エンタプライズ発信〜メールマガジン【№59】 2016. 3

要介護社会の実相がよりリアリティを増してきています。団塊の世代(編集子もそれにちかい予備軍)が2025年には75歳以上になり、介護が必要になる可能性があります。実際にどれくらい増えるのか。2013年における後期高齢者(75歳以上)は約1560万人、これが2025年には約2179万人まで膨らむとみられています。全人口に占める比率も約18%と、5人に1人近くまで上昇する見通しです。うち要介護・要支援者の総数は約755万人になると類推されています。介護保険制度は、今や制度疲労を起こしつつあることはご承知のとおりです。介護保険の総費用は、制度の始まった2000年度の3.6兆円から、2013年度に9.4兆円へと著しく増加。2025年には激増して約20兆円まで達する見込み。この局面の実態には、孤独死、老老介護、介護疲れ、介護難民などといった悲惨な現実が増えていくことが想像されます。今後“老い”が進むのは都市部だと指摘されています。都道府県別の75歳以上人口を見ると、東京都では2010年の約123万人から2025年には約198万人に、大阪府は約84万人から約153万人に増加する…。高齢化率が行き着いた地方と違い、都市ではこれから本番を迎えることになります。「介護する者、される者」。来るべき超高齢社会を前に、高齢者と家族はどう対応すべきか肉薄するリアリティを感じる今日この頃です。

★☆★━━━━━━━■CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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【 TOPIC 】

心身条件反射療法(ニューロ・パターン・セラピー)研究会開催

3月13日-14日にわたって心身条件反射療法(ニューロ・パターン・セラピー;PCRT)研究会(基礎1・中級3)が、東京・浜松町で開催された。心身条件反射療法は、ヒトの脳科学の枢要である反射系、大脳辺縁系、大脳皮質系に着目し、かつ心と身体の関係連鎖に視座を置きながら、生体に「誤作動」を生じさせるエネルギーブロック(EB)などを特定しそれを改善すべく治療アプローチを行う。今回の研究会では基本プロトコルをはじめ誤作動を生じさせるEBのレベルを特定する生体反応検査や手技によるスクリーニング検査法を実地とともに学んだ。次回は5/15-16の日程で基礎2および上級1が開催される。
照会先:http://www.mindbody.jp/

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◎連載vol.16

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


内的コヒーレンスの生物物理学(つづき)

体内にこのようなコヒーレント状態が生じると、生体に良い影響をもたらすと推測されるが、その一つの根拠は、蛋白質の機能に対する振動エネルギーの作用である。蛋白質は生体の重要な機能に必ず関与しており、各蛋白質分子が適切な形状になった時、その役割を完璧に全うすることができる。フローリッヒの著書に「言語としての遺伝子コード」というタイトルの1章がある。その中でフローリッヒは、DNAの特定の領域に起きる振動が、全身に情報を伝えるためのシグナルで、そのシグナルが最も効果的な蛋白質の分子配置を伝えているのではないかと考察している。

フローリッヒの仮説によると、遺伝物質の大部分を占めるアミノ酸配列を決定するコードとは無関係な成分は、エネルギー的な役割を果たしているという。機能のわからない遺伝物質は「ナンセンスDNA」「利己的DNA」あるいは「ジャンクDNA」などと呼ばれてきたが、フローリッヒによれば、酵素をはじめとするさまざまな蛋白質に、何通りでも可能な形状の中から最適なものを教えるシグナルを出しているというのだ。このメカニズムが本当ならば、DNAを受け継ぐことによって細胞や組織の複雑度が決まることも納得できる。DNA分子の振動を全身の分子に伝えて共鳴させる媒体は、いうまでもなく生体マトリックスと循環系だろう。

感覚能力の優れた人は、いずれかの生体リズムに意識を集中させることによって、生体エネルギーの共鳴を感じ取れるようになるのだろう。チルダーあるいはマクラティらが行った研究では、はじめに心臓のリズムに集中し、それからほかの生体リズムに結びつけていくという方法が用いられてきた。この方法以外にも、脳波に集中することから始めて、ほかのリズムとの同調化を促す方法や、呼吸を利用する方法も広く取り入れられている。

生体のあらゆるリズムが共鳴するまでの過程には、力学、電気、磁気、重力、熱、音、光といった多様なエネルギーが関係している。そして手技を伴うセラピストたちは、このいずれかのエネルギーを使って治療を行っているのだ。生体マトリックスには、どのような形態のエネルギーからも必要な情報を抽出する能力があるので、多くのエネルギー療法が効果を発揮するのである。しかしエネルギーに対する感受性や治療法の習得能力には個人差があり、それゆえ一人ひとりが自分に合った治療法を模索しなければならないであろう。
チルダーおよびマクラティらが用いた方法は、フリーズ・フレーム法という。内的コヒーレント状態を引き出すのに有効な方法としては、スティーブン・シュワルツが開発した共感的セルフケアやウィル・ジョンソンによる体現的トレーニングなどがある。(本項「エネルギー医学の将来」は了。次号では「エネルギーサークル」について紹介する)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉗☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


生理不順の改善(PCRTのコーチング手法を導入)

「今まで生理が遅れるということはなかったけれど、予定より2週間ほど遅れているのですよ」
筋骨格系の症状で通院していた患者さんが、今回は、今までにない心配そうな面持ちで相談してきた。PCRTで検査をしてみると、女性ホルモン系に反応を示す。原因を検査すると「信念」に関連するパターン。キーワードでは「執着心」に反応を示す。
何か心当たりはありますか? と尋ねると、笑いながら「恋愛でしょうね…」とのこと。さらに深い関係性がある反応が示されるので検査を進めてみると、「成長」というキーワードが示される。「恋愛」と「成長」というキーワードで何かひらめくことはありますか? と尋ねると、
「精神的なモノ…スピリチュアル的なものかな…」
恋愛を通じて、スピリチュアル的なものが得られたとして、その時にさらに何が得られるのでしょうか?
「彼との幸せ??」
もう少し突っ込んだ質問をさせてもらいますね。その幸せが得られたと感じた後に何が得られるのでしょうか?
「愛??」
その愛を得られたと感じた時に何か得られるのでしょうか?
「…………」

患者さんにとっては、そのよう質問は初めてだったようで、混乱の様子もうかがえた。おそらく「愛」というキーワードは、その患者さんとってとても大切な価値観につながる言葉であることは明らかだった。
もしも、愛に3つのレベルがあるとすれば、どのような愛についてか考えているのでしょうか?
「1. 受け取るだけの愛、2. 自分も与えて、相手からももらう愛、3. 無償の愛……」

患者さん曰く、「自分も与えて、相手からももらう愛かな??」 と答えていたが、生体反応検査では「無償の愛」で反応を示す。そのことをお伝えして施術を終えた。
その後、10分程度のホットパックを終えると、「何か分からないけれど、涙が出てくるのですよね…」と話されていた。意味が分からなくても、何か心に響いたのでしょうね。そのようなときは、だいたい効果があると思いますよ、とお答えした。

数日後、受付にその患者さんから電話をいただいた。施術の翌々日に生理が来て、感動して電話をしたとのことだった。
生理不順などの婦人科系の症状は、病院に相談されることが一般的だが、当院での治療経験もあり、おそらくここの治療で治るだろうと信頼していただいたのだろう。患者さんにとって良い結果が得られ幸いだったと思う。


《連載41》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


6. 日本編 〜杉山和一小伝〜

<小伝1>

海上のシルクロードを経由して、朝鮮や中国の医学が日本に移入された歴史は古い。早くも紀元414年には、新羅から招かれた医師が治療を行った記録がある。この医学は「韓医方」と呼ばれた。その後、遣隋使や遣唐使らの手により大陸の医学が直輸入されるようになる。薬師恵日(くすしのえにち)や倭漢直福因(やまとのあやのあたいふくいん)は、前後15年にわたって学んだ隋・唐の医学を日本に持ち帰っている。これにより律令政治のもとでの医療制度-官医は一応完備したものになった。一方、奈良時代は僧医の活動が目覚ましく、唐招提寺の帰化僧・鑑真は、嗅覚だけで薬草を識別して、少しの誤りもなかったという。

平安時代に入ると、日本人の手によって数多くの医薬書が編述されたが、その内容は隋、唐医学の模倣から抜け出したものではなかったようだ。現存する唯一の医書と言われる丹波康頼の『医心方』(982)は、中国でもすでに散逸してしまった隋・唐時代の医書からの引用であり、それを今日まで伝えるという意味で貴重な資料である。中世、近世へと時代が下がっても、先進的な医学を受容し、消化するという構造に大きな変化はない。鎌倉時代には宋医学が、室町時代には明医学が、そして江戸時代になると南蛮(バテレン)医学が続々と輸入された。それぞれの時代の日本人は、先進的な医学を精力的に移入し、それらを実地に応用する能力は十分に備えていたが、次の段階へと創造的に発展させていくことは不得意だったようだ。

ここに一つの例外がある。江戸時代前期の盲人・杉山和一が創始した管針(かんしん;くだばりとも言う)がそれである。この管針の技術により、簡単に針が刺せるようになっただけでなく、針を刺すときの痛みが大幅に緩和された。また、盲人が針医として進出する道が拓かれた。杉山和一は幕府の支持のもとに、盲人教育に力を入れ、中世以来、かなり下火になっていた針灸医学に新しい活力を吹き込んだ。

<小伝2>

1610(慶長15年)、杉山和一は武家の長男として伊勢安濃津(現在の三重県津市)に生まれた。父・権右衛門は藤堂藩(藩主;高虎)の家臣であった。権右衛門の禄高は200石だったから、比較的恵まれた家庭に育ったといえよう。武士として杉山家を継ぐ将来を約束されていた和一は、10歳のころ流行病(天然痘か?)に罹り、不幸にも失明してしまう。種痘の行われていない時代、天然痘は恐ろしい伝染病であった。これに冒された人は落命か失明、軽くても“あばた”になっていたという。失明したからには刀の道を捨てるしかない。家は弟に譲り、江戸に出て志を立てることにした。当時、新進の盲人針医として世に知られはじめていた山瀬琢一の門をたたいたのは和一が17歳の時であった。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(34)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****

腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■椎間板変性疾患というレッテルは科学的根拠のある診断名ではない。椎間板に異常があってもほとんどの患者は手術をしなくても回復するため、手術は優先順位の低い選択肢と考えて、保存療法で症状が改善しないごく一部の患者に限定すべき。http://1.usa.gov/sJxrHg
………腰椎の手術は腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法を2年間行なっても改善しないか、耐え難い下肢痛が持続している患者に限定すべきです。

■一般住民3,529名を対象にマルチスライスCTで腰部の椎間関節症(OA)と腰痛との関連を調査した結果、椎間関節症の検出率は年齢とともに上昇したものの、いずれの椎間レベルにおいても腰痛との間に関連は見出せなかった。http://1.usa.gov/ucUd13
………変形性脊椎症や椎間関節症候群というレッテルはただの幻想です。幻想を相手に闘いを挑んでも勝ち目はありません。というより無意味な闘いです。

■慢性筋骨格系疼痛にうつ病と不安障害が併存する患者は疼痛の重症度が最も高い。一部の医師は疼痛の治療によってうつ病や不安障害も改善すると信じているが、もし医師が疼痛の治療だけに集中すれば誤診と過少治療に繋がる可能性がある。http://1.usa.gov/vndBSW
………筋骨格系疾患を生物心理社会的疼痛症候群として治療しなければ、東日本大震災後に増加する恐れのある患者を救うことが難しくなります。医療関係者は一日も早く従来の考え方を改める必要があります。

■荷役労働者の腰痛予防と治療に関する9件のRCT(20,101名)と9件のコホート研究(1,280名)をレビューした結果、手作業運搬訓練やアドバイスが腰痛の予防や治療に有効だというエビデンスは存在しないことが判明。http://1.usa.gov/uKcAsk
………何度も繰り返しますが、楽な物の持ち上げ方はあっても腰に良い物の持ち上げ方はありません。そんなアドバイスをしていると物を持ち上げる度に腰に意識が集中し、腰痛の回復が遅れるだけでなく腰痛発症率が高くなります。だからこそ最新の腰痛診療ガイドラインでは、正しい物の持ち上げ方を教えてはならないと勧告しているのです。

■重篤な脊椎病変の可能性(レッドフラッグ)には直ちに専門医へ紹介しなければならない馬尾症候群がある。「膀胱直腸障害」「起立不能・歩行不能」「サドル麻痺」があれば緊急手術が必要。http://amzn.to/Hk8veA
………プライマリーケアレベルで馬尾症候群にお目にかかることはまずないでしょうけど、万が一にも見つけたら48時間以内に手術をしないと後遺症が残ってしまいます。気をつけましょう。

■馬尾症候群の症状と徴候、広範な神経症状、重度または進行性の運動麻痺は、重篤な神経系疾患を示す危険信号である。年齢に関連した重大な外傷歴(若年者の高所からの転落や交通事故、骨粗鬆症や高齢者の転倒など)は骨折の可能性を示唆する。http://amzn.to/Hk8veA
………これらのレッドフラッグがある場合は生物学的問題ですから専門医へ紹介しなければなりません。特に馬尾症候群は緊急を要します。けっして見逃すことのないように注意しましょう。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (59)

根本 良一(療動研究所主宰)

【 連動操体法の応用編 】


4. 胸背部の異常

1)動悸、息切れ、肋間神経痛(つづき)
また腹部が緊張していると、腹式呼吸がしにくくなり、胸郭拡大不全とあいまってこれも呼吸障害の原因になる。いろいろな部分の緊張が解消してもなお異常があるなら、帯状疱疹、心臓障害などが危惧されるので専門医の診察を受けるのが賢明であろう。
胸背部の緊張は、ときに肋骨の形まで変えることがあるほど(側弯症の例)、胸部に強く力学的ストレスを加えることがある。指圧、マッサージでは痛くて触れられなくても、連動操体法なら快く弛緩できる。

2)咳、喘息
風邪、肺炎、気管支炎、心臓喘息、気道異物、喉頭腫瘍など、咳の出る疾患は多いが、これらのうち器質的障害以外のものは操体法で解消できることが多い。咳込むときは経験的に背中をとんとん叩くとか、背中をなぜると良くなることは知られている。咳は気道に入った異物(多くは粘液;痰)を阻止排出する反射運動で、横隔膜、腹筋、さらに全身にわたって激しく反応する。
こうした状態では、背部が緊張して胸部が苦しかったり、とくに胸の中央部がムズムズしてくるので、原因となっている背部の緊張をとる連動操体法を行うと胸部がラクになり大きく息ができるようになる。30分から1時間ほどおいてこれを数回繰り返すと咳が忘れたように止まる。腰背部の障害では、少し間をおいて何度か繰り返すと、身体の自然良能が高揚し背部の歪源が解消されて喘息に打ち克つことができる。
このさい特に注意したいのは「悪い姿勢」である。腰や背中を丸くしていると身体の歪みが増幅し、背部が再び緊張してくる。
また喘息で咳込みが激しいと腹部が硬直してくる場合がある。咳をするたびに腹部の緊張を繰り返し、筋疲労の影響があるだけでなく、腰からの影響(大腰筋の緊張)があるときは、腰背部から肋間神経痛経由で腹筋までの操作を行うと胸も腰も軽快になる。


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■パーキンソン病の進行抑制、マウスで成功…阪大チーム

神経細胞の減少を防ぐたんぱく質を使って、パーキンソン病の進行を抑えることに成功したと、大阪大学の望月秀樹教授(神経内科学)らの研究チームが発表した。動物実験による成果で、新しい治療法の開発につながる可能性があるという。論文は3月14日、英電子版科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
チームによると、パーキンソン病は細胞内の小器官ミトコンドリアが傷つくことで脳の神経伝達物質ドーパミンを出す神経細胞の減少を引き起こし、手足の震えや歩行障害などの症状が出るという。
同チームは、神経細胞の減少を防ぐことで知られるたんぱく質「ネクジン」が、ミトコンドリアの働きを促進することを発見した。パーキンソン病を発症させたマウスの脳にネクジンの遺伝子を導入する実験を実施したところ、約90%の神経細胞が生き残り、症状の進行を抑制。一方、導入しない場合、30〜40%しか生き残らず、症状が進行したと推定した。
パーキンソン病の患者数は国内で約14万人とされ、ドーパミンを補う薬物治療があるが進行を抑えることはできない。望月教授らは「数年内に臨床研究を目指す」としている。近畿大医学部の平野牧人准教授(神経内科学)は「パーキンソン病との関連が言われていなかったネクジンの効果を示した。新薬や遺伝子治療が開発される可能性がある」と話した。
(3/15 読売新聞)


NEWS ■生薬の甘草がメタボに有効か

漢方薬に使われる生薬甘草の成分が、メタボリック症候群や糖尿病の原因となる内臓脂肪の炎症、線維化を抑えることを、富山大学などの研究グループがマウスによる実験で突き止めた。英科学誌電子版に3月15日発表した。治療薬の開発につながる可能性があるという。
研究グループは20週にわたり、高脂肪食のみ、高脂肪食と甘草に含まれるイソリクイリチゲニン(ILG)を与えるマウスに分けて実験。高脂肪食だけでは内臓脂肪の線維化がみられたが、ILGを与えたマウスは線維化が抑えられた。試験管での培養実験で、マウスの脂肪細胞の炎症がILGにより抑制されることも確認した。
(3/16 共同通信)


NEWS ■笑わないと脳卒中リスク増える? 千葉大学など調査

ふだん笑うことがほとんどない人は、ほぼ毎日笑う人に比べて脳卒中のリスクが1.6倍増えるとの調査結果を千葉大学や東京大学などの研究チームが発表した。2013年に全国の65歳以上の高齢者に調査表を送り、回答のあった2万934人を分析した。笑う頻度は「ほぼ毎日」「週に1〜5回」「月に1〜3回」「ほとんどない」の4段階で自己申告してもらった。
「ほぼ毎日」を基準とした場合、ほとんど笑わない人は、脳卒中にかかったことがあると答えた割合が1.6倍高く、心疾患も1.2倍だった。研究グループは「笑いが脳卒中や心疾患の発症を抑える可能性を示した」としている。
解析をした東京大学の近藤尚己准教授(社会疫学)は、「笑いは助け合いの元となる人のつながりを生み出したり、ストレスの軽減につながったりすることなどが考えられるが、さらなる研究が必要だ」と話す。
(3/12 朝日新聞)


NEWS ■がんは最善の死に方なのか〜中高年者の意識調査

英国の医療雑誌編集長Richard Smith氏の“がんは最善の死に方”という見解は多くの批判を集めた。今回、ロンドン大学のCharlotte Vrinten氏らは、中・高年者に対してこの見解に同意するかどうかを調査し、“良い死”かどうかという観点で、がんによる死と心疾患による死に対する考えを比較した。その結果、中・高年者の4割が、がんを“最善の死に方”と見なし、がん死のほうが心疾患死より良いと評価した。著者らは、「2人に1人ががんと診断されることを考えると、がんによる良い死についての会話が、がんへの恐怖を少し軽減するかもしれない」と記している。
本研究は、英国の50〜70歳のサンプル(n=391)における、性別および教育レベルでの割当抽出法によるオンライン調査(2015年2月実施)の一部である。“良い死”の5つの特徴は、終末期に関する文献から選択した。集団サンプルとがん・心疾患それぞれによる死亡の可能性との関連性を確保するために、彼ら自身の死について各特徴の重要性を評価するよう回答者に依頼した。また、Smith氏の見解に同意するかどうかも尋ねた。
主な結果は以下のとおり。
・少なくとも回答者の95%が、選択された5つの特徴が自分の死において重要かどうかを熟考した
・がんによる死は、心疾患による死と比べて、「起こることに対するコントロール」(p<0.001)、「痛みや他の症状に対するコントロール」(p<0.01)、「身辺整理のための時間」(p<0.001)、「愛する人に別れを言うための時間」(p<0.001)が提供される可能性が高いと評価された。一方、「死亡まで自立して生活することへの期待」においては差がなかった(p>0.05)
・ほぼ半数(40%)の回答者が、がんは“最善の死に方”という見解に同意し、年齢(p=0.40)、性別(p=0.85)、教育レベル(p=0.27)による差はなかった
(3/8 ケアネット)


NEWS ■DHAが神経の軸索伸長促進……岩手医大が解明

岩手医大は5日、魚介類に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)が、神経細胞にある突起の伸長を促進する分子メカニズムを解明したと発表した。乳幼児の脳の発達、うつ病予防などの治療に役立つ可能性がある。3月4日付の米科学誌オンライン版に掲載した。
DHAは脳神経の発達や認知機能維持に重要で、認知症などの予防に効果があると報告されている。ただ、脳神経細胞にどのような仕組みで作用するかは分かっていなかった。同大研究グループはラットの神経細胞を用いて実験し、DHAを投与すると軸索と呼ばれる突起の伸びる速さが増すことを確認した。軸索は脳内にある神経細胞同士の情報のやりとりに不可欠で、脳発達期にDHA摂取の重要性を裏付けた。
DHAが神経細胞のタンパク質生合成に関わる特殊な経路を活性化させ、「Tau」「CRMP2」という2種類のタンパク質を増やし、軸索の伸長を促すメカニズムも突き止めた。
(3/6 河北新報)


NEWS ■頸部痛にも喫煙が関連

タバコをやめるべき理由がまた1つ見つかった。新たな研究によると、喫煙により頸部の椎間板が損傷される可能性があるという。椎骨の間にある椎間板は脊椎への衝撃を吸収する役割を担うが、加齢とともに水分が減少して縮小し、その変性が首の痛みを引き起こす。今回の研究では、喫煙がこの自然な摩耗をさらに悪化させることが明らかにされた。
研究グループは、182人のCTスキャンを分析。その結果、現在喫煙中の人は喫煙していない人に比べ、頸部の椎間板変性疾患(DDD)が進行していた。この知見は米カリフォルニア州、サクラメントで開催された米国物理療法専門医会(AAP)年次集会で発表された。
研究を率いたエモリー大学物療医学・リハビリテーション部門研修医のMitchel Leavitt氏は「ペインクリニックや脊椎クリニックは慢性的な頸部痛や腰痛の患者であふれている。今回の研究は、患者に禁煙の必要性を説こうとする医師にとって援護射撃となるものである」と強調する。
これまでの研究で、喫煙と下部脊椎の椎間板変性との関連が示されていたが、頸部についても同様の関連が示されたのは今回が初めて。Leavitt氏によると、喫煙により、脊椎椎間板に必要な栄養を送るための血管が損傷されるという。食事、飲酒、肥満などの他の生活習慣因子が慢性の腰痛および頸部痛にどのような影響を及ぼすのかを評価するにはさらに研究を重ねる必要がある。
(3/3 HealthDay News)


NEWS ■ロコモ(LS)はうつ病とも関連するのか

ロコモティブシンドローム(LS)は、身体能力だけでなくうつ病の程度とも関係していることを愛知医科大学運動療育センターの池竜則氏らが報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2月10日号の掲載報告。LSについての報告は最近増加しており、現在までに身体能力に関しての研究はなされてきたが、精神医学的評価を含めた研究はまれである。
本研究では25-question geriatric locomotive function scale(GLFS-25)を用いて、LSの有無と重症度に関連する身体的および精神的パラメータを調査した。対象は同センターを利用している健康な60歳以上の高齢者150人で、事前に測定したGLFS-25カットオフ値(=16ポイント)から、LS群もしくは非LS群に割り付けられた。年齢、握力、timed-up-and-go test(TUG)、開眼片足立ち、背筋力、脚筋力、うつ病の程度、認知障害についてのパラメータはMann-Whitney U-testおよび多重ロジスティック回帰分析を用いて比較検討した。また、LS重症度と強い相関を示した変数は、多重線形回帰分析を用いて検討した。
主な結果は以下のとおり。
・非LS群は110人(73%)で、LS群は40人であった
・LS群と非LS群間を比較分析したところ、年齢、握力、TUG、開眼片足立ち、背筋力、うつ病の程度において有意な差が認められた(p<0.006、Bonferroni補正)
・握力機能低下、TUG、片足立ち、うつ病の程度がLSに有意に関連していた(多重ロジスティック回帰分析)
・GLFS-25スコアに大きく寄与する要因は、TUGとうつ病の程度であった(多重線形回帰分析)
(3/4 ケアネット)


NEWS ■認知症には中年からの運動が有効……米ボストン大学

認知症の原因となる脳の萎縮を予防するには中年期の運動が決め手になることが、米国の調査で明らかになった。これはボストン大学のSpartano博士らが米国神経学会の専門誌に報告したもので、中年期の運動能力が低いと歳をとってからの脳の萎縮が起こりやすくなり、逆に中年期に運動をするようにすれば、高齢になってからの脳の萎縮や認知機能の低下を食い止められる可能性があると結論している。
研究チームは、まず認知症や心疾患のない平均年齢40歳の人約1500人を対象にランニングマシンでの運動能力を調べた。運動能力はランニングマシンで心拍数が一定の数値に達するまで走れる時間で測定比較した。
その20年後に再度同様のテストを行い、その際の脳の状態をMRIで調べた結果、運動成績が悪くなっている人ほど、脳が萎縮していることが明らかになった。運動成績が低下した人のうち、特に心疾患や高血圧の症状がない人では脳の老化が1年程度であったのに対し、心疾患の症状があったり高血圧の薬を飲んだりしている人では2年分の脳の老化が進行していたという。
運動能力と高齢者の認知機能との関連は別の研究でも明らかになっており、中年期の運動能力が高い人ほど、5年後の脳の萎縮も少ないという研究結果もあるという。今回の研究結果について研究者らは、「心疾患を持つ人にとっては脳の加齢を防ぐために運動が重要であり、特に中年期に行う運動で血流が増え、より多くの酸素が脳に運ばれるために、高齢になってからの認知力の低下を抑えるものと考えられる」としている。
(3/2 MAG2NEWS)


<働く女性の婦人病> 生産性損失1年間で約5兆円…初の調査

働く正社員の女性が、子宮頸がんや乳がんなど婦人病にかかることによって生じる社会全体の損失は、年間4兆9500億円に上るとの試算結果を東京大学などのチームがまとめた。国の一般会計予算(96兆円)と比較すれば20分の1の規模で、病気に伴う医療費支出も年1兆4200億円に上った。婦人病が社会に与える影響を詳細に調べたのは初めてとみられる。
調査は正社員で、健康な女性や、子宮頸がん、乳がん、子宮内膜症の女性計2091人(平均42歳)を対象に実施。世帯収入や医療費、就労状況などのアンケート(昨年11月時点)を加味して分析した。その結果、仕事を欠勤するなど婦人病によって起こる生産性の損失は年4兆9500億円で、婦人病でない人と比べて8900億円多かった。婦人病の女性は、通院や入院のために仕事の効率がより低下することなどが原因とみられる。
一方、治療のため定期的に婦人科を受診する人は全体の20%にとどまった。その理由については、「健康なので必要ない」(53.2%)が最も多く、婦人科検診に関しても27.0%が「行ったことがない」と回答し、婦人科の受診や検診の重要性があまり認識されていない実態も浮かび上がった。
調査した東京大学の五十嵐中特任准教授(医療経済学)は「婦人科系の病気が社会に与える影響は想像以上に大きい。国や自治体は定期健康診断の項目に子宮頸がんなどの検診を含めるとともに、婦人科の受診率を向上させる対策を講じるべきだ」と指摘する。
(2/23 毎日新聞)


■次号のメールマガジンは2016年4月10日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)


[発行]産学社エンタプライズ