エンタプライズ発信〜メールマガジン【№76】 2017. 8

7月は炎暑酷暑が続きましたが8月に入ると雨含みの冷夏。会社でも家庭でも冷房調整がむずかしくなり、一段と冷え性対策も難儀することに…。冷え症といえば、低血圧や貧血傾向の虚弱な女性が訴えるのが一般的でした。これを「古典的冷え症」とすれば、近年増えているのが「現代版冷え症」と言われます。古典的な人は冷えを自覚して対処していますが、現代版の人は自分の体力を過信し、不調になってから冷え対策を講じるケースがほとんどのようです。頭痛、めまい、動悸、不眠などが主症状で、自律神経のバランスが崩れている証左だと指摘されています。漢方では『冷えは万病のもと』であり、放置すると病気や、生活の質の低下につながる恐れがあります。漢方を中心に診療するドクターによると、対策では特に洋服と食べ物に気をつけてほしいと言います。冷やしてはいけない場所は、首の後ろとおなかまわりと足首。スカーフなどの使用がお薦めですが、アウトドア用品の薄手のネックウオーマーも使いやすい。レッグウオーマーや薄手の腹巻きも有効。足の指の汗を吸収する5本指の中履きソックスを履くのも末梢に効果的ですね。飲食では、コーヒーやビールは体を冷やすので避け、体を温める紅茶を推薦。また旬の食材は玉ネギ、カボチャ、ニラなどが好ましく、牛肉や鶏肉と合わせて油で炒めたり、生で食べることの多いトマトもネギ、ニンニクなどと煮込んでスープ仕立てにしたり、カレーは新陳代謝を促すスパイスが多くお薦めと言います。入浴はシャワーより湯船につかる方が温まります。全身浴なら約10分、ぬるめの湯の半身浴なら約20分。清涼感のある入浴剤やハッカ油を浴槽に適量入れると、入浴後の暑苦しさが和らぐので好適です。現代版冷え症は夏につくられ、秋に疲れや不調として現出しますので、天候不順のこの夏こそ冷やしすぎに気をつけ、上手に乗り切っていきましょう。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】老いない人の健康術 〜免疫と水素〜
【2】エネルギー医学の将来〜点と点からの発展性
【3】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【4】伝統医学をシルクロードに求めて 〜チベット医学
【5】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【6】N・E・W・S
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★★★★★★ 連載対談 ★★★★★★

老いない人の健康術 〜免疫と水素〜

* 安保 徹(元新潟大学名誉教授)
* 太田成男(日本医科大学教授)

元気な高齢者の共通点—-人のために生きる

[安保]:高齢になってもずっと元気な人を見ていると、いくつか共通点があります。105歳になっても日野原重明先生は今でも現役で働いていて(注:今年逝去)、人生の目的を持った人は強いですよね。これをするために生きるんだという目的ややりがい、社会に貢献しているという実感を持てるかどうかは、とても大切なことだと思います。
[太田]:やりがいというのは「幸せ感」ですよね。幸福を研究する学会というものがあってそこで聞いたのですが、「自分のために何かやっても幸せにならない。人のためにやることで、しかも自分にしかできないことをやるのが最高の幸せ」なのだそうです。
[安保]:自分にしかできないことを見つけるのは難しいかもしれないけど、役割だったら自分でつくり出すことができます。やりがいを感じることは仕事だけとは限りませんよね。自分の周りを見渡すだけでも意外とたくさんあるものです。
例えば町内会の問題を解決したり、人権擁護のアドバイスをしたり、環境保護活動でもいい。70歳を超えても役割をたくさん抱えている人はみんな元気だよ。やっぱり人の役に立って感謝されたら、これは幸せですよね。
[太田]:趣味のグループで取りまとめ役を買って出るのもいいですね。人のためになるというのは、社会貢献や世の中を良くするという大きなことだけじゃなくて、小さいグループの中でも十分にできることです。
そういったことを自分で見つける努力をすることが大切でしょうね。自分の役割が向こうからやってくることはあまりないと思います。だから自分がやってみたいことや得意なことを積極的に探すことが、結果的に健康や長寿につながっていくのでしょうね。
会社で仕事一筋だった人が、定年後には趣味もなくて時間を持て余すことはよくある話ですが、まずは趣味を見つけることから始めるといい。1人でやるよりもグループで集まって学ぶ方がコミュニケーションが発生して脳への刺激がより多くなりますよ。免疫もまた活性化します。
(次号へつづく)(出所:『安保流×太田流 老いない人の健康術』産学社刊2016)


連載vol.34

エネルギー医学の将来 〜点と点からの発展性

<小社編集部編>

パズルを埋めるピース(つづき)

生命の謎に関わる重要な情報は、さまざまなアーティストや武道家、スポーツ選手、そして彼らを指導・支援しているトレーナー、ヒーラー、インストラクターらからも得られている。彼らの目的は、人間の能力の限界に挑んで素晴らしい演技、演奏をしたり、新記録を樹立したりすることだ。また、負傷後できるだけ早く元の状態を回復することも、彼らにとっては重要である。
「われわれの感覚、本能、そして想像は、いつもわれわれの理性の先を行く」(オクタビオ・パース)

多岐にわたる分野から集まったすべての情報を取り入れて生命を科学的に解き明かそうとする仕事は、実に大きな収穫と喜びを筆者にもたらした。むろん科学者は疑うことが仕事だから、本書の読者もあらゆる記述に疑問を抱くことであろう。しかし本書のようなテーマについては、その疑問がどこから来たのかを考えていただきたい。その疑問は自然に関する何らかの事実や個人的な観察に基づくものなのか、あるいは誰かがどこかで教わってきたことの受け売りなのか、純粋で正当な疑問なのか、あるいはいつか会った誰かの偏見や誤解から生まれた疑問なのか、ぜひそれを考えてみてほしいのだ。

科学の方法

科学の方法や科学を発展させる方法については、多くの人が誤解をしている。例えば、すべての科学者が科学の方法を知っていて、その方法によって真実を追究していると誰もが思っているだろう。しかし否定されるかもしれないが、現実には科学者の数だけ科学の方法はある。科学とは1つの事業であり、適切なテーマに「ただ1つの正しい方法」で挑む「部外者お断り」のプロジェクトのように見ても、実は洋服のデザインや自動車のスタイルのように、流行り、廃り(すたり)があるのだ。科学者たちが真実を探る方法はそれぞれの時代に「ただ1つ」だったというだけで、時代とともに発想が変われば「真実」も移ろっていくのである。
私自身も、数々の恩師から研究に対するさまざまな取り組み方を教わってきた。そのなかで私が最も気に入ったのは、アルバート・セント・ジョージから教わった、科学を「楽しむ」という姿勢である。彼はその言葉どおり、科学を楽しみながら20世紀を代表する重要な発見を成し遂げている。(つづく)(出典『エネルギー療法と潜在能力』(小社刊))


連載エッセイ ㊹☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


自然治癒力に影響を及ぼす「習慣」と「思い込み」

医学の父と呼ばれているヒポクラテスは、そもそもからだ自体に不調を治す「働き」があると指摘し、「自然こそが最良の医者である」という方法論を提示しました。「健康を取り戻すためには、身体の働きをよく観察し、自然治癒力の妨げになっているものを取り除くことが必要である」ということを強調しています。自然治癒力とは人間がもつ「生命力」そのものです。自然治癒力を保ち、身体を健康な状態に維持していくためには、3つの仕組みを最大限に生かしていくことが必要です。
(1) 外部環境の変化に対して生理機能のバランスを保つ働き(恒常性維持)=適応力
(2) 外部から浸入してくるウイルス・細菌類と戦う機能 (生体防御機能)=抵抗力
(3) 傷ついたり古くなった細胞を修復したり交換したりする機能(自己再生機能)=再生力
本来、これらの自然治癒力の仕組みとなる3本柱は、私たちの身体に自然に備わっているものです。この自然治癒力はほとんどの人に平等に備わっているのです。

さて、自然治癒力=生命力を最大限に発揮させるためには何が必要でしょうか? 端的に言えば、身体にどのような「刺激」を加えるかという「習慣」のバランスです。習慣とは、日常の運動・思考・飲食など、あるいは休息・瞑想・断食などです。そこで「刺激のバランス」を思惟してみると、「刺激のON」とは、身体を使って運動したり、頭を使って思考したり、あるいは食べたり、飲んだりして、栄養素を取り入れて内臓を刺激している状態です。一方、「刺激のOFF」は、身体を休息させ、心おだやかに瞑想したり、プチ断食で少しの間内臓を休めたりする状態です。「過ぎたるはなお及ばざるが如し」と昔から言われているように、上手に休息をとることも自然治癒力を高めるためには大切な「習慣」になります。
もう一つ、自然治癒力に影響を及ぼすキーワードがあります。それは「意味づけ」です。いわゆる「思い込み」のことですが、知らず知らずのうちに、自分の自然治癒力にブレーキをかけてしまう思い込みをしてしまい、それが病気や症状の改善を妨げているという場合が少なくありません。例えば、
・使いすぎるから〇〇関節が痛い
・座りすぎで腰が痛い
・枕が悪いから首が痛い
・変形性〇〇と診断されたから、〇〇関節が痛い
・人工甘味料は体に良くない
・親が〇〇の病気(症状)だから私も〇〇になる
などです。

自分の治癒力よりも、一般論的な情報を無意識的に信じている場合が少なくないのです。ファミリーカイロではこのような思い込みを「意味記憶」として反応を引き出して施術を行います(本エッセイ№42も参照)。意味記憶の反応に対して、なるほどと理解できる人は、ほとんど改善方向へと向かいます。
身体や心の不調の原因の多くは、ある「経験」に基づきます。その経験は変えることができませんが、その経験に対する「意味づけ」は変えることができます。「経験」は、コントロール不可ですが、経験に基づく「意味づけ」はコントロール可能なのです。言い換えると、「経験」は他責になりがちですが、「意味づけ」は自責なのです。つまり、どのように意味づけるかの決定権は自分にあるということです。これを心理学では「自己決定性」と言います。自分の自然治癒力に確信が持てるように健康的な意味づけをしていきましょう。


《連載58》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)

ヒマラヤに開花したチベット医学

『四部医典タンカ全集』の創出(つづき)

摂政サンゲー・ギャンツォは、そうした五世ダライの威光を背にして、メディカル・タンカの整理、編集に着手した。彼はそれまでの各地に散在していた画稿をラサに集め、全チベットから著名な医薬学者を招請して60幅からなる『四部医典タンカ全集』を創出したのであった。それは編集責任者の彼の言葉を借りれば、「『ギュー・シ』を研究し学習する者にとって、掌中の透明な訶子(かし、アンマロク)のようなものであり、一目瞭然で、高名な学者から子供までが理解できるもの」であった。1688年のことであった。日本では江戸時代の後期、1774年に杉田玄白らが『ターヘルアナトミア』の内容を腑分けによって確認し、その感動をもって『解体新書』として訳出している。
この両書を単純に比較してもあまり意味はないが、胎児の発育過程などに見られる『タンカ全集』の ”科学性” は、現代の発生学者をして脱帽させる内容である。その内容はただ単に解剖学にとどまらず、病理、診断、治療、保健にまで及んでいることは、一種の驚きですらある。

『タンカ全集』はその後も内容を増し、針灸や尿診のタンカも加えられて78幅となり、1703年にはさらに1幅を加えての79幅『タンカ全集』が完成した。20世紀の初頭、ダライ・ラマ十三世の時代になり、ラサにはメンズィカン(医薬暦学院)が設立された。また前後3回にわたり、デプン(哲蚌)寺において79幅もの完全な複製が行われている。また筆者による訳で日本語『四部医典タンカ全集』(平河出版社)が刊行されている。これはチベット人民出版社から刊行された『四部医典系列掛図』(1986年、蔵漢対訳本)を底本としたものであり、現在のチベット医学の第一人者であるキェンラップ・ノルプンの「チベット歴代名医」のタンカを加えて、合計80幅から構成されている。

チベット医学の今後

昨今、チベット医学が世界の人々から熱いまなざしを向けられている。チベットはたしかに世界の屋根にあり、地理的には隔絶されており、極限の地であるかもしれない。しかしそこに脈々と伝承される医学は、世界の古代医学をあますところなく摂取し、ヒマラヤの薬草や鉱物を基礎とした独自性を持つものである。その歴史的、世界的な統合性の故に、チベット医学は再度の見直しをされる時期に差しかかっているのである。(この項了。次号は中医学余話をお伝えします)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(51)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****

腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■頚部痛患者41名を対象に患者自身の枕・ウォーターピロー(メディフロー社製)・ロール枕の有効性をランダム化クロスオーバー試験で比較した世界初の研究によって、ウォーターピローは睡眠の質を向上させ、頚部痛や頭痛の緩和効果が認められた。http://1.usa.gov/UGjrsi
……ただし患者自身の枕・ウォーターピロー・ロール枕を使用した期間が異なり(各1週間・2週間・2週間)、形状も著しく異なることからバイアスの可能性は否定できませんし、今後のさらなる比較試験が必要とはいえ、頚部痛患者にとってウォーターピローは将来有望な睡眠補助具になることが示唆されました。しかし疾病影響プロファイル(SIP)で評価された障害の転帰に変化は認められませんでした。

■半世紀以上にわたる腰痛予防戦略は完全な失敗に終わった。しかし未だに腰への負担を減らせば腰痛を予防できると考えている。以下にHadler NMの根拠に基づく論説を列挙する。http://1.usa.gov/UGpGfE http://1.usa.gov/PbF8U3
……腰痛はけっして職業病ではありません。何千もの企業が従業員に対し、作業姿勢に気をつけ、正しい方法で荷物を持ち上げ、その他のリスクファクターと思われることを避けるようアドバイスしています。それでもなお脊椎関連の就労障害は増加を続けて収拾がつかない状態にあるのです。

■職場で発症した腰痛にはっきりとした職業的原因はほとんどない。明らかな因果関係がないまま労災補償を要する損傷というレッテルを張るのは問題である。http://1.usa.gov/UGpGfE http://1.usa.gov/PbF8U3
……腰部損傷モデルは企業にとっても患者にとってもメリットはありません。デメリットしかないのであれば速やかに腰部損傷モデルを捨て去るべきでしょう。

■腰痛のリスクファクター(生体力学的因子)が同定されているとはいえこれらの危険性はわずかである。すなわち、仕事による身体的負荷によって腰が耐えられなくなることは滅多にない。http://1.usa.gov/UGpGfE http://1.usa.gov/PbF8U3
……多変量解析を用いた質の高い研究において、腰部損傷および労災補償の原因を説明する上で生体力学的因子が果たす役割は非常に小さく、その影響は統計学的に有意でないことが多いからです。

■職場「損傷」という概念は時代錯誤である。職務と大部分の腰痛との間には明らかな因果関係が認められないことから、腰痛などの愁訴を職場「損傷」と呼ぶのはやめるべきである。http://1.usa.gov/UGpGfE http://1.usa.gov/PbF8U3
……「損傷」という概念を筋骨格系疾患に適用する時代はすでに終わっています。こうした概念は不完全であることに加え、医師が作った誤った考え方でもあります。痛みを訴える労働者を負傷者としてではなく、病人として扱うべき時代になったのです。

■労災補償申請をする腰痛患者は、人間工学的原因よりもむしろ他の職場環境の面から説明できる可能性が高い。したがって、職場内における人間工学的以外の原因を探すべきである。http://1.usa.gov/UGpGfE http://1.usa.gov/PbF8U3
……人間工学的介入は半世紀以上にわたって続けられてきましたが、その有効性を裏付ける強力な証拠はいまだに示されていません。職場における予防的介入は必要だとしても、その中心となるのは心理社会的問題や職場組織の非身体的側面にあると考えられています。

 N  E  W  S

NEWS■「病は気から」の仕組み、マウスで解明…北海道大学

ストレスで胃腸の病気や突然死を招くメカニズムを、北海道大学の村上正晃教授(免疫学)のチームが解明し、8月15日付のオンライン科学誌イーライフで発表した。ストレスで起こる脳内の炎症が関わっていた。「病は気から」の仕組みが裏づけられたといい、ストレス性の病気の予防や診断への応用が期待される。チームは、睡眠不足など慢性的なストレスをマウスに与えた。そのマウスのうち、自分の神経細胞を攻撃してしまう免疫細胞を血管に入れたマウスの約7割が、1週間ほどで突然死した。一方、ストレスを与えただけのマウスや、免疫細胞を入れただけのマウスは死ななかった。突然死したマウスを調べたところ、脳にある特定の血管部分にわずかな炎症があることを発見。炎症はこの免疫細胞によって引き起こされ、通常はない神経回路ができて胃腸や心臓に不調をもたらしていたことがわかった。村上教授は「同じストレスを受けても、この免疫細胞の量や脳内の炎症の有無によって、病気になるかどうかが分かれると考えられる」と話している。(8/15 朝日新聞)

NEWS■がんの5年生存率、全体で65.2%

国立がん研究センター(国がん)が8月9日に公表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2015年全国集計、2008年5年生存率集計公表」から、部位別に大きなバラつきがあることが確認できます。今般の集計は、全国のがん診療連携拠点病院(2015年4月末で425施設)のうち、患者の生存状況把握割合が90%以上などの209施設を対象に、2008年にがんと診断された患者28万3012症例を対象に行われました。
生存率には、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた「実測生存率」と、がん以外の死亡原因を除去して計算した「相対生存率」があります。前者の実測生存率では、平均的な患者について疾患の経過を一定程度見通すことができ、後者の相対生存率では、がん対策の効果などを把握することができます。
がん全体の5年生存率を見ると、相対生存率65.2%、実測生存率58.0%となりました。全国推計である「地域がん登録におけるがん全体の5年相対生存率62.1%」(2006-2008年)よりやや高く、がん専門施設の集計である「全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)の相対生存率69.4%」(同)よりもやや低くなりました。国がんでは「施設により対象患者の背景が異なることに影響している」とコメントしています
部位別(全臨床病期)に見てみると、5大がんでは、▼胃がん:70.4%(相対)、61.2%(実測)▼大腸がん:72.6%(相対)、63.6%(実測)▼乳がん:92.7%(相対)、88.8%(実測)▼肝臓がん:38.5%(相対)、33.9%(実測)▼肺がん:39.1%(相対)、34.5%(実測)―となり、バラつきがあることが改めて確認できます。
その他の部位では、▼食道がん:43.4%(相対)、38.5%(実測)▼膵臓がん:9.9%(相対)、8.8%(実測)▼子宮頸部がん:75.6%(相対)、72.7%(実測)▼子宮体部がん:82.8%(相対)、79.8%(実測)▼前立腺がん:97.7%(相対)、81.7%(実測)▼膀胱がん:71.2%(相対)、58.8%(実測)―という状況です。また病期別に見ると、ステージが上がるにつれて5年生存率は大きく低下することも改めて明確にされています。早期診断に基づく、適切な治療の重要性を再確認できます。なお、都道府県別・施設別の5年生存率も公表されましたが、国がんでは「患者の年齢や病期などで大きく変動するため、単純な比較はできない」旨を強調しています。「がん生存率第1位は◎◎病院」などといった不確かな情報に踊らされないようご注意ください。(8/15 メディ・ウオッチ)

NEWS■男性ホルモン減少で更年期障害=寿命も短くなる

男性ホルモン(アンドロゲン)は、テストステロンやデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)などのステロイドホルモンの総称で、男性的な体や心に深く関係している。精巣で作られるテストステロンは局所の血流を上げることによる勃起機能や造血機能、筋肉を増強する効果がある。また脳の前頭葉や視床下部、海馬にも影響を与えることから意欲や性欲、食欲などの欲求の他、記憶力にも関係していることが分かってきている。
男性の生活活動全般に影響を与えているアンドロゲンは20代をピークに減少していく。そこにストレスが加わると、不眠やうつ、物忘れ、勃起不全(ED)、メタボリックシンドローム、動脈硬化や心筋梗塞などにまで発展する恐れがある。さらに要介護高齢者で調べたところ、テストステロン値が低い男性ほど余命が短いという結果が出た。そこで気になるのがアンドロゲンの数値を維持する方法だが、メタボ対策と同じで、生活習慣を変えるのが一番だという。
具体的には、ウオーキングやジョギングなどの軽度な有酸素運動と筋肉に負荷を与える運動(筋トレ)を1日30分程度、週に2〜3回行うとよい。食生活も重要で、アンドロゲンを増やす、あるいはアンドロゲンの作用を強めるにはタマネギやシジミ、朝鮮ニンジンなどが効果的だ。特にタマネギなどネギ類に含まれる含硫アミノ酸はアンドロゲンの生成を促すという。さらにアンドロゲンは寝ている間に回復するので、十分な睡眠を取ることも重要だという。(8/14 メディカルトリビューン=時事)

NEWS■介護職員の離職率16.7%…人手不足が常態化

厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」は8月4日、2015年10月からの1年間に全国の介護職員の16.7%が退職したとの調査結果を公表した。前年に比べ離職率は0.2ポイント悪化、全産業平均の15%(15年)も上回り、人手不足が常態化している状況が裏付けられた。調査は16年10月に実施し、8993事業所、2万1661人から回答があった。
介護職員の過不足を事業所に尋ねたところ、「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせると62.6%で、1.3ポイント増えた。理由は「採用が困難」が73.1%と最も高かった。(8/4 共同通信)

NEWS■中年期のBMIと認知症リスク…59万人のメタ解析

スイス・ジュネーブ大学のEmiliano Albanese氏らが、中年期のBMIと認知症との関連について、相反する19研究における約59万人のメタ解析を行った結果、中年期の肥満が認知症リスクを増加させることが示された。一方、低体重と認知症との関連性は依然として議論の余地があるとしている。
本研究では、標準的なデータベースを検索し、中年期の低体重・過体重・肥満と認知症リスクに関する集団ベースの前向き研究を特定した。ランダム効果メタ解析および調整相対リスク(RR)推定値のメタ回帰を行い、研究間の異質性を調査した。主な結果は以下のとおり。
・19研究において最大42年間追跡調査された58万9,649人の参加者(2,040人が認知症を発症)を評価した。
・中年期(35〜65歳)の肥満(BMI≧30)が晩年の認知症と関連していた(RR:1.33、95%CI:1.08〜1.63)が、過体重(25<BMI<30)は関連していなかった(RR:1.07、95%CI:0.96〜1.20)。
・中年期の低体重との関連(RR:1.39、95%CI:1.13〜1.70)は、残存交絡(メタ回帰によるp=0.004)、選択バイアス(p=0.046)、情報バイアス(p=0.007)により引き起こされた可能性がある。
(8/4 CareNet)

NEWS■よく眠れないとアルツハイマー病リスクが増大する

深い睡眠状態が中断され、ぐっすり眠れない状態が続くと、アルツハイマー病に関係する脳内の「アミロイドβ」や「タウ」といった蛋白質が増加することが、米ワシントン大学などのグループによる研究で明らかになった。同グループは「中年期にぐっすり眠れない夜が続くと、その後アルツハイマー病を発症するリスクが高まる可能性がある」としている。
今回、米ワシントン大学神経科のDavid Holtzman氏らは、35〜65歳の睡眠障害がない健康な男女17人を対象に、睡眠の質を測定するモニタ(アクチグラフ)を最長で2週間装着してもらい、さらに実験室で一晩、ポリソムノグラフィによる睡眠検査を実施した。このとき、対象者の約半数にはノンレム睡眠時の深い睡眠状態にある時に起こる「徐波活動(Slow wave activity)」がみられている
際に、ヘッドホンから音を流して徐波活動を妨害した。さらに、その後1カ月以上が経過してから再び実験室に来てもらい、残りの対象者に対して同様の実験を行った。
各実験を行った日の翌朝、脊椎穿刺によりアミロイドβとタウの値を測定した結果、徐波活動を妨害された群では、妨害されなかった群に比べてアミロイドβが10%増大していた。しかし、タウの値については有意な変化は認められなかった。一方、実験前の1週間に自宅でアクチグラフにより測定した睡眠の質が低かった対象者では、タウの値が上昇していた。アミロイドの値はタウの値に比べてすぐに変動しやすいため、この結果は妥当なものだと考えられるという。
研究論文の筆頭著者で同大学神経科のYo-El Ju氏によると、一晩あるいは1週間程度ぐっすり眠れない夜があったとしても、その後しっかり眠ることができればこれらの蛋白質の値は正常に戻り、アルツハイマー病リスクにはそれほど影響しないと考えられるという。一方で、「慢性的に睡眠に問題を抱える人ではアミロイドが常に増えている状態が続き、アミロイドが沈着してアルツハイマー病のリスクが上昇する可能性がある」と同氏は指摘している。(8/3 CareNet)

NEWS■日本人ますます長生き、厚労省…平均寿命、世界2位

2016年の日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.98歳となり、いずれも過去最高を更新したことが7月27日、厚生労働省が公表した簡易生命表で分かった。男性が世界4位から順位を上げ、女性とともに香港に次ぐ2位となった。15年と比べると、女性は0.15歳、男性は0.23歳のプラスとなり、5年連続の延びとなった。厚労省は「生活環境の改善が進んだことや、自殺者が減ったことも影響」としている。
主な国・地域の平均寿命によると、女性は1位:香港(87.34歳)、3位:スペイン(85.42歳)。男性も1位:香港(81.32歳)で、3位:キプロス(80.9歳)。(7/28 共同通信)

NEWS■塩分過多は糖尿病リスク大きく <山形大学>

塩分摂取量が多いと、高血圧だけでなく糖尿病にもかかりやすい傾向がある-。山形大学医学部は7月18日、こんな研究結果を発表した。県民約2万人の疾病などを追跡調査する同大の「コホート研究」の一環で、米沢市民対象の調査で分かった。今後、塩分摂取量と糖尿病発症リスクの因果関係を詳しく調べる。
調査は2015年に健康診断を受けた30〜70代の男女2100人の尿を分析。1日の推定塩分摂取量は12.1gで、全国平均10.0gを2.1g上回った。
塩分摂取量と高血圧、糖尿病の有病率の関係については、高血圧は摂取量6g未満は22.6%だったが、摂取量の増加とともに上昇傾向を示し、22g以上は65.4%だった。糖尿病も同様に3.2%から30.8%と推移した。
研究を担当したメディカルサイエンス推進研究所の冨樫整データ管理部長は「塩分の取り過ぎによる高血圧や腎機能への影響はよく知られるが、糖尿病との相関関係が示されるのは初めてではないか」と話す。塩分摂取が生物学的に糖尿病を誘発するのか、塩気の強いもの食べるとご飯が進んだり、甘い物が食べたくなったりすることに由来するのか、食事の好みを記した問診データなどから分析する方針だ。(7/19 共同通信)


■次号のメールマガジンは2017年9月10日ごろの発行です。(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ