エンタプライズ発信〜メールマガジン【№45】2015. 1

今年の日本列島は昨年以上に火山活動に耳目が集まります。昨秋には戦後最悪の火山災害となった御嶽山(長野、岐阜)の噴火に震撼しました。現在では吾妻山(福島)も噴火警戒レベルが上がり、十勝岳(北海道)や草津白根山(群馬、長野)、桜島(鹿児島)、阿蘇山(熊本)などが警戒の領域に入っています。2011.3.11の東日本大震災の勃発以降、局限地はいうまでもなく、地震国・火山国である日本は至るところに自然災害の種火が燻っていることを肝に銘じたいと思います。編集子が敬慕する福島県立医科大学理事長の菊地臣一先生は、2008年以来、大学のHPで「理事長室からの花だより」という四季折々の花を眺めたエッセイ(週刊)を書いておられます。忌まわしい3.11の原発瓦解による放射能被害に対する国家プロジェクトの任も背負いながら、稀有な受難を己の宿命と捉え、粛々と難題課題に取り組む姿に深く敬服しています。震災後も鉄筆の重きに耐え書き続けたエッセイが今週、連載300回を迎えます。「いつにでもやめたいが、けじめが大事」と語っておられた菊地先生。節目を飾ることも木鐸の役割とする菊地先生の第300回の抱負に注目しています。じつは花歓談が主旨ですが、菊地臣一氏の私小説的なふるまいが多く語られ、心を震わせてくれる箴言が散りばめてあることがまた魅力的な作風です。 福島県立医科大学

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】エネルギー医学の将来〜期待される今後の研究
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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◎連載vol.3

エネルギー医学の将来 〜期待される今後の研究

<小社編集部編>


早すぎる分野(はじめに)〜つづき〜

科学者たちの生体エネルギーに関する発見の陰には、各種の手法によって患者を治療してきたセラピストたちの、長年にわたる経験と創意工夫があった。セラピストたちは、自らの感覚と直感で生体のしくみに関する独自の解釈を生み出してきたが、それらの解釈は科学的発見によって裏づけられたのである。種々のエネルギー療法に対する関心が高まってきている今、セラピストたちの経験と科学との融合によって、すべての人々のためになるような新しい医学が生まれようとしている。
しかし、わずかなエネルギーにも生体が反応するという発見により、現代生活の中に満ち溢れる電磁波が、人間の健康に有害な作用を及ぼす可能性も出てきた。電磁気現象をよく知る物理学者の中には、そのような危険性を否定する人もいる。しかし、たとえ電磁気が物理学的にどれほど詳しく解明されていても、その生物に対する作用は、ほとんどわかっていないのが現状だ。物理学者のワーナー・ハイゼンバーグがかつて言ったように、「物理学と化学の法則だけでは生物学的現象を完璧に説明できない」ことが最大の問題なのである。

セラピストの手から放出されるエネルギー

先に箇条書きにした重要な発見の中で、最も不確かでありながら最も興味深いのが、各種のセラピストの手から強力な電磁波が放出されているという発見である。この現象は、ツィマーマン(1986)と瀬戸らのグループ(1992)によって報告されているが、さらなる追試で常に一致した結果が得られれば、彼らの論文は医学史の記念碑となるだろう。
しかしツィマーマンらが報告したような電磁波は、どの研究者によっても確認されているわけではないので、確かであるとは言えない。また、セラピストの手から放出される電磁波が、どのようなスペクトルを示すかについてもまだ詳しい分析はなされていない。現時点でわかっていることから推測すると、人間の手から出る電磁波には、分子、細胞、組織、臓器・器官、そして全身の活動を示すシグナルが入り混じっているものと考えられる。音、光、熱といった種々の形態のエネルギーが渾然一体となって磁波を生み出しているのだろう。
人間の手から電磁波が放出されるという現象は、セラピューティック・タッチに関する研究で初めて確認され、その後、気功や武道、あるいは瞑想の修行者を対象とした研究で裏づけられた。エネルギー療法を実践するセラピストたちは、日々の治療の中で目の当たりにする優れたエネルギーの効果に驚嘆していることだろう。しかもさまざまなエネルギー療法の効果を裏づける事実が続々と明らかになってきている。しかしどれほど慎重にコントロールされた研究であっても、得られた結果をどんな生物学者や医学者にも受け入れられるような理論で説明できなければ、研究そのものの価値が失われてしまう。
生物学者にとっての最大の関心事は、「人間は思考や感情によって医学的に意味があるような生物学的変化を、自ら進んで意識的に、または意図的に起こすことが可能か」どうかを明らかにすることだろう。そして生物エネルギー学の専門家にとっては「エネルギー論そのものの正当性」という根源的な問題を解き明かすことが最大の課題だろう。
エネルギー論という概念は、科学の世界で古くから続いてきた重要で複雑な論争を再燃させた。そこで、このあとは、今後の研究が期待されるいくつかのテーマを呈示し考えていくことにする。(つづく)
(出典:『エネルギー医学の原理』小社刊2004)


★連載エッセイ ⑬☆

“こころ” と “からだ”  …… 臨床にモノ思う。

保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


腓骨神経麻痺の早期回復

【初回所見】
20歳後半の女性が、腰から足にかけてのコリ感、運動時痛、しびれ感を訴えて来院。腰痛は以前からあったとのことだが、今回は2週間ほど右足指のしびれ感が出て取れないとのこと。前かがみになると腰から殿部にかけて痛みを伴う。接客業なので、お辞儀の際に前かがみになるのがつらいとのこと。痛みの程度はやや軽減してはいるが、足先のしびれ感が取れないという。2週間前に整形外科医院を受診。レントゲン検査を受け、痛み止めと炎症を抑える薬の処方を受ける。

【初回検査所見】
爪先立ちで歩いてもらうと、右側に不安定感あり。踵で歩いてもらうと右の足関節背屈がしにくい状態。足関節背屈運動も左右比較すると30°の誤差があった。右の前脛骨筋に軽度の麻痺がある状態。右側の足背部(第一、第二中足指節関節周辺部)に知覚異常を伴う。右の股関節周辺の筋群に機能異常、右腰方形筋部に機能異常。
・AM(アクティベータ・メソッド)では右の下肢、骨盤部、腰部、頸部に神経関節機能障害を認めた。
・PCRT(心身条件反射療法)の脳神経機能検査では、右側の対光刺激、右側の聴覚刺激、右側の嗅覚刺激、眼球の上方、下方運動にて陽性反応を示した。
・PCRTの経絡検査では胃経に陽性反応がみられ、「劣等」の感情が関係していた。
・PCRTの感情検査では、その他「恐れ」、「連帯感」の感情、「刺激、変化、挑戦」の価値観に陽性反応を示した。

【初回〜5回までの施術】
AMとPCRTにてそれぞれの陽性反応を調整。腰痛、殿部痛は初回の施術でかなり改善。右足先の軽度の麻痺としびれ感は、施術回数を重ねるごとに徐々に改善、5回目の施術後には、踵での歩行がほぼ左右均等になり、足関節背屈も左右同じ角度まで改善した。施術開始から3週間目だった。

【考察】
腓骨神経麻痺にも様々な原因、ならびに程度がある。大きく分類すると「構造学的な直接的な圧迫」による麻痺なのか、「神経生理学的な間接的な圧迫」、すなわち筋肉、筋膜などの軟部組織による間接的な緊張によるものに分類することができる。すでに整形外科院で構造学的な検査を受けていることから、構造学的な原因は除外できると判断した。また、初回のAMとPCRTの施術直後に麻痺症状の改善がみられたことからも神経生理学的な原因が関係していることが明らかだった。西洋医学的には総腓骨神経絞扼性神経障害による腓骨神経麻痺ということだが、AMとPCRTを併用して神経生理学的な誤作動を起こしている原因を消去することで症状が明らかに改善していった症例だった。神経を直接圧迫したなどの肉体的な原因ではなく、心と身体のつながりの誤作動が関係していたので、その「誤作動」が溜まらないような体質改善を目指すためにも定期的な施術が理想だろう。


《連載27 》

伝統医学をシルクロードに求めて

池上正治(作家・翻訳家)


漁師や樵(きこり)が医学を自分のものとする 〜つづき〜

医学の知識がとかく秘蔵されやすいことは、昔も今も変わりはない。エーテルによる麻酔に世界で初めて成功した米国の歯科医モートンが、その「特許」をめぐって恩師との間で裁判を行なったのは1846年のことである。江戸時代の名医、華岡青洲が朝鮮アサガオと烏頭(ウズ)を使って全身麻酔に成功し、自分の妻の乳がん摘出術を行なったのは1805年のことである。しかしその成果は秘伝とされた結果、後世に引き継がれて発展することはなかった。この2つのことを考えると、1822年生まれのグエン・ディン・チウが、医学知識を伝える方向を、ただの人とも言うべき漁師や樵としていたことは非常に興味深いことである。

フランスのシャボンは使わない

ベトナムと西洋諸国との交渉はすでに17世紀から行なわれていたが、阮朝の成立した19世紀に入ると、産業革命を経た西洋諸国の通商要求は、以前にも増して強いものとなった。これに対しベトナム側では鎖国政策をとりつづけたが、インドと中国を結ぶ海上交通の要衝にあたるベトナムの場合、チベットやネパールにおけるような鎖国の効果は期待できなかった。フランス、スペイン連合軍が中部ベトナムのダナン港を占領したのは1858年8月のことである。こうしたフランスによるベトナムの侵略、植民地化が始まったとき、グエン・ディン・チウは32歳であった。
盲目の文人であり、民衆に根強い人気をもつチウ先生を、フランス側では味方につけようと、時には金品を、時には名誉をちらつかせて誘惑した。しかしチウ先生はそれらの申し出を全部、きっぱりと拒絶した。その徹底したレジスタンスぶりは、フランス人の作った石鹸は使わず、フランス人の作った道は歩かない、というまでのものだったという。
「人々の伝えるところによれば、南ベトナムの詩人グエン・ディン・チウは、自身は目が見えず、耳が聞こえなかったにもかかわらず、残せる力を使い果たして詩を書き、敵と戦ったという。自己の民族のために、倫理と道徳を伝えるために本を残した。たとえ自分は飢え、肉体が不自由であっても、フランス植民者からの援助は受け付けなかった。グエン・ディン・チウは一生涯、シャボンの替わりに、かまどの灰を使った。なぜなら、シャボンは敵が作ったものだから。彼はまた、国道を通ることはしなかった。なぜなら、国道は植民地政策によって作られたものであるから。グエン・ディン・チウが歩いたのは畑の中だ。これは事実であり、ベトナムの士夫(インテリ)の倫理と意識とを表現したものであるかもしれない。このことは私にとって非常に感激的なことであった」
ここで言う「私」とは、イタリア人A・パッチ氏である。同氏は、短期旅行の計画でベトナムを訪れ、その暑さに辟易としながらも、ベトナム人の美しい印象に惹かれ、いつしか20年以上も暮らした人である。パッチ氏は、グエン・ディン・チウの自衛的精神が後世の人々にとって決して忘れることのできないものであり、外部からは破壊することのできないものである、と結論している。(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(20)

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■アメリカでは脊椎治療実施率が上昇しているにもかかわらず、身体的・機能的アウトカムは低下傾向にある。脊椎医療は次々と色々なことに手を染めているが、その成果は極めて乏しい状況にある。http://1.usa.gov/kBmBqb http://1.usa.gov/lg3HR0
……腰痛疾患に対する医学的介入はそれほどの効果はありません。自分で治すという積極的な姿勢が必要です。

■ノースカロライナ州の地域住民を対象とした研究では、慢性腰痛患者が増加していると共に医療機関の受診率も上昇しているが、画像検査、薬剤投与、物理療法が過剰使用されていて、エビデンスに基づく治療が行なわれていないことが判明。http://1.usa.gov/imqCav
……エビデンスに基づく治療が行なわれれば慢性化を防ぐことができるだけでなく、医療費の節約になるというデータが掃いて捨てるほどあります。いつまでも時代遅れの考え方にとらわれていないで、そろそろ21世紀の医療を導入しましょうよ。それとも慢性腰痛患者を増やしてお金儲けに走りますか?

■頚部痛と腰痛患者256例を対象に、医師の標準的な治療群、脊椎マニピュレーション群、理学療法群、シャムトリートメント群に割り付けたRCT(ランダム化比較試験)によると、最も成績が悪かったのは医師の標準的な治療群とシャムトリートメント群だった。http://1.usa.gov/kfFvV6
……時代遅れの科学的根拠のない治療法はプラシーボと同等の効果しか得られなかったというランダム化比較試験です。プラシーボを超えられない治療法はそろそろやめにしませんか? 無理強いはしませんけど医療費
を有効活用しなければ健康保険制度が崩壊します。

■急性腰痛患者186例を対象としたRCTによると、安静臥床群、ストレッチ群、日常生活群のうち、最も早く回復したのは日常生活群で、最も回復が遅かったのは安静臥床群だった。腰痛に安静第一は間違い。むしろ回復を妨げる。http://1.usa.gov/mOolz9
……急性腰痛(ぎっくり腰)は安静に寝ていると回復が遅れます。どうかお願いです。サイトに「腰痛には安静が第一」と記載している方は直ちに訂正してください。患者さんを慢性化させてしまいます。

■エビデンスに基づく正確な情報を平易かつ理解可能な言葉で患者に提供できれば、腰痛患者は不適切な治療を選択しなくなるだろうが、3つの専門学会と10ヶ所の医療機関のウェブサイトを調査した結果、97%が患者にとって難解だった。http://1.usa.gov/kuWavp
……耳がちぎれるほど痛い話です。ヘルス・リテラシーを身につけてほしいと声高に叫んでみても、サイエンスコミュニケーションができなければ意味がありません。自分の能力不足を猛省しているところです。

■近年、慢性腰痛に対する医療費が激増している。硬膜外ブロック(629%増)、オピオイド鎮痛剤(423%増)、MRI(307%増)、脊椎固定術(220%増)。しかし患者の症状や活動障害は改善していない。明らかに過剰診療。http://1.usa.gov/lrANBd
……このまま費用対効果の低い治療を続ける意味はどこにあるのでしょう。今こそ安全で費用対効果の高い治療法を選ぶべきではないでしょうか。無駄なことをしている余裕などないと思いません?


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (45)

根本 良一(療動研究所主宰)


【 連動操体法の応用編 】

2. 腰に関わる障害

2)ギックリ腰 〜つづき〜
【例1】玄関先でギックリ……町内会の集金に来た60歳ほどの女性が、玄関で中腰になり釣銭を小銭入れから探そうとしていたらギックリ! 玄関先で仰向けになって寝たまま動けない。動かそうとすると“痛い!”と手で払いのける。
「寝たままでいいですよ、静かに膝だけ立てましょう」筆者は両膝頭を片手で支え、足先を筆者の片膝で押さえて、あいている片手で、腿の後ろ、大腿二頭筋をそっとつまんでみる。この段階ではどちらに膝を出したらラクなど確かめられない。再び大腿二頭筋を軽くつまんでみると右が硬いことが分かった(このケースでは痛みに敏感なので決して強くしない)。次に、
①横に座り、右膝下から右腕を差し込み、左膝頭へかけ、声をかける。「この左膝で私の手を押してください。痛くないですね?」「気持ちよく押し出したら、こちら右膝を腰と一緒に引いてください。この辺(腰が引けたところ)で、1、2、3、ハイ、そのままでフーッと息を吐きながら力を抜きます」
②そのままで、おなかの硬さを診る。外腹斜筋(左中間部あたり)が斜め内下へ向かうところに硬いものがある。触ると“痛い!”とあえぐ。「ではこのまま両腕を組んでください。痛い方の腕を右手で押さえ、左腕は右腕の上から内側に差し込み、親指を前へ出してください」「もうひとつ、左肘を上下して、おなか(外腹斜筋)の押さえた痛みの消える角度を選びます」(組んだ腕を上下にしてみてラクになる角度がある)。
「ここで腕を前、右に寄せ、両膝は腕と逆の方へ軽く倒します。この膝と腕へ軽く手を添えていますから、気持ちよく動けるだけ動き、この辺(ほぼ8割と思われるところ)でフーッと息を吐きながら力を抜きます。このまま動かずに、3呼吸おいて、…戻ります」
さらに右側の少し下の位置にある緊張を、同じ要領で処置してみた。「どうですか、起きてみてください」おそるおそる起き上がって、“ウソー、これどうしたの?”
そのほかにもまだ腰仙部、股関節部、内腿部などを診なければならないが、玄関先での治療はこれが限度であろう。ギックリ腰はとくに外腹斜筋、内腹斜筋、大腰筋が緊張する。身体をひねる、前屈することができず、寝たらそのまま動けない。このケースの場合、ここまでが応急処置であるといえよう。(つづく)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■世界188ヵ国の平均寿命、13年で65歳から72歳へ


世界の平均寿命は、1990年の65.3歳から2013年は71.5歳に延びたことが判明した。一方で、死亡数は1990年の4,750万人から2013年は5,490万人に増加した。また、高所得の地域では心血管疾患とがんの死亡率が、低所得の地域では下痢や下気道感染による小児の死亡率が、いずれも減少したという。世界の研究者による共同研究「疾病による国際的負担に関する調査(Global Burden of Disease Study:GBD)2013」の結果、明らかになったもので、Lancet誌オンライン版2014年12月18日号で報告された。
GBD2013では188ヵ国を対象に、1990〜2013年の毎年の年齢別・性別総死亡率や疾病別死亡率などのデータを集計した。それを基に240の死因について、6つの異なるモデルを用いて分析を行った。上記以外の報告では、サハラ砂漠以南のアフリカの地域でHIV感染症/AIDSが原因で平均寿命が短縮。外傷による死亡では、1990年の430万人から2013年には480万人へと10.7%増加した。
2013年に死亡10万人以上の原因となった疾患のうち、年齢調整死亡率が1990年から増加したのはHIV感染症/AIDS、膵臓がん、心房細動・心房粗動、薬物依存症、糖尿病、慢性腎臓病、鎌状赤血球症だった。5歳未満児の死因上位は、下痢性疾患、下気道感染、新生児死亡、マラリアだった。(ケアネット 1/8)


NEWS ■親の禁煙、子のぜんそくに予防効果……大阪の医師ら発表


親が禁煙すれば子どものぜんそくが重症化するのを防げることを、大阪府立成人病センターの田淵貴大医師らの研究グループが明らかにした。4歳半〜8歳の間にぜんそくで入院する子を少なくとも2割近く減らせるという。小児ぜんそくと親の喫煙の関係は指摘されていたが、禁煙の予防効果を具体的に示したのは初めて。
厚生労働省の大規模追跡調査に参加した2001年生まれの子ども4万3千人を対象に、生後半年時点の親の喫煙状況と、8歳までのぜんそく入院の経験を、三つの年齢層で調べた。両親が室内で吸っていた3399人中52人が4歳半〜8歳でぜんそくで入院していたが、両親とも吸わない1万4117人では入院したのは112人だった。喫煙以外の要因を除いた上で、両親が室内で吸う子がぜんそくで入院する確率は、両親がたばこを吸わない子に比べて、(1)生後半年〜2歳半で54%(2)2歳半〜4歳半で43%(3)4歳半〜8歳で72%高くなった。
調査結果を日本全体に当てはめると、両親とも禁煙すれば、少なくとも(1)の年齢層で8.3%(4970人)(2)で9.3%(4950人)(3)で18.2%(1万940人)の入院を減らせるという。田淵さんは「子どものぜんそくの8〜18%は親の喫煙が原因といえる」と話す。研究成果は米医学誌電子版に掲載された。(朝日デジタル 1/6)


NEWS ■飲酒量多いと医療費高い〜日本男性の大規模研究


日本の医療保険制度下での大規模な疫学研究により、日々の飲酒量が多いと医療費および入院の可能性が増加することがわかった。金沢医科大学公衆衛生学の中村幸志氏らが、Alcohol and Alcoholism誌オンライン版2014年12月17日号で報告した。
この研究の参加者は、医療保険の被保険者で、毎日飲酒する習慣を持つ40〜69歳の9万4307人の男性。1日あたりの飲酒量について2杯(アルコール23g)未満、2〜3.9杯、4〜5.9杯、6杯以上の4群に分け、開始から1年間に高額医療費(医療費分布の90パーセンタイル以上と定義)が生じる可能性とその年に入院する可能性を比較した。主な結果は以下のとおり。
・1年間の医療費が上位10%までの参加者において、1人あたり少なくとも2152ユーロ/年の医療費が生じた。
・医療費上位10%で、本コホートの総医療費の61.1%を占めていた。
・医療費上位10%の参加者において、1日2杯(アルコール23g)未満の群と比べたオッズ比(95%信頼区間)は、年齢、BMI、喫煙、運動習慣での調整後、2〜3.9杯/日の群で1.08(1.02〜1.15)、4〜5.9杯/日の群で1.11(1.05〜1.19)、6杯/日の群で1.31(1.18〜1.45)であった。
・入院における調整オッズ比は、それぞれ、1.11(1.04〜1.19)、1.14(1.06〜1.24)、1.39(1.24〜1.56)であった。
(ケアネット 12/29)


NEWS ■片足で20秒立てない人は脳卒中リスクが高い


片足で20秒以上バランスをとることができない場合、脳卒中のリスクがあることが日本の研究グループにより示された。片足で立つのが難しいということは、既に脳内で軽度の脳卒中や出血が生じている可能性があり、さらに深刻な脳卒中を起こすリスクが高いという。「片足で立つときに不安定さがみられたり、歩行に問題があったりする場合は、脳の異常や精神機能低下のサインである可能性があるため注意が必要だ」(京都大学大学院医学研究科、ゲノム医学センターの田原康玄准教授)
今回の研究では、1400人弱の男女(平均67歳)に1分間片足でバランスをとってもらい、さらに「無症候性脳卒中(silent stroke)」や微小出血を評価するMRIスキャンを実施した。その結果、片足で20秒以上立てない場合、脳内の微小な脳卒中や出血との関連がみられたほか、思考力や記憶力の低下との関連も認められた。
田原氏によると、2カ所以上の軽度脳卒中のある人では約3人に1人、1カ所の脳卒中のある人では16%にバランス障害がみられたという。また、2カ所以上の微小出血のある人では30%、1カ所の出血のある人では15%にバランス障害がみられた。脳血管に障害の認められた人の傾向として、高齢で、血圧が高く、頸動脈が肥厚していた。また、長時間片足で立つことができない人には、記憶力・思考力検査のスコアが著しく低い傾向も認められた。(Strokeオンライン版 12/18)


NEWS ■こまめなメール確認をやめるとストレスが軽減


ストレス軽減に役立つ方法を探しているなら、電子メールをチェックする頻度を減らすようにするといい—-こんな研究結果が、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学心理学部のKostadin Kushlevらにより示唆された。研究論文は、Computers in Human Behaviorに掲載された。
今回の研究の被験者は、学生、金融アナリスト、医療専門家など成人124人。被験者を2群に分け、1週目には1群は1日3回のみ電子メールをチェックし、もう1群は好きなだけチェックした。2週目には逆にした。その結果、電子メールをチェックする頻度が少ないと、ストレスも少ないことが示された。ただし、電子メールの習慣を変えることは多くの被験者にとって難しいことが判明した。ほとんどの被験者が、1日2〜3回しかチェックしないことは非常に難しいと感じたという。
Kushlev氏は、「電子メールをチェックするという誘惑には抵抗しがたいが、この誘惑に負けないようにすることでストレスは軽減する。企業やその他の組織では、メールを常にチェックし返信するのではなく、まとめて行うよう提案することで従業員のストレス軽減に役立つ可能性がある」と述べている。(HealthDayNews 12/13]


NEWS ■日本の小中学生にも腰痛、有訴率はBMIと相関


最近、学童・青少年期の子供たちの間にも腰痛が広がってきている。新潟大学医歯学総合病院整形外科の佐野敦樹氏らが行った6年間の出生コホート研究の結果、年齢が上がるにつれ、腰痛の点有病率(有訴率)と生涯有病率(経験率)、ならびに重度腰痛の割合が増加することが明らかとなった。著者らは、BMIが学童・青少年期の腰痛と関連している可能性を指摘している。
研究グループは、日本人小児について、小学4年生(9歳)時から中学3年生(14歳)時までの6年間、年1回無記名のアンケート用紙を配布して腰痛に関する追跡調査を行った(開始時対象児4597人)。
腰痛の重症度を3段階に分け、腰痛の程度を評価するとともに、腰痛の有訴率と経験率の推移、ならびに腰痛有訴率とBMIや課外スポーツ活動との関連を検討した。主な結果は以下のとおり。
・13歳までは学年が上がるにつれ、腰痛有訴率が増加する傾向がみられた。
・腰痛経験率は、学年が上がるにつれ有意に増加した。
・腰痛を経験したことのある生徒では、学年が上がるに従って重症度の高い腰痛(レベル2および3)の割合が増加した。
・すべての学年において、BMIと腰痛有訴率との間に有意な正の相関が認められた(p<0.05)。
・11歳時および14歳時に、課外スポーツ活動と腰痛有訴率との関連が認められた(それぞれp=0.001、p<0.001)。
(European Spine Journal誌オンライン版 12/17)


NEWS■実年齢よりも「気持ちが若い」ことが長生きにつながる


「気持ちが若い」人は長生きする可能性が高いことが新たな研究で示唆された。実年齢よりも3歳以上若いと感じている高齢者は、実年齢と同じかそれよりも高齢だと感じている人に比べて8年間での死亡率が低いという。
8年間で、実年齢より高齢だと感じている人の約25%、若いと感じている人の約14%、年齢相応に感じている人の約19%が死亡していた。慢性的な健康障害などの実際よりも高齢だと感じさせる事柄を考慮しても、高齢だと感じている人の死亡リスクは若いと感じている人よりも41%高かった。
今回の報告は、英国での長期研究のデータに基づいたものだ。全被験者に「自分を何歳だと感じるか」と尋ねたところ、被験者の3分の2超が実年齢より3歳以上若いと感じ、約4分の1が実年齢、約5%が1歳以上高齢だと感じていた。被験者の実年齢は平均66歳だったが、自己認識年齢は平均57歳だった。高齢だと感じている人の心臓関連疾患による死亡は、若いと感じている人の2倍以上だった(10.2%対4.5%)。ただし、今回の研究は、若いと感じることで寿命が延びることを決定的に証明しているわけではない。Steptoe氏は、「おそらく人々の信念や感情を調べることで、他の健康や幸福を測る指標では捉えられないことがわかる」と述べている。
この結果は英ロンドン大学(UCL)疫学・保健研究所所長のAndrew Steptoe氏らの研究で示唆されたもので、研究論文が「JAMA Internal Medicine」オンライン版に12月15日掲載された。(HealthDayNews 12/14)


NEWS ■米国のがん死亡の30%は依然「喫煙」が原因


米国では喫煙率が大幅に低下しているにもかかわらず、依然としてがんによる死亡の3分の1はたばこに起因するものであることが、新たな研究で報告された。米国がん協会(ACS)の研究グループは、「今回の結果から、現代の米国において、がんによる死亡のうち約10件中3件は喫煙が原因であると示された。
今回の研究では、最新の数値を得るため、2010年の全国データを分析した。この最新のがん死亡数の推定値には、受動喫煙による死亡は含まれておらず、葉巻、パイプ、無煙たばこなどの他種のたばこによる死亡も含まれていない。
研究グループによると、2010年における喫煙関連のがん死亡率は、30年前よりも高くなっている。しかし、喫煙率の低下ががん死亡の低減に寄与していないわけではないという。2010年に比率が高くなったのは、むしろ喫煙率以外の因子が原因と考えられる。例えば、喫煙に起因することが知られるがんの数が増えたこと、女性喫煙者の肺がんによる死亡率の増大、喫煙以外の因子に関連したがんによる死亡の減少などが挙げられると研究グループは述べている。(Annals of Epidemiology 12/9)


■次号のメールマガジンは2015年2月10日ごろです。お楽しみに。【編集人:北島憲二】


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