エンタプライズ発信〜メールマガジン【№111】 2020. 7
脅威を増すパンデミックによりマスクをした状態で過ごすという歴史上前例のない夏を迎えている私たちですが、マスク着用時の呼吸における温度の上昇、さらに外出自粛やリモートワークが続いたことによって、暑さに徐々に体が慣れる「暑熱順化」がまだ十分でないことから、この夏は熱中症にかかる人が増加する可能性が高いと言われています。総務省消防庁の統計によると、2019年の夏(5-9月)には、7万1317人が熱中症で救急搬送され、うち126人が初診で死亡しました。今年の救急搬送者と死亡者がどれほどになるかは予測できませんが、底知れぬ真夏の脅威がやってくると思うとおぞましさを隠し得ません。帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長で、同大学医学部救急医学講座の三宅康史教授の言を借りると、「マスクを着け続けていると、マスク内の湿度があることで喉の渇きを感じづらくなる可能性があり、ただでさえ喉の渇きのセンサーが衰えている高齢者は知らないうちに脱水が進み、熱中症となるリスクが高まります。マスクを外してはいけないという思いから、水分補給を避けてしまうことも脱水の一因になりえます」と語っています。また気温や湿度が上がれば当然、マスクの内外面にはウイルスだけでなく細菌やカビが繁殖する可能性が高くなってきます。冬に比べると暑さや息苦しさからマスクの表面に触る回数が増えるため、ウイルスや細菌、真菌などが付着しやすくなるためです。とはいえマスク休憩も考慮すべきです。野外や換気十分の屋内では人との距離感をとりつつ、紐に手をかけ取り外しホッと息をつくのが窮地の策と言えましょう。ともあれ、マスク着用で他人にウイルスを移すリスクを下げられるとの考えに異論はないのですが、未曽有の危機を孕んだこの夏は、マスクを着け続けることにリスクがあることも患者教育の一環としていきたいものです。
★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆★
【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜(最終回)
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う
【4】円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
最終回
老いない人の健康術 〜免疫と水素〜老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)
【 対談結語 ② 】
ミトコンドリアと免疫学の発展を願って(太田 成男)
安保先生と対談の前に「何歳であってもこれからの時代を健康に生きていくためには、病気にならないだけではなくて、元気に楽しめる気持ちをもつことがすごく大切だと思います。この対談はそのための作戦会議のようなものですね」と話しました。この作戦会議は、マニュアルではなく、一人ひとりが自分をよく知り、自分なりに対応していくということです。「少しきつめの運動」というのは、〇kmを〇時間で走るというものではありません。疲れが残らなくて筋肉痛にならないで頑張れる程度、は人それぞれです。その目安を知るには、自分の体と精神を知ることが大切ですが、それを知るには、他の人のデータを本から得るのではなく、自分を試すことです。疲れが残るならもう少し軽めにしようとか、もっと頑張れるなら少し長い時間にチャレンジしてみるか…と自分を試すことで自分がわかってくるはずです。
この対談が終わった後は、お酒を飲みながらお互いの研究生活の苦労話ができました。安保先生はいつも斬新なアイデアをもって、他の人とは少し違う視点で研究活動をしていたので、論文がなかなか受理されずに苦労した話に花が咲きました。何事も他の人とは違う、新しいことをするのは苦労が多いものです。私は理学部の化学科を皮切りに、薬学系の大学院を経て、現在は医科大学の教授です。やはり経歴も他の人とは違っているし、斬新な視点で研究を進めているので似たところがあり愉しい話でした。
科学にはワクワクと知的好奇心を満たす魅力があります。また生活の役に立てるという面も持っています。そこが芸術と異なるところです。この2つを満たす研究テーマはなかなかないのですが、ミトコンドリアと免疫はその2つを満たす魅力的なテーマです。学問のための学問よりも、生活の役に立ってこそ学問の価値も上がるものです。「科学は実用化されて光り輝く。いぶし銀も否定してはならない」が私のモットーです。ただ漫然と研究していても役に立てるところまで到達できるわけではないので、いつも役に立つにはどうしたらいいかという視点から考えていることが大切です。同時に、すぐには役に立たないかもしれないけど、がっちりと基礎を作ることを否定しては、長い目で見れば役に立つこともできません。いぶし銀も否定してはならない、はそういう意味です。
ミトコンドリアから発生する活性酸素のプラス面を残しながら、活性酸素の害というマイナスの面をどう取り除いたらいいかという視点から、2015年から水素の研究を始めました。水素は、病気や老化の根本的なところに作用しますので、非常に広い応用が望めるはずです。現在、さまざまな病気の臨床試験で水素の効果を調べていますので、将来の医療には大きな影響を与えるはずです。現在のままの医療費がどんどんかかるような状況が続けば、社会が維持できません。水素を使って、病気の予防ができ医療費を抑えることができるようになり、将来に夢のもてる社会になればと期待しています。(完)
連載vol.69
エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性
<小社編集部編>
光ファイバーシステムか(つづき)
これまでに得られている知見からすると、蛋白質を光ファイバーにたとえる比喩は単純化しすぎている感がある。微小管やコラーゲン線維はたしかに細長い中空管であるから、原理的には光を通す管となりうる。しかしソリトン(波)は組織中を伝わってエネルギーを運ぶ担体と見なす方が妥当である。光の伝わり方は一般的な線形の公式で表されるのに対し、ソリトンの広がり方は非線形の方式に従う。ソリトンがエネルギーの担体であることによって生体マトリックス中ではより高度なシグナル変換が可能になる。またたとえ生体マトリックス内でのソリトン伝導が証明されても、セント・ジョージが予測したような、電子や陽子によるエネルギー伝導が否定されるわけではない。むしろソリトンを含めた素粒子のコヒーレンスという概念には、電子や陽子の動きによる現象がすべて含まれているのである。
結局のところ、光が治癒反応を促進するのであれば、光は何らかの形で生体マトリックス中の細胞に直接働きかけているに違いない。そして細胞同士の「囁き」を促し、細胞が生体中を動きまわれるようにするのである。
現時点の生物学研究の結果からは、光が生体コミュニケーションシステムに直接作用を及ぼしていることが窺える。光はソリトンの流れを促し、エネルギーと情報の両方を伝えるソリトンは、生体の蛋白質組織を速やかに移動する。このソリトンの流れによって生体マトリックスのエネルギーおよび情報伝達経路が開かれ、活動の開始・終了が伝えられたり、協力が促されたりするのである。ソリトンは、細胞が独自の「言語」で「囁き」あうことを可能にする。この囁きが1つの交響曲を生み出すことによってあらゆるトラウマからの修復が促される。光、電磁気、音、ソリトン、ボソンおよび酸化窒素などの化合物は、生体コミュニケーションに欠かせない要素であるが、これら以外にも重要な要素が存在することはたしかである。
いずれにせよ、光療法で種々の臨床症状を改善できるということは、生体全体のコミュニケーションシステムに働きかけることが治癒をもたらす第一条件であることを示唆するものである。次号からは鍼療法に焦点を当てる。(出典『エネルギー療法と潜在能力』 )
連載エッセイ 78☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
「自責」と「他責」 どちらが健康的か
人は様々な「ストレス」に遭遇しながら生かされています。ストレスと聞くと精神的にネガティブなことだと思われますが、ポジティブなストレスもあります。それは、人それぞれに捉え方、解釈の仕方によって受けるストレスがネガティブになったりポジティブになったりするからです。例えば、あるプロジェクトの責任者に任命された時、Aさんは「責任者として様々なことを犠牲にして、大きなストレスを抱えなくてはならない」と悲観的に捉えるかもしれません。その一方でBさんは「このプロジェクトを進めていく過程で、多くの学びを得て、将来の成長のための糧にしよう」と楽観的に捉えるかもしれません。
人間関係において、多くの人がストレスを経験します。自分の部下やパートナーに期待しているような行動がみられない時、あるいは自分の上司や周りの人たちに期待しているような評価をしてもらえない時などは「ストレス」を感じやすいと思います。様々な人間関係において、「捉え方」「解釈の仕方」は様々です。大きく分けると「他責」にするか「自責」にするかです。他責の場合、「自分は正しい」「自分は被害者だ」ということを誰かに分かってほしいということに意識が向いてしまう傾向にあります。一方、自責の場合、「自分のどこに問題があったのか…」「自分の何がそのようなことを引き寄せたのか…」というような意識が働く傾向があります。
さて、人間関係や組織の関係性において、「他責傾向」の人と「自責傾向」の人では、どちらの方が発展的で、成長への方向へ進みやすいでしょうか? また、どちらの方が健康的でしょうか?
ある問題が生じたと時、他責傾向の人は問題を解決するために、責任や原因の所在を他者や環境に求めていきます。そうすると、他者が行動を起こさない限り問題は解決しませんし、自分自身が行動を変える必要性は無くなります。そして相手を非難するだけの傍観者になるでしょう。その一方で自責傾向の人は、自分の何がそのようにさせたのか、自分の何がそのような問題を引き寄せたのかと考え、自らを変えようとして行動に移して問題解決へと導いていきます。誰がみても99%相手の責任だとしても、「目の前にある課題は自分の何かが引き寄せた結果である」と解釈してその課題に向き合う人もいます。
自責傾向の人と「自虐傾向」の人とは性質が異なります。自責傾向の人とは、目の前の問題や課題を自分自身の学びや成長の糧にする人です。自虐傾向の人は、自分を卑下して、他者からの哀れみを引き寄せようとする傾向のある人です。もしも、それが長期的な心の「クセ」になると、人生は明るいでしょうか? 他責傾向の人と自責傾向の人ではどちらが人生をポ
ジティブに豊かにしていくでしょうか? あなたは他責傾向や自虐傾向の人のそばにいたいですかそれとも自責傾向の人とともに人生を歩んで成長をしていきたいですか?
人生において健康を維持することはとても大切です。これは、多くの患者様の健康をサポートさせていただき感じることですが、人生に豊かさを感じるのは、様々な問題を自分の課題として向き合う自責傾向の人たちです。人生の中で「他責」にしたり、「自虐」になったりする経験は誰もがすることかもしれません。私自身も長い人生経験を通じて、他責にすることが多々ありました。今でも時折他責にしてしまうこともあります。振り返るとそこには反面教師として学ぶことはあっても問題解決や自分の成長にはつながりませんでした。やはり、自分自身が変わることで現状に変化が現れていました。これは頭で理解しても何も変わりません。実際に行動に移すことで、知らず知らずのうちに変化が生じるものです。
おそらく、多くの人は「自責」で考えた方が自分の人生や健康にとっていいとは分かっていても、時には他責的な発言をして共感を示してほしいと思うことことがあるでしょう。私たちはそのような患者様の気持ちをできるだけ理解し、耳を傾けるようにしています。そして、患者様が「自分の気持ちが理解されている」と十分に感じられると、徐々に自責の思考へと変化していく人も少なくはありません。その変化は内容によっては長い期間を要する場合もありますが、私たちは患者様の気持ちを徹底的に理解し、寄り添いながらサポートすることが大切だと考えています。
人生は山あり谷あり、人は人とのつながりの中で生かされています。もしも、現在抱えている人間関係などの問題や課題が「他責傾向」の罠にはまっているのであれば、今一度ご自身の思考パターンや行動パターンを見つめ直す機会かもしれません。他者はコントロールできません。コントロールできるのは自分自身です。「自責傾向」へとシフトして考えることは、人生を豊かにし、健康を維持していく上でとても大切なことになると思います。さあ、「自責」「他責」、あなたのどちらの傾向なのか今一度見直してみましょう。
円熟したプロフェッショナルになるための
バウンダリー・マネジメント・スキル
スーパービジョンの目的(つづき)
スーパービジョンは、成功へのネックになっている問題をあなたが理解できるように手助けしたり、あなたが助けを必要としていること、例えばリミットを決めたり、直感を信じたり、あなたの力量を正しく評価できるように適切にサポートすることで、あなたの仕事をよりやりがいのあるものにしてくれます。いいスーパービジョンを受ければ、あなたはさらに仕事に対して自信が持てるようになりますし、もっとベストに近いワークができるようになるのです。
私の同僚の話を一つ紹介してみましょう。
—-はじめは、スーパービジョンというものは単に自分のバカさ加減をさらけ出してしまうだけではないかと思い、あまり好意的ではありませんでした。また私は長年営業を続けているので、答はすべてわかっているものだとどこかで思ってもいました。しかし友人がスーパービジョンを受けて多くの収穫があったようなので一度受けてみることにしたのです。結局、それが私の営業を成功させるうえでの大きな後押しになったのです。私のクライアントに対する考えや行動はより寛容になり、クライアントもそんな私の言動にとても肯定的に反応してくれるようになったのです。以前は、どうも嫌で指図がましいクライアントだと思っていた人が、単にその場を仕切れなくなるのを恐れているだけの素敵な女性だということがわかりました。また私が勝手に奇妙で風変わりなクライアントだと決めつけていた人は、そういった先入観に囚われなくなることで、長いあいだ常連でいてくれる良好なクライアントになったのでした。私は、自分の助けにならないパターンや、彼らが施術者としての私といかに快適な時間を過ごせるかについて理解しはじめたのでした。営業の数字も上がり、さらに仕事においてもより幸せを感じられるようになりました。—-
〔スーパービジョンを使うとき〕
スーパービジョンを受けるのに、何も特別な理由はいりません。プロとしてより成長したいということでもいいですし、営業をもっと満足のいくものにしたいという理由でも構いません。例えばあなたが特定のクライアントに対応するための1回きりのコンサルテーションを受けるのに対して、スーパービジョンは、例えばあなたがクライアントとの関係においてあまり役に立っていないようなパターンに自分で気づいたときに受けることができます。以下にスーパービジョンが必要な状況を示す危険信号をいくつか記してみます。
・あなたにとって「やりにくい」とか仕切り屋だと思われるクライアントが数名いるとき
・あなたのバウンダリーに挑んでくるクライアントが多数いるとき
・クライアントと友達になるのが、ごく稀な場合ではないとき
・自分の負担になるほどクライアントの問題や感情、エネルギーを真に受けていると感じているとき
・頻繁にクライアントに対して性的な魅力を感じているとき
・しばしば1日の終わりにぐったりしていたり、疲れ果ててしまっているとき
・あなたのワークに物足りなさを感じるとき
・クライアントに対してネガティブな感情をもち続けてしまっているとき
(出所:『エデュケーティド・ハート』The EducatedHeart Professional Boundaries for the Massage Therapists,2nd ed. )
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(85)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛やむち打ち症に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■カナダ・ケベック特別調査委員会(タスク・フォース)では、最優先課題としてむち打ち症(whiplash injury)の定義を明確にする必要があった。特別調査委員会でコンセンサスが得られたむち打ち症の定義は以下の通りである。
http://1.usa.gov/LYNegq
むち打ち症(whiplash injury)とは、自動車の衝突事故や落下事故などで前後または側面からの加速減速エネルギーが頚部に衝撃として伝達されることによって、骨組織や軟部組織の損傷を招いて多種多様な症状が生じるもの。
http://1.usa.gov/LYNegq
……先ずは「むち打ち症」もしくは「むち打ち損傷」と呼ばれるものは何ぞやという点を明確にしたかったのでしょう。頚部の症状を何でもかんでも「むち打ち症(もしくはむち打ち損傷)」として議論するわけにはいきませんから、とりあえず発症機序を明確にしたわけです。
■WAD(むち打ち関連障害)には、頚部痛・頚部緊張・頭痛・肩の痛み・腕の痛みや麻痺・感覚異常・疲労倦怠感・嚥下困難・視覚障害・聴覚障害・めまい・耳鳴り・睡眠障害・情緒不安定・記憶喪失・顎関節疾患などが含まれている。
http://1.usa.gov/LYNegq
……こうして症状を眺めていると「むち打ち症」は恐ろしいと思うかもしれませんけど、けっしてそんなことはありません。本来、むち打ち症の自然経過はきわめて良好です。
■治療計画を立てるだけでなく、治療法の効果に関する研究、他科へのスムーズな紹介のためには、むち打ち症によって起こり得る多種多様な症状を分類整理する必要があると判断した特別調査委員会は、「ケベックWAD分類」を提案した。
http://1.usa.gov/LYNegq
……このWAD分類には次のグレード0〜4まであり、各グレードによって対処法が異なります。
【グレード0】頚部の症状がなく理学所見も異常なし。
【グレード1】頚部痛・凝り・圧痛のみで理学所見に異常なし。
【グレード2】頚部の症状に加えて筋骨格系所見(可動域制限・圧痛点など)あり。http://1.usa.gov/LYNegq
【グレード3】頚部の症状に加えて神経学的所見(深部腱反射の低下や消失・筋力低下・知覚障害など)あり。
【グレード4】頚部の症状に加えて骨折か脱臼あり。http://1.usa.gov/LYNegq
……グレード4は明らかにWAD(むち打ち関連障害)ではありません。
■なお、難聴・めまい・耳鳴り・頭痛・記憶喪失・嚥下困難・顎関節痛はすべてのグレードで生じる症状であり、グレード0はもちろんグレード4はすでにむち打ち症といえるものではないため、特別調査委員会はグレード1〜3を対象とした。
http://1.usa.gov/LYNegq
……自動車の衝突事故や落下事故などで前後または側面からの加速減速エネルギーが頚部に衝撃として伝達されることによって、骨組織や軟部組織の損傷を招いて多種多様な症状が生じるものの、頚部の症状がなく理学所見も異常ない「グレード0」と、頚部の症状に加えて骨折か脱臼がある「グレード4」は対象外だということです。
N E W S
長引く外出自粛がもたらした「コロナ太り」の影響は多岐にわたるが、とりわけ中高年女性を直撃している影響が、ひざの痛みだ。 「歩くとひざの内側が痛い、朝起きて一歩を踏み出すとき
に痛みが走ると訴える患者さんが増えていますが、これは体重の増加で、ひざ関節にかかる負担が増したことが原因です」そう語るのは、戸田整形外科リウマチ科クリニックの戸田佳孝院長。手術をせずに、ひざ痛や股関節の痛みを治す保存的療法を研究し続けている戸田院長だが、「コロナ太り」による外出自粛で悪化したひざの痛みは、これからの季節こそ注意が必要だと指摘する。
日本人の4人に1人が、ひざ痛の原因となる「変形性ひざ関節症」と推定され、その約8割が女性だといわれている。 ひざの痛みの多くは、加齢や肥満によってひざの軟骨がすり減るこ
とで半月板が損傷してしまい、割れた半月板が横にはみ出て神経を圧迫して起こる。階段の上り下りの際や、朝起きたときにひざに痛みを感じるのはこれが原因。さらに、割れた半月板が飛び出さないよう、ひざの内側に骨の堤防「骨棘」ができると、変形性ひざ関節症と診断が下される。 そして、ひざ変形関節症の原因について戸田院長が挙げるのが「O脚」と「肥満」だ。
「O脚は歩くときは片ひざに全体重が乗ってしまい、大きな負担がかかります。姿勢のよい人は、歩行時に大腿骨に対して脛骨が外側に回転し、ひざが伸びた状態でロックがかかるため、横揺れしないで歩くことができます。これを『スクリューホーム運動』といい、ひざがよく伸びていると、地面からの反発力が股関節へと逃げていくわけです。ところが、O脚で姿勢が悪い人、下半身が衰えている人は、大腿四頭筋の力が弱まり、かかとから地面に着くときにひざがまっすぐ伸びなくなります。そのため、地面からの反発力がすべてひざにかかってしまい、ひざの横揺れが起こり、軟骨のすり減りにつながるわけです」。
さらに、片足にすべての体重が乗った状態になると、ひざには体重の約6倍、股関節には約3倍の重さがかかることになる。肥満がひざ痛の原因となるのはこのためだ。とくに女性は、閉経のころから筋肉が減り、代謝が衰えることで太りやすい体質になってくるので、ひざの痛みが生じやすくなるという。(7/19 女性自身)
必要な睡眠時間の長さは個人によって異なります。近年、睡眠のタイプはその半分が遺伝子で決まると考えられていて、遺伝子の違いによって必要な睡眠時間が短めの人と長めの人がいます。また、残りの半分は生活習慣で決まります。たとえば、長年にわたって短時間睡眠を求められる職業に就いてきた人は、退職後も長く眠れなくなります。必要な睡眠時間は人それぞれで、遺伝子や勤務形態の違う人と比べても意味がないのです。
さらに、季節によっても必要な睡眠時間は変化します。日照時間が長い夏は睡眠時間が短くなり、日照時間が短い冬は長く眠るようになります。夏至と冬至では、睡眠時間に2時間程度の差があるのが自然といえます。
それでは、自分は何時間眠るのがベストなのかについては、すべての人に当てはまる臨床的な基準があります。「起床から4時間後に眠気があるかどうか」です。われわれには「睡眠―覚醒」の生体リズムが備わっていて、起床から4時間後に脳が最も活発になるようにプログラムされています。この時間に眠気があったら睡眠の絶対量が足りていないと判断できるのです。
単純な睡眠時間を目安にすると不満や焦りにつながります。起床4時間後に注目すれば睡眠の変化にも対応できるので、自分に合った睡眠時間を常にチェックしてみましょう。(作業療法士・菅原洋平氏)(7/17 ゲンダイヘルスケア=部分)
ワシントンポスト紙の調査によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行拡大によるストレスレベルは2009年のリーマン・ショック時よりも高くなっているー。堀江重郎氏(順天堂大学大学院医学系研究科泌尿器外科学教授/日本抗加齢医学会理事長)は、「疲れがDNAレベルにもたらす影響」について警告した。
「コロナ疲れ」とは、COVID-19というストレッサー(脅威)に対して心理的な闘争・逃走反応が続くことで、次第にネガティブ感情が増幅して生じる状態である。堀江氏はコロナ疲れの原因の1つに在宅勤務(テレワーク)を挙げ、「3密を回避した新しい生活様式を遂行するうえで推奨されているが、テレワークの増加に伴い、プライベートと仕事の空間が混在し、長時間労働になることでワーク・ライフ・バランスに悪影響を及ぼすことが研究報告されている」と問題点を指摘した。この研究結果によると、ワーク・ライフ・バランスが崩壊することで、燃え尽き症候群になりやすく、仕事や人生への満足感が減ることが明らかになっているという
また遺伝子の老化度を示すテロメアの長さはセルフ・コンパッション(マインドフルネス)により保たれる。ところが、コロナ疲れのような心理的ストレスの影響を大きく受けている人ほどテロメアは短縮し、動脈硬化や心臓病の発症リスクが高くなる。過去に性差を比較した研究では、男性のほうが女性よりも早くテロメアが短くなることも報告されている。これらを踏まえ、テレワークをする男性が、寿命延伸やテロメアの長さを死守するため「コロナ疲れ」を単なる「疲れ」で済ますのは、リスクが大きいのかもしれない。
最後に同氏は「テレワークの増加により中年期以降のうつの増加も懸念される。酸化ストレスが免疫を抑制し、心理的ストレスがそれを助長することから、自宅でもハツラツと過ごすために、まずは自分自身をいたわるセルフ・コンパッションを学んでほしい」と締めくくった。(7/7 ケアネット=一部改変)
パーキンソン病の人を20年間追跡した海外の調査では、発症から20年後に約8割が認知症を発症していたが明らかになっている。 パーキンソン病の症状は、認知症の一つであるレビー小体型認知症でも出現する。両者の関係は深く、どちらも「レビー小体病」と位置づけられている。パーキンソン病の人のドパミンが不足するのは、神経細胞の中に「αシヌクレイン」というタンパク質が蓄積する過程で神経細胞が死んでしまうことが原因と考えられる。生き残った神経細胞には「αシヌクレイン」の塊の「レビー小体」が認められる。パーキンソン病の人はレビー小体が中脳に出現するが、進行すると、判断や記憶、知覚や思考に関わる大脳皮質にまで広がり、認知症を伴うようになる。一方、レビー小体型認知症の人は、レビー小体が最初から大脳皮質にまで広がっている。つまり進行したパーキンソン病とレビー小体型認知症の病態は、ほぼ同じだと考えられている。
「パーキンソン病を発症して1年以内に認知機能の低下がみられたらレビー小体型認知症、それ以降であれば認知症を伴うパーキンソン病と判断するのが一般的です」(関東中央病院脳神経内科・織茂智之医師)。認知症を伴うパーキンソン病とレビー小体型認知症の治療は、基本的には同じだ。パーキンソン症状を治療しつつ、認知症の治療薬も使用する。 「からだをうまく動かせないと、転倒して寝たきりになり認知症を進行させることになります。このため、運動症状を治療しながら、認知機能も低下させないことが重要です。ただし、パーキンソン病の治療薬の中には、認知機能の低下を引き起こす薬もあるので、より注意して薬を選択することが必要です」(同)
なぜレビー小体がたまるのか、その原因は明らかになっていない。レビー小体をためないようにすることが、パーキンソン病やレビー小体型認知症の根本的な治療につながると考えられていて、現在研究が進められている。(7/4 AERAdot=部分)
2020年3〜5月、月を追うごとに病院の医業収入が大きく落ち込み、健診・検診の実施件数は半減から9割減となった実態が明らかになった。6月24日の日本医師会定例記者会見において、松本吉郎常任理事が全国の医師会病院および健診・検査センターの医業経営実態調査結果を発表した。
初診料と再診料の算定回数の対前年比はともに3月、4月、5月と月を追ってマイナス幅が増加していた。初診料は3月が22.3%減、4月が38.2%減、5月が47.2%減。再診料または外来診療料は3月が14.4%減、4月が26.2%減、5月が31.8%減となっていた。また3月時点ですでに前年に比べて2割以上減少した健診・検診は、特定健診(36.3%減)、75歳以上健診(29.8%減)、ウイルス肝炎検診(27.3%減)、肺がん検診(20.5%減)であった。5月にはすべての健診・検診の実施件数が前年と比べて半減や8割減、更には9割減となっている。5月の対前年比で減少が最も大きかったのは75歳以上健診(93.9%減)で、乳がん検診(90.1%減)、肺がん検診(85.8%減)などが続いた。
松本氏は「総じて前年から一転して大幅な悪化傾向が続いており、事業運営に悪影響を及ぼしている」として、国にその支援を求めていくとした。(6/29 ケアネット=部分)
テレワークで家の小さな机と椅子で長時間仕事をしていたせいで、背中が凝って痛みを感じるようになってしまった…。そんな人も多いかもしれない。しかし、背中の痛みは重病の兆候となっているケースもあるという。きくち総合診療クリニック院長の菊池大和さんが解説する。
「膵臓や腎臓など、背中の近くには重要な臓器が集まっており、背中の痛みはそれら臓器の病気と関係していることも…。大病が潜んでいるとも考えられ、放置した結果、手遅れになってしまう可能性すらあるのです」
正しい姿勢の指導を行う『京都やわらかせなか』代表の山本たか子さんは、「背中のこりは下腹部の筋力不足と骨盤のゆがみが原因」と話す。「骨盤は背骨を支える土台です。台がグラグラすれば背骨に負担がかかり、背骨周辺の背中や肩がこり固まってしまう。これは骨盤の前側にある内腹斜筋や腹横筋がうまく機能していないがゆえに起こります。まずは土台の骨盤を安定させ、本来使うべき筋肉を鍛えることが重要です」
骨盤や筋肉を改善しても背中の痛みが治まらない場合や、何らかの疾患に関係するような不調が当てはまる場合は、診察を受けることを検討してほしい。ひとつの判断基準は「横になって痛みが治まるか否か」だと、千葉大学医学部附属病院総合診療科科長の生坂政臣さんは言う。
「ぎっくり腰など急を要さない病気なら、安静にしていれば痛みが治まりますが、がんなどの大病の場合は横になっても痛みます。また膵臓がんだけでなく脊椎・脊髄腫瘍なども寝ているときに痛むことが多いので、夜中、背中の痛みで目が覚めるならかかりつけの病院に行った方がいい」。また「腰をひねるなどして動かしてみて、痛みがひどくなるようなら骨や筋肉に問題があると考えて整形外科へ。動かしても痛みが変わらないなら、内臓疾患の可能性があり、内科か総合診療科を受診するといいでしょう」(生坂さん)(7/22 NEWSポストセブン=部分)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が重症化し呼吸不全を来すリスクについて、ゲノムワイド関連分析(GWAS)を行い調べたところ、3p21.31遺伝子座と9q34.2遺伝子座の変異との関連性が明らかになった。9q34.2遺伝子座は血液型の遺伝子座と一致しており、血液型A型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが1.45倍高く、一方で血液型O型の人は重症化リスクが0.65倍低いことが示されたという。COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2に感染した患者にばらつきがみられることから、ドイツ・Christian-Albrechts大学のDavid Ellinghaus氏らの研究グループ「The Severe Covid-19 GWAS Group」が、イタリアとスペインの患者を対象にGWASを行い明らかにした。NEJM誌オンライン6月版の報告。
研究グループは、欧州におけるSARS-CoV-2流行の中心地、イタリアとスペインの7ヵ所の病院を通じて、COVID-19患者で重症化(呼吸不全)が認められた1980例について、GWAS試験を行った。品質管理や外れ値の除外後、イタリアでは患者835例とその対照1255例、スペインではそれぞれ775例と950例について、最終的な解析を行った。合計858万2968個の一塩基多型を解析し、2つのケースコントロールパネルについてメタ解析による結果である。(治験詳細は割愛)(6/25 ケアネット)
次号のメールマガジンは2020年8月15日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ