エンタプライズ発信〜メールマガジン【№57】 2016. 1

人類が二酸化炭素の排出量を劇的かつ急速に減らさない限り、つまり化石燃料の使用をやめない限り、私たちの住む地球は、過去1万1000年よりも過酷な場所となっていく。私たちは現在、19世紀半ばに温暖化が始まったときよりも4℃高い世界に向かっている……。これを安全な世界にとどめるためには産業革命(18〜19世紀)以後の気温上昇幅を2℃未満に抑えていく必要がある、というのが昨年末にパリで開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で定めた目標です。しかし米国の著名な気候科学者によると、人類が温室効果ガスの排出目標を達成しても、主に海面上昇によって生じる気候変動の壊滅的な影響からは逃れられない可能性が高いという懐疑的な見方もあります。世界の主要都市の半数は沿岸部にあり、氷床が不安定な状態になるのを放置すると世界は制御不能に陥るというものです。ともあれ現在、エネルギー生産と消費の約80%は化石燃料が占めています。COP21では「中国やインドなどの急速に発展している国々からのほぼ石炭による排出量を注視するだけでよい」との偏向した声明がありましたが、指弾された隣国である中国からの有害微粒子PM2.5の飛来は呼吸器系などの健康被害が想定されますので、わが国にとっては身に迫った喫緊の問題ともいえます。木を見て森を見ていく大所高所の見識のもと、世界の気温上昇(抑制)の推移は注目していく必要があります。

★☆★━━━━━━━■CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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【 Information -1-】

第6回カイロプラクター登録試験を実施 2月7日

日本カイロプラクティック登録機構(JCR)は、第6回カイロプラクター登録試験(JCR登録試験)を2月7日(日)に実施する。試験に合格した人はWHO基準カイロプラクターとして登録され、その名簿は一般公開されるとともに定期的に厚生労働省に提出される。

《実施概要》
試験日:2月7日(日)
試験地:六行会総合ビル8階会議室(東京都品川区)
対象者:WHO指針に準拠した教育プログラムの修了者(詳細は問合先へ)
問合先:JCR事務局 電話03-3578-9390
e-mail webmaster@chiroreg.jp URL www.chiroreg.jp/


【 Information -2-】

「第12回 統合医療展 2016」を開催 1月26日・27日

12回目の開催を迎える統合医療展。健康長寿への意識が高まるなか、予防医療に注力する医療機関が増加傾向にあり、治療院(鍼灸・整骨・カイロ・整体)、薬局・薬店、フィットネス・運動施設では、生活習慣病など慢性疾患の予防を支援する拠点としての機能を果たすことに期待されている。統合医療展は“医療”と“ヘルスケア産業”をつなぐ展示会として、市場の拡大・活性化を促す目的で開催される。

《開催概要》
名 称:統合医療展2016[第12回]
会 期:2016年1月26日(火)・27日(水)
会 場:東京ビッグサイト西2ホール
主 催:UBMメディア/TEL.03-5296-1009 http://www.togo-iryo.jp/


◎連載vol.15

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


生物物理学(つづき)

たとえばマッサージ療法では、組織に触れ、さするという方法で患者にエネルギーを与えている。同じようにハーブ療法では植物のエキスを使い、鍼療法では針、磁石、電気刺激、およびレーザー光線を使う。指圧では強い圧力を、ロルフィングでは筋膜を伸ばす手技を、音療法では組織を振動させる音を、医師は磁気パルスを、というように多様な形態のエネルギーが治療に利用されている。これらすべての治療に共通するファクターが、生体マトリックスである。生体マトリックスはあらゆる形で与えられるエネルギーを振動として吸収し、その中に含まれる情報を抽出する。そしてその情報をシグナルに変換し、半導体的性質とテンセグリティー構造を利用してすばやく生体マトリックス全体に伝達するのである。
結局のところ、どのような治療に使われるエネルギーも、生体マトリックスによって振動に変換されるわけだが、その振動がもたらす現象を具体例において検証してみよう。

共鳴と感情の関係

エネルギーに関係する最近の発見の中で最も重要であると思われるのは、愛、平穏、感謝などの感情と生理学的リズムの関係である。これは手を使って治療を行うすべてのセラピストに関係の深い発見だ。研究をまとめたのは、ハートマス研究所の科学者たちで、特定の感情によって心臓の電気エネルギー・スペクトルが変化することを突き止めた。
被験者がイライラした状態にあるときの心拍数と、感謝の感情を持って過ごしているときの心拍数を調べてみると、イライラ状態のときは心拍数がいくぶん無秩序に変化しており、これは非コヒーレント状態だという。生体に認められるさまざまな振動は、位相や周波数や振幅は異なっていても、単純な調和波、つまりサインカーブを示すのが普通である。

心臓あたりに意識を集中する修行を行うと、愛や感謝という誠実な感情が生まれるとともに心拍数がより規則的に変化するようになる。論文の筆者はこれをコヒーレント状態と呼んだ。規則的に変化するということは、心拍をコントロールする2種類の自律神経、つまり交感神経と副交感神経のリズムと心拍のリズムが調和して、振動の波が揃っていることを表している。

意識をうまく集中できるように訓練すると、内的コヒーレントと呼ばれる第3の状態が現出するようになる。この状態では心拍数がほとんど変化しない。L・チルダー、あるいはR・マクラティらの報告によると、心拍数が変化しなくなるほど平穏でくつろいだ状態にあるときは、感覚が研ぎ澄まされ、自分が電気を持った存在であることに気づき、体内を流れるわずかな電流も感じ取れるようになるという。これは心臓、呼吸、自律神経、あるいは圧受容器から脳へのフィードバックというような種々の電気的および力学的リズムが調和して、カップリングし、位相が固定したことによる現象だろう。
このように、生体リズムがうまく調和して、きわめて安定した生理状態が生まれると、脳をはじめ、全身のあらゆる機能に良い影響がもたらされる。その理由は次の項で述べる。(つづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉕☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


『記憶と情動の脳科学』を読んで

PCRT研究会を立ち上げる前から、慢性症状には「メンタル系」との関わりが非常に強いということと、慢性症状に関係する生体のバランス異常は、構造面ではなく生体エネルギー面に目を向けなくてはならないということが分かっていました。
その後、心身相関と生体エネルギーの知識を取り入れながら、その視点で臨床研究を積み重ねていきました。すると、「記憶」という脳科学の分野にも密接に関係があることが分かり、脳科学の分野にも目を向けて知識の領域を広げていきました。

脳科学分野の本にはかなり目を向けてきたつもりでしたが、最近、まだ読んでいない脳科学系の本に偶然出会いました。それは、PCRTに密接に関係する『記憶と情動の脳科学〜「忘れにくい記憶」の作られ方』という本で、内容もとても興味深く、PCRTで臨床研究してきたことを裏付けてくれるような内容でもありました。
慢性症状の原因が「誤作動記憶」にあるということに触れてはいませんが、「記憶」と「情動」(感情)が密接に関係しており、長期記憶には「情動」が深く関わっているということを分かりやすく説明しています。PCRTの視点でいえば、慢性症状を引き起こしている脳の誤作動が、長期に記憶されているから症状が長引いているという説明の裏付けとなります。

この本では「情動」という一般的には聞き慣れない言葉と使っています。英語では、情動はEmotion、感情はFeelingsです。PCRTでは、一般の人にも理解しやすいように、EmotionもFeelingsもまとめて「感情」という用語を使っています。とくにPCRTで扱う感情は、潜在的、あるいは無意識的な感情であるということが「ミソ」です。
この本で興味深いところは、長期の記憶には「情動」が深く関係しているというところのほかに、捏造される記憶、思い出すこと=創り出すこと、蓄積してきた記憶が組み合わされる、「予測」は過去の記憶があってこそ、などで、PCRTの理論背景と通じることが多く見受けられます。

著者のジェームズ・マッガウ氏は、「学習」と「記憶」の分野で研究を継続しているアメリカの神経性物学者で、半世紀にわたって記憶に関する神経生物学的プロセスを研究してきました。このようなPCRTと密接に関連する著書に出会えるということは、臨床研究を積み重ねている臨床家にとっては多大な喜びです。
パブロフから始まった「古典的条件付づけ(条件反射)」、「道具的条件付け」、「学習」、「行動」、「習慣」、そして「記憶」に関するこのような研究成果には、「慢性症状」を改善させるヒントがたくさん含まれていると私は考えています。今後も、このような研究者の著書に遭遇できるようにアンテナを張りながら、臨床と勉強を継続していきたいと思います。


《連載39》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


5. インド編 〜古代医学の最高峰〜

インドvsギリシャの終幕(つづき)

—–そこでミリンダ王(メナンドロスのこと)は約500人のヨーナカ人(サンスクリットでギリシャ人のこと)に囲まれて立派な車に乗り、大軍勢とともにサンケッヤ僧坊の尊者ナーガセーナのいる所に近づいていった。
このとき、尊者ナーガセーナは約8万の比丘(びく)とともに亭屋(あずまや)のなかに座っていた。ミリンダ王は尊者ナーガセーナの会衆を遥かに見た。見つつ(侍臣の)デーヴァンマンティヤにこう言った。
「デーヴァンマンティヤよ、この大会衆は誰のか?」
「大王よ、尊者ナーガセーナの会衆です」
そのとき、ミリンダ王は尊者ナーガセーナの会衆を改めて遥かに見て、恐怖し、茫然自失し、身の毛が逆立った——

こうして開始される“王者と賢者の対論”のなかでは、当時の仏教教団にとっての主要テーマ《心理論、輪廻論、解脱・涅槃論、在家者論》だけでなく、釈迦をめぐるエピソードや各種の譬え話の意味についても論及されている。そのなかに、釈迦滅後の仏教教団(サンガ)を維持し伝えていく精神がいかに熱烈なものであったかを知ることができるし、ヘレニズム文化のなかに育ったギリシャ人王が、鋭い質問の矢を放ちながらしだいに仏教を理解していく過程を見ることができる。
—–王は問う。
「尊者ナーガセーナよ、ねはんとは止滅のことなのですか?」
「大王よ、そうです。ねはんとは止滅のことです」
「尊者ナーガセーナよ、どうしてねはんが止滅なのですか?」
「大王よ、すべての愚かなる凡夫は、内外の6つの領域を歓喜し、歓迎し、執着しています。彼らはその流れによって運び去られて、生まれ、老い死ぬこと・憂い・悲しみ・苦痛・悩み・悶えから解脱せず、苦しみから解脱していないと、私は語るのです。大王よ、教えを聞いた聖なる弟子は、内外の6つの領域を歓喜せず、歓迎せず、執着していません。彼が歓喜せず、歓迎せず、執着していないときには、彼には愛執が滅び、愛執が滅びるがゆえに執着が滅び、執着が滅びるゆえに生存一般が滅び、生存一般が滅びるがゆえに生まれが滅び、生まれが滅びるがゆえに老い死ぬこと・憂い・悲しみ・苦痛・悩み・悶えが滅びる。このようにして、この全き苦の集まりが滅びるのである。大王よ、こういうわけでねはんとは止滅のことなのです」(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(32)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■レッドフラッグのない腰痛患者に対するルーチンな早期画像検査にメリットのないことは明らかだが、それを一人の患者に説明するのに30〜45分かかるために診療スケジュールが大混乱する。時は金なりが過剰な画像検査の最大の理由。http://1.usa.gov/rpcVg2
………だからこそ現時点で判明している正確な情報の拡散が必要なのです。ネットで国民を教育できれば説明の手間が省けます。あとは診療報酬の問題をクリアすれば患者にとって最善の腰痛医療が実現します。

■ガイドラインの勧告を無視した根拠のない不適切な診断と治療が急増している。慢性腰痛に対してメディケアが支出した医療費は、硬膜外ブロックが629%増、オピオイド投与が423%増、MRIが307%増、脊椎固定術が220%増。http://1.usa.gov/uvRl1n
………腰痛患者が増え続けているのは効果のない不適切な医療が行なわれているからです。そろそろ根拠に基づく適切な医療を始めませんか? それともこのまま腰痛患者を増やしますか?

■大手民間保険会社の2000年〜2004年までのデータを分析した結果、MRIとCT実施率は50%以上増加し、PETは400%も増加していたことが判明。費用のかかる高度な画像検査は診療ガイドラインに基づいて行なうべき。http://1.usa.gov/tT81mY
………わずか5年間でこれほど画像検査が必要な疾患が増えたというのでしょうか。厚生労働省も一度調べてみるべきです。不必要な画像検査を減らすだけで復興財源を捻出できるかもしれません。

■メディケア受給者を調査した結果、11年間で腰痛患者(132%増)の医療費は387%増加し、2年間でブロック注射の費用は59%、MRIとCTの費用は42%増加。レッドフラッグのない61%がMRIを受けていた。http://1.usa.gov/tWSnmN
………腰痛患者が増えるとそれに伴い医療費も高騰し続けます。日本ではレッドフラッグ(危険信号)のない患者のほぼ100%に画像検査が行なわれています。このままだと遅かれ早かれ健康保険制度は崩壊の危機に瀕するでしょう。

■306ヶ所の医療機関からメディケア受給者をランダムに抽出して分析した結果、CTとMRIの実施率は地域によって異なっており、画像検査実施率が最も高い地域は手術実施率も最も高いことが判明。画像検査の妥当性には疑問がある。http://1.usa.gov/u160QN
………腰椎の画像検査実施率が高いとそれに伴って手術実施率も医療費も高くなりますが、患者の臨床転帰は改善するどころかむしろ悪化する傾向にあります。

■画像検査実施率の上昇は、7年間で硬膜外(腰部・仙骨)ブロックの医療費が629%増加したこと、および10年間で椎間関節ブックの医療費が543%増加したことと明らかに関連。http://1.usa.gov/sESMNX http://1.usa.gov/sB7pOe
………画像検査が増えるとどうしても過剰診療につながり医療費の高騰を招きます。世界各国の腰痛診療ガイドラインがレッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛患者の画像検査は行なうべからずと強く勧告している理由のひとつです。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (576)

根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】

3. 脊柱側弯症(つづき)

2)大腰筋の状態と腰背部
腰椎から大腿骨の付け根へ走る大腰筋は左右同じように存在するが、両方が同じように緊張するとは限らない。腰痛のさいによくある片方だけが強く緊張し、その結果、腿の後ろの大腿二頭筋が片方だけ硬くなる。
①このとき腰椎は片方へ引き曲げられる。
②それに対応してバランスをとろうと上部の背筋、例えば肋椎関節からの外腹斜筋が緊張して逆側へ曲げられる。
③さらにこの上部で逆方へ歪曲される。
腰痛のある人では、この大腰筋と外腹斜筋の関係はほとんどこのパターンでバランスをとっている。

《動作分析》
①椅子に腰かけて左右の膝を交互に押し出してみる。簡単な動作分析なので時々点検してみる。
②立ったままで、膝を伸ばしたとき、どちらの大腿の後ろがピリピリするか?
大腿二頭筋の硬い人は逆側の大胸筋が緊張していることを頭に入れておく。

3)内腿部と腰背部〜腹部
姿勢が悪い、とくに肩がこる、腰が痛い、重苦しいというときは、たいがい背から腹部が緊張している。この震源地は、
①内腿部から背部〜胸部、腹部という連動の歪み。
②椅子または床に座るときに、腰背部が丸くなったり側屈したりする歪み。
以上のことを考慮して肋椎関節運動軸〜肋間神経〜外腹斜筋という連動操体法を行うことで対処する。
脊柱の側弯は腰から第一次側弯、背部で第二次側弯、肩胸部で第三次側弯となって完了する。ときには側弯凸部に肋骨隆起が生じることもあることは知っておいたほうがよい。

4)足指基部からの影響
足指基部から腰背部へという新しい連動系から取り組むと意外な効果が現われることがある。このときは補助動作である上体を捻る方向を見て、その方向から、足指の屈診により、どの指、どの角度(主動作)かを探知して、動作を組み合わせ連動操体法を行う。足指基部から腰〜背〜首〜手指へと連動操体法を展開する。(つづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■<脳脊髄液減少症> TVゲームは脳の発達に悪影響…東北大学加齢医学研究所

テレビゲームは子どもの脳の発達に悪影響を与えると、東北大学加齢医学研究所の研究グループが発表した。調査した竹内光准教授(神経科学)は「ゲームに興じる時間と脳の発達の遅れは比例する」と警告する。
グループは宮城県在住の5〜18歳283人を対象に、脳画像解析と知能検査を実施した。MRIで脳を調べると、テレビゲームで長時間遊ぶ子どもは、物事を認知したり記憶したりする領域の発達が遅れていた。快楽を感じたときに出る神経伝達物質ドーパミンの過剰放出により、意欲をつかさどる領域にも悪影響があった。これは覚せい剤常用者と同じ特徴だという。
また、テレビゲームで遊ぶ時間が長ければ長い子どもほど言語能力が低く、類似する言葉を見つけたり、読み上げられた算数の文章題に暗算で答えたりする検査の成績が劣っていた。3年後に再び調査すると、テレビゲームが習慣化している子どもは脳の発達がさらに遅れていた。(1/7 河北新報)


NEWS ■米より先に肉魚…食べる順で血糖上昇抑制

米より先に魚や肉料理を食べることで胃の運動が緩やかになり、食後の血糖値上昇を抑えることができると、関西電力医学研究所のグループが発表した。矢部大介副所長は「食べる順番を意識した食事療法を行うことで、糖尿病の予防や治療につながる可能性がある」と話している。
研究グループは、2型糖尿病患者12人と健康な人10人を対象に3日間実験した。米飯を先に食べたときと、米飯を食べる15分前にサバの水煮や牛肉の網焼きを食べたときで、4時間後の血糖がどう変化するかを調べた。
その結果、サバや牛肉を先に食べた場合、「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンの分泌が活発になって胃の動きが緩やかになり、胃で分解された米が小腸に移動して吸収されるまでの時間が2倍以上になることが分かった。サバを先に食べたときは血糖値の上昇を約3割、牛肉では約4割抑えることができたという。(12/26 時事通信)


NEWS ■理学療法士の病棟配置を推進へ…厚労省が了承

厚生労働省は12月16日、チーム医療のさらなる充実に向けて、日本理学療法士協会などの関係学会から提出された要望のうち、法改正を必要としない項目を選び出し、要望に沿った対応案をチーム医療推進方策検討ワーキンググループ(WG)に示した。理学療法士の病棟配置の推進や、訪問リハビリテーションでの複数の職種による同時訪問などが盛り込まれており、対応案が了承された。同省は、了承された内容に修正を加えた上で、上部組織であるチーム医療推進会議の次回会合に報告する予定。
医療専門職の団体などでつくるチーム医療推進協議会が2013年6月、日本理学療法士協会や日本作業療法士協会などの参加団体からの要望をまとめ、同WGに提出。この要望を踏まえて、厚労省は現行の法律で対応できる内容を整理した。具体的には、日本理学療法士協会は、理学療法士の病棟配置の推進や包括的な指示に基づいた義肢装具・生活支援機器の選択を求めているほか、理学療法士が主治医から包括的な指示を受けて訪問リハビリを行えるよう要望している。
日本作業療法士協会は、訪問リハビリテーションで複数の職種が同時に訪問できるよう求めた。医師の包括的な指示に基づいて、必要な福祉用具を導入する環境整備の検討や、使用訓練をできるようにすることも要求している。
日本言語聴覚士協会は、失語症や言語発達障害、発達障害などの評価で、医師の包括的な指示によって、言語聴覚士が必要な検査の選択や実施、検査結果の解釈が行えるよう要望。医師の包括的指示に基づいて、言語聴覚士が嚥下訓練や摂食機能療法で食物形態を選択することや、診療放射線技師と連携して嚥下造影検査をすることも求めている。(12/17 医療介護CBニュース)


NEWS ■所得低いほど高い喫煙率、歯少なく肥満者多い

世帯の所得が低い人ほど、健康診断を受けない割合や喫煙率が高いなど、健康作りに積極的ではないとする国民健康・栄養調査の結果を厚生労働省が発表した。厚労省は、低所得層は健康管理を意識する余裕がないことが背景にあると分析、生活習慣の改善を後押ししていく考えだ。
調査は、昨年11月に全国の5432世帯を対象に実施。回答のあった3648世帯を、世帯所得別に200万円未満の低所得層、200万円以上600万円未満の中所得層、600万円以上の高所得層の3群に分け、生活習慣を分析した。
低所得層では健診を未受診の人の割合が男性で42%、女性で40%と、高所得層のそれぞれ16%、30%よりも高かった。習慣的に喫煙する人の割合も男性で35%、女性で15%と、高所得層のそれぞれ29%、5%を上回った。さらに歯が20本未満の人や肥満者の割合も、低所得層は男女ともに高い傾向があった。(12/14 読売新聞)


NEWS ■指の関節が鳴るメカニズム、超音波で解明

指の関節がポキポキ鳴る理由を放射線科医らが明らかにした。カリフォルニア大学デイビス校放射線医学教授のRobert Boutin氏によると、指を鳴らすとき、関節内では気泡が形成され、それにより超音波画像では「関節内で花火が破裂するような」明るい閃光がみえるという。しかし、関節の音がこの泡のはじける音なのか、それとも泡が形成される音なのかについては、これまで見解が一致していなかった。
今回の研究では、超音波画像と音声を合わせて確認した結果、「どのケースでも閃光がみえる前に音が聞こえた。関節の音は、泡がはじける音ではなく、泡が形成される音である」とBoutin氏は述べている。音が聞こえてから閃光がみえるまでの間隔はわずか10ミリ秒という。
マサチューセッツ総合病院(ボストン)のWilliam Palmer氏によると、この気泡は関節の潤滑液に溶け込んでいる気体から生成されるものだという。指を伸ばすことで陰圧が生じるために泡が生じる。たくさんの微小な気泡が一気に融合して1つの大きな泡となることで音が発生すると、Boutin氏は説明している。(12/14 HealthDayNews)


NEWS ■健康食品「本当に必要か考えて」…食品安全委が呼びかけ

内閣府の食品安全委員会は、健康食品の利用が広がっていることを受けて、健康食品について知っておくとよいことを19のメッセージにまとめて12月8日付で公表した。科学的研究が少なく「安全性や有効性が確立しているとはいえない」と指摘し、「今の自分に本当に必要か考えてください」と注意を促している。
メッセージは、健康被害のリスクはあらゆる食品にあり、健康食品でも被害が報告されていると説明。そして「現在の日本人が通常の食事をしていて欠乏症を起こすビタミンやミネラルはあまりない」「自己判断でサプリメントからミネラルを大量に補給することは過剰摂取につながる可能性がある」と指摘する。
さらに、健康食品は品質管理の規制の対象になっていないことや、医薬品と併用すると薬の効果が弱まったり強くなりすぎたりする可能性もあることなどを注意点として挙げている。(12/13 朝日新聞)


NEWS ■コーヒーを飲む人は長生きする

米ハーバード公衆衛生大学院栄養学・疫学教授のFrank Hu氏らが米国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて実施した研究結果によると、コーヒーを愛飲する人は、飲まない人より長生きすることができ、心疾患やパーキンソン病などの神経疾患によって早期に死亡するリスクも低くなることがわかった。
この研究では、米国の医師・看護師・医療従事者20万人以上を対象に約30年以上、繰り返し行った調査に基づいて解析を行った。この調査期間中に、約3万2,000人が死亡した。
最初の調査時に1日あたり1〜5杯のコーヒーを飲んでいた人は、高血圧などの健康障害を考慮しても、調査期間中に死亡する危険性が低かった。特に心疾患、脳卒中、神経疾患、自殺による死亡率が低かった。喫煙者を除外して検討するとこの関係はさらに強まった。1日あたり3〜5杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて期間中に死亡するリスクが15%低く、コーヒー摂取量が最も多い人(5杯以上)でも12%低くなっていた。レギュラーコーヒーだけでなく、カフェイン抜きのコーヒーであっても長寿に関連することもわかった。
「適度なコーヒー摂取と、さまざまな疾患の発症リスク低下を関連づける研究は多数ある。コーヒーと健康への便益が関連する理由は不明だが、他の研究では、その成分が炎症を軽減し、抗酸化物質として作用し、血糖の調節を改善することが示唆されている」とHu氏は話している。(12/10 時事通信)


NEWS ■変形性股関節の診断、X線のみは不十分

股関節痛と変形性股関節症のX線所見との関連性を2つのコホート研究から検討。フラミンガム変形性関節症研究(946人)では、慢性股関節痛患者の15.6%がX線検査で変形性股関節症の所見を示し、X線検査で変形性股関節症の所見を呈する患者の20.7%が慢性股関節痛だった。X線的変形性股関節症の診断感度は36.7%、特異度90.5%、陽性適中率6.0%、陰性適中率98.9%だった。変形性関節症イニシアティブ研究(4366人)でも、股関節痛患者でX線所見が認められたのは9.1%、X線的所見があって慢性股関節痛もある患者は23.8%に過ぎなかった。X線的変形性股関節症の感度は16.5%、特異度94.0%、陽性適中率7.1%、陰性適中率97.6%だった。(12/8 British Medical Journal)


NEWS ■医師の半数が燃え尽き 米研究、質の低下懸念

米国の医師の半数以上が過労やストレスから仕事への意欲を失う「燃え尽き症候群」とみられるとの研究結果を、米メイヨークリニック(ミネソタ州)のチームが発表した。チームは「離職する医師の増加、保健医療の質の低下につながりかねない」と警告。対処方法として、医師の仕事における裁量を大きくすることや、事務的な仕事の軽減などを提案している。
調査は2014年、全米の約3万6千人の医師を対象に実施、19%に当たる6880人から回答を得た。燃え尽き症候群の指標となる質問に答えてもらったところ、半数を超える54%が強い消耗感を覚えたり、人が人と思えなくなるような感覚を持ったりしていることが判明した。11年調査の46%から増加した。
弁護士などの専門職、会社員、農林水産業といった医師以外の仕事をしている人と比較すると1.7倍ほど高かった。医師の平均的な労働時間は週50時間で、ほかの仕事の週40時間よりも長かった。日本国内でも昨年、九州大などのチームが脳卒中専門医の4割が燃え尽き症候群との研究結果をまとめている。(12/4 共同通信)


■次号のメールマガジンは2016年2月10日ごろの発行です。
(編集人:北島憲二)


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