エンタプライズ発信〜メールマガジン【№65】 2016. 9

№61で水について少し触れましたが、冷たすぎる飲み物よりは常温のものを好む人が増えてきています。次のような効果が期待できると言われています。冷たい水では取り除けない老廃物を排除する、胃腸や内臓などへの負担が減る、代謝がアップするため身体が疲れにくくなる、などです。さて季節は移ろい、時節は中秋を迎えました。それでは熱い飲み物はどうなんでしょう。こちらは体の芯から温まり、血行がよくなり、やはり新陳代謝も一般に高まります。反面、「熱い飲み物は食道がんになりやすくなる」という話も。これはどれくらいの熱さを指すのでしょうか。国際がん研究機関(IARC)は今年、「非常に高い温度で摂取される飲み物」を、食道がんの推定原因として分類しました。この報告によると、「65℃以上の温度で飲み物を飲むことが食道がんにつながる可能性がある。飲み物の種類は関係なく、重要な因子はその温度である」とのことです。70℃ほどの熱さのお茶を飲む中国、イラン、トルコ、南米ではがんのリスクが高く、60℃以下でお茶などを飲む欧州と北米ではがんのリスクが低いという様々な研究から示唆されています。日本人はというと、けっこう熱めの煎茶と熱燗の日本酒がありますが、上記のようにアツアツは考えものです。日本の冬シーズンは鍋ありおでんありで、食べ物の摂り方にも併せて留意したいところ。さらにアルコールについては日本酒にして1合以上飲むグループから食道がんリスクが上がり、1合から2合のグループで2.6倍、2合以上のグループで4.6倍高くなると報告されています。胸に響きますね。

★☆★━━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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Information -1-

「みんなの統合医療カフェ2016」を開催 〜女性ホルモンがテーマ〜

一般社団法人日本統合医療学会 統合医療女性の会は「みんなの統合医療カフェ」を2013年より定期的に開催しています。今回はさまざまな年齢における女性の不調に向き合ってきた医師・対馬ルリ子氏を招き、女性ホルモンでいつでも「最高の自分」でいるために、をテーマに講演してもらいます。
・9月17日(土)15:00〜17:00(受付開始=14:30)
・日本赤十字看護大学 205教室(東京都渋谷区広尾)
・参加費:2,000円
詳しくはhttp://aimw-r.com/

Information -2-

「世界脊椎デー」を10月16日に開催

今年も10月16日(日)は世界脊椎デーです。JACは世界脊椎デー(World Spine Day)の公式支援団体です。世界脊椎デーは、WHOおよびWFC協力のもと運動器の10年(BJD)の世界運動器活動週間(Bone and Joint Action Week)の一環として、世界中で脊椎疾患の理解と予防を呼びかけています。日本国内の主な活動は脊椎疾患予防のための運動や生活習慣(姿勢)のアドバイスなどです。
世界脊椎デー 公式サイト(英語)http://www.worldspineday.org/

Information -3-

日本構造医学会 大阪学術会議 10月23日開催

第21回となる日本構造医学会学術会議が10月23日(日)、大阪大学中之島センターを会場に開催されます。人体の全体性の理解を目指して一般医学の未解明領域を補填すべく体系を組み立てられてきた構造医学。演者が個々の現場で遭遇した問題等について討論し学びあえる学術会議を目指しています。
【日程】10月23日(日)12:30〜16:55  懇親談話会17:15〜
【会場】大阪大学中之島センター(大阪市北区中之島)
・詳細は096-212-8288 事務局

Information -4-

第12回 日本直立歯科医学研究会を大阪で開催 10月22-23日

ヒトは重力場の中で揺らぎながら立ち続けます。日本直立歯科医学研究会は体性感覚を司る下顎の姿勢修正機能に着目し、それに伴う《ある種の咬合干渉》が歯牙・歯周組織の破壊、義歯の不安定、知覚過敏等の原因であり、同時に直立姿勢に影響を及ぼしているという認識にたどり着きました。直立姿勢=自立→健康寿命をサポートするために、ヒト直立の観点から歯科の役割について根本から議論していきます。
【日程】10/22 10:00〜17:00  懇親会18:00〜
10/23 9:30〜16:30
【会場】大阪歯科大学創立100周年記念館 4階大講義室(大阪市中央区大手前)
・詳細は http://douken.kenkyuukai.jp/about/

Information -5-

「健康フォーラム2016」 開催予告

きたる11月27日(日)、カイロプラクティックの日本伝来100周年(横浜)および当時の神奈川県令を記念して日本カイロプラクターズ協会(JAC)は「健康フォーラム2016:日本の超高齢社会における健康寿命を考えよう」を厚生労働省、神奈川県、オーストラリア大使館後援で開催いたします。健康寿命実現について各分野の専門家、ケント・ギルバート氏(米カリフォルニア州弁護士・タレント)、蒲原聖可氏(健康科学大学客員教授)、フィリップ・エブロル氏(前セントラルクイーンズランド大学教授)にお話ししていただきます。神奈川県は「未病を治す かながわ宣言」を発表し健康寿命日本一を目指しています。また厚生労働省はスマートライフプロジェクトを立ち上げ健康寿命を延ばす活動を呼びかけています。
・健康フォーラム2016 公式サイト http://www.jac-chiro.org/healthforum2016.html


◎連載vol.23

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


《 Extra issue 》 〜エピローグ〜

『感情の分子(Molecules of Emotion)』という本を書いたキャンディス・バートは、ヒーラーたちが自らのエネルギーによって、患者の体内にあるレセプターの活動をどのように促しているかというメカニズムを推測している。この仮説は、基礎研究に携わっていた科学者たちの目を、将来が期待される新しい分野へと向けさせた。彼女は、神経ペプチドに関する研究を熱心に行っているが、その成果と、いま明らかになりつつある電磁波の意味を総合することによって、人間の健康と疾患のしくみや、あるいは感情の生物物理学的メカニズムがより詳しく解明されることになるだろう。

生体エネルギー研究の進歩を示すには、全身の機能をコントロールするための複雑な回路を示し、全身のバランスと調和を維持しているネットワークから一つの回路だけを切り離して、その仕組みを検証することが重要である。この単独の回路は、一連の電子的および電磁的相互作用に伴う化学反応のカスケードとみなすことができる。
あらゆる生体反応は結局のところ、細胞と分子、そしてそれらが生み出すエネルギーにより進められているので、次々と連続する反応を明らかにする研究も盛んに行われている。そのような研究により、細胞・分子・電磁気カスケードのどのプロセスが外界のエネルギーに最も影響されやすく、どれが影響を受けにくいかが特定されることになるだろう。また環境からの微かなシグナルは、増幅されることにより細胞に大きな影響をもたらすこともわかってきた。細胞によるエネルギーの増幅という仮説は、その重要性を認められ、1994年のノーベル医学生理学賞を受賞している。

つまるところ私たちは、サイバネティックス(cybernetics)を分子と電磁気のレベルで説明しようとしているのだ。ノーバート・ウィーナーがつくりだしたサイバネティックスという言葉は、通信と制御に関する科学のことを意味している。この用語は、ギリシャ語で操舵手を意味するKybernetesに由来する。操舵手は舵を少し操作するだけで、巨大な船が進む方向をいとも簡単に変えてしまう。それと同様に、少しのエネルギーを適切なタイミングで適当な部位に与えることによって生体の機能を変化させることができるのである。(次号につづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉝☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


薬物依存の治療 〜 大脳辺縁系と大脳皮質系

50代前半の女性の患者さんが、薬物依存の傾向があるので改善したいとの希望。薬物はデパスという抗不安薬である。不安感に襲われるとその薬物でその場をしのいでいた経験が長く続いているとのこと。最近、その頻度が多くなり、薬物から解放されたいとこのことだった。
検査を行ってみると、隠れた原因パターンは過去のお母さまとの関係性が絡んでいた。その背後にある信念などの「心の構造」を明確にしながら、脳に学習されていた「誤作動記憶」の陽性反応を施術した。

その後の来院で、薬物依存の治療のあとすごく気分が楽になり、週末も心地よく過ごせたのとのご報告をいただいたが、トイレなどの狭い空間や、高速道路の運転などで、気持ちは大丈夫だが、何かいつもとは違う妙な感覚があるとのこと。検査をしてみると、感情や信念、価値観などの大脳辺縁系関連の誤作動反応はでない。その代わりに、エピソード記憶(大脳皮質系関連)の誤作動反応がでた。つまり、脳の中で記憶された症状、すなわち、脳で創り出される違和感の「誤作動記憶」だった。
依存症の治療は、本人のコミットメント(本当にやめたいという覚悟)が50%以上なければ、治療効果を引き出すのが難しくなる。言葉ではやめたいといっても、心の奥ではやめたくない自分がいたりする場合が大半を占める。やめたいと思いつつも、やめたくない自分もどこかにいるということを認めながら、やめたい自分が50%以上優っている場合は、治療効果がすぐに引き出せる。

今回紹介した患者さんは当院で別の症状で治療を受けており、信頼関係のレベルが高かったので治療効果がすぐに引き出せたようだ。本症例は「大脳辺縁系」と「大脳皮質系」の両方に絡んだ症例だった。


《連載47》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


6. 日本編 〜杉山和一小伝〜

<小伝5>(つづき)

ある日のこと。5代将軍・綱吉は冗談半分に、何か欲しいものはないか、と和一に尋ねた。和一は大まじめに答えた。「目をひとつ」。その場で綱吉は望みをかなえてやった。すなわち江戸・本所一ツ目(現在の両国)に約2000坪の土地を与え、また黄金の弁財天を与えて、江の島への月参は中止するよう勧告した。
1673年(元禄6年)、本所一ツ目に壮麗な弁天堂が建てられ、江戸の新名所になった。

84歳を迎えた上席奥医師の和一は、なおも意気盛んで、脈診による綱吉の定期検診を欠かさなかったが、翌74年(元禄7年)、85年間にわたる長い人生を閉じた。生涯を通じて独身であったという。遺言により、遺骸は江の島・辺津宮に葬られた。
本所一ツ目の弁天堂は、3回の火災に遭い、そのたびに再建されて現在は江島杉山神社(墨田区千歳1)となっている。その境内には、杉山和一の徳をたたえる点字の石碑が建てられている。

<小伝6>

元禄時代の武家や町人の社会を写実的な筆致で描いた井原西鶴は、「浮世の月見過しにけり末二年」と辞世の句を残し、52歳の人生を閉じた。当時は「人生五十年」の時代だったことを考えると、杉山和一の85歳の生涯は、驚異的に長いものであったと言える。それを支えたのは、針術への絶えざる修練であり、それ以上に、視覚への執念のようなものだった。和一の詠んだ和歌がある。

〝見てはさぞ聞きしにまさる年月の心ぞつもる富士の白雪〟(了)


次号より、本連載中、特に好評であったチベット編の伝統医学のディープの世界に焦点を当て連載を継続していきます。ご期待ください。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(40)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■牽引は腰痛や神経根症状に対して効果はない。TENS(経皮的神経電気刺激:低周波治療器)が急性腰痛患者に有効だというエビデンスはない。http://amzn.to/Hk8veA
……牽引には効果がないというこれだけ強い勧告が出されているのです。国によっては訴えられるかもしれませんし、医療費も支払われないでしょうから治療者が自腹を切ることになります。無駄な治療に時間とお金をかけるのはいかがなものでしょう。

■限定的なエビデンスながら、インソールは軽度の腰痛患者において症状を緩和させる可能性はあるが、長期成績に関するエビデンスはない。2cm未満の下肢長差は腰痛における臨床的意義はない。http://amzn.to/Hk8veA
……人の身体は左右対称ではないので足の長さに違いがあっても問題になりません。腰痛の原因になるというエビデンス(科学的根拠)はないのです。

■腰部コルセットやサポートベルトが急性腰痛の治療に有効だというエビデンスはない。慢性腰痛に対するトリガーポイント注射の有効性は不明確であり、特に急性腰痛に関するエビデンスはほとんどない。http://amzn.to/Hk8veA
……コルセットやサポートベルトはもちろん、トリガーポイント注射も腰痛には効果がありません。この事実は最新の腰痛診療ガイドラインの勧告でも同じです。

■靭帯および軟部組織への注射は侵襲的であり、重篤な合併症を引き起こす危険性がある。鍼治療が慢性腰痛に有効だとするエビデンスは乏しく不明確であり、急性腰痛に対する有効性に関するエビデンスはない。http://amzn.to/Hk8veA
……鍼治療については最新の腰痛診療ガイドラインが「慢性腰痛に有効」だと勧告しています。

■ステロイドの硬膜外ブロック注射は局所麻酔剤の有無とは無関係に、他の治療法と比べて坐骨神経痛(神経根症状)を伴う急性腰痛の症状を一時的に緩和する可能性が高いと考えられる。http://amzn.to/Hk8veA
……どんな治療法でも言えることですけれども、一時的に症状が緩和しているうちに身体を動かすことが治癒を促します。ある治療法ですべてが解決するわけではありません。

■限られたエビデンスによれば、ステロイドや局所麻酔剤とオピオイドを併用した硬膜外ブロック、あるいはいずれかの単独注射は、神経根症状の伴わない急性腰痛に対する有効性が証明されていない。http://amzn.to/Hk8veA
……現時点では急性腰痛(ぎっくり腰)に硬膜外ブロックの適応はないということです。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (65)

根本 良一(療動研究所主宰)

【 連動操体法の応用編 】

[5] 頸部の異常

首から肩、腕、手指に関わる異常は、特に局所の酷使ということではなくてもよく起きる。姿勢が悪くて生じる場合や、交通事故や転倒などによる「歪みの連動」で起きる場合など原因はさまざまある。そのため頸部の異常の際は原因と流れをよく観察、類推して、無理な操作はしないようにする。
したがって、姿勢を改善するとか、足からの影響はどうかなどの鑑別が治療への重要なポイントになる。
従来、頸部の愁訴は職業病が多いと言われているが、職業が多様化して、どの職業とは言いがたい。また頸腕障害とは名ばかりの、足、腰まで痛みが現れたりするので、全身の連動関係で捉えなければならない。実際、腰が悪い場合でも、首、手腕まで歪みが連動し、大腰筋の操作、足指から手指までの連動操作をすることが多い。

1)異常の診かた

a)指の握り・開きの異常
握力が弱くなっていないか? 指の開きはどうか?をフィンガースケール(下に解説)で診る。指の握りや開きの異常はだいたい初期の段階なので、すぐに連動操体法で処置できる。局所の問題、例えば手指の酷使などの場合は、手首の動きなど局所の動きも併用する。

■フィンガースケール(開指計測器)とは…
ひとつの操作が終わった時点で、患者の五指をいっぱいに開かせ、母指尖から小指尖までの開指角度を見る器具として使われる。このスケールがなくても術者の開指を基準にして判断することもできる。開指角は、歪源を解消する連動があるところまで到達したときに急に拡大する。このときから良い連動が始まる。十分に連動ができると開指角は大きくなり、患部の愁訴は消失し、動作が楽になる。(だいたいの目安は130-150°)
この開指角は、患者の歪体の状態や姿位・姿勢などにより頚髄神経へ連動し変化する。また個人差もあるので絶対値としての評価はできないが、操体の効果度や条件負荷時(悪い姿勢)などを知る上では有効かつ手短な計測方法と言える。


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■血管ゆるめて血圧下げる

日本人の平均寿命は、厚生労働省の最新統計によれば女性87.05歳、男性80.79歳。世界一とはいえないものの、相当に長い。長寿をもたらした理由はいくつかある。慶応大学の岡村智教教授は、「成人が長生きになった最大の要因は血圧が下がったこと」という。日本人の血圧は1965年をピークに低下。それに伴い、脳卒中による死亡が大きく減った。
高血圧の人が生活習慣を変えることでどれほど血圧を下げられるか。日本を含む世界の研究を分析した報告がある。その結果だと、有酸素運動によって収縮期血圧(最高血圧)は4.6ミリHg低くなった。運動の中身はほぼ、30〜60分の早歩きやジョギングを週3〜5回のペースで続けるといったものだった。収縮期血圧が4ミリ下がれば、脳卒中や心筋梗塞による死亡率が5〜9%ほど下がるという推計もある。
運動で血圧が下がるしくみの解明も進む。東京大学の山本希美子講師によると、体を動かすことで血流量が増えると、それを血管の内側にある細胞がキャッチして、血管の筋肉をゆるめる物質が放出されるらしい。天然の降圧剤といえるかもしれない。
(9/14 朝日新聞)


NEWS ■4人に1人「本気で自殺したい」……4万人調査

4人に1人が本気で自殺を考えたことがあり、過去1年以内に自殺未遂をした人が推計で53万人に上った。日本財団(笹川陽平会長)が9月7日に発表した自殺意識調査で、こうした実態がわかった。自殺を考えた人が悩みを相談できない状況も浮かび上がっている。
調査は8月2〜9日、調査会社に登録されているモニターを対象に実施。地域や性別、年代のバランスを考慮して全国の20歳以上の男女約4万人から回答を得た。さらに人口構成に合わせた分析を加えた。
これまでの人生で「本気で自殺したいと考えたことがある」と回答した人は、全体の25.4%。女性が28.4%で、男性の22.6%を上回った。若い世代ほど自殺を考えた割合が高い傾向にあり、20〜30代は男女とも30%を超えた。実際の自殺者は40〜60代が多いが、若年層も自殺のリスクが高いことが判明した。
(9/7 朝日新聞)


NEWS ■「仕事上の会食」は心臓には悪い

典型的な「仕事上の付き合いでする食事」は、牛肉や豚肉、甘い飲料、加工食品やアルコールがふんだんに含まれるものだが、こうした食事は心臓に大きな負担となり、アテローム性動脈硬化のリスクを高めることがわかった。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学(ニューヨーク市)心臓病学教授のValentin Fuster氏らの研究で、外食、慌ただしく食べる軽食、過度の飲酒などを含むこうした食事パターンは、いわゆる西洋式の食事であること以上に良くないという。
Fuster氏らは、40〜54歳のスペイン人4000人超を対象に、「地中海食」「西洋式の食事」「仕事上の付き合いでする食事(social business diet)」という3つの食事パターンが心臓にもたらす
影響を検討した。地中海食は、果物や野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ類が豊富で、西洋式の食事は赤肉や加工肉、バター、高脂肪の乳製品、精製穀物が多く含まれる。
その結果、仕事上の付き合いでする食事をしていた群では、心血管リスクのプロファイルが有意に悪く、特にアテローム性動脈硬化のリスクが高かった。この結果は年齢、運動習慣、喫煙歴などの影響を及ぼす因子を考慮しても変わらなかったという。
(9/5 HealthDayNews)


NEWS ■受動喫煙、日本人の肺がんリスク1.3倍……がんセンター

日本人でたばこを吸わない人が受動喫煙で肺がんを発症・死亡するリスクは、受動喫煙がない人に比べて約1.3倍に上昇すると、国立がん研究センターを中心とする研究班が8月31日、発表した。国内の9本の研究論文を統合解析した。日本人で受動喫煙によるがんリスクが科学的に証明されたのは初めて。
1984〜2013年に発表された、喫煙者の夫がいる非喫煙者の妻らを主な対象にした9本の論文を合わせて解析したところ、受動喫煙がある人はない人に比べ、肺がんリスクは1.28倍上昇すると出た。統計学的に明確な差が出た。
今回の成果を踏まえ、肺がんのリスク評価で受動喫煙は「ほぼ確実」から「確実」に変更、がん予防の指針「日本人のためのがん予防法」では、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から「避ける」に修正された。
(8/31 朝日新聞)


NEWS ■成人発症喘息で心疾患リスクが上昇か

成人になってから喘息を発症した人は、心疾患と脳卒中のリスクも高くなることが米ウィスコンシン大学内科助教授Matthew Tattersall氏らによる研究で明らかにされた。
この知見は、成人約1300人(平均年齢47歳)を対象とした研究によるもの。いずれの被験者も研究開始時点で心疾患はなく、111人が成人後に喘息と診断されており(遅発性喘息)、55人が小児期に喘息の診断を受けていた(早発性喘息)。全被験者の健康状態を14年間追跡した。
その結果、遅発性喘息患者は、早発性喘息患者および喘息でない人に比べて、心筋梗塞・脳卒中・心不全・狭心症・心臓関連死のリスクが57%高いことがわかった。この知見に基づいて、「医師は遅発性喘息患者の高血圧や脂質異常を注意深く監視し、危険因子を積極的に改善する必要がある」と、Tattersall氏は述べている。
米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のLen Horovitz氏は、「共通の危険因子が肺と心臓の健康状態を結びつけている可能性があると考えている。考えられる説明の1つは大気汚染であり、女性のアテローム性動脈硬化との関連が示されている」と話しており、一方で、遅発性喘息の成人は運動、健康的な食事、正常体重の維持によってリスクを低減できると助言している。
(8/24 HealthDayNews)


NEWS ■「貧乏ゆすり」で脚の血流が改善?

長時間にわたり座りっぱなしでいると、脚への血流が減少して心血管疾患の一因となる可能性があるが、米ミズーリ大学栄養・運動生理学助教授のJaume Padilla氏は、「貧乏ゆすりは下肢の血流を増加させるとは予想していたが、驚くべきことに、動脈機能の低下を十分に予防しうることが判明した」と述べている。
研究では健康な若者11人に3時間座ってもらい、その前後で脚の血管機能を比較した。座っている間、片方の脚は1分間トントンと動かしてから4分間休ませることを繰り返し、もう片方は動かさないようにしてもらった。その結果、被験者は1分間に約250回脚を動かしていた。貧乏ゆすりをした脚では、血流が有意に増加し、動かさなかった脚の血流は減少した。
Padilla氏は、「立ったり歩いたりすることで、できるだけ座り続けないようにすべきだが、それが無理ならば代わりに貧乏ゆすりをするとよいかもしれない。どんな動きでも、動かないよりはよい」と述べている。
(8/22 HealthDayNews)


NEWS ■親が長生きなら心疾患で死亡するリスクが低い

親が長生きした人は、そうでない人に比べて、70代で心疾患により死亡する確率が低いことが英国の研究で示された。長寿の親から生まれた子どもは、血管疾患、心不全、脳卒中、高血圧、脂質異常症になる比率が低いという。英エクセター大学医学校のLuke Pilling氏は、「親が短命だった人でも、自分の選択によって疾患になりやすい傾向を覆すことができる」とも述べている。
今回の研究では、2006〜2010年に55〜73歳の英国人18万6,000人強を集め、8年間にわたり追跡した。この研究の弱点の1つは、対象者を80歳以降まで追跡していない点であるが、それでもこの研究は重要で優れたものであるという。
Pilling氏によると、親から受け継いだ遺伝子は、対象者の血圧、コレステロール値、タバコ依存、肥満レベルに影響を及ぼすようだという。「いずれの因子も心疾患リスクに影響を及ぼすものだ。そのほかにも、損傷したDNAの修復が向上するなど、長寿をもたらす因子の存在を示す手がかりがいくつか見つかった」と同氏は述べているが、それを明らかにするにはさらに研究を重ねる必要があるとのこと。
「親が若くして死亡している人は、早期死亡の理由を特定し、治療可能な遺伝性疾患の有無を明らかにできるとよい。ただし親と子の寿命の間にみられる相関は弱いものであり、一般的には親が短命であったからといって自身の命運も尽きたのだと考える必要はない」と言う同じ研究者もいる。また両親が70歳以上まで生きていても、必ずしも自分も長生きできるとは限らない。親と子の長寿に関連がみられるのは、家族では健康的な生活習慣も似通う傾向があることも一因だと指摘している。
(8/15 HealthDayNews)


NEWS ■<電磁過敏症> 日本人の3.0〜4.6%に症状

北條祥子尚絅学院大名誉教授(環境医学)が代表を務める早稲田大学応用脳科学研究所の研究グループが、電磁波にさらされると頭痛や皮膚症状などが起こる「電磁過敏症」について、日本人の3.0〜4.6%が症状を訴えているとの研究結果をまとめた。調査を今後も続け、診断基準や治療法の開発につなげたい考えだ。
国際学術雑誌「バイオエレクトロマグネティックス」の最新号に論文が掲載された。すでに英国では2万人を対象にした調査で人口の4%に電磁過敏症の症状が見られるとの報告がある。実態調査は2012〜15年、北條名誉教授らが開発した問診票を32都道府県の一般市民2000人と、電磁過敏症を自己申告している自助組織メンバー157人に送付して実施。症状の有無や電磁波を出す家電製品などとの関連を尋ね、それぞれ1306人、127人から有効回答を得た。
研究グループは、「電磁波の発生源とその症状を2つ以上記述している」といった暫定基準を設定し、超えた人を「自己申告患者」と同等の症状を訴えていると判定。一般市民のうち60人が基準を超過した。60人が訴えた症状は、鬱や集中力の欠如などの神経症状が最も多かった。吹き出物や腫れ、赤みといった皮膚症状、頭痛、筋肉・関節症状が続いた。
症状と電磁波を出す機器などとの関連に関しては、自助組織の回答者127人のうち76人(複数回答)が家電製品を一番に挙げた。次いで携帯電話(74人)、パソコン(53人)、携帯電話基地局(39人)、テレビ(24人)、蛍光灯(23人)、送電線(16人)、電子レンジ(15人)、ラジオ・テレビ塔(7人)の順だった。自助組織メンバーはアレルギー疾患の既往率が65%と高く、その80%以上がシックハウス症候群や化学物質過敏症を併発していた。
電磁過敏症は発症の仕組みがよく分かっておらず、診断基準も定まっていない。同教授は「電化製品のあふれた現代では誰がいつ発症してもおかしくない。アレルギーのように患者が急増しないうちに何らかの予防策を提案できるよう、さらに調査を進める」と話す。
(8/28 河北新報)


NEWS ■2種類の「体内時計」が睡眠周期に関与

睡眠を遮断したときの脳の各領域の反応には、「体内時計」と「体内砂時計」がともに影響していることが新たな研究で示され、「Science」8月12日号に掲載された。
ベルギー、リエージュ大学の研究グループが実施した今回の研究では、健康かつ若年のボランティア33人に42時間起きていてもらい、その間に注意力および反応時間の試験を実施し、さらにMRI検査により脳活動を記録した。予想どおり、断眠時間が長くなるほど試験の成績は低下していた。一方で、検査の結果、「概日リズム」と「恒常的睡眠欲」という2つの基礎的な生物学的プロセスの間に複雑な相互作用があることが明らかにされた。
同誌の付随論説を執筆した米ハーバード大学医学大学院睡眠医学教授のCharles Czeisler氏によると、概日リズムは時計のようなもので、光と暗闇に反応して睡眠・覚醒サイクルを決定する。それに対して、睡眠欲は砂時計のようなものであり、起きている時間が長くなるほど眠りたい欲求が増大する。
もちろん、普通は連続42時間も起きていることはないが、現実的なレベルの睡眠不足でも仕事の能力は低下し、事故リスクが増大する原因となる。また、習慣的な睡眠不足の人は2型糖尿病や心疾患などのリスクも高くなる。しかし、仕事によっては長時間起きていたり、夜間に活動したりしなくてはならないこともあり、睡眠を増やすことは口で言うほど簡単ではないとDavis氏は認めている。また、Czeisler氏によると、現代の工業化社会では人工光があふれているため、覚醒時間が夜遅くにずれこみ、不眠症増加の一因となっているという。
(8/16 HealthDayNews)


■次号のメールマガジンは10月10日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ