エンタプライズ発信〜メールマガジン【№112】 2020. 8

終日に及ぶ酷暑に慣れてきたとはいえ、マスク付随の日中の行動は体にこたえます。全国で熱中症による緊急搬送が際立っています。
熱中症は「労作性熱中症」と「非労作性熱中症」に分類されます。労作性熱中症の患者背景としては若年男性のスポーツ、中壮年男性の労働(建設業、製造業、運送業などの方)、非労作性熱中症では独居の高齢者が典型的です。
労作性熱中症の場合には、若く、集団で活動していることが多く、基礎疾患もなく早期に発見、介入できるため予後は良好ですが、非労作性熱中症は、自宅や出先でいきなり発生することが多く、発見が遅れ、治療に難渋することがあると言われています。
実際、救急医学会の熱中症実態調査において、熱中症の死亡の危険因子は、1)高齢、2)屋内発症、3)非労作性熱中症でした。治療院やクリニックに来院した患者さんの容態がおかしいときは、初期評価をきちんと行わなければ見誤ります。とくに重篤化しやすい非労作性熱中症の高齢の患者さんには注意が必要です。そのため毎日、暑さ指数(WBGT)を確認する癖をつけておきましょう。熱中症の発生に関与する因子は気温だけではなく、湿度・風速・日射輻射です。とくに湿度は大きく影響し、これらを実際に計測し算出して出てきた数値がWBGTなのです。また治療中にこむら返りや頭痛、倦怠感などを自覚した場合には、速やかに環境を改善し(店舗内の涼しい場所へ移動)、水分だけでなく塩分を摂取するように対応しましょう。
環境省熱中症予防情報サイトでは、暑さ指数(WBGT)を都道府県、地点別に確認できます。朝のニュースなどで危険性は日々報道されていますが、それでもなお発生しているのが熱中症です。自ら確認し意識しておくことが必要と考えます。

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【1】新連載 ❐ からだの外から内を知る
  〜現代社会の身近な健康科学〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 =休止=
【6】N・E・W・S

新連載

からだの外から内を知る 〜現代社会の身近な健康科学〜

安達 和俊 (醫王堂カイロプラクティック院長・DC)

新型コロナウイルス感染禍がつづく昨今ですが、連載の皮切りに身近な保健・健康として細菌をはじめとする微生物による感染症の基礎知識を少々記しておきたいと思います。感染しうるさまざまな疾患の中でも、特に食と呼吸と性という個体維持および種族保存の本能に関わる身近な疾患を、それらを引き起こす微生物の側から紐解いていきます。

1)微生物の種類

よく細菌とウイルス(virus)を混同する人がいますが、両者の間には2つの大きな違いがあります。1つは大きさの違いであり、いま1つはそれ単独でも生存しうるか、ほかに寄生しなければ生存しえないかの違いです。

a)細菌(bacteria)の特性と種類

細菌は、光学顕微鏡でも観察することができ、原始的な細胞から成っており、ほかの細胞と同じようにそれ単独で2つに分裂し増殖することができます。その種類は、次のように分かれます。
・球菌(coccus)
 直径1μm(マイクロメーター)すなわち1000分の1mmほどの丸い菌で、これには単一の単球菌、2つ連なった双球菌、団子のようにいくつも連なった連鎖(状)球菌、そしてブドウの房のように無数に集まったブドウ(状)球菌があります。
・桿菌(bacillus)
 長さ平均2-5μm、幅平均0.2-0.5μmほどの細長い菌で、これには単一の桿菌のほかに、いくつも連なった連鎖(状)桿菌があります。
・螺旋菌(spirillumおよびspirochuters)
 長さ、幅、螺旋数の一定しない螺旋状の菌で、これには通常の螺旋菌のほかにビブリオ(vibrio)と言って、この科の一属でありながら短い湾曲した桿菌のように螺旋の最初の一巻きしかないものもあります。例えば、腸炎ビブリオ菌やビブリオ・コレラ菌(vibrio cholerae)などがそれで、特に後者はその形状の特徴から、発見当初コンマ菌とも呼ばれていました。

b)ウイルス(virus)の特性と種類

ウイルスは細菌と同じように子孫をつくるための遺伝情報を担う核酸はもっていますが、この核酸がこれを保護するタンパク質の外皮、すなわちカプシド(capsid)に包まれただけのものです。そしてこのカプシドは3-6個のペプチドより成るカプソメア(capsomer)がいくつも集まってできています。また中心部分の核酸とこのカプシドを合わせ、その複合物を指してヌクレオカプシドとも呼びます。あるいはインフルエンザウイルス(influenza virus)のように、この外皮の外側がエンベロープ(envelope)と呼ばれる膜につつまれているものもあります。
エンベロープは脂質の2重層より成り、その表面には、そのウイルスの性状である抗原性・抗体による中和・細胞性免疫、そして宿主細胞へ吸着などに関与する糖タンパクでできたスパイクがあります。
いずれにせよ、電子顕微鏡でなければ観察することができず、ほかの細胞に寄生しなければ増殖することができません。それどころか、それ単独で外界に放置されれば数分から数時間で死滅してしまいます。(この項、次号へつづく)


連載vol.70

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

生体マトリックスと鍼療法

—-鍼療法の一般的な経絡図には、主たる12の経絡の表面的な道筋が示されているだけだが、経絡とはもっと複雑に絡みあったネットワークであり、全身の至る場所、あらゆる組織、そして個々の細胞へと伸びている。つまり樹木と同様に、幹や大きな枝から次々と細い枝に分かれ、樹木全体を覆う葉の先端に至るまで、枝分かれを繰り返しながら連続しているのである。(デッドマン、アル・カファッジ、ベーカー 1998)

少し前の医学者たちは、鍼療法で認められる現象は非科学的であるとか、常識外れであるという理由で、この治療法を現代医学のパラダイムから外れた手法と見なしてきた。そのような状況が急速に変化しはじめたのは単純な理由による。つまり鍼療法を好む人が多く、ほかの治療法では治せなかった慢性的疾患が鍼療法で改善されたからだ。さらに最も保守的な科学者までが、今日の生理学的知識や医学的知識は不完全で確固たる根拠がないと認め始めている。科学史が証明するように、現在の非常識が明日の常識になることは少なくない。

本書で紹介してきた大方の研究成果は、鍼療法の原理につながると言えるだろう。人体を一つのエネルギーシステムとして扱う人々には、経絡が何者であるかを逐一説明する必要はない。経絡の原理はすでに一つのパラダイムとして、多種多様な肉体的および精神的疾患に対する各種の治療法に応用されている。しかし鍼療法が主流医学的手法として認められるのは、現代の生理学や生物物理学で経絡というシステムを説明できた方がいいだろう。私の見解では、経絡をある程度科学的に説明することは可能である。その説明を導き出す中で、生体の構造や機能に関する新事実が必ず明らかになることだろう。しかし「気」のあらゆる性質をすべて科学的に説明できるようになるには、まだまだ時間がかかるに違いない。

鍼療法の理論には、科学的手法で試すことのできる重要な仮説がいくつも含まれている。それらの仮説が重要なのは、医学的に極めて深い意味を持つ現象、とりわけ生体の防御や修復、あるいは自己と異物の識別に関わる調節生物学的メカニズムと関係があるからだ。このようなメカニズムを知ることによって、病気や組織の損傷を予防したり回復させたりすることが可能になる。また、肉体的や精神的な面だけではなく、経済的にも私たちを苦しめる「慢性的変性疾患」を理解することにもつながるだろう。

私たちが最終的に目指すのは、種々の補完代替療法の原理を明らかにする中で、生命のメカニズムをより深く理解し、その知識を何らかの形で医療や能力向上に生かしていくことである。すでに鍼の神経ペプチド系に対する作用が認識され、その作用を生かして薬物中毒の治療や薬物からの離脱に鍼療法が応用されているが、これは伝統的医学と現代医学の効果的な融合の1例と言えるだろう。そしてこのような形の融合や協働はこれからも増えてくるはずである。(出典『エネルギー療法と潜在能力』2005 )


連載エッセイ 79☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「技」を極める

手技によって行われる施術は徒手療法、あるいはマニピュレーションと呼ばれています。カイロプラクティック、整体、オステオパシーなど様々な施術法があります。アクティベータ・メソッド(AM)もカイロプラクティック大学で教えられているテクニックの一つです。筋骨格系の痛み症状に対しては即効性のある効果的な施術法です。一見シンプルに思える施術法ですが、その「技」には奥深いものがあります。最近ではオンラインによる動画で学ぶこともできるようになっていますが、「技」をマスターするためには、実際に体験し、多くの熟練者の技術を直接体感することが重要だと思います。「見て学ぶ」ことも大切ですが、その情報「インプット」した後は、実際に行って「アウトプット」し、他者からのフィードバックをもらい「微調整」をすることがさらに大切になります。

「見て」→「体験して」→「フィードバックを受けて修正」この一連の流れを繰り返し継続して、自分なりの「コツ」を掴むことが上達の近道です。コツの掴み所は人それぞれですが、それは体験を通じてのみ得られるものなので、マニュアルを読む、動画を見るだけで得ることは難しいでしょう。例えば、AMの下肢長検査のポジション1では、術者の立ち位置、手の当て方、頭上方向への圧の加え方など説明はマニュアルに記載されているので分かると思いますが、踵骨部から頭上圧をゆっくりと加えて、反応下肢側の緩みが感じられるという感覚、軸圧刺激によって神経関節機能異常の神経学的反応を引き出す「コツ」は実際に体験しなければ分からない「感覚」だと思います。これは、単にどちらが短いとか長いとかの単純な「見方」ではありません。神経学的生体反応の「感覚」をご自身の臨床現場で繰り返し体験することで、自分なりの「コツ」として掴めるようになるのだと思います。

まずは「基本の型」を習得し、次に実際の「生体反応」を読み取る「技」を習得することです。反応が読み取れる段階に入ると、どの部位の関節、あるいは筋肉に神経学的機能異常が生じているか否かが分かるようになるので、結果的に筋骨格系の痛みなどの施術効果が出せるようになります。ただし、しっかりと安定したコンタクトが出来ていることなどの臨床的なスキルも当然のことながら必須条件になります。このコンタクトの仕方も、教科書的には〇〇パンドという数字的な記載はありますが、同じ年齢の大人でも体格は異なりますし、筋の緊張度、過敏度は人それぞれに異なります。アクティベータ器による圧の加え方において、科学的なデータから導き出された基準圧を参考にすることは必要ですが、臨床では臨機応変に目の前の患者に合わせてコンタクトすることが大切です。このことも実際に「経験」を積み重ねることによってのみマスターできることだと思います。

ある程度AMの「技」がマスターできると、患者さんにも喜ばれるようになり、治療家としての自信がついてきます。治療家としての自信は大切なのですが、中途半端な「技」になると、我流へと傾いて、偏った反応でしか読み取れなかったり、偏ったコンタクトによって、引き出せるはずの結果が出せなかったりというような状態に陥ることもあるようです。これはある意味、自信過剰になって、知らず知らずのうちに自分の「技」の盲点に気づかないままになっていたといえるでしょう。そして、結果が引き出せない原因を自分の技量ではなく、テクニックのせいにしてしまうのです。厳しいことを言うようですが、これは私が20年以上アクティベータ・メソッドを教える立場を継続させていただいた経験に基づく見解です。もっと粘り強く真摯に「技」を極めてほしいと願っています。真摯に継続すれば必然的に身に付く「技」です。そして、ある程度の「技」を極めれば、治療家としての一生の財産になると私は思います。

連載…19

円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル

Nina McIntosh /廣瀬寛治・訳

グループの力

施術者の中にはスーパーバイザーがいるいないにかかわらず、経験や知識をシェアするために同僚と集まることを好む人たちがます。概して彼らは自分たちの文化において理解度や知名度も低い業種の場合では、同僚・仲間からのサポートが必要であると信じています。
私たちの多くは、ほかのマニュアル・セラピストとやり取りを行ったり、激しく議論をしたりしていません。私が開いたワークショップで、ボディワーカーたちが「たぶんこんなことが起こっているのは私だけだと思いますが…」と前置きをしながら質問をし状況を説明しはじめるのですが、それらはクライアントがセッションに遅れて来たり、直前にキャンセルの連絡をしてきたり、クライアントが性的ないたずらをしてきたなどといった、どの施術者も経験してきているものでした。他の施術者も同じようなジレンマに悩んでいるということを知ると内心安心できる心理の証左です。

またグループで集まると、あなたがバウンダリー(プロとしての存在や立場、関係を取り囲む防護壁)を決めたりクライアントに対するリミットを学んでいるときに、尊敬する同僚やそのほかの同僚たちと話をすることができるようになるので、外部からのサポートやアイデアを得て、癖のあるクライアントや一筋縄ではいかないクライアントに対処する場合に、防御を固められるようになります。
特に営業を始めてから最初の数年は、いつ自分が取り返しのつかない状況にあるのか、もしくはクライアントが必要としているものがあなたの技術で与えられるものではなかったり、あなたの専門領域の範囲を超えていることに気がつかないことがあるかもしれません。また自分の直感を信じ切れず危険信号を見逃すことだってありえます。

グループの同僚たちとざっくばらんに、偏見を待たず、心を開いて語り合うことで、心が安らぎ、自信をつけるきっかけになり、また営業面においても非常にプラスになります。このグループワークを長く続けている人たちは、お互いに助けあい、高めあえる同僚たちで構成されたコミュニティの一員になりきっているのです。
(出所:『エデュケーティド・ハート』The EducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )

 N  E  W  S

NEWS ■ 日本人の自尊心、高齢になるほど高くなる

東京理科大学は8月6日、青年期から老年期における自尊心の年齢差について大規模な調査を実施し、年齢が高い人ほど自尊心が高いことを解明したと発表した。研究成果は「Frontiers in Public Health」に掲載されている。
自尊心は、生涯を通して常に一定ではなく、発達と共に変化する。これまで米国を中心に多くの研究が行われ、自尊心は児童期に高く、青年期に低下し、成人期に上昇し続け、50代・60代頃にピークを迎えてその後低下することが示されている。日本においても、自尊心の一要素である自己好意が、児童期から60代まで同様の年齢差を示すことが報告されている。
研究グループは、70代と80代の高齢者を含む、日本の大規模かつ多様なサンプルを対象に、自尊心の両側面(自己好意と自己有能感)を6つの調査で測定し、分析した。調査は16歳から88歳までの6113人(男性2996人、女性3117人)から回答を得た。その結果は、自尊心は青年で低く、成人から高齢者まで徐々に高くなっていた。青年期から中年期までの変化は欧米の先行研究と一致していたが、50代以降でも自尊心は低下しなかった。これにより、自尊心の発達的軌跡が文化によって異なる可能性が示唆された。欧米における中年期以降の自尊心の低下の一因として、自分の誤りや限界を認めるなど、自己に対する謙虚な見方を取るようになることが挙げられている。一方日本では、中年期以前から自己に対する謙虚な態度を表明することが報告されているため、自尊心の低下が見られなかった可能性がある。他にも、年功序列制度や敬老の文化など、文化差を生み出し得る要因について今後詳細に検討を行う必要がある。自尊心の年齢差・発達的軌跡を検討することは、学術的・理論的意義だけでなく、実践的・社会的な意義も備えている。(8/14 QLifePro編集部=部分)

NEWS ■ 社会・心理的要因がもたらす健康リスクは侮れない

病気の発症は単一の原因だけによって生じることは珍しく、一般的には複数の原因が時間をかけて病気の発症リスクを高めます。たとえば、喫煙は肺がんをもたらす原因のひとつといえますが、数年ほど喫煙をしたところで、すぐに肺がんになるわけではありません。喫煙だけでなく、遺伝的要因や生活環境など、さまざまな要因が、ゆっくりと時間をかけ、複雑に影響を及ぼし合いながら肺がんの発症リスクを高めるのです。
死亡リスクに影響を与える要因はさらに複雑といえますが、具体的にはどんな要因がどれほど影響を及ぼしているのでしょうか。米国科学アカデミー紀要の電子版に、死亡リスクに影響を及ぼす因子と、その関連性の強さを検討した研究論文が6月22日付で掲載されました。 この研究では米国に在住の1万3611人(平均69.3歳、女性58.6%)が対象となり、6年にわたり追跡調査が行われています。
その結果、死亡のリスクは、喫煙者で1.91倍、過去の喫煙歴で1.32倍、過度の飲酒歴で1.36倍に増加したほか、離婚歴で1.44倍、失業歴で1.32倍、経済的困窮で1.32倍、人生に対する満足度が低い人で1.31倍、否定的な感情を有する人で1.23倍、統計的にも有意に高いことが示されました。この数字が示しているのは、喫煙歴や過度の飲酒のような、よく知られている健康リスク要因と、一見すると健康とはあまり関係のなさそうな社会・心理的要因が、ほぼ同レベルの健康リスクである可能性です。人の健康状態は医学的なケアや生活習慣だけでなく、生活を取り巻くさまざまな社会環境や心理状況によっても変化しうるといえるでしょう。(8/9 日刊ゲンダイデジタル・青島周一/勤務薬剤師)

NEWS ■ 歩く時の足音が大きいのは足首の機能低下

筆者の父は85歳。5年ほど前から歩き方が変わってきたのが気になっている。歩幅が狭く、前につんのめるようにして歩く。足音も以前より大きくなっており、パタンパタンというような音をさせるのだ。「歩くとき人間は地面を蹴って進んでいきます。ところが年齢を重ねると、蹴らずに足で地面を押すようにして歩いてしまう人が多くなる」と話すのはアスレチックトレーナーの三田貴史さん。都内の整形外科でリハビリ指導を行っており、多くのお年寄りと接する日々を送っている。筆者の父のような歩き方になってしまうのは、足首の柔軟性が関係しているそうだ。 「足首の柔軟性が衰えてしまって、ちゃんと動かせていない人が多いんです。歩幅が狭くなればなるほど、少し歩いただけで疲れたり、体の動きも小さくなるため活動量も減ってしまう。体にとっていいことはありません。しっかりと足首を機能させましょう」。
足首の柔軟性をアップさせるために、日常生活で簡単にできる動きがある。まず椅子に座って、片足を前に伸ばす。この時、足の指は天井に向ける。なるべくゆっくりと大きな円を描くことを意識して、足首をぐるりと一周動かす。柔軟性がない人は足がつりそうになることもあるので、様子を見ながら、時計回り、反時計回りを各10回ずつ、1日2セットを目安に。「動かしづらく、ゆっくり回せないところがあるかと思います。でもそういう箇所こそ、意地でもゆっくりと回してください。動かしづらいからといって速く回すことのないようにしましょう」。足を前に伸ばしづらい人は、太ももを両手で抱えるようにして行ってもいいそうだ。楽なやり方でチャレンジしたい。(8/6 日刊ゲンダイデジタル=部分)

NEWS ■1日8000歩で「死亡リスク半減」 米国で研究報告

1日の歩数が多い人ほど死亡リスクが低いことが、40歳以上の米国人を対象とする観察研究で明らかになりました。1日4000歩の場合と比べ、6000歩の人では死亡リスクは低下し、8000歩ではほぼ半減していました。一方で、歩く速さは死亡リスクに影響しないことも示されました。
米国立がん研究所などの研究者たちは、米国の一般的な40歳以上の人々を対象に、1日の歩数、歩行強度(1分当たりの歩数、すなわち歩く速さ)と、死亡との関係を調べることにしました。分析の対象となったのは40歳以上の米国の成人のうち、最長7日間、加速度計を腰につけて行動する依頼に応えた4840人です。それらの人たちについて、2015年12月まで死亡の有無を追跡しました。被験者の平均年齢は56.8歳、54%が女性で、36%が肥満者(BMI30以上)でした。加速度計を装着した期間は平均5.7日間、1日当たり14.4時間で、1日当たりの平均歩数は9124歩でした。
1日当たりの歩数が少ない人に比べ、歩数が多い人には、以下の特徴がありました:年齢が若い、BMIが低い、食事の質が低い、学歴が高い、飲酒者が多い、併存疾患(糖尿病、心臓病、がんなど)の有病率が低い、運動制限のある(歩行の継続が困難または杖などが必要)人が少ない、健康状態が良くないと申告した人が少ない。喫煙率には差は見られませんでした。
平均10.1年の追跡期間中に、1165人が死亡していました。うち406人が心血管疾患(脳卒中や心筋梗塞など)による死亡で、283人はがんによる死亡でした。結果に影響を与える可能性のある、年齢、性別、人種、学歴、食事の質、飲酒習慣、喫煙歴、BMI、自己申告された全般的な健康状態や、運動制限の有無、併存疾患の有無などを考慮して、歩数・歩行強度と死亡リスクの関係を分析しました。
1日の歩数が4000歩の人を参照群とすると、2000歩の人の総死亡リスクは高く、6000歩から1万6000歩までの人の死亡リスクは低くなっていました。心血管疾患による死亡、がんによる死亡も同様で、いずれも、歩数が多い人ほど死亡リスクが低下する傾向が認められました。(8/3 日経Gooday=部分)

NEWS■花の画像を数秒見るだけでストレスは軽減される

花の「癒し効果」が科学的に証明された。ディスプレイに表示された花の画像を見るだけでも効果があるという。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の望月寛子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Environmental Psychology」オンライン版に掲載された。
最初に行ったのは、花の鑑賞による血圧や情動への影響を調べる実験。対象者は35人(平均年齢24.4歳)。ディスプレイに不快な画像(事故場面、ヘビや虫など)を6秒間表示した後、花、青空(心地良い画像)、椅子(不快でも心地良くもない画像)の3種類の中から一つを6秒間表示し、その後26秒間は何も表示せず、この間の血圧と情動スコアの変化を調べた。これを一人に対して花、青空、椅子を各10回、計30回、ランダムに施行しその平均を評価した。情動スコアは最もネガティブな感情を「-3点」、最もポジティブな感情を「+3点」とし、対象者自身に採点してもらった。
その結果、血圧は不快な画像が表示されている6秒間に上昇、画像が切り替わると低下し、花の画像が表示された時の低下幅は最大3.4%に達した。花の画像が表示された時の平均血圧は、青空や椅子の時に比べ約2mmHg有意に低く(P<0.05)、有意差のある状態が8秒間続いた。情動スコアについては、不快な画像から花または青空に切り替わった時に有意に上昇し(いずれもP<0.01)、マイナスからプラスに転じたが、椅子が表示された場合はマイナスのままだった。
研究グループでは、そのメカニズムとして、花の画像を見ることにより、ストレスから意識をそらす「ディストラクション効果(気そらし効果)」と呼ばれる作用が働いた可能性を考察している。なお、今回の研究には花の画像を用いたが、本物の「生花」は画像よりもストレス反応の低減により効果的であることが推察される。ただし生花の観賞が、血圧や心血管疾患、うつ症状などの改善に、どの程度寄与するのかは不明だ。望月氏は、今後の検討でこれらを明らかにしたいと語っている。(7/28 HealthDayNews=部分)

NEWS ■ 花火は有害? 肺を傷つける金属を放出する可能性

花火シーズン到来だが、米国から、花火が肺にとってリスクになるという研究結果が報告された。肺を傷つけることのある有害な金属が、花火によって大気中に放出されている可能性があるという。米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのTerryGordon氏らが「Particle and Fiber Toxicology」オンライン版に報告した。
Gordon氏らは、米国で市販されている12種類の花火の成分を調査した。その結果、2種類に有害となり得るレベルの鉛が含まれていたという。「花火から放出される煙を吸い込むことが人体に長期的なダメージを与えるかもしれないというリスクは、今までほとんど注目されることがなかった」とGordon氏は語る。
本研究では、まず市販されている12種類の花火を実験室内で発火させ、放出された粒子状物質を収集し、含有成分の分析を行った。次に、この粒子状物質を希釈してマウスの生体内、およびヒトの肺組織を用いた試験管内で、その影響を調べる実験を行った。
結果は、2種類の製品で鉛の量が有害なレベルを超えていたことに加えて、5種類の製品では、細胞の損傷や死滅にもつながるプロセスである、酸化の有意な亢進が認められた。これらの花火には、鉛のほかに、チタンやストロンチウム、銅などが含まれていることが多いという。
「人々がこれらの物質に曝露される時間はわずかなものだ。しかし、日常的に吸い込んでいる大気汚染物質と比べると、有害性は大幅に高い」とGordon氏は指摘している。同氏はこの研究結果に基づき今後、各地域の保健当局と花火メーカーEPAをはじめとする規制当局との間で情報を共有し、潜在的なリスクについての注意喚起をする予定だという。
米国花火協会によると、米国民全体で1年間に1億1700万kgを超える花火が購入されているという。また打ち上げ花火は、祝日に限らず、遊園地やコンサート会場、スポーツ会場などの日常的なイベントに使用されている。(7/24 TMSnet)

NEWS ■ 運動により年間390万人の命が救われている…WHO

英ケンブリッジ大学MRC疫学ユニットのTessa Strain氏らは今回、2001〜2016年に報告された世界168カ国のデータを用いて、WHOの推奨運動量を満たしている人の割合を調べた。その結果、推奨運動量を満たしている人の割合は、クウェートの33%から英国の64%、モザンビークの94%まで、国によってさまざまであった。Strain氏らはこの運動量に関するデータを、活動的な人と非活動的な人の早期(40〜74歳)死亡相対リスクの推計データと合わせて検討し、運動によって防止できた早期死亡者数を推定した。本研究の結果は「The Lancet Global Health」7月号に掲載された。
その結果、世界的に見ると、運動によって早期死亡が15%(中央値)防がれていることが分かった。この数字は、1年当たり約390万人の命が救われたことに相当するという(米国では14万200人、英国では2万6,600人に相当)。また、運動レベルは国ごとに大きく違っていたにもかかわらず、運動による早期死亡予防効果は一貫して認められた。その効果は、特に低・中所得国で大きかった。
研究チームは、「既に身体活動によるベネフィットが得られているのに、なぜさらなる投資が必要なのかと考える向きもあるかもしれない。だが、われわれは、この研究結果を受けて政府や地方自治体が、苦しい経済状況下においても身体活動に関わるサービスを守り、維持していくことを期待している」と述べている。
新型コロナウイルスによるロックダウン中に運動を続けることは大変だが、研究グループは、毎日散歩に行く、自転車などのソーシャルディスタンシングを保ちながらできる運動をする、ストレッチやヨガで筋肉や関節を鍛える、オンラインの運動セッションに参加するなどの方法を勧めている。そのほか、ガーデニングも体の曲げ伸ばしに効果的であるという。(7/23 HealthDayNews=部分)


次号のメールマガジンは2020年9月15日ごろの発行です。

(編集人:北島憲二)


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