エンタプライズ発信〜メールマガジン【№84】 2018. 4

座業の多い編集子。パソコン作業や本読みなどのさなか、耳の奥がかすかにがさつくような感じがして耳かき棒をおもむろに差し込み、ちょっとした快感を味わう…。デスクの本立ての横には耳かき棒が鎮座しているほどで、耳かきは最高に気持ちいい、といつも思う自分がいます。耳かきカフェや耳かきサロンが一時流行ったほどですから、おそらく大方の人は耳かきが好きで、習慣的になっている人も多いのではと想像するのですが、しかし、そんな耳かきをなるべくしないように最近努力しています。というのも、どうやら耳かきのしすぎは、耳に悪いようなのです。昨年、米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会から、耳のケアに対する新しいガイドラインが出ていることを最近知りました。その中で警告している一つは、耳かきによって耳の中を傷つけてしまうことです。特に竹や木でできた硬い耳かきを使っている人は要注意と記しています。外耳道を傷つけると、膿みが出たり、炎症を起こしたり、また人によっては悪いカビが生えてしまう症例があると注意を促しています。そして外耳道がんという疾患があって、耳のかき過ぎが原因というわけではないものの、このがんの患者には耳かきが癖になっている人が多いと報告がなされています。ガイドラインでは健康な状態であれば耳掃除の必要はまったくないと強調しており、掃除をするなら耳の外側を布で拭く程度にとどめ、耳の中にモノを入れるべきではないと重ねて述べています。筆者のように“耳かき依存症”は意外に多いのではと勝手に想像するのですが、耳かきとは、ついついの衝動性があり、体に悪い、危険なものであるという認識は読者諸氏もお持ちになった方がいいと口幅ったく言いたいのですが、治療家にはそんなことを思う暇はない!と苦言を呈されるのを耳にしつつ、かくしてわが耳かき棒は抽斗の隅に格納し依存症の回避に努めています。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】『ひとりあんま気功』 〜自分で押すのが一番効く
【4】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【5】伝統医学をシルクロードに求めて 〜くらしのなかの中医学〜
【6】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【7】N・E・W・S
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Information

医学雑誌ランセットが腰痛の新たなエビデンス

3月22日、医学雑誌ランセットが「シリーズ 腰痛」を発表しました。過去に腰痛治療として推奨されてきた安静、ステロイド注射、オピオイド系鎮痛剤、外科手術は極力減らす必要があること、画像診断などの検査に対しても過度な依存に疑問を呈しています。今回の研究では、患者教育や患者中心の医療、安心感の提供など、生物心理社会モデルに基づいたケアを推奨しています。
1990年以降、腰痛による身体障害が50%以上も増え、発展途上国や新興国でより社会問題となり、世界的な課題として扱われています。腰痛治療は世界中で異なり、先進国では手術やオピオイド系鎮痛剤など危険な薬が使用されています。今回、オーストラリア・メルボルンのモナッシュ大学のR・Buchbinder教授を筆頭にカイロプラクターの研究者も含まれた国際研究委員会が3つの論文を発表しました。腰痛疾患による障害や有害な治療の排除を求めて世界的に呼びかけを行いました。海外のマスコミでは今回の研究が大きく報道されています。
(3/29 JACニューズレター=一部)

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

成長期は解糖系が重要

[安保] 卵子と精子が結合した受精卵は子宮内に着床すると胎児に成長し、出生後は体の主要器官がつくられる3歳ぐらいまで盛んに細胞分裂が繰り返されます。その後は細胞分裂も緩やかになり、15歳ごろには体の成長は止まっていきます。このころまでが解糖系の重要な時代でしょう。
[太田] 胎児や乳幼児の細胞分裂が盛んなころはまだミトコンドリアが少ないのですが、徐々に増えていきます。思春期のころまでにはミトコンドリアも多くなり、分裂抑制遺伝子が働くようになると体の成長も落ち着いてくるのですね。
[安保] 小さな子供は気分がころころ変わってすぐに飽きるし、部屋は散らかすし、これは瞬発力の解糖系エネルギーのなせる技ですかね?(笑い)
[太田] そんな気もしますが、どうなんでしょうね。まあそういった成長段階だと思えば親御さんはあまり腹を立てないですみそうです(笑い)。
[安保] 秋田県に「なまはげ」という行事があるでしょ。あれは「怠け」を「はぎとる」からなまはげと言うそうです。育ち盛りの子供が、家の中の暖房にあたってばかりいてはいけないよ、寒い外で遊んで細胞分裂を促し、丈夫で元気な子に成長しなさいという願いが込められているんですね。
[太田] 子供は風の子って小さいころよく言われたけど、この言葉からも同じ意味合いが取れますね。昔からの行事やことわざには、自然や生命の本質を突いた知恵が受け継がれていて驚かされますね。

がむしゃらに頑張るときはストレスに注意

[安保] 若いころはカッとなりやすかったり、頑張りすぎたりしますが、歳をとるにしたがって周りが見えてきて、ほどほどに力をセーブすることがうまくなります。これは解糖系の瞬発力に任せた生き方から、ミトコンドリア系の長く息を持続できる生き方へのシフトと言えませんか。
[太田] エネルギーの使い方としては、まさにそのとおりです。がむしゃらに頑張っているときは息を詰めているわけでしょ。低酸素状態でミトコンドリアをうまく活用できていない状態です。その状態が続けばストレスがかかります。
[安保] 私は若いころはカッとなりやすい方だったから、後輩の研究員の仕事が遅かったりするとつい怒鳴っていたものです。でもある日、怒ったときの自分の血圧を測ってみようと思ったわけです。それで驚いたんだけど、一気に200以上に上がっていたわけ。こんなことを繰り返していたら危険だなと、心を入れ直しました(笑い)。
それからはできるだけ穏やかな気持ちでいるように心がけていますが、歳をとるにしたがって自然に進むべき道に向かっているような気がします。自分の気持ちよりも、体の方がよく分かっていて、そろそろセーブしろよと諭してくるんですね。


連載vol.41

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

エネルギーの象徴(つづき)

私たちの視野に入ったシンボルや物体の像は網膜に映り、それが視神経の電気的活動を促すことによって、大脳の視覚領野へと伝わる。このメカニズムについては多くの事実が明らかになってきている。網膜の受けた刺激の1つ1つが大脳皮質に反映されるので、網膜に映る光のパターンが後頭皮質神経の興奮パターンへと翻訳されるのである。
また私たちが受けた刺激は体内で増幅される。視覚領野に描かれる像は網膜に映る像よりはるかに精密で、しかも網膜に映る領域の約1万倍の範囲をカバーしている。これは1個の網膜錐体細胞が受ける刺激に対して、およそ100個の皮質細胞が反応するからである。

光に含まれる数個の光子が神経を興奮させ、視神経を介して脳へ伝えられることは以前から知られている。光子の刺激によって何百個、何千個というカルシウムイオンが網膜細胞内に流入し、膜の脱分極を引き起こして神経を興奮させるのである。これが増幅のメカニズムだ。
網膜の神経はほかの多数の神経とつながっているので、網膜に入ったシグナルが視路を伝わるとき、(電気)エネルギーは広い範囲に伝わたっているのだ。
ニューロンは電気を伝える導線と同じであるから、エルステッド(磁場の強さの単位)およびアンペアの法則に従うと、周囲の空間に磁場が生じるはずだ。磁気は組織を自由に通過するので脳の組織や頭蓋骨を超えて、頭の周囲の空間へと放出される。この脳神経の活動によって派生する磁気の強さは磁気測定器スクイドによってマッピングすることができる。

脳神経の活動によって生じる電気や磁気が及ぶ範囲は頭部やその周辺にとどまらず、神経系や神経細胞を覆う結合組織および循環系を通じて全身へと伝わっていく。脳をはじめ全身にくまなく広がるこれらの組織は電気をよく伝える性質をもっている。全身のこのような「連続性」を見事に表現しているのがディーン・ユーハン(D.Juhan)の言葉である。
湖の底と表面が連続しているように、皮膚と脳も連続している。2つは別の場所に存在しながら、連続した媒体によって結ばれているのだ。(中略)脳は、皮質から指先やつま先へとつながる一つの器官だ。したがって湖水である皮膚に触れれば、湖底である脳にも波が立つ。(1987)

アメリカのニューイングランドの病院ではレイキをはじめとする補完療法が採用されてきている。エネルギー医学はあらゆる治療法にとって意味がある。学者たちの偏見にかかわらず、多くの人々が実感しているとおり、現実の医学は飛躍的に発展しているのだ。

◆連載4◆

『ひとりあんま気功』〜自分で押すのが一番効く

孫 維良(東京中医学研究所所長)

安らぎを準備する3つの調節

ひとりあんま気功法においては、手からツボに気を送り込むことが大切なポイントになります。ですから実践の前に、まず手から気が出やすい状態に心と体を調整する必要があります。同時に、さまざまなストレスによって体内の気や血の流れが乱れている可能性がありますから、気の流れを正常に戻すことが大切です。そこで、体内の気の流れを安定させ、手から気が出やすい状態へとチャンネルを切り替えておくこと、つまり心身の調節が重要な意味を持ってきます。

ひとりあんま気功法には3種類の調整があります。調身、調心、調息です。この3つの調節うち、調身は姿勢の調節のことです。すなわち楽な姿勢で座り(または立つか寝て)全身の余分な力を抜いて体をリラックスさせること、それが調身のポイントです。
調心は、おわかりのように心の調節のことです。意識をコントロールして、精神をリラックスさせ、静かに安寧な境地に至ることです。調息は呼吸を整えることで、基本的にはゆっくりと腹式呼吸を行います。
つまり調身は姿勢、調心は意識、調息は呼吸を整えることですが、この3つの調節は別々の要素ではなく、密接に関係しあっています。たとえば、体がリラックスすれば心も自然にリラックスします。逆も同様です。このように3つの調節は、それぞれが影響しあい、補足しあう関係にあります。

<ひとりあんま気功法> 姿勢を選ぶ

ひとりあんま気功法の姿勢は、立式、座式、臥式、歩行式の4種類があります。座式は椅子に座った姿勢と胡坐をかいた姿勢に大別され、臥式はあお向け、うつ伏せ、横向きに寝た姿勢の3種類に分別されます。どの姿勢にも共通して大切なポイントは、楽な姿勢をとるということです。
このコラムでは主として椅子に座った姿勢を紹介します。まず椅子に浅く腰掛けます。このとき胸を張るとどうしても体に力が入ってしまうので楽にします。肩から力を抜いて、続いて腕、手、指先から力を抜き、全身をできるだけリラックスさせます。
なお、調身においては椅子の高さも考慮します。椅子に座って膝を曲げた角度がちょうど90度になり、しかも足の裏がピタッと床に着くくらいが理想です。(つづく)


連載エッセイ 52☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


「集中ケア」と「メンテナンスケア」

体調に何か問題がある場合、大きく分けると身体の「構造」に異常があるという場合と、「働き(機能)」に異常がある場合があります。もしも、身体の構造に異常がある場合は、病院で検査をしてもらう必要があります。もしも、体調不良に関係する構造異常や特定の原因がわからない場合は、身体の「働き」の異常に注目する必要があります。
身体の「働き」に異常があるということはどういうことでしょうか? 身体の働きをコントロールしているのは「脳・神経系」です。脳・神経は意識的にも無意識的にも身体をバランスよくコントロールしているのです。もしも、身体の働きをコントロールする信号が滞るとどうなるでしょうか?

例えば、膝の関節には屈筋という曲げるための筋肉群と、伸筋という伸ばす筋肉群があることはご存じのとおりです。この屈筋群と伸筋群はONとOFFを微妙に繰り返しながらコントロールしています。少しでもこのONとOFFのバランスが乱れると、関節がうまくかみ合わなくなり痛みや違和感などが生じます。
この神経や筋肉のONとOFFのバランス異常は、自然に治ることもありますが、もしも、その誤作動のクセが脳や身体に記憶化されてしまうと、長引くことがあります。また一部の誤作動が長引くと、連動して他の部位にも誤作動が波及することがあります。
そのような誤作動の記憶は早期に調整して、神経や筋肉が健全に働くように再学習することが必要です。筆者は、神経や筋肉が正常に働くように、働きの悪い部位を検査して調整を行なっています。しかし、慢性化の記憶化(クセ)が強い場合、調整した後でもバランスの悪い状態に引き戻されやすくなります。

脳や身体に一度記憶化されたクセを健全なクセに引き戻すためには、戻りが少ないうちに「集中ケア」が必要です。習い事のように身体に覚えさせるために繰り返し施術を受けてもらい、バランスのよい状態が身体に学習されてきたら、だんだんと間隔を空けながら「メンテナンスケア」へと移行することが理想です。

痛みなどの症状が特になくても「メンテナンスケア」を受けていくことで、症状が出る前の段階でバランスを調整することができます。大したことが無いような症状でも、それを放置することで身体がバランスの悪い状態に慣れて関節の変形などへと移行する可能性もあります。
ぎっくり腰などの症状も普段どおりの動作で引き起こされるケースも少なくはありません。動作自体が原因ではなく、バランスの悪い状態のままでの動作によって、ぎっくり腰が生じてしまう場合が多いのです。
車などの整備と同じように、定期的にメンテナンスを行うことで、体調不良になりにくい体質になります。体調が優れない時は「集中ケア」、たとえ痛みなどの症状がなくても予防的に「メンテナンスケア」で体調管理をすることをお勧めしています。


《連載66》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)

台湾の話梅(ホワ・メイ)

「あの梅のお話、とても良かったですね」と言われると、社交辞令かなと思いながらも悪い気はしないものだ。前号の「台湾の話梅」のことである。ウメは古代に中国から日本に伝わり、そのウメという発音には古代中国語が反映しているという。寒中に咲く梅には美しさと強さがあり、その上品な香りは木に咲く花の絶品であろう。花のあとの実もまた、食品に、薬品に、人々の役に立っているのだから、ウメ様様である。

話梅糖(ホワ・メイ・タン)という美しい響きをもったキャンディーは最も大衆的なものの一種である。最近の値段はよく知らないが、バスに1回乗るぐらいの小銭で、片手のひらいっぱいに載せてもらえるはずである。
慣れてしまえば、バラ売りというのは実に合理的な制度と言える。包装革命とやらにすっかり慣らされてしまった日本の生活であるが、中国ではまだ量り売り、バラ売りが健在である。あちらでは売買の単位が1斤(500g)であり、表示されている値段はこの1斤あたりのものである。買い手はなにも1斤を買う必要はなく、その5分の1の1両(100g)でもいい。
実際には、重量の単位よりも金額「1元分」とか、その10分の1の「1角分だけ」ということも少なくない。この買い方を覚えるまでには、漬物を山ほど注文してしまい閉口したものだ。街角の露天商から、片手のひらに入るほどのピーナッツやスイカの種を買って、歩きながら食べるようになれば中国生活も卒業である。

話梅糖は甘味の強い中国のキャンディー類の中で酸味が勝っており、個性的な存在である。その包み紙には必ず「潤津開胃」と印刷されていることも、ある種の驚きであった。「津液を潤し、胃を開く」などといっても日本の一般人にはまず理解できないであろう。
「潤津開胃」などという医薬学の専門用語が、子供がバラで買うようなキャンディーの包み紙に印刷されるあたりに中国の気真面目さがあるのである。それは生活の中の保健や医療についての知識の状態をも示しているように思えてならない。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(58)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■【初期評価】(6)疼痛図表(pain drawing)や可視疼痛計測表(visual analog
scale)は病歴聴取に利用可能である(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
…痛みの評価も大事ですが頻繁に行なうと患部に注意を集中させてしまいますからご注意ください。痛みよりもできたことに注目させるのが認知行動療法です。

■【初期評価】(7)SLR(下肢伸展挙上)テストは若年成人の坐骨神経痛の評価に推奨されるが、脊柱管狭窄を有する高齢患者ではSLRが正常となる可能性がある(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
…下肢症状のない場合は省略してもかまいません。

■【初期評価】(8)神経障害の有無の判定には、アキレス腱反射・膝蓋腱反射・母趾の背屈筋力テスト・知覚異常領域の確認といった神経学テストが推奨される(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
…この神経学テストで椎間板ヘルニアによる神経根症状の責任高位を推定するわけですが、ご存知のように椎間板ヘルニアがあれば必ず神経根症状があるとは限りません。

■【画像検査】(1)最近の重度外傷(全年齢)・最近の軽度外傷(50歳以上)・長期のステロイド服用・骨粗鬆症・70歳以上というレッドフラッグがなければ、急性腰痛の検査として1ヶ月以内の単純X線撮影は推奨しない(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
…ここから画像検査に入ります。レッドフラッグ(危険信号)のない急性腰痛(ぎっくり腰)患者に画像検査を行なうなという勧告です。わが国はルーチンワークのようにレントゲン写真を撮りますが、それは国民が当然の権利のように要求するのでやめられないという事情もあります。放射線被曝が好きな人以外はこうした考え方を改めましょう。

■【画像検査】(2)最近の重度外傷(全年齢)・最近の軽度外傷(50歳以上)・長期のステロイド服用・骨粗鬆症・70歳以上というレッドフラッグがある場合、骨折を除外するために腰椎の単純X線撮影を推奨する(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO ;
…レッドフラッグ(危険信号)のない腰痛患者にレントゲン写真を撮る必要はないのです。しっかり頭に叩き込んでおきましょう。

■【画像検査】(3)がんや感染症の既往・37.8℃以上の発熱・静注薬の乱用・長期のステロイド服用・安静臥床で悪化する腰痛・原因不明の体重減少が存在する場合、腫瘍と感染症の鑑別に単純X線検査にCBCとESRの併用が有効である(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
…CBC(血算=赤血球数・白血球数・血小板数・ヘモグロビン)とESR(赤沈=赤血球沈降速度)は、レントゲン撮影以上に重要な情報を与えてくれるのに、日本ではあまり行なわれていないようです。

 N  E  W  S

NEWS ■ 聴力が低下した人は事故による負傷リスクが高い?

「JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery」3月22日オンライン版に発表された研究で、難聴があると事故で負傷するリスクも高まることが明らかになった。この研究は、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院耳鼻咽喉科のNeil Bhattacharyya氏らが実施したもの。「難聴、特に加齢に伴う難聴は自然なことであり、社会生活に支障が出ることはあるが、それほど大きな問題ではないと考えられがちだ。しかし、聴覚は周囲の危険を察知する上で重要な役割を果たしている。そのため、聴力の低下が事故による負傷リスクを高めるのではないかと考えた」と同氏は研究を実施した背景について説明している。
今回の研究では、2007〜2015年の米国民健康聞き取り調査で聴力と直近3カ月以内の事故による負傷に関する質問に回答した18歳以上の男女2億3220万人を対象に、難聴と事故による負傷との関連について検討した。NHISでは聴力について「極めて良好」「良好」「わずかに問題あり」「中等度の問題あり」「重大な問題あり」「聞こえない」の6段階で自己評価してもらった。
対象者の2.8%(660万人)に事故で負傷した経験があったが、こうした負傷経験者の6人に1人で聴力が良好に満たないレベルに低下していた。解析の結果、聴力が極めて良好または良好だった人と比べた事故による負傷リスクは、聴力にわずかな問題があった人で1.6倍、中等度の問題があった人で1.7倍、重大な問題があった人で1.9倍となり、聴力の低下にしたがって事故による負傷リスクが高まることが分かった。
今回の研究結果を踏まえ、Bhattacharyya氏らは「難聴の検査や治療は広く普及しているため、難聴を事故による負傷の予防可能なリスク因子とみなすべきだ」と主張している。(4/13 HealthDay News=一部)

NEWS ■ 簡単な便秘対策は、トイレを我慢しない

3月27日、第4回Kampo Academiaプレスセミナーが都内において開催された。テーマは「便秘における漢方薬の再認識」。セミナーでは、中島淳氏(横浜市立大学大学院医学研究科主任教授)を講師に迎え、「腸内環境は気になるけれど、たかが便秘と自己流の対策で悪化させていませんか?〜便秘における漢方薬の再認識」をテーマに講演が行われた。
便秘の中でも、慢性の便秘は日本人の7〜8人に1人は症状があるとされている(厚生労働省「平成25年(2013年)国民生活基礎調査」)。現在、便秘で処方される治療薬としては、緩下剤、刺激性下剤、漢方薬の3種類がある。緩下剤では、酸化マグネシウムがわが国では広く処方されているが、高マグネシウム血症への注意や併用注意薬の多さが短所であり、刺激性下剤であるセンノシドなどでは、連用することで習慣性、依存性が生じ、効果が低下することが指摘されている。その点、漢方薬は患者の安心感が高く、作用の強弱が選択でき、便秘周辺症状(腹部膨満など)にも対応できることで最近見直されているという。
漢方処方のほかの便秘対策としては、子供のころからトイレを我慢しない行動が大事だという。また排便の姿勢について、和式トイレのしゃがんだ姿勢が理想だが、洋式トイレが主流の現代では、前かがみ35度の前傾姿勢で排便するのが望ましいとしている。(4/3 ケアネット=一部)

NEWS ■ コーヒーは予想以上に代謝に影響する

コーヒーを毎日摂取すると、これまで考えられていた以上に代謝に影響を及ぼす可能性のあることが小規模な研究で示された。研究の詳細は「Journal of Internal Medicine」オンライン版に掲載された。
研究を主導した米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部予防医学助教授のMarilyn Cornelis氏らは「これまでの多くは参加者が自己申告したコーヒーの摂取量と疾患リスクとの関連をみているだけだ」と指摘。今回の研究はこれらの関連性のメカニズムの解明に努めたものだとしている。
Cornelis氏らの研究は、コーヒーを飲む習慣があるフィンランドの成人男女47人を対象に行った臨床試験に基づくもの。参加者にはまず、コーヒーを摂取しないで1カ月間過ごしてもらった後に、1カ月間は1日4杯コーヒーを摂取してもらい、その次の1カ月間は1日に8杯摂取してもらい、血液検査を毎月行ってメタボローム・プロファイリングにより733種の代謝物質の血中濃度を観察した。
その結果、コーヒーを1日4〜8杯摂取すると115種の代謝物質の血中濃度が有意に変化することが分かった。この結果は予想通りのものだったが、一部には想定外の変化がもたらされていたという。例えば、コーヒーの摂取は、脳内マリファナに類似した物質として知られる内因性カンナビノイドシステムに関連する代謝産物の血中濃度を低下させることが分かった。また、コーヒーの摂取は性ホルモンなどのステロイドホルモンや脂肪酸代謝に関連する代謝産物の血中濃度にも変化をもたらしていた。
内因性カンナビノイドシステムは、ヒトの食欲やエネルギーの産出と消費、血圧、睡眠などの基本的な身体機能のコントロールに重要な役割を担っている。これまでの研究でコーヒーの摂取は体重管理に良い影響を及ぼすことが報告されているが、Cornelis氏は「コーヒーの摂取は内因性カンナビノイドシステムの活性を抑えるように働くため、いわゆる脳内マリファナによる食欲増進とは反対の働きを示す。コーヒー摂取による肥満予防効果には、このシステムの役割が大きい可能性もある」と指摘している。(3/26 HealthDayNews)

NEWS ■ 脊柱管狭窄症の予防薬の臨床研究へ

老化に伴って多発し、脚のしびれなどの症状が典型的な脊柱管狭窄症の予防薬の臨床研究を慶応大学病院のチームが計画している。学内の倫理委員会の承認を得て、新年度から40人の患者を対象に効果を比較検証する。患者数は約300万人とも言われ、予防薬開発への期待は大きい。
椎骨の変形は、間にある椎間板の弾力が老化によって失われるために起きると考えられるが、これまで椎間板の老化を防ぐ治療法はなかった。同大の藤田順之専任講師らは椎間板の変形は加齢による酸化ストレスが原因と考え、検証した。椎間板変形を起こしたラットで調べると酸化ストレスによってできる物質の増加が確認されたほか、ヒトでも椎間板の変形に伴い、酸化ストレスによる物質が増えることがわかった。また抗酸化効果のあるサプリメントをラットに投与したところ、椎間板の変形が抑えられていることが画像で確認できた。
臨床研究では患者を抗酸化薬群と偽薬群の2群に分けて、半年間の経過を調べる。使用する抗酸化薬は海外ではサプリメントとして使われている。藤田氏は「サプリメントは副作用が少ない利点がある。今回の研究で効果が確認されたら、企業の協力を得て治験を行い、実用化につなげたい」と話している。(3/26 読売新聞)

NEWS ■ 終末期医療、ガイドライン改訂-厚労省

厚生労働省の有識者検討会は3月23日、終末期医療に関する新たなガイドラインを盛り込んだ報告書をまとめた。ガイドラインは患者と医師らが治療方針を事前に話し合うことを重視する内容で、在宅医療・介護の場で活用できるよう見直した。
報告書では、病院中心だった終末期医療の支援態勢を地域全体に広げる必要性を指摘。患者が家族や医療チームと治療方針について繰り返し話し合う「アドバンス・ケア・プランニング」が重要だとした。
ガイドラインの改訂は2007年の策定以来初めてで、患者が意思を伝えられなくなる状態も念頭に、家族や友人などの中から意思を推定する人を決めておくことを求めた。話し合った内容は文書に残し、共有することも提案している。(3/23 時事通信社)

NEWS ■ 東北大学、気管支ぜんそく発症の原因を明らかに

東北大学の研究グループは3月23日、気管支ぜんそくの原因が「2型自然リンパ球」というリンパ球の活性化であることが明らかになったと発表した。気管支ぜんそくを含むアレルギー疾患の新たな治療法開発につながる可能性があるという。
これまでアレルギー疾患の治療で注目されていたのは、アレルギー反応の制御や他の免疫細胞の活性化に関係する免疫細胞「T細胞」だったが、研究グループはこの細胞の表面に現れる「GITR」というタンパク質が、2型自然リンパ球にも存在することを発見。GITRが2型自然リンパ球を活性化することを明らかにした。2型自然リンパ球は、気管支ぜんそくが起きるときに最初に活性化する免疫細胞で、これが活性化しなければアレルギー反応は起こらないという。
そこで研究グループがGITRを持たないマウスに薬剤で気管支ぜんそくを誘発する実験を行ったところ、自然リンパ球は活性化せずマウスはぜんそくを起こさなかったという。また、研究グループが開発したGITRを阻害する物質をマウスに投与した場合も、マウスはぜんそくを起こさなかった。これにより気管支ぜんそくを引き起こしているのは、GITRで活性化した自然リンパ球であることが明らかになった。研究成果は米国のアレルギー学会誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」の電子版で掲載された。(3/23 MediaNews)

NEWS ■ 歯の残存数と認知症リスクに関するメタ解析

高齢期の歯の損失は、認知症の発症率を高める可能性があることが示唆されている。韓国・SMG-SNU Boramae Medical CenterのBumjo Oh氏らは、高齢期の歯の残存数と認知症発
症との関連について、現在のエビデンスからシステマティックレビューを行った。BMC geriatrics誌の報告。
2017年3月25日までに公表された文献を、複数の科学的論文データベースより、関連パラメータを用いて検索を行った。高齢期における認知症発症と歯の残存数に関して報告された複数のコホート研究における観察期間の範囲は、2.4〜32年であった。高齢期における歯の残存数の多さと認知症リスク低下が関連しているかについて、ランダム効果のプールされたオッズ比[OR]と95%信頼区間[CI]を推定した。異質性は、I2を用いて測定した。GRADEシステムを用いて、全体的なエビデンスの質を評価した。主な結果は以下のとおり。
・文献検索では、最初に419報の論文が抽出され、最終的には11件の研究(試験開始時年齢:52〜75歳、2万8894例)が分析に含まれた。
・歯の残存数が多い群では、少ない群と比較し、認知症リスクの約50%低下と関連が認められた(OR:0.483、95%CI:0.315〜0.740、p<0.001、I2:92.421%)。
・しかし全体的なエビデンスの質は非常に低いと評価された。
著者らは「限られた科学的エビデンスではあるものの、現在のメタ解析では、高齢期において歯の残存数が多いほど、認知症発症リスクが低いこととの関連が示唆された」としている。(3/12 ケアネット)


■次号のメールマガジンは5月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)


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