エンタプライズ発信〜メールマガジン【№38】2014. 6

読者諸兄、とよく用いるように本メールマガジンの読者は男性が断然多いのですが、女性には「夫源(ふげん)病」という意味深な“症状”があると言いますのでご注目ください。病気の名称とは違うのですが、夫の言葉や態度が原因で、頭痛やめまい、不眠など、更年期障害のような体調不良が現れることを言います。よく耳目にする、男性は定年後を「とても楽しみ」というのに反し、女性は「とても不安」だという感情の違いもその夫源病からの反映だと思われます。夫の定年退職を機に熟年離婚を考えている妻が多いことも事実のようですし、その主たる理由は「浮気や暴力よりも小さい日常的な不満の積み重ねからの解放」です。長年我慢してきた妻が、子どもの卒業や結婚を機に夫源病に陥り、それが離婚への引き金になるとみられています。識者によると、これを回避するには男性からの「会話と家事」が大切だと。上から目線をやめる。『おい』『お前』ではなく名前で呼ぶこと。また、夫の定年後に妻が昼食の用意をストレスに感じる「昼食うつ」では、夫は料理など身のまわりのことをできるようにし、妻とは適度な距離をとって家庭内自立をする…と男性側に助言しています。不定愁訴で来院する女性患者は多くいます。その要因に“夫源病”が見え隠れするときには十分な聞き取り(NBM; narrative based medicine)と適切なアドバイスが奏功します。心身症になる前に未病を治すのが私どもの領域であると思います。

★☆★━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━━━★☆★

【1】カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン
【2】“こころ” と “からだ”……臨床にモノ思う。
【3】伝統医学をシルクロードに求めて
【4】根拠に基づく腰痛の原因と治療 《腰痛治療の新常識》
【5】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【6】N・E・W・S
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【TOPICS】

「カイロプラクティックなど手技療法による健康危害と誇大広告を防ぐ」セミナーを開催—-JAC

JAC(日本カイロプラクターズ協会)は、国民生活センターと日本広告審査機構の担当者を講師に招き、「カイロプラクティックなど手技療法による健康危害と誇大広告を防ぐ」セミナーを開催する。カイロプラクティックなど手技療法における健康危害や誇大広告の現状を理解することが目的で、同時に信頼できる施術所を見分ける知識も学ぶことができる。

演目1:「カイロプラクティックを含めた手技療法の危害」
独立行政法人国民生活センター商品テスト部消費生活専門相談員 小坂潤子氏
演目2:「カロプラクティックなど資格制度がない施術院の広告規制」
公益社団法人日本広告審査機構審査部消費生活アドバイザー 倉本仁美氏

【日時】6月22日(日)午後1時〜4時
【会場】東京都港区新橋6-20-11 新橋IKビル8階(日赤ビルそば)
【対象】参加自由(定員50名)※事前登録が必要です。
【費用】無料
【問合】東京カレッジオブカイロプラクティック事務局


■ 連載 6 ■

カイロプラクティックの安全性に関するガイドライン

〜 Chiropractic Guideline-Safety 〜
<一般社団法人日本カイロプラクターズ協会>


安全性への対策

わが国でカイロプラクティックを実践している者の教育背景は多様であり、手技の安全性や適応と禁忌を判断するための医学的知識レベルには大きな隔たりがある。こうした現状のなかでカイロプラクティックの安全性を向上させるための解決策としてもっとも有用なのは、教育機関における初学者への「教育」であり、カイロプラクティック類似施術者への「再教育」である。当然ながら、その教育内容は世界基準であるWHOガイドラインが示す教育基準に則したものでなければならない。
そこで、わが国と世界におけるカイロプラクティックの教育事情を紹介し、今後わが国で期待される教育を提案する。

世界のカイロプラクティック教育

1)教育機関
WHOガイドラインが提示する正規のカイロプラクティック教育の基準を満たし、世界カイロプラクティック連合(WFC)が推奨する教育機関は、米国の17校をはじめとして世界に41校存在する。これらの教育機関は、第三者プログラム評価機関であるカイロプラクティック教育審議会(Council on Chiropractic Education:CCE)に認定され、カイロプラクティック教育の質の維持・改善の目的で定期的に評価・管理されている。CCEは、以下のように世界を4つの地域に分けて教育機関の管轄を行っている。各地域のCCEは国際カイロプラクティック教育審議会(Councils on Chiropractic Education International:CCEI)により相互協定を結んでいる。

・ECCE(欧州カイロプラクティック教育審議会):ヨーロッパ地域管轄
・CFCREAB(カナダカイロプラクティック登録教育認定委員会):カナダ管轄
・CCE-US(米国カイロプラクティック教育審議会):アメリカ管轄
・CCEA(大洋州カイロプラクティック教育審議会):オセアニアを含むアジア管轄

2012年12月現在、わが国でCCEAから認定された正規のカイロプラクティック教育機関は、東京カレッジ・オブ・カイロプラクティックの1校のみである。同校の前身はオーストラリアのRMIT大学との提携のもとに1995年に開校したRMIT大学カイロプラクティック学科日本校で、同年の開校から現在まで行われてきた教育プログラムのすべてがCCEAから認定を受けている。

2)WHOガイドラインが提唱する教育内容
WHOガイドラインでは、正規なカイロプラクティック教育と限定的なカイロプラクティック教育の2つが提示されている。詳細は「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン」を参照されたい。
(つづく)


★連載エッセイ ⑥ ☆

“こころ” と “からだ” ……臨床にモノ思う。

 保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


心因性運動失調について(症例)(つづき)

【経 過】
合計で5日間、すべてAMとPCRTの施術を併用した。施術では毎回はじめにAMにより神経関節機能障害の改善を図った。心と身体の関係性による誤作動反応にはPCRT施術を行った。通院経過中に分析した関連感情は、「保護」「恐れ」「楽しみ」「意欲」「拘束」「喜び」「孤独」などで、様々な事柄が絡んでいた。PCRT施術後には毎回、EB陽性反応が消失し、それに伴って神経学的検査反応の改善と症状の改善が顕著に現れた。4日目には小脳機能を強化する目的で、片足立ちのバランス強化のリハビリ運動も指導した。
5日目の施術最終日、小脳失調運動の神経学的検査では、初回検査と比較すると、顕著な改善が見られ、患者本人からも日常生活には支障がないまでに回復しているとの報告があった。完全ではないにしろ患者の方から治っているという自信が得られているので、希望により様子をみてもらい、悪化を感じたら来院するように促した。3か月半の間、患者の再来はなかった。

【考 察】
患者は以前当院を利用していた娘さんの奨めで来院した。感情の検査では、いくつかの否定的感情や肯定的感情が混同していたが、施術経過の全体を通じて「保護」というキーワードが主に影響を及ぼしていたように感じた。「保護」という感情はあまり示されない要因なので、患者に「何か『保護』というキーワードに関連する思い当たることはありますか」と尋ねると、患者自身はすぐに思いつかなかったが、横に付き添っていた娘さんが「私でしょう」という。患者も納得した様子なのでその感情に対して施術を行った。その時は「保護」の内容は詳しくはお聞きしなかった。
その後、お孫さんが学校へ行きたがらないということで来院。お孫さんの施術の際に娘さんがご主人と別居されているというお話を伺い、娘さんのメンタル面やお父様の震えの背後にある「保護」という感情の因果関係が見えてきた。お父様が来院したときにはそのような精神的ストレスの話はしなかったが、恐らくそのことでお父様が心配して症状が悪化したのかもしれないと思い、娘さんが当院を勧めてくれたのかもしれない。以前、娘さんには当院を利用していただいていたので、心と身体の関係性のことはよく理解していただいていた。
運動失調の原因には脳血管障害や腫瘍などの構造的な問題が原因の場合もあるが、本症例のように心因性の運動失調もある。心が身体に影響を及ぼし、身体が心に影響を及ぼしているということは周知のとおりで、その関係性は密接につながる。心身条件反射療法は、心と身体の関係性による誤作動を検査して施術を行う統合的なエネルギー療法である。まだまだ発展途上の施術法ではあるが、多くの患者に貢献できることを願っている。


《 連載20 》

伝統医学をシルクロードに求めて

       池上正治(作家・翻訳家)


“一粒の麦”は現地での体験から始まる(つづき)

ネパール開国の4年後、1954年、ネパール合同ミッションが組織された。その構成は、南アジア・メソジスト教会ほか17のプロテスタント諸教派からなり、「12か国、108人のクリスチャンが、この中で、キリストの名の下に一つとなって働き」、「はじめは医療活動から次第に教育、産業、村づくりにも力をいたしている」というものであった。
クリスチャン・ドクターの岩村昇氏、史子夫人が、日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)から派遣されて、最初にネパールにおもむいたのは1962年のことであった。出発に先立ち、岩村氏は次のような日記を残している。
「キリストの名において、という旗印が、民族主義興隆の現代のアジア・アフリカ諸国においてどう受けとられているのか。特に日本から“一粒の麦”を送り出そうとしているキリスト者医科連盟、協力会は、欧米のミッションがもたなかった特殊の使命を担っているはずである。それは具体的にはどう表現され、どう実践されなければならないのか。結局は、おれたちがこれから現地で体験し、学びとってこなければならないのだと思う」(『山の上にある病院』1965)
その後、公衆衛生医としての岩村氏、そしてそれを支える一方、ネパールの孤児を引きとって育てる「かあちゃんホーム」での史子夫人の活動は、通算すると14年にも及んでいる。この間の軌跡を、『ネパール通信』(1969)シリーズから拝見してみよう。

* * * * *

“一に結核、二に結核…”
カトマンズでネパール語の学習を終えた岩村夫妻は中西部山岳地帯の中心地タンセンの病院に赴任した。カトマンズからポカラまで飛行機で1時間半、さらにトラックで3時間、それから徒歩で山を三つ越え、谷を渡り、途中の部落で2泊したあと、ようやく山の上に鎮座するタンセン病院にたどり着くという具合である。タンセンは古来、チベット〜ネパール〜インドを結ぶ交易の要衝であり、かつては同地域で最強を誇ったパルパ王国の、王宮の所在地でもあった。
—-ここ4か月の見当では、ネパールでは一に結核、二に結核、三に糞尿感染症といった具合です。ネパールの結核対策を、ぜひ日本人の手で! 今のところ、ネパールの結核対策に最も必要なものは日本製のBCGです。—-
—-この国には今なおカースト(階級)が厳存していて、低いカーストの人たちに重くおおいかぶさり、高いカーストの人たちをスポイルしています。彼らは同族の結婚しか許されません。高いカーストの男性は低いカーストの女性を妻にすることはできますが、その子は誰とも結婚できないというみじめな将来を背負わされます! カースト制度といい、一夫多妻といい、ネパールには思い切って破らなければならない古い殻が、多く存在していることも事実です。—–

* * * * *
(つづく)


根拠に基づく腰痛の原因と治療 – 腰痛治療の新常識(12)

   長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■【保存療法】(つづき)

(20)軽いエアロビックエクササイズ(有酸素運動)は活動障害による体力低下を防ぎ、日常生活ができるだけの機能回復を促す(確証度C)。
(21)軽いエアロビックエクササイズは腰痛発症から2週間以内に始めてもよい(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……最新の腰痛診療ガイドラインでは急性腰痛に運動療法は推奨していませんから日常生活の延長と考えた方がいいでしょう。

(22)体幹筋(特に脊柱起立筋)の強化運動は急性腰痛患者に有効だが、発症後2週間以内に始めると症状を悪化させる恐れがある(確証度C)。
(23)エクササイズマシンが従来の腰痛体操より有効という証拠はない(確証度D)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……急性腰痛に体幹筋強化運動が有効といっても被験者数が少なすぎてエビデンス(科学的根拠)としてはかなり弱いです。

(24)急性腰痛に対してストレッチが有効だという証拠は存在しない(確証度D)。
(25)運動中に疼痛が増強したからといって運動を中断するよりも、痛みの程度に応じて徐々に運動量を増やすほうがはるかに効果的である(確証度C)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……症状に注目するのではなく出来たことに注目して徐々に活動範囲を広げるのが認知行動療法です。こうした認知行動療法的考え方は急性期の段階から重要だと言えるでしょう。

【外科手術】

(1)保存療法を1ヶ月間行なっても坐骨神経痛が改善せず、進行性の耐え難い痛みが持続し、神経根が関与している臨床的根拠がある場合に限り、椎間板ヘルニアに対する手術を検討するべきである(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……4〜8週間の保存療法でまったく改善が見られない場合は、そのまま保存療法を続けるより椎間板切除術を行なったほうが早く症状が改善する可能性はありますが、長期成績は保存療法と差はありません。

(2)標準的椎間板切除術と顕微鏡下椎間板切除術の有効性は同等であり、神経根症状を伴う椎間板ヘルニアに推奨できる(確証度B)。http://1.usa.gov/uhlYSO
……一般的に椎間板切除術は比較的安全な治療法とされていますが再手術例もかなり多く、心理社会的因子が予後予測因子とされています。
(つづく)


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (38)

       根本 良一(療動研究所主宰)


9.手首の動きから

◆1- 肘橈骨側(母指側)
腕橈骨筋、長橈側手根屈筋は、肘を曲げる、前腕を外転するときにはたらく筋であるから、前腕を、抵抗をかけやすいように、手首を掌屈して片手で抵抗、前腕を内旋させながら肘を伸展する。物を押すときに腕力が充実する動きである。
この手首と肘に抵抗をかける。十分に肘が伸びたとき、片手で肘の伸展を押さえるように抵抗をかける。そのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力させる。そのままゆっくり3呼級おいて戻る。

◆2- 肘尺骨側(小指側)
尺骨側は上と逆に、手首を掌屈して外転する。物を引きつけるときの動きになる。

10. 手足の動きから 〜腰背部起立筋をラクにする

腰痛や背部痛の痛みやしびれは、姿勢が悪く、腰背部起立筋が緊張しているときに起こる。その対策の入り口は、
①足の動きから全身の緊張側を伸ばす。
②重心を動かしてリラックスさせる。

1)仰向けに寝て、片足の踵を伸ばす。
①受者は仰向けに寝て、両腕を組む。片足ずつ交互に伸ばして、気持ちよい方を十分に伸ばさせる。
②収縮する方の足首へ術者の手をかけ、伸ばす側の足底へ前腕を当てる。足が伸びるにつれて前腕を外旋すると、当てた腕が足底から踵に移り、踵から腰背部がよく伸び、弛緩する。
③腰背部が気持ちよく伸びたら、《両腕-肩》を足が伸びる方へまわす。足底と、回旋する腕をそれぞれ片手で軽くサポートする。
④そのまま約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力する。

2)椅子に掛けて側弯型になる
背部の重く感じる、緊張している逆方の手を、座った椅子の端に置いて行う。
①手掌へ体重を掛け、同側の腰を浮かす。体重配分は手掌に60%、逆の尻に40%ほど。
②自然に逆の尻へ体重が移る。片手の甲で額の汗を拭くような形で肘を耳に寄せる。このとき腰背部が伸びる。
③肘を気持ちよい角度に伸ばし、肩が出て、逆方の尻が上がったら、そのままで約3秒連動させて、フーッと息を吐きながら脱力する。
④そのまま、ゆっくり3呼吸おいて戻ってくる。
(この項、了)


*** N *** E *** W *** S ***


NEWS ■75歳以上の運転—死亡事故を起こす割合2.5倍


75歳以上の高齢者が乗用車などを運転して起こした死亡事故は昨年、10万人あたり10.78件に上り、75歳未満の2.5倍になったことが警察庁のまとめでわかった。高齢者の身体機能の低下が事故多発の背景にあるとみられ、同庁で高齢者講習の見直しを検討する。
警察庁によると、昨年の死亡事故のうち、75歳以上の運転手が起こした事故は458件、75歳未満は3396件だった。免許保有者10万人あたりでは、75歳以上が10.78件で、75歳未満は4.38件だった。75歳以上の場合、ハンドル操作のミスで車線からはみ出たり、ブレーキをかけるのが遅れたりするケースが目立つ。夜間の視力低下で歩行者の発見が遅れることも多いという。(読売新聞 6/5)


NEWS ■怒りは心臓に悪いのか?


怒るとストレスホルモンが血流に放出され、顔が火照り心拍数と血圧が上がる。驚くことではないがいつも怒ってばかりいる人は心血管系疾患リスクが高いという研究が多くある(「anger怒り」という単語そのものが「angina狭心症」と語源が同じ)。そしてEuropean Heart Journalの新しい系統的レビューではたった一回の怒りの爆発ですら直ちに有害影響があることを示唆した。
(略)
基本:怒りは自然なことで時には役にたつこともあり、怒りを抑えることもまた良くない。しかし、もしあなたが怒りをコントロールできないあるいはいつも怒っているのであれば、特に心血管系疾患の持病がある、あるいはリスクが高いのであれば怒りを鎮める方法を探すのが賢明であろう。カウンセリングや訓練が役にたつかもしれない。怒りの管理が心臓発作を抑制するという証明はないが、有害ではないだろうし役にたつかもしれない。
(食品安全情報blog 6/3)


NEWS ■<膝の痛み>  BMI値25以上の高地居住者、低地の2倍超


慢性的な膝の痛みを感じる人は、肥満の程度を知るための指数・BMI(体格指数)が高く、さらに高い所に住んでいる傾向にあることが島根大などの研究で分かった。肥満に加え、傾斜のきつい土地を上り下りすることで膝に負担がかかっているとみられる。研究成果は国際科学誌「インターナショナルジャーナル・オブ・エンバイロメンタルリサーチ・アンド・パブリックヘルス」に掲載された。
研究グループは、島根県雲南市の「身体教育医学研究所うんなん」が2009年、市内の40〜79歳の男女を対象にした健康調査を活用。3カ月以上続く膝の痛みとBMI、標高との関係について3109人分を分析した。
調査対象者の住所の緯度と経度を特定し、地理情報の解析ソフトを使って標高を算出。0〜49メートルを「低」、50〜70メートルを「中」、71〜468メートルを「高」の3段階に分類した。
日本肥満学会によると、BMI値25以上が肥満とされる。分析の結果、「BMI値25未満で標高『低』の居住者」を基準とすると、「25以上で『低』の居住者」は1.9倍の確率で膝の痛みを感じていることが判明。さらに「25以上で『高』の居住者」では2.13倍にはね上がった。BMIだけでなく、標高も痛みと関係していることが証明された。
研究を主導した島根大疾病予知予防プロジェクトセンターの濱野強・専任講師は「生活習慣と住んでいる場所を考慮することで、個人に合った予防ができるのではないか」と話している。(毎日新聞 6/3)


NEWS ■<精神疾患> 病名に新指針。パニック障害は「パニック症」


日本精神神経学会は5月28日、精神疾患の病名に関する新しい指針を発表した。本人や家族の差別感や不快感を減らすとともに、分かりやすい表現を用いて認知度を高めるのが目的だ。学会は今後、医療現場などに新指針による病名を用いるよう呼び掛けていく。
米国の新診断基準「DSM-5」が昨年策定されたのを契機に、関連学会が表現を検討した。主な変更点として、患者や家族に配慮して「障害」を「症」に言い換えた。「障害」の表現が、症状が回復しないとの誤解を与えるためだ。
物事に集中できないなどの症状がある注意欠陥多動性障害(ADHD)は「注意欠如・多動症」に、急に動悸などに襲われる「パニック障害」はパニック症、拒食症も「神経性やせ症」、読み書きなどが難しい学習障害は「学習症」に変更した。
身体的な性別と、心理的な性別が一致せず、強い違和感に苦しむ性同一性障害では「障害」との表現に、患者の間で異論が多いことに配慮した。一方、「今後研究するための病態」として「カフェイン使用障害」「インターネットゲーム障害」などを盛り込んだ。

【変更された主な精神疾患名】
・アルコール依存症 → アルコール使用障害
・パニック障害 → パニック症
・神経性無食欲症(拒食症)→ 神経性やせ症
・性同一性障害 → 性別違和
・言語障害 → 言語症
・注意欠陥・多動性障害(ADHD)→ 注意欠如・多動症
・アスペルガー症候群、自閉症 → 自閉スペクトラム症
(毎日新聞 5/29)


NEWS ■軽い運動でも脳が活発に—10分のウオークでも効果


ウオーキングと同程度の軽い運動を10分間すると、脳の認知機能をつかさどる部分が活性化することが分かったと、筑波大などのチームが5月27日、発表した。これまでも、健康な人がジョギングと同程度の運動をすると、脳の中で注意力や行動を制御する「前頭前野」が活性化することが分かっていた。今回は、より負荷の小さな運動でも効果があることが分かった。
チームは、19〜25歳の健康な男女計25人に参加してもらい、注意力や判断力を調べるテストを行った。その後参加者は、10分間ペダルをこぐ運動をするグループと、安静にするグループに分かれ、15分後に同様のテストを行うと、運動した人の回答時間は安静にしていた人の回答時間よりも短くなった。この時の脳の働きを、画像化して調べると、前頭前野の一部の神経活動がより活発化していた。
チームは「ヨガや太極拳といった運動も、脳に有益であることを示唆している。健康な高齢者でも効果が得られれば、実際の患者での研究に進みたい」としている。(共同通信 5/28)


NEWS ■「体に効く食べ物」企業の判断で表示OK


食品がどう体にいいか示す「機能性表示」が今年度中に解禁される。消費者庁の検討会で新制度の骨格が固まってきた。今までは一部しか認めなかったが、政策を180度転換し、米国にならって企業側の判断で「骨の健康を保つ」といった健康維持効果の表示ができるようにする。ただし、根拠のない表示や宣伝を防ぐ対策も盛り込む方向だ。
「体脂肪を減らす」など食べ物の健康効果を直接的に示すのが機能性表示だ。現在は「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」の二つがある。トクホは商品ごとに国の審査で許可を得る。栄養機能食品はビタミン・ミネラル類の17成分に限っている。
限定的なのは根拠のない表示を防ぐためだが、安倍政権が設けた規制改革会議では、企業にとって「使い勝手が悪い」とされた。昨年6月、成長戦略の一環で新制度導入が閣議決定され、消費者庁の検討会で制度作りが進められている。(朝日新聞 5/29)


NEWS ■ゆっくり食べるとエネルギー消費アップ—減量効果に期待


同じ食事でも、ゆっくりよく噛んで食べると、食後にエネルギーを消費しやすく減量効果が期待できる。こんな研究論文を東京工業大の林直亨教授(応用生理学)らの研究チームが欧州の肥満学会誌に発表した。
研究チームは、平均25歳の男性10人を対象に、300キロカロリーの固形食品をできるだけ早く食べた後と、できるだけゆっくり食べた後の、エネルギー消費量や血流量を調べた。平均の食事時間とかんだ回数は、1分43秒で137回と、8分17秒で702回だった。
食後90分間のエネルギー消費量は、急いで食べたときは、体重1キロあたり平均7カロリーだったが、ゆっくり食べたときは、平均180カロリーと有意に高くなっていた。(朝日新聞5/21)


NEWS■目標があれば長生きできる


人生に目標があると感じていると長生きできる可能性が、カールトン大学(カナダ)のPatrick Hill氏らの研究で示唆され、研究論文が「Psychological Science」オンライン版に掲載された。
Hill氏らは6,000人強を対象に、人生の目標や社会とのつながりについて質問し、そのデータを分析した。その後、14年間の追跡調査を行った。その結果、追跡期間中に死亡した約9%の人は生存者に比べて、人生の目的意識が低く、良好な人間関係が薄いと感じていると報告した。若年、中年、高齢者すべての年齢層で、人生の目的意識が高いほど死亡リスクが低かった。
Hill氏は「今回の結果は人生の方向性を見つけ、達成目標を設定することが寿命を伸ばすのに役立つという事実を示している。人生の方向性を早く見つけるほど予防効果が早く現れる可能性がある」とも述べている。(Psychological Science 5/8)


NEWS ■筋骨格系疼痛の発症、男女で異なる職業関連因子


フランス・INSERMのFabrice Herin氏らによる縦断的疫学調査の結果、疼痛発症に関連する心理社会的および身体的な職業関連因子は、性別によって異なることが明らかにされた。筋骨格系疼痛(MSP)の発症には、心理社会的および身体的因子が関与していることが知られている。しかし、これらの因子と、特定の局所MSPあるいは多部位疼痛との関連については明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「職業関連性MSPを効果的に予防するには、関連因子の性差やリスク因子を考慮しなければならない」とまとめている。
研究グループは、局所MSPおよび多部位疼痛の発症における職業関連因子の影響を男女別に評価する目的で、1990〜1995年のフランス縦断的前向き疫学調査(ESTEV)に参加した1938年、1943年、1948年および1953年生まれの1万2,591例(男性65%、女性35%)を対象に、自記式質問票を用いて個人的因子や職業曝露などについて調査した。
主な結果は以下のとおり。
・1995年時点の調査で、局所MSPの発症率は17%、多部位疼痛の発症率は25.6%であった。
・女性では、非常に反復的な運動が首/肩の疼痛の、姿勢や振動が上肢痛/腰痛の、道具を使う仕事が上肢痛の予測因子であった。
・男性では、肉体労働と振動が首/肩の疼痛、姿勢や肉体労働が下肢痛/腰痛、肉体労働および道具を使う仕事が上肢痛の予測因子であった。
・肉体労働や振動は、女性および男性いずれにおいても多部位疼痛と関連した。
・女性のみ、心理的因子が上肢痛および3〜4ヵ所の解剖学的部位における疼痛のリスク因子であった。
(Pain 5月号)


■次号のメールマガジンは7月1日ごろです。お楽しみに。


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