしれません。姿勢を確認しましょう」との赤い文字。少し頭を上げると、「よい姿勢を保っているようです」と青い文字になった。ただ、ちょっと油断しただけで「悪い姿勢になりかけていませんか?」と、黄色で促される。
同社では今後、背骨の角度の累積データから病気のリスクを算出する仕組みも実用化したいという。高橋さんは、「背骨の健康は今まで開拓されていない分野。一大市場を創出したい」と意気込んでいる。(10/15 朝日新聞デジタル)
自由時間は多ければ多いほどいいと思いがちです。でも、実はそうでもないという研究結果が報告されました。Journal of Personality and Social Psychologyにカリフォルニア大学の研究グループが発表した論文によると、「自由時間は多過ぎても少な過ぎても、主観的なウェルビーイング(well-being:幸福感)は高くはならない」のだそうです。
では、自分で自由に使える時間がどのくらいあればいいのか、気になるところです。この研究は実に大規模な調査で、まず2万人を超える人を対象にして、1日の過ごし方と主観的ウェルビーイングの関連を検討しました。 1日のうち2時間までは、自由時間が長くなるほどウェルビーイングは高まるのですが、それを超えると横ばいになり、5時間を超えると逆に有意に低下してしまうのだそうです。
さらに研究チームは、1万3000人余りを対象に、自由時間と生活満足度の関わりを分析しました。すると、ある一点までは自由時間が多くなるほど満足感は上がるのですが、それを超えると満足感との相関はなくなることがわかりました。つまり、単に長くてもだめなんですね。
この研究では1日の自由時間が15分、3.5時間、7時間与えられたというイメージをしてもらい、楽しみや幸福、満足感をどの程度感じられるかという想像して答えてもらったそうです。極端に少ない15分と、極端に長い7時間では、適度な3.5時間に比べて幸福感が低かったのです。少ない自由時間だと人はストレスを感じる一方、長くても「生産性が低い」と感じてしまい、幸福感が低くなるのです。もう一つ興味深いことは、生産的な方法、例えば運動や趣味などで自由時間を過ごす人は、自由時間が長くても短くても同じくらいの幸福感を得られるのに対し、非生産的な方法、例えばネットやテレビで時間を費やす人は、長い自由時間だと幸福感を得られなくなるということです。自分が充実感を感じ、自分の可能性を拡げることを楽しめる人は自由時間が長くても幸福感が得られるけれど、そうでない場合は、長すぎる自由時間は持て余してしまうと言えそうです。(10/13 時事通信)
国立国際医療研究センターは10月11日までに、新型コロナウイルスに感染した人の4人に1人に半年後も後遺症といわれる、なんらかの症状がみられたとのアンケート結果を発表した。女性の方がだるさ、味やにおいの感覚の異常、脱毛が起こりやすい傾向があった。
アンケートは今年4〜6月に新型コロナの感染歴のある人を対象に実施。回答が
あった457人を分析した。だるさや味覚、嗅覚の異常、呼吸時の苦しさといった後遺症は、コロナに感染し、発熱などの症状発症直後から続くケースが多かった。回復後には脱毛や集中力の低下、記憶の障害、うつ症状などを訴える人が目立った。発症または診断から半年後にも約26%に何らかの後遺症がみられ、1年後も約8%に症状があった。
どのような人に後遺症が出やすいか調べた結果、女性はだるさの症状が出るリスクが2倍と高いことが分かった。味覚や嗅覚の異常は女性のほか、若い人、やせている人に出やすかった。
別の研究では、ワクチン接種を完了した人は症状が残りにくいという報告があるといい、同センターの森岡慎一郎・国際感染症センター医長は「発症や重症化予防だけではなく、後遺症を予防できる可能性もあるので接種を受けてほしい」と話している。(10/12 共同通信)
「若者は代謝が活発で、中高年になると代謝が落ちるので太ってしまう」と言う人がいますが、そうした一般的なイメージに反して「エネルギーの消費は20代の若者も60代の人もほとんど変わらない」との研究結果が、アメリカ・デューク大学の研究者らによって発表されました。
加齢に伴う代謝の変化に関する研究はこれまでにも行われてきましたが、そうした研究の多くは安静時の消費カロリーなどを元に算出した基礎代謝、つまり生きるのに最低限必要なエネルギーを計測するものがほとんどでした。しかし、人間はただ呼吸をしたり心臓を動かしたりするだけでなく、運動や思考などの活動により多くのエネルギーを消費しているため、生存のために使っているカロリーは消費カロリー全体の50〜70%程度に過ぎません。
そこで、デューク大学の研究者であるハーマン・ポンツァー氏らの研究チームは「二重標識水法」という手法を使って、あらゆる年齢層の人々が1日に使う総エネルギー消費量を調べる研究を行いました。
ポンツァー氏らが、二重標識水法を使って世界29カ国に住む生後1週間から95歳までの6600人の消費エネルギーを調べたところ、20歳から60歳までの年齢層では、消費カロリーがほぼ横ばいなことが判明しました。今回の研究ではさらに、人の代謝は一生の中で次の4つの段階に分かれることも分かりました。
1.乳児期からエネルギー消費が急上昇し、1歳の誕生日を迎える頃には成人の50%以上に達する。
2.1歳から20歳までは年に約3%ずつ代謝が低下する。
3.20歳から60歳までは代謝の変化が安定する。
4.60歳以降は年に約0.7%ずつ代謝が低下する。
また、これまでは男性に比べて女性は代謝が少ないと考えられてきましたが、体格や筋肉量を補正した結果、男女間の差はないことも判明しています。
研究チームは、人間の発達と加齢に伴う代謝の変化を明らかにした今回の研究により、子どもや高齢者に対する薬の投与量の設定や年齢に応じた健康管理がより適切に行えるようになるとしています。(9/20 Gigazine)
次号のメールマガジンは2021年11月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ