エンタプライズ発信〜メールマガジン【№56】 2015. 12
先ごろ「いい夫婦の日」(11月22日)ということで諸々のイベントが開かれましたが、ある支援団体では全国の18歳〜69歳の既婚男女1000名を対象とした「2015年度いい夫婦の日」アンケート調査を実施しています。それによると、「生まれ変わったとしたら今のパートナーを選ぶか」の質問に対し、「どちらともいえない」が40.7%で最も高く、次いで「今の相手を選ぶ」36.7%、「別の人を選ぶ」22.6%の順位となりました。この結果を性別でみると、「今の相手を選ぶ」では男性40.4%に対し女性33.0%で(夫の方が7.4ポイント高い)、「別の人を選ぶ」では男性17.4%に対し女性27.8%(女性の方が10.4ポイント高い)だそうです。来世のこととはいえ、妻の方が冷めている傾向にあることは確かのようです。いい夫婦のあとで不躾かつ飛躍しますが、夫または妻が死亡した場合、悲しみの中でもすぐに行うべき手続きがあることはご存知ですか。1.世帯主変更届(夫死亡の場合)、2.公共料金などの名義・口座変更、3.年金・保険金の届け出、4.葬祭費の申請、5.クレジットカードなどの解約です。意外とすべては認知していない人が多いのではないでしょうか。縁起でもないですが、これら手続きに必要な書類の内容と所在を、来世でもめることのないように、年に1回、「いい夫婦の日」に認識しあっておくことも“夫婦円満”の秘訣かもしれませんね。
★☆★━━━━━━━■CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★
【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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【 Information -1-】
「日本統合医療学会2015 〜山口市で開催 12/12-13
第19回目を迎える日本統合医療学会は12月12日(土)〜13日(日)にわたって「Art&Science with Humanity 〜ヒトはBody・Mind・Spiritの存在〜」をテーマに山口県・山口市民会館(山口市中央2丁目5-1)において開催する。大会長は柴田眼治氏(医療法人社団水生会 柴田病院理事長)。患者-医療者間に良好なHumanityを持つことで、より進化した医療の提供と全人的・包括的医療が実現できることを訴求し提案する。
大会概要:http://www.imj2015.com/
【セミナーのご案内 1 】
「統合医療のエボリューション」 Dr. ビクトリア・メイズ特別セミナー
アリゾナ統合医療センター所長のDr.ビクトリア・メイズを招き、『統合医療のエボリューション The Evolution of Integrative Medicine 』の演題で12月9日、東京大学において特別セミナーが開催されます。
Dr.メイズは、Dr.アンドリュー・ワイルによりアリゾナ統合医療センター長に選ばれ、統合医療の第一人者として国際的に認められています。世界各地で統合医療、女性の健康、妊娠、健康な加齢、栄養、がんについて講演しています。同センターは全米の統合医療の中心であり、統合医療プログラムは20年の歴史があります。このセミナーでは、アリゾナ統合医療センターを紹介するとともに、統合医療教育の今後の展望について講演する予定です。
日時:12月9日(水)午後6時半から午後8時半
会場:東京大学 医学系研究科教育研究棟(東京都文京区本郷)
参加資格:医療従事者
費用:8,000円(税込)
主催:一般社団法人日本統合医療学会 統合医療女性の会
問合せ:info@aimw-r.comまで
【セミナーのご案内 2 】
日本語版 『妊娠力 心と体の8つの習慣』 出版記念セミナー
一般社団法人日本統合医療学会 統合医療女性の会では、Dr.アンドリュー・ワイルの後継者であるアリゾナ統合医療センター所長、Dr.ビクトリア・メイズによる「妊娠力」をテーマにした統合医療のセミナーを開催します。同氏の新刊(日本語版『妊娠力 心と体の8つの習慣』監修:板村論子MD., Ph.D)の出版記念としても位置づけています。この著書は、鍼灸、漢方、アーユルヴェーダについての記述も多く、また統合医療を学ぶ上で入門書としてわかりやすい内容になっています。新刊についてはAmazonをご参照ください。
日時:12月10日(木)午後2時から午後4時
会場:エステック情報ビル21階 会議室A(東京都新宿区西新宿1-24-1)
参加費:3,000円(税込)当日可
主催:一般社団法人日本統合医療学会 統合医療女性の会
問合せ:info@aimw-r.comまで
【 Information -1-】
日本統合医療学会2015 〜山口市で開催 12/12-13
第19回目を迎える日本統合医療学会は12月12日(土)〜13日(日)にわたって「Art&Science with Humanity 〜ヒトはBody・Mind・Spiritの存在〜」をテーマに山口県・山口市民会館(山口市中央2丁目5-1)において開催する。大会長は柴田眼治氏(医療法人社団水生会 柴田病院理事長)。患者-医療者間に良好なHumanityを持つことで、より進化した医療の提供と全人的・包括的医療が実現できることを訴求し提案する。
大会概要:http://www.imj2015.com/
◎連載vol.14
エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究
<小社編集部編>
生物物理学
「生物は、物理学的法則や自然の力をすべてうまく活用できるように進化する」という仮説がある。生物学者たちは、長い間この仮説に疑問を抱いてきた。しかし物理学者の中には、生物を研究することで新しい物理学的概念や法則が見つかるかもしれないと考える人も現われた。生物物理学は、将来が非常に期待される分野なのだ。
特により多くの物理学者たちが生体組織の完璧に近い結晶性やコヒーレンスに注目し、半導体情報通信システムとの類似性に気づけば、この分野の研究は飛躍的に進歩するだろう
これまでに述べてきた事例を総合すると、生体組織の構造とエネルギーとコミュニケーションについての簡単な仮説を導くことができる。この仮説は、さまざまな形態の治療法にも関係する。そこでこの仮説に対する理解を深めるために、らせん状のバネの物理的しくみについて考えてみよう。
生体マトリックスという連続体は、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、DNA、アクチン、ミオシンという物質で構成されているが、これらの主要な分子は、いずれもらせん状をしている。それがらせん状のバネを選んだ理由だ。さらに、らせん状の構造は、多くの生体組織や生体全体、あるいは自然界のさまざまな組織にも認められる。
物理学ではさまざまなエネルギーについての定義があり、その定義に則ってエネルギーは変化すると言われている。つまり「エネルギーは作られることも消えることもなく、ある形態から別の形態へ変化するだけである」というエネルギー保存の法則がそれである。
生体組織に含まれるらせん状の分子には、圧電気を伝える半導体様の性質がある。らせん構造をもった生体分子には、光を放出・吸収する能力があり、光のエネルギーを振動に変えて生体マトリックス全体へと伝播させることができる。半導体にはトランスバース・ホール効果という現象が伴うので、らせん状の分子は磁気や生体磁気にも反応するはずである。
らせん状になっているバネにおけるエネルギーの変化を物理学的に表現すると、生物学や種々の治療法との関係が理解できると思う。生体組織のエネルギー的性質のメカニズムは、テンセグリティー構造における「腱」をバネで表現できる。1本1本のらせん状のバネにはさまざまな形態のエネルギーを吸収し放出する能力がある。即ち、このモデルを生体組織とみなすと、治療に利用されるエネルギーが生体マトリックスに吸収され伝えられる様子を想像することができると思う。(つづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)
★連載エッセイ ㉔☆
“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。
・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)
笑いがもたらす効能
久しぶりの患者さんが来院された。夜寝つきが悪くことが続いて具合が悪くなり、先日救急車で病院へ行かれたとのこと。病院では点滴をしてもらい、色々と検査をしてみたが、何も異常がなかったらしい。
「夜眠れない原因はなんでしょうか」と尋ねると、笑いながら「ストレスですよ」「先日、習い事の幹事をさせられて怒られて、それが悔しいのですよ…」と笑いながら言われる。言語神経反射検査にて、寝つきが悪い感情パターンを検査してみると「恐怖」のキーワードが反応を示す。
患者さんにそのことを伝えて、「『恐れ』につながる何か心当たりはありませんか」と尋ねると、最近、近所の人が5人ぐらい癌で亡くなって、自分も食道癌ではないかと心配しているとのこと。ちなみにこの患者さんは79歳の女性。
「癌になって怖いモノは何ですか」と尋ねると、「死ぬのが怖い」笑いながら言われる。
「死んだら何か失うものがあるのですか」と尋ねると、「まだ長生きしたい…」とのこと。
さらに「長生きして何をするのですか」と尋ねると「(しばらく考えて)恋をしたい、ハッハッハ」と大笑い。
「それでは、恋ができなくなるのが最後の恐怖ですね」と言うと、また大笑い。
「あ〜もう具合の悪いのがよくなった」と満面の笑顔。
おそらくあの大笑いだと、自律神経系を切り替える施術をせずに、自動的に緊張パターンは切り替わった様子だが、一応施術を行った。
笑いを狙って治療をしているわけではないが、患者さんとの関係が深くなるにつれて笑いの数も増えてくるような気がする。心の深いところからくる笑いは、自律神経系のスイッチが切り替わってとてもよい効能をもたらしてくれているようだ。
《連載38》
伝統医学をシルクロードに求めて
池上正治(作家・翻訳家)
5. インド編 〜古代医学の最高峰〜
インドvsギリシャの終幕
アレキサンダー大王の率いる騎兵隊のひずめの音がようやく静まったあと、インド西北部はギリシャ人の軍事的支配下に置かれていた。こうしたギリシャ人諸王の数は40人にものぼると言われているが、その相互関係や領土関係には未知の部分が多い。というのも、彼らは貨幣という遺品を残しただけであり、それ以外には記録らしいものはないという。ただ、これらのギリシャ系諸王が鋳造した貨幣に中には、ニッケル製のものがあり、これは技術史上から見ると驚くべきことである。なぜなら、ヨーロッパでニッケルが発見されたのは18世紀も中頃になってのことである。
インドを支配したギリシャ人諸王の中で最も有名な者はメナンドロスである。彼は紀元前2世紀の後半、現在のアフガニスタン、パキスタン、インド北部を統治していたと考えられている。メナンドロスは現存するインドの文献の中で、その名前を知られている唯一のギリシャ人王であり、パーリ語の仏典では「ミリンダ王」と呼ばれている。メナンドロスの貨幣は、その支配区域は言うまでもなく、通商によって遠くヨーロッパまで運ばれていった。ウェールズ海岸から出土した金貨には、メナンドロスの知的な横顔が刻まれていた。
メナンドロスの君臨する首都サーガラは、交易の中心であり、風光に恵まれていた。深い堀と白い壁に囲まれたサーガラには十万の豪壮な邸宅が並び、整然と区画された道路には亀や馬、車、美しい男女が群れをなしていたという。きれいに並べられた各種の美しい花や香料を売る店からは芳香が漂い、通りに面したショーウインドウには、貨幣、金、銀、銅、宝石が飾られていた。
倉庫は穀物や生活必需品で充満していた。しかし有能な将軍であり行政官でもあったメナンドロスは、哲学的な探究心が満たされないことに不満をもっていた。
「ああ、実にインドは空っぽである。ああ、実に全インドは籾がらのようなものである。予とともに討論し、疑いを取り除くことのできる修行者あるいはバラモンは誰一人としていない」(『ミリンダ王の問い』平凡社、1964=以下同)
と嘆いていた。そのメナンドロスの耳に、ナーガセーナという長老がいて、彼は智恵者であり、談論の名手であるという情報が入った。さっそく使者をやって会見を申し出ると、「王みずから、おいでなさい」という返事であった。(つづく)
根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(31)
長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。
■腰痛患者659名をX線撮影群と非撮影群に割り付けて1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)の結果、両群間の身体機能・疼痛・活動障害の改善率に差は認められなかった。ガイドラインは腰痛患者の腰部X線撮影を避けるよう勧告している。http://1.usa.gov/rrG6so
………福島原発事故による放射線被曝に怯えている日本です。今こそルーチンなレントゲン撮影をやめるチャンスかもしれません。
■腰下肢痛患者246名を対象にMRI所見と保存療法の治療成績について2年間追跡した結果、椎間板ヘルニアは腰痛患者の57%、下肢痛患者の65%に検出されたものの、治療成績とヘルニアのタイプ、大きさ、活動障害は無関係だった。http://1.usa.gov/tZmk9p
………画像検査で認められる椎間板ヘルニアのタイプやその大きさは、症状や治療成績とは無関係だという証拠です。
■米国ではCTやMRIによる画像検査は5年間で43%増加し、PETスキャンに至っては4年間で3倍に増加。民間の大手保険会社はこうした医療費の高騰を抑えるために放射線ベネフィットマネージャーを使って医療調査を開始した。http://on.wsj.com/uhkJdN
………アメリカではすでに危機意識を持って取り組んでいます。日本もそろそろ医療放射線の問題に着手するべきではないでしょうか。不必要な放射線被曝は避けた方がいいと思います。
■医療行為の中で必要のない画像検査が行なわれているのは事実。CTによる放射線被曝だけでも米国で発症するがんの2%の原因になっている。リスクとベネフィットを考えると不適切なCTやX線撮影を制限することで生命を救える可能性がある。http://bit.ly/hyDov1
………全がん患者の2%がCTに起因すると大騒ぎしていますけど、日本のCT保有台数は世界一でアメリカの7倍に達しています。
■日本の原爆被爆者データベースから先進15ヶ国の画像検査による放射線被曝量と発がんリスクを推計した結果、検査回数も発がんリスクも日本が世界一であることが判明。全がん患者の4.4%(約1万人)が画像検査に起因している可能性あり。http://1.usa.gov/blSDtG
………世界中が驚愕した有名な論文なのに、なぜか日本ではほとんど報道されませんでした。
■1回の全身CTによる放射線被曝量は、広島・長崎の爆心地から3.2キロの地点で被爆した生存者とほぼ同じで、がんによる死亡リスクが増加するのは明らか。CTの保有台数は日本が世界一でアメリカの7倍、イギリスの16倍にも達している。http://bit.ly/hyDov1
………健康診断やがんドック、医療ツーリズムと称して全身CTが盛んに行なわれているようですけど、放射線被曝のことは考えなくていいのでしょうか。こうしたリスクを伴う画像検査は、ここぞという時のために取っておきたいものです。
【連載コラム】
“連動操体法”について、ちょっとばかり… (56)
根本 良一(療動研究所主宰)
【 連動操体法の応用編 】
3. 脊柱側弯症
背骨が曲がる、動くが戻るには正常だが同じ姿勢、同じ張力が継続すると曲がったままで固定される脊柱側弯症は、小学生高学年から中学初期に始まる成長期のときに起こる。早期に発見して、歪因を解消することが大切である。
脊柱側弯症にはいろいろな態様があり、先天性側弯症の罹患率は約15%、神経筋性側弯症、神経線維腫症、マルファン病などが約5%、原因不明の特発性側弯症が最も多くて約80%と言われている。
小・中学生に多発する特発性側弯症は、早期に発見し、的確に運動器系のバランスをとれば容易に克服できる。しかし、従来の矯正法は大変な苦痛を強いるし効果も少ない。ほとんどが中途で頓挫してしまう。
側弯症は本来、骨格の異常ではなく、成長期に歪みが継続するから骨格が変形してくる。大腰筋、外腹斜筋、脊柱起立筋などの不均等収縮によるもので、筋の連動操体法を丁寧に行い、継続することを怠らなければ完全に整復できる。
1)なぜ曲がる?
脊柱側弯症は先天性のものではなく、支えている筋の張力が偏ってつくられる形態である。体幹が側屈する直接の原因は、腰椎が周辺の筋に牽引されて歪曲する。そのさいには主に大腰筋が歪力となることが多く、腹側部では外腹斜筋、腹直筋、背部では脊柱起立筋、腰方形筋などが中心になる。
特発性側弯症は、小・中学生の発育期に発症するので、知らずに、あるいはわかっていても正しい処置を施さないまま放置すると、歪んだ骨格が形成される。あまり自覚症状なしに曲がることが多いから、たえず鏡を見たり、動作の不均衡がないか注意することが肝要である。
脊柱周囲の緊張に伴い、肋骨にも変形が起こり、左右の肋骨の形、厚みが変わってくることがある。女子に多く発症するので、発育期の女子の場合、左右の乳房の発達が相違してきたりする。(つづく)
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NEWS ■<脳脊髄液減少症> 359例9割に有効…患部への血液注射
激しい頭痛やめまいなどを起こす「脳脊髄液減少症」で、厚生労働省研究班が359症例を分析し、ブラッドパッチと呼ばれる治療が90%の確率で有効との結果が出た。症例には交通事故などの「外傷」で発症したものが相当数含まれるという。「髄液が漏れることは極めてまれで、患者はほとんどいないはず」と否定する声が一部に根強くあるが、8年以上の研究はこの主張を真っ向から否定する結果となっている。日本脳神経外科学会が11月30日に東京都内で発表した。
それによると、減少症を先進医療で治療している46の医療機関にアンケートを実施。回答があった30機関で計890症例を治療していた。研究班はさらに協力が得られた359症例について詳細なアンケートをした。ブラッドパッチをしたのは336例。結果は、治癒33.1%、軽快57.1%、不変9.5%、悪化0.3%。
この疾患について「近年日本で相次いだ報告の多くは誤診だ」との批判がある。主な根拠は、髄液が漏れることがあると70年以上前から言われてきたのに報告例が少なかったからだ。研究班の2011年の中間報告でも、認定した確実な症例は16にとどまった。それが一気に増えた理由について「先進医療に認められ、治療する医療機関が増えたため」と説明。890もの症例が集まった減少症の研究は例がないという。(11/30 毎日新聞)
NEWS ■大腸がん、アスピリンで予防…検証へ臨床試験
解熱鎮痛薬として知られる「アスピリン」の大腸がん予防効果を確かめる7000人規模の臨床試験を、国立がん研究センターや大阪府立成人病センターなどのチームが始めた。数百人規模の研究ではすでに確認されている効果をさらに詳しく調べて予防法の確立を目指す。研究チームによると、別の病気の治療に使う薬でがんを予防する試みは初めて。
臨床試験は、日本医療研究開発機構の支援で10月に始まった。研究チームの代表を石川秀樹・京都府立医大特任教授が務め、全国約20施設が参加している。計画によると、大腸がんになる危険性が高い大腸のポリープ(腺腫)を切除した40〜69歳の7000人が対象。ポリープの大きさが1センチ以上なら25%ががんになるとされる。(11/30 読売新聞)
NEWS ■<運動器> 16年度から小中の健康診断—松本市
「床にかかとを付けたまましゃがめるか」「屈伸時に肘や腰に痛みはないか」。2016年度から、全国の小中学生の健康診断項目に「運動器」が加わる。13年からモデル事業などに取り組んできた長野県松本市はこのほど、検診シミュレーションや先行校の事例発表をした。県内では大都市部以上に子供たちの運動過多と運動過少の二極化が著しいとの指摘もあり、症状の早期発見・早期対策への効果が期待されている。
まずしゃがむ姿勢と前屈をチェック。両腕の曲げ伸ばしや上半身を前後に曲げたとき、痛むところはないかを学校医が尋ねた。先行校として6月に5年生全員の検診をした小学校の養護教諭は「身体が硬い(しゃがむと転ぶ、または前屈で床に手が届かない)児童が26.7%おり、肘の痛みなどで精密検査が必要と判断された子は4.1%だった」と報告した。この結果を受けて、体育の授業にストレッチを取り入れるなどの工夫をしているという。
運動器検診導入の狙いについて、文部科学省学校健康教育課は「子供の運動状況は二極化が進んでおり、その能力や障害など四肢の状態を把握する必要があると判断した」と説明する。(11/26 毎日新聞)
NEWS ■妊娠後期のマタニティ・ヨガの安全性
妊娠後期でもヨガは妊婦にとって安全らしい―米Kosair小児病院(ケンタッキー州ルイビル)のRachael Polis氏らのこんな研究結果が「Obstetrics & Gynecology」に掲載された。
米国ではヨガの人気がますます高まっており、最近の調査によると、2012年には2000万人以上の米国人がヨガの練習をしたという。「研究では、ヨガのポーズが母子に過度の負担をかけないことが判明した。この結果は、ヨガが妊婦にとって一般的に安全だと安心させるものだ」と同氏らは話している。
今回の研究の対象者は妊娠第35〜37週の健康な女性25人。ヨガを定期的に行っている人、ほとんど経験がない人、初心者が含まれていた。各対象者はヨガ教師との1対1のセッションを受け、26の異なるポーズを練習した。その間、リアルタイムの測定により心拍数、血中酸素レベル、子宮収縮などのバイタルのモニターを続けたところ、バイタルサインによくない変化を引き起こしたポーズはなく、胎児の心拍も正常範囲内だった。翌日、筋肉痛があった対象者が2、3人いたが、転倒やけがは発生しなかった。
「ただし、調整が必要な場合が多いことには注意しなければならない。対象者は支えやバランスをとるために、ブロックや椅子、壁を用いていた。初心者は妊婦に向かないポーズがあることを認識しておく必要がある」とPolis氏は述べている。(11/28 毎日新聞)
NEWS ■日本人の乳癌検診、マンモ+超音波で感度上昇
40歳代の日本人女性を対象に行われた大規模なランダム化比較試験「J-START」で、マンモグラフィー単独よりもマンモグラフィーに超音波検査を組み合わせる方が、早期乳癌をより多く発見できることが分かった。東北大学の大内憲明氏らが、Lancet誌電子版へ11月4日に報告した。
著者らは、日本の40〜49歳の女性を対象に、マンモグラフィーと超音波検査を併用した場合の効果を検討するJ-START試験を行った。試験には、日本国内の23県42施設で、2007年7月から2011年3月にかけて、過去5年間に癌の既往がなく乳癌を疑わせる症状のない40〜49歳の女性7万2998人を登録。ランダムにマンモグラフィーのみを受けるマンモグラフィー単独群(3万6139人)と、マンモグラフィー後に超音波検査を受ける超音波併用群(3万6859人)に割り付けて、2年間に2回検査を受けてもらった。
その結果、超音波併用群ではマンモグラフィー単独群よりも、乳癌検出の感度が高いことが判明。乳癌検出感度は、超音波併用群で91.1%(95%信頼区間87.2-95.0)、マンモグラフィー単独群は77.0%(70.3-83.7)だった(P=0.0004)。一方、特異度は超音波併用群で有意に低く、順に87.7%(87.3-88.0)と91.4%(91.1-91.7)だった(P<0.0001)。(11/28 LIFECARE)
NEWS ■TVの見過ぎが主要疾患による死亡リスクに関係
TVの見過ぎが、主要な死亡原因のいくつかと関連することが、新たな米国の研究で明らかとなった。米国人の92%は自宅にTVを持ち、成人の80%が余暇の半分以上にあたる1日平均3時間半、TVを見ているという。
今回の研究では、米国立がん研究所(NCI)のSarah Keadle氏らが、研究開始時に慢性疾患がなかった50〜71歳の22万1,000人超の対象者を、死亡または2011年12月まで約15年にわたり追跡・統計化した。その結果、対象者がTVを見る時間が長いほど、心疾患、がん、糖尿病、インフルエンザ/肺炎、パーキンソン病、肝疾患といった疾患で死亡する可能性が高かった。
TVの視聴時間が1日1時間未満の対象者に比べて、1日3〜4時間の対象者では研究期間中の死亡リスクが15%高く、1日7時間以上の対象者では47%高かった。喫煙や飲酒、カロリー摂取量などの危険因子を考慮しても、TV視聴と死亡リスク上昇には関連性がみられた。ただしこの関連性とは、TVの見過ぎがこれらの疾患による死亡を生じさせるという意味ではない。これらの死亡リスク上昇は、活動的な対象者と非活動的な対象者のいずれでもみられたという。(10/27 American Journal of Preventive Medicineオンライン版)
NEWS ■慢性頸部痛にAlexander Techniqueと鍼が効果
慢性頸部痛患者517例を対象にAlexander Technique(アレクサンダー・テクニーク)と鍼治療の臨床効果を無作為化比較試験で検討。12カ月時のNorthwick Park Questionnaireスコアの減少率(%)における標準治療との差は、鍼治療で3.92ポイント(P=0.009)、アレクサンダー・テクニークで3.79ポイント(P=0.010)と、どちらも頸部痛を有意に軽減した。(10/3 A Randomized Trial.Ann Intern Med.)
NEWS ■白衣高血圧や仮面高血圧に高い心臓病リスク
白衣高血圧や仮面高血圧がある人は、そうでない人に比べて、心血管疾患の罹患率が高くなるようだ、という米国テキサス大学南西医療センターからの研究報告。
研究チームは、白衣高血圧や仮面高血圧の患者は、環境によらずいつも正常血圧の人に比べ、心臓発作、心不全、脳卒中の罹患率が高くなることを発見したという。「白衣高血圧に関するこれまでの研究結果は矛盾する結果を示してきたが、医師の多くは白衣高血圧を無害とみなしている。しかし本研究は、白衣高血圧が心臓血管疾患の増加と関連することを示唆している」と筆頭著者のワンペン・ボンパタナシン教授は述べている。
本研究では、ダラス心臓研究の参加者であるダラス郡の住民3,000人以上のデータを調査した。参加者の3%が白衣高血圧、18%が仮面高血圧症を有していた。さらに、参加者に対し、腎臓病の指標である尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)およびシスタチンCを測定し、動脈スティフネスを評価した。
最終的には、心臓発作、脳卒中、心不全、心房細動、心臓のバイパス手術、狭心症、心臓カテーテル処置といった心血管イベントを9年間追跡した。
「白衣高血圧について、日本と欧州におけるこれまでの研究は、心血管系合併症との因果関係を示してきたが、今回は、米国の住民において臓器障害や心血管障害の増加との直接的な証拠を初めて示した」とボンパタナシン博士は述べている。(11/15 TMSネット)
NEWS ■「柔軟体操の5つの利点」 米国整形外科学会
米国整形外科学会(AAOS)は11月4日、個人に対して日常トレーニングに柔軟運動を取り入れることを奨励し、柔軟運動の5つのメリットを紹介した。AAOS広報担当のRaymond Rocco Monto氏は「柔軟性が向上すれば運動能力は簡単に向上する。加齢に伴い関節の動きが最大50%失われることもあるが、関節の柔軟性を向上させる方法はたくさんある」と述べている。AAOSが挙げる柔軟体操のメリットは次の5つ。
1.背中と関節の痛みが軽減
Archives of Internal Medicine誌掲載の2011年の研究では、定期的なストレッチが慢性的な背部痛の解消に効果的なことが分かった。他の研究では大腿四頭筋のストレッチにより膝痛を軽減できることが示された。
2.血行促進
American Journal of Physiology誌掲載の2009年の研究では、胴体のストレッチにより筋肉の凝りがほぐれ血流が改善することが分かった。就寝時のハムストリング筋とふくらはぎのストレッチにより、夜中の脚のけいれん頻度と強度が軽減される理由でもある。
3.関節動作の改善
柔軟性は加齢に伴い自然に低下する。ストレッチで失われた関節動作を回復し、機能を向上させることができる。
4.運動能力の向上
良質なゴムバンドのように、筋肉と腱はしなやかで柔軟なときに伸長すると大きな力を生み出す。
5.筋肉の健康向上
ジャンプや急な方向転換(カッティング動作)を取り込んだ高負荷の移動性運動により、筋肉が処理できるストレス量を増やすことができる。
また、AAOSは柔軟体操を最大限活用する方法として、(1)筋損傷を防ぐために、ストレッチ前にウォーミングアップをする、(2)筋肉の緊張を避けるために、ゆっくり優しくストレッチする、(3)伸ばすときに反動をつけない、(4)痛みを感じたら簡単なストレッチにして楽にする――ことを勧めている。(11/18 TMSネット)
NEWS ■関節リウマチが寿命を短縮させる可能性―心臓や呼吸器
関節リウマチが早期死亡リスクを最大40%増大させる可能性が、新たな研究で示された。心臓や呼吸器の障害が主に寄与すると考えられ、呼吸器系の主要な死因の1つは慢性閉塞性肺疾患(COPD)だという。
この知見は、関節リウマチと早期死亡リスク上昇の関連を示したこれまでの研究を支持する新たなエビデンスとなるものであり、医師が患者を密接に監視する必要があることを示していると研究著者らは述べている。今回の研究では米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院(ボストン)の研究グループが、10万人以上を追跡した看護師健康調査(NHS)の参加者から関節リウマチの女性964人のデータを分析し、関節リウマチでない女性と比較した。
研究の責任著者であるJeffrey Sparks氏は、「これまでの研究でも関節リウマチと死亡率の関連は示唆されていたが、喫煙などの両者に影響を及ぼす変数について調整することができなかった」と述べ、「NHSは非常に大規模で、参加者を長期間追跡しているため、対象者について多くの情報を集めることができ、診断の前後にわたり追跡し、健康に関わる行動を考慮して具体的な死亡原因を判定することができた」と説明している。
関節リウマチ患者が心疾患で死亡するリスクが高いことは多くの医師の間で知られているが、今回の知見は、喫煙経験のない患者でも呼吸器症状に注意する必要があることを強調するものだとSparks氏は付け加えている。「関節リウマチ患者、なかでも血清反応陽性の患者では、呼吸器系と心血管系のいずれの原因による死亡リスクも高いという認識が促されることを期待している」と同氏は述べている。(11/19 TMSネット)
■次号のメールマガジンは2016年1月10日ごろの発行です。
■今年もご講読ありがとうございました。来年は新企画を充実させ、より臨床に近づく編集を目指しますので変わらずご厚誼くださいますようお願いいたします。
(編集人:北島憲二)
[発行]産学社エンタプライズ