エンタプライズ発信〜メールマガジン【№78】 2017.10

ビジネスやコーチングなどでよく使われるのが5W1Hです。もちろんこのキーワードは健康や養生法にも置き換えることができると言います。例えば、健康な体づくりでは、1.What→目的(ゴールは何を目指すのか)、2.Why→動機・経緯(なぜ健康な体づくりをしようと思ったのか)、3.How→方法や手段、4.Who→対象(誰のためか、誰が行うのか)、5.When→時刻・実施時間・期限、6.Where→環境・場所。……理路整然としたサクセスストーリーが完成しそうですね。目的の明確化と「何のためにやっているのか」「なぜやり始めたのか」という点はいつも点検したいものです。これを食養 (食事管理)に置き換えると。What;あなたの食べるもの、How;あなたの食べ方、When;あなたの食べる時間・時間帯、Where;あなたの食べる場所、Why;あなたが食べる理由、Who;あなたが一緒に食べる人…となります。人によりいろいろなケースが想定されますが、これも目的(医食同源)をきちんと掲げることで予防医学の範となりそうです。編集子は日ごろ塩分量を控えています。最近のリサーチで食塩の摂取量が多い成人は、糖尿病を発症するリスクが高い可能性があることが示されました。生活習慣病、とくに糖尿病はNEWSにも記しましたが国内に1000万人の疑いがある成人がいると言います。私たちの体は食事によって作られています。心や生き方までも。人生のバランスを取り戻すきっかけづくりも、5W1Hはシステマティックで気持ちを楽にしてくれるキーワードになるかもしれません。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【4】伝統医学をシルクロードに求めて 〜くらしのなかの中医学〜
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
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Information -1

日本構造医学会が第22回学術会議を開催

10月8日、日本構造医学会(熊本市)は東京・学士会館において第22回学術会議を開催、全国から多くの会員が出席し、生活環境場(医療・科学技術・教育ほか)における構成体(構造)の本質を探究する論題が多数発表され活発な質疑が行われた。
学会長挨拶では関谷康夫氏が「創設から40年ちかくの歴史をもち約18,000名の受講数を誇る学問領域として、さらに学びを深めることで社会貢献を広めてほしい」と述べた。発表では演題6講が披露され、質疑応答が各々活発に行われた。また今回から新たに座長カンファレンスが試行され、公衆衛生と口腔衛生やフッ素の功罪、リダクターの有用性などについて座長所見とともに会場の会員との質疑応答に熱気を帯びた。

Information -2

「日本統合医療学会2017」が11月に開催

今年で21回目を迎える日本統合医療学会。本学会では『患者中心の医療』 をテーマに新たな健康指標を創造する。期日は11月25日(土)〜26日(日)、会場は東京有明医療大学(東京都江東区有明2-9-1)において開催される。25日に行われる基調講演は、矢野忠(明治国際医療大学特任教授)氏を演者に「患者中心の医療とは―その基盤をなす理念は」 が開催される。詳細はhttp://www.
http://jointconference2017.net/program

Information -3

日本カイロプラクターズ協会 第15回シンポジウム開催案内(福岡) -再送-

テーマ『温故知新〜JACの過去から未来へ』
日程:11月19日(日)〜20日(月)
時間:11/19 10時〜 11/20 9時30分〜
場所:アクロス福岡(福岡市中央区天神1)
特別講演:五十嵐由樹DC 「足腰が及ぼす全身への影響:歩行から運動パフォーマンスアップへのカイロプラクティックアプローチ」
お問合せ:03-3578-9390  Email:info@jac-chiro.org

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

ほとんどの病気はミトコンドリアと関わる

[安保]私は免疫学をずっとやってきて、免疫系や自律神経系のしくみなどからさまざまな病気のメカニズムを探ってきました。免疫力や自律神経の働きがいかに巧妙に生命を成り立たせているかを解明してきたわけですが、どうも免疫学だけでは物足りないという思いもありまして、そこで気になりだしたのがミトコンドリアによるエネルギー生成のしくみです。
その際に先生の本から多くのことを学びました。そもそも先生がミトコンドリア研究を始めたきっかけは?
[太田]僕はもともと化学科出身で、物理化学という物理と化学の中間領域を扱う分野が専門です。生物がいかにしてエネルギーを作り出しているかが研究テーマでした。
[安保]生化学の分野ですね。私が学生のときに勉強したのはクエン酸回路とか妙に複雑で覚えるのが大変で苦手だったなあ。
[太田]バクテリアの研究から始めたのですが、当時の研究が病気や健康に結びつくとは思っていませんでした。基礎的には大事な分野だけど、あまり世の中で脚光を浴びるような研究テーマではないという感覚でした。
[安保] 幸いなことに、若かりしころの予測は大きく外れたわけですね。今やミトコンドリア研究は世界的に盛り上がっています。
[太田] ミトコンドリアが注目され始めたのは、1980年代にミトコンドリア異常による病気があることがわかってからです。その後、糖尿病、高血圧、パーキンソン病など、ほとんどの病気にミトコンドリアが関係していることがわかってきました。
[安保] 人間の体は発熱という治癒反応を起こしますが、そこにもミトコンドリアが関わっていますね。免疫学でもその説明はできますが、そこにエネルギー生成系のしくみを合わせて考えればさらに深く理解できるんです。
[太田] ミトコンドリアは体内で電気エネルギーを作り出している装置ですから、発熱の源と言えますね。免疫力にも大きく関わっています。

瞬発力の解糖系、持久力のミトコンドリア系

[安保] エネルギー生成系にはミトコンドリア系に加えて解糖系もありますね。2008年の北京オリンピックで、スピード社製の水着を着た水泳選手が世界記録を次々に出したことがあったんです。これは体にぴたりと密着する水着によって水の抵抗力が減少することと、密着した水着が選手の血液循環を抑制して、解糖系のエネルギーをより多く使えた結果ではないかと考え、論文発表したことがあります。
[太田] なるほど。解糖系のほうがエネルギーを迅速に作れるから、瞬発力勝負に向いているということですね。
[安保] そう。解糖系はミトコンドリア系のように効率よく長期に大量のエネルギーを作ることはできませんが、エネルギーを作る速さは100倍近くあるわけでしょう。(次号へつづく)


連載vol.36

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

生命の本質への糸口

医療のあり方や生物学全般に変化が生じ始めた結果、多様な伝統的治療法の世界で知られている不思議な現象に、医学者たちがようやく注目するようになり、その正体を見極めるための研究が行われ始めた。つまり癒しや人間の身体能力の本質に迫る「有力な」糸口が見つかりつつあるのだ。科学、医学そして補完医学が融合しはじめた今、まったく新しい道が切り開かれようとしている。これまで不可解とされてきた人間の自然治癒力や他者を癒す力、あるいはもっと楽に能力を向上させる方法が、明らかになろうとしているのである。

今開かれつつある道を進めば、あらゆる形態の医療の現場で、治療者と患者の関係に劇的な変化が起きることに期待される。ケリー・ワインスタインの言葉どおり、「医学にはいくつもの原理や治療方法があるが、生命の本質はただ一つ」なのである。

統 合 医 学

補完医学と従来医学の融合による「統合医学」が今後ますます広まれば、生体の本当のしくみが一層明らかになり、医学や生物全体は大きな影響を受けるだろう。医学技術はこれからも進歩を続け、新薬が次々と開発され、基礎医学においても画期的な発見が出てくるに違いない。しかしこれらすべての事業は、人間が他者を救うためのものだ。たとえば私がさまざまな手法の治療現場を見学して学びとったことは、私たちの目の前で救いを求めている人に何が起きていると解釈するかは、人によって千差万別だということである。したがって、その解釈の数だけ、治療を促す方法もあるわけだ。
人間同士の体が接近あるいは接触したときに起きるエネルギー交換を解明できれば、どの医学的手段を用いるかに関わらず、治療者と患者が互いに相手の気持ちや状態を感じとれるようになり、その結果、治療効果が上がるという可能性も十分に考えられるのである。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))


連載エッセイ ㊻☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


内分泌系(ホルモン系)の異常の改善

内分泌系の異常で比較的多く相談を受けるのは、生理痛や生理不順の患者さんです。特に月経前症候群(PMS)で長年苦しんでいる方も少なくはなく、症状があるのが当たり前のようになっている人も多いようです。身体的症状では下腹部痛をはじめ、乳房痛、むくみ、倦怠感などがあり、精神的症状では抑うつなどの気分障害や睡眠障害を訴える方が多いようです。

生理不順の患者さんの中では2年以上も月経がなく、当院での治療で改善した実例もあります。ホルモン系の異常は女性だけでなく男性にも生じます。改善した症例の多くが無意識の誤作動記憶に関係しています。このような心身相関に関連する因果関係は通常医療では検査することができません。当院での心身条件反射療法で検査をしますが、ホルモン系の異常を示す臓器反応点に陽性反応が示されます。施術を繰り返すことで、このホルモン系に異常を示す陽性反応が消失するとともに、多くの患者さんで症状が改善されます。

ホルモン系の誤作動が、無意識のメンタル面に関係しているということは、一般的にはあまり知られていません。世間一般でもっと多くの人がこの事実を当たり前のように認知してくれると、多くの人がつらい症状から解放されるのですが……世間一般の常識というのは手ごわいものです。
この患者さんも無意識的な感情や一般論から得た情報による思い込みが関係していたようです。関連していた潜在感情の一つが「喜び」に関係していました。通常、メンタル面が関係するというとネガティブな感情などが関係していると思われがちですが、ネガティブな感情だけでなく、ポジティブな感情も心身のバランスの誤作動に関係しています。

心身相関の分野で誤解を受けやすいのが、「精神面」が悪いから「身体面」が悪くなると思われがちなところです。これは明らかな誤解なのですが、心と身体の関係で体調を崩すということがまだまだ世間一般に浸透しないようです。それは、機械構造論的な情報や教育からの影響と、心身相関に関係する科学的研究が難しいということも影響があるように思います。

当院で治療体験をすると、多くの患者さんが心と身体の関係性で誤作動を生じるということが当たり前のように分かってきます。本質的な原因が分かると、健康に自信が持てる人が増えてきます。心と身体の関係性で体調不良を生じさせるということが、世間一般で当たり前に語られるように、もっと多くの患者さんの症状の改善に役立てればと願っています。


《連載60》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)

ミカンの筋は、のぼせる?

南方産のミカンが出回るころ、華北の大地は凍土となっている。1日の最低気温は氷点下10‐20℃である。この温度は日の出直前の数値であるから、布団の中でヌクヌクしていれば関係はない。だが、日中でもプラスになることはない。そんな季節に輝くばかりの橙(だいだい)色をしたミカンを自由市場で見つけたりすると思わずホッとするものだ。値段は決して安くないが、つい買ってしまう。
果物に限ったことではないが、中国の農産物は、見てくれが悪い。包装も実に簡素なものだ。しかし味は一流であろう。赤みを帯びた橙色の皮の下からは、甘みと酸味の調和したコクのある果肉が現れる。その味は芳醇でさえある。

「橘絡(チュイルオ)はのぼせますから全部取った方がいいですよ」とTが言う。教え子のなかでも世間的な気配りもでき、みんなから一目置かれている彼女だが、橘絡にあたる日本語はまだ知らなかったようだ。「スジって日本語で言うんだけど」と答えたものの、「上火」(のぼせる)の一言はずっと気になっていた。
神農は百草を舐めたそうだが、どんなものでも薬にしてしまう伝統の中国である。ミカンの筋は、どんな性味や功能、主治などがあるのだろうか。[性味] 甘苦、平。[功能] 通絡、理気、化痰。[帰経] 肝、脾の二経。[主治] 経絡気滞、久咳胸痛、痰中、帯血、傷酒口渇

残念なことに、「のぼせる」というよりは「清熱」といったところがミカンの筋の「役割」のようだ。だとすれば、ミカンの筋は少し食べたほうがいいのだろうか?


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(53)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■インターネット上の腰痛情報に関する体系的レビューによると、根拠に基づく情報を提供しているウェブサイトはごくわずかでしかなく、その大部分は腰痛関連商品や治療サービスの広告だった。患者が科学的情報と広告を区別するのは困難。http://1.usa.gov/Ul7is7
……腰痛疾患に対する従来の医学的アプローチは効果を上げてきませんでしたし、実際にはむしろ悪化させることもありました。腰痛疾患の解決には診断法や治療法ではなく、患者の心構えを変えることを中心に展開するだろうと考えられています。広大な情報ネットワークはそのような努力がなされる中でのみ恩恵をもたらすことができるというのです。医療関係者は情報ネットワークを建設的に利用する方法を学ばなければなりません。

■坐骨神経痛患者183名を対象に安静臥床の有効性を調査したランダム化比較試験によると、坐骨神経痛に対する安静臥床の有効性は認められず、椎間板ヘルニアがあっても安静の有無にかかわらず3ヶ月後には87%の患者が改善した。http://1.usa.gov/Wpxvge
……腰痛に安静臥床は有害であることは周知の事実だったものの椎間板ヘルニアに伴う坐骨神経痛には安静臥床が必要だと考えられてきました。ところがこのRCT(ランダム化比較試験)によってその考え方は完全に否定されたことになります。同時に坐骨神経痛の自然経過は良好であることも証明されたわけです。

■腰部椎間板ヘルニアによる馬尾症候群の手術成績に関する研究をメタ分析した結果、発症後48時間以内に除圧術を行なったほうが48時間以降に行なうより知覚障害・運動麻痺・膀胱直腸障害の改善率は良好であることが明らかとなった。http://1.usa.gov/TbuWv3
……椎間板ヘルニアの緊急手術として唯一適応が認められている馬尾症候群は、手術の時期を逸すると生涯にわたってサドル麻痺や膀胱直腸障害(失禁)が残ることがあります。したがって、馬尾症候群の診断後は速やかに手術するべきであり、48時間という期限が迫っている場合は医療関係者側のスケジュールを調整している猶予はありません。それがたとえ真夜中であっても。

■リストラは労働者の健康に深刻なダメージを与えている。リストラが差し迫っていることで心理社会的側面の大混乱を招き、特に高齢者にストレスと緊張を生じさせ、健康に悪影響をおよぼすほどの有害な致命的過程を加速させる。http://goo.gl/I1Si5j
……就労障害をきたしている腰痛患者を診察する際、「仕事は好きですか?」「上司との関係はうまくいっていますか?」「あなたが会社に貢献していることは適切に評価されていますか?」「仕事の内容に満足していますか?」という質問は回復を妨げている因子を確認する上で重要な質問です。しかしこれらに加えて「最近、あなたの会社はリストラをしましたか?」「リストラや採用抑制による人員削減はありましたか?」「あなたの組織の人員構成に変化はありましたか?」という質問も必要なようです。なぜなら、リストラは心理社会的に有害な労働状況であり、以前の地位とは関係なく健康にとって危険因子となり得るからです。

■リストラは解雇を免れた労働者にも影響する。大規模なリストラで解雇を免れた市職員は病欠が2倍以上に増加。高齢の労働者は特に大きな打撃を受け、50歳を超える職員の病欠は14倍にも増加した。去るは地獄、残るも地獄。http://goo.gl/N9eQAX
……この研究では、リストラを免れた労働者の腰痛をはじめとした筋骨格系疾患による欠勤が2年間で5倍以上に増加したことが判明しました。リストラはあらゆる社会経済的階層の労働者に影響を与えますが、高齢者や不安定な雇用形態にある労働者にもっとも致命的な影響をおよぼすようです。

 N  E  W  S

NEWS ■太極拳が心臓リハビリとして有益

ゆっくりした動きで運動をする太極拳が心疾患患者のリハビリ選択肢として有益なものとなる可能性があるようだという、ブラウン大学の研究者らによる先駆的研究。
太極拳は非常にゆっくりかつ簡単な動作で行われる運動なので、高リスク患者の身体に負担をかけることなしにリハビリとして行う事に希望がもてる運動である、と研究者は指摘する。運動強度も熟達度や体力に応じて変更していくことが可能なのだ。また、呼吸やリラクゼーションに注意を傾けることによって、ストレスの低下や心理学的な安心感を増幅していく上でも有益なのである。
本研究にはロードアイランド州プロヴィデンスの病院に通院する29人の身体的不活動状態にある心疾患患者が参加している。内訳は8人が女性、21人が男性であり、平均年齢は67.9歳であった。これら対象者の58.9%は心臓発作の既往歴があるか、冠動脈血栓解除術受けているもの(PCI術が82.8%、CABG術が31%)であった。研究では以下のことが明らかになった。
・太極拳は安全であり、副作用のような状態をも招く事もないようだ(正し軽度の筋肉痛は運動開始の初期には見られることがある)。
・太極拳は対象者がよく好んでいた(100%の対象者が友人にも勧めると回答していた)。
・太極拳は実行遵守の上でも合理的妥当性がある(平均で66%の出席率が見られた)。
・太極拳は3ヶ月後の時点で有酸素性フィットネスを向上させることはなかった(標準化された有酸素性運動負荷試験において)。
(10/10 tms-net)

NEWS ■科学的根拠乏しい「免疫療法」…がん拠点15病院で実施

がんの専門的な診療を担う国指定の434拠点病院のうち、科学的根拠が乏しく、保険が利かないがんの免疫療法が、2015年に少なくとも15病院で行われていたことが、読売新聞の調べで分かった。各拠点病院(がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院)が国に提出した「がんに関する保険外診療の実施状況」の資料から、免疫療法の実施状況を集計した。
これらの拠点病院ではがんを攻撃する免疫力を高めるとする治療法が多い。治療費はまちまちで「通常は5回実施157万5000円」と公表している病院もある。ただ、こうした治療を行う拠点病院のすべてが実施を報告しているわけではなく、実態は不明だ。中には、患者の費用負担がほとんどない臨床研究として行う大学病院も含まれている。国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「保険適用を目指した臨床研究は進めてほしい。だが、拠点病院には科学的根拠が確立された治療を普及させる役割があり、効果が証明されていない免疫療法を安易に導入すべきではない」と話している。
国が指定するがん診療の拠点病院の一部で、治療効果が確認されていない免疫療法が実施されていることについて、加藤厚生労働相は3日の閣議後記者会見で、「どういう形で実施しているのか、速やかに調査したい」と述べ、近く実態調査を行うことを明らかにした。厚生労働省によると、調査対象は全国に434ある拠点病院すべて。厚労省は、2019年度から適用する拠点病院の新しい指定要件について、有識者検討会で議論をしており、18年春頃に結論を出す方針だ。(10/4 読売新聞)

NEWS ■痩せるだけでうつは軽減する

肥満者のうつ病有病率は、正常体重者の2倍であると報告されている。肥満とうつ病には、潜在的に双方向の関連がある。いくつかの研究において、うつ病が体重増加や肥満を引き起こすことが示唆されており、他の研究においては、肥満者がその後うつ病を発症する可能性が高いことが示唆されている。オーストラリア・シドニー大学のN. R. Fuller氏らは、12ヵ月間の研究において、うつ症状と体重変化との関連性を調査した。Clinical obesity誌オンライン版の報告。
対象者70例に対し、3ヵ月間のライフスタイル(食事、運動)の体重減量介入を行い、12ヵ月間のフォローアップを行った。対象者はベック抑うつ質問票(BDI-II)を完了し、研究の期間中、体重測定を行った。ベースライン時における対象者は、BMI31.1±3.9kg/m2、体重89.4±16.1kg、年齢45.4±11.1歳、女性63%であった。主な結果は以下のとおり。
・ベースラインから3ヵ月までの平均体重変化は-5.2±4.3%、ベースラインから12ヵ月までの平均体重変化は-4.2±6.1%であった。
・12ヵ月間の調査において、BDI-IIスコアは有意に低下し、BDI-IIスコアの1単位減少は、体重の-0.4%減少と関連していた。
(10/11 tms-net)

NEWS ■ヨガと瞑想は脳の機能とエネルギーレベルを改善する

ハタヨガとマインドフルネス瞑想の短いセッションを実践することで、脳機能とエネルギーレベルが大幅に向上するというカナダ・ワーテルロー大学の新しい研究。ハタヨガやマインドフルネス瞑想をわずか25分間練習すれば、脳の実行機能、目標指向行動に関連した認知機能とともに、反射的・感情的反応や習慣的思考パタンをコントロールする能力が向上するという。
ハタヨガとマインドフルネス瞑想はともに脳の意識化能力を呼吸や姿勢などのいくつかの限定された対象に集中させ、非本質的な情報の処理を抑制するという作用を持っている、と研究者は言う。これらの機能は短期的に見た場合に、セッション後においても日常生活における注意力の向上などでその作用が持続するようだ。
31人の参加者が25分間のハタヨガ、25分間のマインドフル瞑想、25分間の読書(コントロール)をランダムな順番で実践した。ヨガと瞑想の後で、参加者は実行機能タスクで読書タスクよりもより良い成績を示したのである。
本研究の知見は、瞑想については何らかの特別な作用がもたらされている可能性があることが示唆される、と研究者は言う。物理的な姿勢に意識を傾けるヨガに対して、瞑想では動きが少なく深い内観をともなわざるを得ないからだ。そのため、ヨガでもたらされる認知的機能改善と比べることは興味深いものがある。
研究からはまた、マインドフルネス瞑想とハタヨガは両方ともエネルギーレベルを上昇させるのに有益であるが、ハタヨガの方が瞑想単独よりも独立してより強力な作用をもたらしているようだ、とも報告されている。(10/10 tms-net=一部)

NEWS ■不眠症への指圧効果

不眠症に対する低コストの代替治療法としての可能性を有する「自分自身による指圧」。中国・香港理工大学のWing-Fai Yeung氏らは、不眠症緩和を目的とした「自分自身による指圧」の短期的効果を評価するため、パイロット無作為化比較試験を行った。Journal of sleep research誌オンライン版の報告。
対象は、不眠症患者31例(平均年齢53.2歳、女性77.4%)。対象者は、「自分自身による指圧」(指圧群)または睡眠衛生教育(比較群)のいずれかのレッスンを受講するようランダム化された。指圧群の15例は、4週間毎日、自分自身で指圧をするよう指示された。比較群の16例は、睡眠衛生教育に従うよう指示された。主要アウトカムは、不眠重症度指数(ISI)とした。また、睡眠日誌、HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)、SF-6D(Short-form Six-Dimension)についても評価した。主な結果は以下のとおり。
・8週目において、指圧群は比較群よりも、ISIスコアが有意に低かった(エフェクトサイズ:0.56、p=0.03)。
・しかし、この有意差は、Bonferroni法で調整後、統計学的に有意なレベルに達しなかった。
・副次的アウトカムに関しては、睡眠日誌に基づいた睡眠潜時および中途覚醒において中程度の群間エフェクトサイズの差が認められたが、統計学的に有意ではなかった。
・指圧群のアドヒアランスは良好であり、92.3%の患者は、レッスン終了後も8週目まで指圧を実践していた。
(10/9 tms-net)

NEWS ■1時間程度立ってPC作業…運動不足解消へ工夫

働き盛りの体力低下の歯止めへ、知恵を絞る企業も出てきた。個人や法人向けに健康サポートサービスを提供する「ドコモ・ヘルスケア」(東京都渋谷区)は、2016年3月、オフィスに昇降式デスク105台を導入した。スイッチひとつで高さが変えられ、パソコン作業で座ったままの社員が、好きな時に1時間程度、立ってパソコンに向かう。眠気や足のむくみの改善に効果を感じる社員も多く、運動不足の解消に活用している男性(32)は、「何時まで立ってやろうと決めることで集中力も高まる」と歓迎する。同社ではデータ端末による社員の健康管理や朝のラジオ体操などの取り組みも行っている。
スポーツ庁では今月、オフィスで働く男女が体を動かす機会を増やすために、スニーカー通勤の推奨を始めた。同庁では「手軽にスポーツをしてもらうことが必要。歩くなど身近にできることも含めてスポーツ参画人口を増やしたい」としている。(10/9 読売新聞)

NEWS ■働き盛りの30〜40代、体力の低下傾向が深刻

働き盛りの30〜40歳代の体力低下傾向が、ほかの世代よりも深刻であることが、スポーツ庁の調査で分かった。同庁が9日の体育の日に合わせ、2016年度体力・運動能力調査を公表。現行方式の体力テストになった1998年度以降の推移で、男性は30歳代後半〜40歳代前半、女性は30歳代前半〜40歳代後半で低下傾向が見られた。企業が社員の健康を推進する「健康経営」が広がりつつあるが、社員の運動参加を促す取り組みがさらに求められそうだ。
調査は6〜79歳の約7万4000人を抽出し、約6万4000人からデータを得た。体力テストは握力、反復横跳びなど各項目の成績を得点化。青少年(6〜19歳)が緩やかな向上傾向にあり、高齢者(65〜79歳)は、75〜79歳女性の合計点が3年連続で過去最高を更新するなど多くの項目で向上した。(10/9 読売新聞)

NEWS ■青魚をよく食べる人はうつ病になる危険性が低い

国立がん研究センターなどのチームは9月27日までに、青魚をよく食べる人は、あまり食べない人よりうつ病になる危険性が低いとの調査結果を米医学誌に発表した。青魚には、炎症を抑えるなどさまざまな作用を持つn-3系脂肪酸が含まれることから、うつ病のリスクを下げると考えられるという。
チームは長野県に住む40―59歳の男女1181人を、1990-2015年の間、追跡調査した。食生活のアンケートを行い、青魚の摂取量を算出するとともに、14、15年にうつ病かどうかを診断した。1181人を青魚の摂取量に応じて4群に分類したところ、各群の摂取量は平均して1日57グラム、84グラム、111グラム、153グラムだった。うつ病になる確率は、青魚が最も少ない57グラムの群に比べ、111グラムの群では56%減っていた。他の2群も統計上意味のある差ではなかったものの、最も少ない群より危険性は低かった。
チームはまた、青魚の量から、エイコサペンタエン酸とドコサペンタエン酸などのn-3系脂肪酸の摂取量を計算。これらの成分を適度に取っている群は、うつ病が少ないことも確認された。チームの松岡豊・国立がん研究センター健康支援研究部部長は、「サンマであれば1日1尾弱を食べるといい」と話している。(9/27 ニュースイッチ)

NEWS ■糖尿病疑い、初めて1千万人超える

国内の糖尿病が強く疑われる成人が推計で1千万人に上ることが、厚生労働省の2016年の国民健康・栄養調査でわかった。調査を始めた1997年の690万人から増え続け、今回初めて大台に達した。厚労省は高齢化が進んだことが影響したとみている。
調査は昨年11月、20歳以上に実施。血糖の状態を示す血液中の「ヘモグロビンA1c」値の測定結果がある約1万1千人を解析し、全国の20歳以上の全人口にあてはめて推計した。
ヘモグロビンA1cが6.5%以上で糖尿病が強く疑われる「有病者」は12年の前回調査より50万人増えて1千万人に上った。男性の16.3%、女性の9.3%を占め、男女とも高齢になるほど割合が高い傾向だった。一方、ヘモグロビンA1cが6.0%以上6.5%未満で、糖尿病の可能性が否定できない「予備軍」は1千万人で、前回より100万人減った。
厚労省は、生活習慣病を防ぐために08年に始まった特定健診(メタボ健診)で予備軍は減ったが、高齢になってインスリンの分泌も少なくなることなどから予備軍の症状が悪化し、有病者が増えたとみている。高齢化がさらに進み、今後も患者数の増加が予想される。(9/21 朝日新聞)

NEWS ■「温泉で全身浴」は絶対にやめたほうがいい理由

日本で唯一の疲労医学の教授・梶本修身氏が、最新の疲労科学にもとづいて「疲れない習慣」をまとめた話題の新刊『なぜあなたの疲れはとれないのか?』から、一部抜粋して紹介する。
以前、「ためしてガッテン」で実験したことがあります。温泉好きの方に集まっていただいて、実際に伊豆の温泉に行きました。「温泉に入ったら疲れがとれる。疲れがとれるからよく眠れる」と皆さんおっしゃり、実際、43度ぐらいの熱いお風呂に長時間つかるのが好きだという方は、汗を垂らしながらつかっていました。
でも、入浴後、血液中に現れる疲労の目安である「疲労因子」を測ったところ、数値は下がるどころか上がっていました。つまり、お風呂に入る前よりも入った後のほうが疲れていて、かつ、朝になってもその疲れは残っていたのです。結論として、熱いお風呂で長時間全身浴をすることは、疲労をさらに悪化させることがわかりました。
温泉に行って熱いお風呂に何回も入る人は、自律神経の自主トレをやっているのと同じです。「温泉やお風呂に入るのはもうやめたほうがいいのかな」そう思った人もいるかもしれませんが、私は温泉や入浴自体を否定しているわけではありません。熱い湯に入るのが問題なのです。
このとき体内では、体温、心拍、血圧などが大きく変化して、それらを調整する自律神経には過大な負担がかかっています。その結果、自律神経にある細胞内で活性酸素が大量発生し、細胞が酸化してさびてしまい、疲労が起こるのです。(9/19 ダイヤモンドオンライン)


■次号のメールマガジンは2017年11月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)


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