エンタプライズ発信〜メールマガジン【№55】2015. 11

11月なのに気が早いのですが、今年も一番酒を飲む時節が近くなっています。のっけからですが、名古屋市立大学の明智龍男助教らの報告研究によると、1990年から1993年にかけて、全国の40歳から69歳の男性約4万4000人に、飲酒習慣や1日に飲む量などをアンケート調査しました。その後、7年間以上にわたってこれらの人を追跡調査したところ、そのうちの168人が自殺していたそうです。そこで、これらの人の飲酒量と自殺との関係を調べたところ、最も自殺率が高かったのは、①「週に1回以上飲み、飲む量は日本酒換算で1回3合以上の人」②「まったく飲まない人」でした。どちらも年間:約1600人に1人の高い頻度で自殺者が出ていたそうです。逆に最も低かったのは、③「月に1回〜3回、時々飲む人」で、自殺率は年間:約3600人に1人でした。即ち、自殺率の高い人(①②)は、③「時々飲む人」の自殺率の2.3倍ということです。もう一つサンプルがあって、④「週1回以上飲むけれど量は1日3合以下の人」では③の約1.7倍となっており、飲む量に比例して自殺率が上昇していることになります。また、高率だった②「まったく飲まない」と答えた人について、以前は飲んでいたが「やめた人」と「もともと飲まない人」に分けると、自殺率は「やめた人」で特に高くなっており、③の6.7倍になっていたそうです。このことから察すると、過度の飲酒は自殺率を増やすと考えられますが、ある程度の少量のお酒は自殺衝動を抑えるというものです。飲酒の量で自殺の要因が決定づけられるわけではありませんが、統計の側面としては憂慮するデータではあります。減少気味の自殺数ですが、上戸の人は適量を愉しんで嗜むのが身のため、とは過剰な反応でしょうか。

★☆★━━━━━━━■CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S

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【 Information -1-】

「日本統合医療学会2015 〜山口市で開催 12/12-13

第19回目を迎える日本統合医療学会は12月12日(土)〜13日(日)にわたって「Art&Science with Humanity 〜ヒトはBody・Mind・Spiritの存在〜」をテーマに山口県・山口市民会館(山口市中央2丁目5-1)において開催する。大会長は柴田眼治氏(医療法人社団水生会 柴田病院理事長)。患者-医療者間に良好なHumanityを持つことで、より進化した医療の提供と全人的・包括的医療が実現できることを訴求し提案する。
大会概要:http://www.imj2015.com/


【 Information -2-】

日本ホメオパシー医学会 一般向けセミナー開催 11/28

日本ホメオパシー医学会では、一人でも多くの方にホメオパシーについて知っていただくために、一般向けのセミナーを企画している。
◆講義内容 :ホメオパシーとは/ホメオパシーの薬とは/ホメオパシーの診察とは/ホメオパシーの適応は/ホメオパシーは安全か
◆開催日 :11月28日(土)14:00〜15:30(受付13:30より)
◆講 師 :板村論子(MD., Ph.D., MFHom)
◆会 場:家の光会館(東京都新宿区市谷船河原町)<参加無料>
◆参加ご希望の方は日本ホメオパシー医学会事務局宛E-mailで「参加希望」とお送り下さい。
info@jpsh.jp(URL:http://www.jpsh.jp


◎連載vol.13

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


全身に広がる線維組織のネットワーク(つづき)

細胞外基質には、局所における性質と全身における性質がある。細胞外基質の重要性を主張したF・ヴァレラとS・フレンクの報告には、これらの2つの性質がどのように関係しあっているかが述べられている。
細胞外基質は、全身の各部位に存在する芽細胞(線維芽細胞、神経芽細胞、筋芽細胞、骨芽細胞など)によって作り出される。しかし細胞外基質に起きるエネルギー現象(腱の伸張、筋の動き、骨の弾性、毛細血管への酸素の取り込みなど)は、その基質に覆われた細胞の活動に影響を及ぼす。ヴァレラとフレンクは、この相互作用を相反的相互作用の循環と表現した。そして局所に見られる相反的相互作用は隣接する細胞外基質にも影響され、細胞外基質が全身に広がる連続体である以上、全身の細胞外基質の影響を受けることになる。
したがって生物の全身の形態や運動が、局所の細胞外基質と細胞の相互作用によって生み出されると同時に、その相互作用は、生物の形態や運動に影響を及ぼしているのである。この現象をヴァレラとフレンクは「モルフォサイクル」と名づけた。細胞外気質の全身的な役割と局所的な機能の相互作用は果てしなく続くプロセスなのだ。

命ある生物の全体的特徴(形態と運動パターン)と局所的特徴(特定の筋膜層やその他の結合組織の柔軟性、弾性、エネルギーの連続性など)は、いつの時点でも、そのときのモルフォサイクルによって作り出された最高傑作である。一連のモルフォサイクルは、あらゆるトラウマによっても引き起こされる。全身の機能や構造は、局所の細胞の活動と永久に切り離すことができないのだ。
またさらに細胞外基質と細胞の間には、必ず特殊で重要な相互作用があるとされている。このことは組織から組織へと張力を伝える構造またはエネルギー系とも解釈できるし、細胞の活動状況に関する情報を発信・伝達する圧電気を利用した通信システムとも解釈できる。細胞はこうして体の使われ方に適応できるように組織を維持しているのである。
繰り返すが、これらの線維組織には、誰もが知る機能的および構造的役割があるとともに、情報伝達系あるいは代謝系としての重要な役割がある。この組織は、テンセグリティー構造(連続する引っ張り材[生体では腱に相当する]とそれを支える不連続な圧縮材[支柱]で構成される形態を指す)によって振動を伝える半導体に似た連続体の一部なのだ。そして生体のすべての組織は、この連続体を介してほかのどの組織とも情報を交換することができるのだが、W・アデイはこのコミュニケーションのことを「細胞同士の囁き」と呼んだ(つづく)

(出典:『エネルギー医学の原理』 小社刊)


★連載エッセイ ㉓☆

“こころ” と “からだ” …… 臨床にモノ思う。

・保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


自然体で「感謝」できるために

いつも「感謝」しないといけないですね。……とある患者さんが話されていました。
私たちは「感謝」することは大切だと思いつつも、感謝することを忘れてしまいがちになります。表面的に感謝するのは簡単ですが、心の奥から本当に「感謝」するのは簡単ではないかもしれません。では、自然体で心の奥から感謝できる背景には何があるのでしょうか?
人が感謝するとき、「有難い」と言います。その意味は、字のごとく有ることが難しいという意味で、めったにないことに感謝するさまを言います。人間という生き物は、寄り添ってくれる人やモノ、食べ物などが習慣的に当たり前になって、それに慣れてしまうと感謝できなくなるという性質を持っているようです。
例えば、炎天下の砂漠の中でのどが渇く状態が長く続いたとき、おそらくその時の1杯の水ほど感謝できるものはないでしょう。しかし、現代社会では蛇口をひねればいつも水があります。水がそばにあるのが当たり前になって、それに感謝するということにはピンとこないのではないでしょうか。

人間関係においても、いつも傍にいてくれる人が存在すること自体やその人がしてくれることが当たり前になると、相手への期待が知らず知らずに増えて、感謝ではなく不満を感じたりすることが多くなるようです。つまり、心の奥から本当に「感謝」するためには、当たり前のようにあるモノや人の行為を、当たり前だと思わない工夫が必要になってきます。
人間という生き物は「慣れ」という習性をもっています。それは様々な環境に適応するために必要な機能ですが、慣れ過ぎて感謝できなくなるというデメリットもあるようです。人が感謝しなくなると、慢心、傲慢、不満といった負のサイクルにはまってしまいがちになります。毎日を「感謝」するための工夫として、当たり前にあることを当たり前と思わないで、それに慣れない工夫を日常生活の中から実践することでしょう。
さて、今日はどれくらい自然体で感謝ができているでしょうか。


《連載37》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


5. インド編 〜古代医学の最高峰〜

インドと中国、そして日本

陸路によりインドに向かった玄奘に遅れること約30年、やはり唐の仏僧・義浄(635-715)は海路をとってインドに渡り、25年間滞在したあとサンスクリット仏典400部ほどを中国に持ち帰る。その旅行記『南海寄帰内法伝』は、当時のインド仏教教団の事情を明らかにすると同時に、3章分(先体病源、進楽方法、除其弊薬)をさいてインド医学を紹介している。

「西方の五明論(ごみょうろん)の中の医明に言うことには、まず声色を察してから八医を行うことである。もしも、その秘訣を守らなければ、手段が適切なものであっても大きな過ちを犯すことになるだろう。八医というのは、第一があらゆる瘡(腫瘍)について、第二が首疾(頭顔面部の病気)に針を刺すこと、第三が身患(躯幹部の病気)について、第四が鬼瘴(悪霊に憑かれること)、第五が悪掲陀薬(解毒剤)について、第六が童子病(16歳以下)、第七が長寿の法、第八が足身の力について、ということである。この八術を最近ある人が要約して1巻の書とした。全インドの医者は、それに依って治療を行っている。私もこの医学をマスターしたのだが、本業ではないので遂にはやめてしまった」

五明論というのは、古代インドの知識階級(バラモン)が独占していた5つの学術分野のことである。医明は医方明とも言い、医学医術に相当する。残りの4分野は、声明(しょうみょう;言語学・音声学・修辞学に相当)、工巧明(くげうみょう;暦法・数学・技術)、因明(論理学)、内明(哲学・宗教学)である。知識階級の子弟たちは、7歳からこの教育を受けはじめ、一応の体系的な教育が修了するのは30歳ごろだったという。
八医は古代インド医学でいうアシュタンガ(八科;順にシャリア、シャーラーキヤ、カーヤ・チキツァー、ブータ・ヴィディヤー、アガダ、カウマーラ・ブリティア、ラサーヤナ、ヴァージー・カラナ)に相当する。第八のヴァージー・カラナは正確に言えば催淫剤と性的若返りの研究とでもすべきところであるが、義浄はその立場上、「足身の力について」と遠まわしに表現している。
また、日本で奈良時代以来しばしば読誦されている『金光明最勝王経』(こんこうみょうさいしょうおうきょう)は、義浄の手によってサンスクリットから漢訳されたものであるが、その中でも、針刺、身疾、鬼神、延年、増気力などの八術を挙げている。
義浄のいう「八術を要約した人」とは、ジーヴァカのあとに現れた名医チャラカ(2世紀ごろ)、スシュルタ(4世紀ごろ)とともにインド医学の「三老」の一人であるヴァーグバタ(7世紀ごろ)とされている。インドが日本に与えた影響を考えるときに実感することは、インドの “遠さ” である。河口慧海が漢訳の仏教経典に疑問を感じ、その源流を探るためにチベットへ潜入したのは1900年のことであり、大地原誠玄氏が20年の歳月を費やした訳稿『スシュルタ本集』(サンスクリットからの本邦初訳)を残して人知れず亡くなったのは1945年であり、この『スシュルタ本集』がアーユルヴェーダ研究会によって出版されたのは1971年のことである。


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(30)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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腰痛に関する正確な情報には想像を絶するほどの治癒力があります。どうか情報の拡散にお力をお貸しください。

■過去の不幸な出来事は明らかに慢性腰痛の危険因子ではあるが、両者間にU字曲線が見られたことから軽度の逆境体験は保護的に働く可能性が浮上。軽度の逆境体験者は慢性腰痛による疼痛障害が小さく医療の利用率も低いことが判明。http://1.usa.gov/ol0hCX
………軽いストレスは慢性疼痛を予防するらしいということです。人間はストレスがなければ生きられない動物なのかもしれません。

■腰下肢痛患者に対する早期画像検査(X線・CT・MRI)の有効性に関するRCT(ランダム化比較試験)を詳細に分析した結果、レッドフラッグのない患者に画像検査を行なっても臨床転帰は改善しないことが判明。医師は腰下肢痛患者の画像検査を控えるべき。http://1.usa.gov/rpcVg2
………レッドフラッグ(危険信号)のない腰下肢痛患者に画像検査を行なっても、症状改善に繋がらないことが第一級の証拠(体系的レビュー&メタ分析)が示しているのです。患者は不必要な画像検査を要求しないようにしましょう。

■腰痛患者101名を早期X線撮影群と教育的介入群に割り付けたRCTの結果、両群間の重篤疾患・改善率・機能障害・満足度に差は認められなかったことから、患者の不安・不満・機能障害を招かずにX線撮影をやめて医療費の削減は可能。http://1.usa.gov/qlCXOP
………世界各国の腰痛診療ガイドラインがルーチンな画像検査は行なってはならないと勧告しています。ですから日本以外の国では全体の約30%しか画像検査を行なっていません。もし日本がガイドラインの勧告に従えば、復興財源なんて簡単に捻り出せるでしょう。

■腰痛患者782名を対象としたMRIかCTを早期に使用した場合の臨床転帰と費用対効果に関するRCTでは、早期画像検査による臨床転帰の改善は認められず費用対効果が低いことが判明。X線撮影だけでなくMRIやCTも役立たない。http://1.usa.gov/s0OkVE
………レントゲンもCTもMRIも腰痛の改善には役立たないことが科学的に証明されています。時間とお金の無駄遣いはやめましょう。これはすでに世界の常識なのになぜ日本人だけが知らされていないのか不思議でなりません。

■腰痛患者380名をX線撮影群とMRI群に割り付けたRCTによると、両群間の活動障害・改善率・再発頻度などに差は認められなかった。医師も患者もMRIを好むが手術件数が増えて医療費が高騰する。http://1.usa.gov/sxB3et
………レッドフラッグ(危険信号)のない腰痛患者に画像診断を行なうと不必要な手術件数が増えて医療費の高騰を招きます。思い込みや先入観は捨てて、そろそろ事実に目を向けるべき時ではないでしょうか。

■腰痛患者421名を対象に腰部X線撮影群と非撮影群を9ヶ月間追跡したRCTによると、両群間の治療成績に差は認められなかったものの、X線撮影群は治療への満足度が高かった。医師はX線撮影に頼らず満足度の向上を目指すべき。http://1.usa.gov/uLyME9
………いかに患者教育が重要かを明らかにした論文。もちろん医師の努力も必要でしょうけど、患者の考え方を変えなければより効果的な腰痛治療は実現しないかもしれません。


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (55)

根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】

2. 腰に関わる障害

4)椎間板ヘルニア 〜その2〜
36歳、男。建築士(設計)。以前から腰痛はあったが、3ヶ月前、左腰仙骨から足にかけて痛みとしびれが出て、検診を受けると椎間板ヘルニアと診断、手術がいいと言われる。奥さんからは手術を反対され、本人も望まないので本院を訪問。
動診で椅子にかけてみると右膝が上がりにくい。腰を回旋してみると、右回旋がきついと言う。そこで右脚から大腰筋の操作を行い、また左外腹斜筋が硬いので同所の操作。脚の痛み、しびれが取れた。翌日、病院で検査を受ける。足の上がりが良くなったので手術はしなくて大丈夫と伝えられる。

5日ほどして2回目の来院。内腿部、大腰筋の操作、外腹斜筋の操作を再び行うと前屈状態も良くなり、立って床に手がつくようになった。「今まではこんなことはなかった」と喜んでいた。
その2日後、同僚たちと野球をやってキャッチャーを務めるが、投げるとき腰部がピリッとしたというので「自療操体法」の大腰筋操法行ったところ大事に至らずに済んだ。その3日後の日曜日に試合に出たが異常は感じなかったという。
3回目は、その約1週間後、前屈動作が少しきついので来院。内腿部、外腹斜筋、大腰筋、そして上体の回旋から足指の指根部の操作で前屈も問題が解消した。

(この症状のなぜ?)
上の症例は一番多い腰痛であり、前号の症例と同様に意外と自覚されない程度の悪い姿勢が原因になりやすい。主要部の操作に加え、指根部を気持ちの良いほうへぐるぐると回すことで解消されることが多い。


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■<柔道整復師> 保険請求を厳格化…厚労省検討

厚生労働省は、柔道整復師や鍼灸師らによる施術に公的医療保険を適用する療養費制度について、不正請求対策を強化する検討に入った。整骨院などの増加に伴い過当競争状態になり、療養費の架空請求や水増し請求が横行。本来は保険を使えないマッサージと変わらないような施術で患者を集める悪質なケースもある。同省は年明けにも社会保障審議会の専門委員会などで具体策の協議を始める。
厚労省によると、整骨院などの施術所は1994年の約2万カ所から2014年には約4万5000カ所に増えた。療養費を巡る不正は後を絶たず、肩や腰など症状の出た部分を次々と変えて施術し、マッサージ代わりの利用が疑われるような「部位転がし」と呼ばれる問題も表面化している。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会でも今年4月、療養費制度について、不適切な事例の調査や監査の強化などが議論になった。
厚労省が想定するのは、接骨院などの管理者(経営者)に定期的に講習を受けるよう要請、▽部位転がしを重点的に審査、▽地方厚生局による指導監査体制の強化、▽審査に必要な情報を得るため申請書の記載事項を追加--など。不正に療養費を申請する悪質な業者をこうした対策で排除すれば、13年度に約5500億円だった療養費を削減できるとみている。(11/7 毎日新聞)


NEWS ■介護と仕事の両立、「できる」人は1割

家族の介護が必要になった場合、仕事と両立できると考えている人は、1割程度であることが、オリックス・リビングのアンケート調査で明らかになった。特に家族介護がより現実的な問題となる40歳代や50歳代で「できる」と答えた人は3%から9%にとどまっており、安倍政権が掲げる「介護離職ゼロ」実現の難しさが改めて浮き彫りになった。同社では、全国の40代以上の男女を対象にアンケート調査を実施。1238人(男性782人、女性456人)から有効回答を得た。
「介護離職をせず家族の介護と仕事を両立できるか」という質問に対し、「できると思う」と答えた人は9.7%だった一方、「できないと思う」という答えは58.1%に達した。
「できると思う」と答えた人を年齢別で分析したところ、40歳代の女性では3.0%にとどまったほか、50歳代女性では7.1%、40歳代男性では9.0%、50歳代男性では7.9%となり、家族介護が現実味を帯び始める世代であるほど、仕事との両立に否定的である現実が示された。
「高齢期になった場合、大都市圏からの地方移住、または地方の中の市街地への移住を希望するか」との質問に対しては、「希望する」(「希望する」と「どちらかというと希望する」の合計)と答えた人は30.7%だった一方、「希望しない」(「希望しない」と「どちらかというと希望しない」の合計)は69.3%となった。介護が必要になった場合、移り住みたい場所を尋ねた質問では、「家族が一緒に住めるところ」と答えた人が31.8%で最も多く、以下は「自分と同じ高齢で介護が必要な人々が多く住むところ」(25.0%)、「多世代の人々が住むところ」(22.1%)、「あまり人が多く住んでいないところ」(15.4%)などの順となった。(11/6 医療介護CBニュース)


NEWS ■パーキンソン病への免荷歩行リハビリは有効か

パーキンソン病患者のリハビリテーションの1つとして、機械で足元にかかる重みを軽減した状態で流れるベルトの上を歩行する「部分免荷トレッドミル歩行訓練(PWSTT)」がある。PWSTTのパーキンソン病患者における有用性はこれまで検討されてきたが、運動を行わない場合や、従来の歩行訓練を行った場合と比較した検証はない。このことから、米国イリノイ大学のMohan Ganesan氏らは前向きに研究を行い、運動を行わない群、従来の歩行訓練を行った群と比較して、PWSTを行った群で歩行能力指標が有意に改善することを明らかにした。Archives of physical medicine and rehabilitation誌9月号掲載の報告。
研究グループは、安定量のドパミン受容体作動薬を使用中の特発性パーキンソン病患者60例(平均年齢58歳[SD 15±8.7])を、「歩行訓練を行わない群」「従来の歩行訓練群」「PWSTT
群」(各群n=20)の3群に無作為に割り付けた。歩行訓練はどちらも1日30分、週4日間、4週間実施した。主要アウトカムは臨床的重症度と歩行能力指標とした。臨床的重症度はパーキンソン病統一スケール(UPDRS)とそのサブスコアで測定した。歩行能力指標は歩く速度・左右のステップの長さとその変動係数であり、2分間のトレッドミル歩行と10m歩行テストより測定・算出された。アウトカムは、ベースライン時および2週、4週時に評価した。(11/4 HealthDayNews)


NEWS ■「加工肉1日50g、がんリスク18%増」 WHO

世界保健機関(WHO)は10月26日、ベーコンやハム、ソーセージなどの加工肉を1日50g食べると、結腸や直腸のがんにかかるリスクを18%高める、などとする研究結果を発表した。
この研究は、WHO傘下の国際がん研究機関(IARC、仏リヨン)の作業グループがまとめ医学専門誌に発表した。加工肉はIARCの発がん性の基準で、喫煙やアスベストなどと同じ「グループ1」に分類されたが、IARCは「それらが同程度に危険というわけではない。当機関の分類は、リスクの度合いを評価しているというよりは、がんの原因となるものについての科学的証拠の強さを示している」と説明している。また牛や豚、馬などの赤身の肉についても発がんの可能性があるとする分類に位置づけた。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、今回の結果発表前から、食肉業界団体などがIARCの研究結果に反発を強めているという。(10/27 朝日新聞)


NEWS ■<認知症>「家族の負担が不安7割」内閣府

内閣府は10月23日、認知症に関する初めての世論調査の結果を発表した。認知症の人と接したことがある人は56.4%で、認知症について「医療・介護のサポートを利用して今まで暮らしてきた地域で生活できる」などの肯定的な選択肢を選んだ割合は、認知症の人と接したことがない人より高く、認知症に対し前向きなイメージを持っている傾向が浮かんだ。
調査は先月、全国の20歳以上の3000人を対象に面接で行い、1682人(56.1%)から回答を得た。
認知症に接したことがある人のうち、家族や親戚に認知症の人がいるか、いた人が約4割、近所付き合いで接した人が33.5%、医療や介護以外の仕事で接した人が17.8%。接したことがない人は43.3%だった。
認知症のイメージは、回答者全体では、認知症になっても「今まで通り自立的に生活できる」が6.8%、「サポートを利用しながら今まで暮らしてきた地域で生活できる」が33.5%で、肯定的な二つの選択肢は計40.3%。接したことがある人でみると計45.5%で、ない人の計33.7%を大きく上回った。
一方、認知症になると「身の回りのことができなくなり介護施設に入る必要がある」35.9%▽「暴言や暴力などで迷惑をかけ、地域での生活が難しくなる」7.6%▽「何もできなくなってしまう」10.9%--だった。
また認知症になったとしたら、どのような不安を感じるかの質問(複数回答)では、「家族に負担をかけるのでは」が74.9%と突出し、「家族以外の周りの人に迷惑をかけるのでは」も56.5%と多かった。「これまでできていたことができなくなるのでは」56.8%▽「家族や思い出を忘れてしまうのでは」55.8%--など自分の状況への不安より、家族や周囲の人への影響を心配する傾向が強いことが特徴的だった。(10/24 朝日新聞)


NEWS ■「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」切り替える脳細胞発見

眠っている間に眼球が動き、夢を見ることが多いレム睡眠と、ノンレム睡眠を切り替えるスイッチの役割を果たす脳の部位をマウスで発見したと、筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の林悠・助教や理化学研究所の糸原重美チームリーダーらが10月22日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。
スイッチを人為的に操作してレム睡眠を妨げると、その後のノンレム睡眠で記憶を形成して脳機能の回復を促す働きが低下することが判明。スイッチがある脳幹には、睡眠と覚醒の切り替えを担う部位も隣接して存在することも分かった。林助教は「脳幹の構造はマウスと人でよく似ており、人にもスイッチがあると考えられる。レム睡眠の減少による発達障害や不眠症、薬の副作用による悪夢のメカニズム解明につながる」と話している。
林助教らは、レム・ノンレム睡眠の切り替えや睡眠・覚醒の切り替えを担う神経細胞が、胎児期に同じ前駆細胞から生じており、「Atoh1」という遺伝子が働いていることを解明。脳幹の部位を特定し、化合物などでレム睡眠を妨げると、ノンレム睡眠中に測定されるゆっくりとした周期の脳波「デルタ波」が非常に弱くなることを発見した。
デルタ波が強い状態では、脳神経細胞同士をつなぐシナプスが強化されて記憶が形成されたり、成長ホルモンが盛んに分泌されて脳の発達・回復が促されたりする。レム睡眠には、ノンレム睡眠中のこうした重要な働きを誘発する役割があるという。(10/23 時事通信)


NEWS ■<髄液漏れ>「来春の保険適用目指す」厚労省

激しい頭痛やめまいなどを起こす「脳脊髄液減少症」の厚生労働省の研究班が、札幌市で10月16日まで開催された日本脳神経外科学会で、治療法の来春の保険適用を目指していることを明らかにした。研究班はこれまでも同学会で研究の進み具合を報告してきたが、保険適用への言及は初めてという。研究班代表の嘉山孝正・同学会理事長は毎日新聞の取材に「来春の保険適用が見えてきたということ。患者のために何とか進めたい」と話した。
学会で脳脊髄液減少症がシンポジウムのテーマになり、研究班事務局の佐藤慎哉山形大教授が現状を報告した。それによると、先進医療の承認を得た医療機関が全国で46あり、そのうち30機関が研究班のアンケート調査に協力し、症例は890あるという。佐藤氏は「症例の分析を進め、来春の診療報酬の改定で保険適用が認めてもらえればと考えている」と語った。
2006年に初めて学会がこの病気をシンポジウムのテーマにした際は「ほとんどが誤診だ」などと否定的な意見が多かった。今年のシンポジウムの司会は当時を振り返りつつ、「時間がたち、何が正しいのか、どんな問題が残っているかがはっきりしてきた。うまくいけば保険適用となる。喜ばしい」と感想を述べた。
研究班は07年発足。11年にMRI(磁気共鳴画像化装置)などの画像検査で髄液の漏れを判定する診断基準をまとめ、12年に治療法が先進医療に認められた。(10/18 毎日新聞)


NEWS ■トマトジュースは更年期女性の健康改善に有効

トマトジュースの摂取は、更年期女性の不安などの更年期症状を緩和し、安静時エネルギー消費量・心拍数を増加させ、高トリグリセリド(TG)例(150mg/dL以上)の血清TG値を低下させることが、東京医科歯科大学の廣瀬明日香氏らの研究により明らかになった。Nutrition journal誌4月号の報告。
トマトベースの食品は健康増進と疾病防止効果があるといわれている。また、トマトジュースの成分には、更年期症状および心血管疾患を持つ女性を含む中年女性にとって、健康上のベネフィットを有するものがあると考えられている。そのため、著者らは、少なくとも1つ以上の更年期症状を持つ40〜60歳の女性95人を対象に、健康パラメータに対するトマトジュース摂取の正味の効果を調査するため、非盲検単アーム試験を行った。
参加者は、試験開始前の2週間および試験期間中(トマトジュースを摂取する8週間)はトマトが豊富な食品や飲料の摂取を控えた。試験開始後、無塩のトマトジュース200mLを1日2回、8週間摂取した。更年期症状は、更年期症状スケール(MSS)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、アテネ不眠尺度(AIS)を用いて、ベースラインおよび試験開始4週時、8週時点に評価した。それらと同じタイミングで、BMIや体脂肪率などの体組成、血圧、心拍数、安静時のエネルギー消費量、トリグリセリド、コレステロール、血糖値、HbA1cを測定した。(10/16 HealthDayNews)


NEWS ■脳卒中になりやすい職業

ストレスの多い仕事、特に「要求は厳しいが裁量権がほとんどない」職業に就くと、脳卒中リスクが高まる可能性があるという。中国、広州南方医科大学心臓病学部のYuli Huang氏らの研究で示された結果で、論文は「Neurology」オンライン版に10月14日掲載された。Huang氏らが以前に発表された6件の研究を分析した結果、高ストレスの仕事をしている人の脳卒中リスクは、低ストレスの仕事の人よりも22%高かった。特に女性ではリスク上昇が大きく、33%も上昇した。
分析対象とした研究は、約14万人を最長17年間追跡したもの。うち1件は米国、3件はスウェーデン、1件は日本、1件はフィンランドで行われた。同氏らは、裁量度および仕事の要求度・心理的負担度に基づいて、仕事を4種類に分類した。この分類では時間的制約、精神的な要求度、調整の負担を考慮したが、肉体労働と総労働時間は考慮されていない。
4分類は、要求度と裁量度がともに低い受動的な仕事(用務員、肉体労働者など)、要求度が低く裁量度は高い低ストレスの仕事(科学者、建築家など)、要求度が高く裁量度は低い高ストレスの仕事(給仕、看護助手、その他サービス業従事者など)、要求度と裁量度がともに高い能動的な仕事(医師、教師、エンジニアなど)であった。
高ストレスの仕事では、脳梗塞の発症リスクが低ストレスの仕事よりも58%高かった。受動的または能動的な仕事では、リスク上昇を認めなかった。全脳卒中リスクの4%超が高ストレスの仕事により生じていた。
Huang氏は、「高ストレスの仕事と脳卒中の関連には多くの機序が関与する。特に、こうした仕事は食生活の悪さや喫煙、運動不足などの不健康な習慣につながる可能性があることが重要だ」と述べている。(10/14 HealthDayNews)


■次号のメールマガジンは12月10日ごろの発行です。お楽しみに。(編集人:北島憲二)


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