エンタプライズ発信〜メールマガジン【№2】2011.2

大寒をすぎ、これから2月中旬までが一番寒い時期になります。特にこの冬は例年に比べても寒く、北日本では連日の積雪でライフラインにも影響が出ています。
翻って2月4日は立春でした。前日の節分の豆まきで邪気を払い、正月のような新たな気持ちで春を迎えるおめでたい日と言われています。現実の極寒の只中、暦上では立春を境に季節は冬から春へと移り変わります。
ところで、立春の日の早朝に搾りあがった生原酒をいただける、というおめでたいキャンペーンがあったのでオーダーしました。「2011年 梅錦 立春朝搾り」がそれ。蔵元でしか味わえない秘蔵の搾りたてということで、2度目の正月が訪れました。

★☆★━━━━━━━━━■ CONTENTS ■━━━━━━━━━★☆★

【1】 カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト
【2】 統合医療の一翼を担う ……あれこれシリーズ
【3】 補完・代替医療の真贋を斬る!
【4】“連動操体法”について、ちょっとばかり…
【5】 NEWS 〜歩行にまつわる情報を中心に〜
【6】お知らせ『スティル・テクニック第2版』近刊。『DVDユニバーサル・タオ』1-3巻の再販売
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<連載>

カイロプラクティック・エネルギー治療へのパラダイムシフト <第2話>

保井志之(ファミリーカイロプラクティック院長、DC)


アクティベータ・メソッドとエネルギー治療 (続き)

カイロプラクティックの歴史を振り返ると、カイロプラクティックの中でも、生命論的思考のカイロプラクターと機械論的思考のカイロプラクターに分類されていたことがうかがえる。
カイロプラクティックの創始者D.D. パーマー(Palmer)は、カイロプラクティックを創出する前、磁気療法師として、患者の体質、エネルギーもしくは電流を調整するという治療を行なっており、1896年には、パーマー磁気治療学校を設立している(『カイロプラクティック総覧』より)。この歴史的背景から察しても、カイロプラクティックのルーツは、生命論的思考、エネルギー論的思考から発祥している。
また、カイロプラクティックの発展初期の文献を垣間見ると、機械論的思考よりも、むしろ有機的、生命エネルギー的思考が主流だったことがうかがえる。しかし、カイロプラクティックも西洋医学と肩を並べるために、科学的検証、エビデンス思考が優先され、有機的思考から機械論的思考へとシフトしてきているようにもみえる。その一方でカイロプラクティックの社会的存在価値、アイデンティティを確立するために、カイロプラクティックの治療業務が、明らかに西洋医学とは異なるという奥深いカイロプラクティック哲学も継承され続けている。
カイロプラクティックが社会全般に受け入れられるためには、カイロプラクティックの治療効果を科学的に検証する努力をしなければならない。しかし、眼で見て証明できるものが正当で、目で見て証明できないものはいかがわしいという極端な科学第一主義的思考は避けたい。臨床現場では、むしろ、目で見て証明することはできない、エネルギー的レベルのほうが計り知れないパワーを感じる。
アクティベータ・メソッドは、一見、機械論的治療かのように感じるかもしれないが、筆者は、アクティベータを主体にした臨床経験が深まるごとに、アクティベータ治療は、エネルギー治療であるという確信を得た。もう一歩踏み込んで述べれば、カイロプラクティックの本質はエネルギー治療であると言っても過言ではないだろう。おそらく将来はそのように認識が強調される時代がくるのかもしれない。(つづく)


## 統合医療の一翼を担う ……あれこれシリーズ① ##

“オステオパシー” あれこれ。<第2話>

解説:森田博也(NPO法人 アトラス・オステオパシー学院学長、D.O.)


■1973年、アメリカで医学として認可される
オステオパシーの医療としての効果の高さから、1896年、アメリカ・バーモント州においてオステオパシーが初めて医療業務として認可され、1973年には全米50州でオステオパシーが医学として公認されました。これにより、アメリカではオステオパシー・ドクターはD.O.(Doctor of Osteopathic Medicine)と呼ばれ、いわゆる医師(M.D.)と同等の地位を得て、投薬や手術などの医療業務を行う事が可能になりました。ちなみにD.O.の称号はアメリカのオステオパシー医科大学を卒業した者のみに与えられ、他の国のオステオパシー医科大学を卒業してもD.O.とは名乗れません。

■世界へのオステオパシーの普及
Dr.スティルの教え子であり、スティルが創建したアメリカン・スクール・オブ・オステオパシー(ASO)の生理学教授をしていたDr.ジョン・M・リトルジョンによって、オステオパシーは1903年にイギリスに伝えられました。
彼は1917年にイギリスで最初のオステオパシー学校であるブリティッシュ・スクール・オブ・オステオパシー(BSO)を設立し、現在では8校の大学がイギリスに存在しています。イギリスへの伝来以降、オステオパシーは欧州を中心に広がっていき、現在ではオステオパスが医療資格者としての地位を獲得している国も存在しています。しかし日本ではオステオパシーは医療資格としてまだ認められていません。(つづく)

##資料/世界のオステオパシー大学 (6カ国)
・アメリカ29校 ・イギリス10校 ・オーストラリア4校
・カナダ3校 ・ロシア1校 ・スペイン1校

※お知らせ※
小社より『スティル・テクニック・マニュアル 第2版』が刊行されます。2/15ごろの出来ですが、HP上より予約ができます。オステオパシー・テクニックの核心に触れられますので購読をおすすめいたします。


補完・代替医療の真贋を斬る!【連載②】

長谷川淳史(TMSジャパン代表)
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■クワッカリーの有効性
いくらクワッカリーといえども、セット(期待感)とセッティング(環境設定)次第では驚くような効果を発揮することがある。とりわけ、その製品やサービスに対する期待感を、信仰心にまで高めることができればなおさらである。
長年にわたって世界中のありとあらゆる治療法を研究してきたアンドルー・ワイルは、すべての治療法には以下のような共通点があると結論づけている。
【1】絶対に効かないという治療法はない。
【2】絶対に効くという治療法はない。
【3】各治療法は互いにつじつまが合わない。
【4】草創期の新興治療法はよく効く。
【5】信念だけで治ることがある。
【6】以上の結論を包括する統一変数は治療に対する信仰心である。

そもそも医療の原型は、シャーマン、呪術医、魔法医、メディシンマン、ウイッチドクター、巫医(ふい)、ヴードゥー僧、カリャワヤ、ユタたちによる原始宗教にある。したがって、クワッカリーに対する信仰心が何らかの効果を発揮しても不思議はない。
それが自然治癒なのか、もしくは偶然なのか、それとも未知の力が働いているのかは別としても、プラシーボ効果(placebo effect)が関与していることはまず間違いないだろう。

では、プラシーボ(偽薬・シャム治療・クワッカリー)には、いったいどれほどの威力があるのだろうか。
プラシーボ研究の第一人者であるヘンリー・ビーチャーは、プラシーボによる平均有効率は約35%と報告し、つい最近までそれが医学界の常識とされてきた。ところが実際には、35%をはるかに上回ることがその後の研究で判明している。
当初は有効とされていたものの、のちの比較対照試験によって無効と判断された治療法を再検討したアラン・ロバーツらによると、かつて現代医学が放棄した治療法の平均有効率は約70%にも達するという。中でも外科手術のプラシーボ効果は群を抜いている。この事実は、医学の歴史はプラシーボの歴史、もしくはクワッカリーの歴史だったことを示唆している。(つづく)


【連載コラム】

“連動操体法”について、ちょっとばかり… (2)

根本 良 一(療動研究所主宰)


補助動作のタイミング

操作の手順として、「補助動作」と「主動作」を前回に挙げましたが、これらは同時の行うのではなく補助動作の奏功が見えてから主動作を行うようにします。
注意点、留意点を記しておきます。
補助動作が終了してからでは遅い。力尽きてからでは連動が起動しない。よって別動作にしないこと。
主動作と補助動作は発現部位が異なる。たとえば肩の動きに対して腰・膝・足・足首が、方向が同一のときと逆向きのことがある。
足首を組んで行うときには、組み方によって主動作と補助動作の役割が変わり、連動先の異なることがある。
事例により“充実感”“連動の難易度”が異なることがあるので、この場合もフィンガースケール(開指計測器)で手指がよく開くことを確かめる。

フィンガースケール(開指計測器)とは…

ひとつの操作が終わった時点で、患者の五指をいっぱいに開かせ、母指尖から小指尖までの開指角度を見る器具として使われます。これがなくても術者の開指を基準にして判断することもできます。
開指角は、歪源を解消する連動があるところまで到達したときに急に拡大します。このときから良い連動が始まるのです。十分に連動ができると開指角は大きくなり、患部の愁訴は消失し、動作が楽になります(だいたいの目安は130-150°です)。
この開指角は、患者の歪体の状態や姿位・姿勢などにより頚髄神経へ連動し変化します。また個人差もあるので絶対値としての評価はできませんが、操体の効果度や条件負荷時(悪い姿勢)などを知る上では有効かつ手短な計測方法と言えましょう。(つづく)


NEWS ■高齢者の歩行速度、生存率と正相関■


65歳以上の地域住民34,485人を対象としたコホート研究9件のデータを用いて、歩行速度と生存率の関係をプール解析で検討。いずれの研究でも歩行速度と生存率に正相関が認められた(歩行速度0.1m/秒あたりの統合ハザード比0.88)。75歳時の予測10年生存率は、男性19-87%、女性35-91%と歩行速度により幅があった。
<文献>:Studenski S et al.Gait Speed and Survival in Older
Adults.JAMA.2011;305(1):50-58.


NEWS ■速く歩く人ほど長生き…米医師が調査■


【ワシントン=山田哲朗】歩くのが速い高齢者ほど長生きする傾向があるという研究結果を、米ピッツバーグ大学の医師らがまとめ、米医師会雑誌で発表した。
研究チームは、65歳以上の男女計34,485人の歩行速度を記録した過去のデータを解析。普通に歩いた時の速さは、平均で秒速0.92メートル(時速約3.3キロメートル)だったが、どの年齢でも同1.00メートル以上で歩く人は比較的長く生き、歩くのが速い人ほど余命が長かった。一方、同0.6メートル以下の人は早く亡くなることが多かった。
速く歩くには強い心肺機能や筋力が必要で、歩行速度が健康度の目安になったと考えられる。現在、高齢者の余命を予測する良い指標はないため、研究チームは「歩行速度に注目すれば、高齢者の健康管理などに役立つ」と話している。<提供:読売新聞>


NEWS ■高齢者の余命予測に歩行速度が有効■


歩行速度が高齢者の余命予測に有効であるとの研究結果が示された。歩行速度と生存率に有意な相関が認められたという。米国ピッツバーグ大学老年医学部門のStephanie Studenski氏らが、高齢者約3万5,000人について行った研究で明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月5日号で発表した。

<平均歩行速度0.92m/秒の被験者全体の5年生存率は約85%、10年生存率は約60%>
同研究グループは、65歳以上を対象に1986〜2000年に行われた9コホート試験について、歩行速度と生存率について追跡・解析を行った。被験者は地域で暮らす合計34,485人で、追跡期間は6〜21年だった。被験者の平均年齢は73.5歳(SD 5.9)、うち59.6%が女性、79.8%が白人で、平均歩行速度は0.92m/秒だった。
追跡期間中に死亡したのは17,528人であった。5年生存率は84.8%(95%信頼区間:79.6〜88.8)、10年生存率は59.7%(同:46.5〜70.6)だった。

<歩行速度0.1m/秒増加による余命ハザード比は0.88>
歩行速度と生存率との関連についてみたところ、すべての試験で歩行速度が増加するにつれて生存率が有意に上昇しており、0.1m/秒増加による年齢補正後余命ハザード比は試験により0.83〜0.94(p<0.001)であった。試験全体の統合ハザード比は、0.88(同:0.87〜0.90、p<0.001)だった。
75歳時点での10年予測生存率は、歩行速度によって男性は19%〜87%、女性は35〜91%を示した。
年齢、性別と歩行速度による予測生存率は、年齢、性別と歩行補助具使用、自己申告による身体機能を基にした予測生存率や、年齢、性別、慢性疾患、喫煙歴、血圧、BMI、入院歴を基にした予測生存率のいずれと比較しても予測の正確性は同等だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)
<文献>Studenski S et al. Gait speed and survival in older adults. JAMA. 2011 Jan 5;305(1):50-8.


NEWS ■歩けば歩くほど糖尿病リスクが減少■


歩けばあるくほど糖尿病のリスクが低下することが、オーストラリアの研究で示され、英国医師会誌「BMJ」オンライン版に1月13日掲載された。糖尿病レベルを調査するための研究に参加したオーストラリアの中年成人592人を2000年および2005年に調査したもので、被験者は研究開始時に健康診断を受け、食生活および生活習慣の詳細情報を提供し、歩数計を与えられた。
5年間フォローアップした結果、参加者において1日の歩行数が多いほど、BMIやウエスト/ヒップ比が小さく、インスリン抵抗性が良好であった。これは食生活、喫煙、飲酒などの諸因子を調整後も変わらなかった。「これらの関連はカロリー摂取からは独立しており、体重の変化に大きく起因しているようだ」と、報告を行ったマードックMurdoch小児研究所(メルボルン)の研究者らは述べている。座りがちな生活をする人が行動を変え、毎日1日1万歩を歩くようにすると、1日3,000歩を週5日歩く場合に比べ、インスリン感受性が3倍向上することが算出されたという。「1日1万歩」の歩行はガイドラインでよく用いられているが、より最近では「1日3,000歩を週5日」が推奨される傾向にある。
「今回の知見は、1日の歩行数が、BMI、ウエスト/ヒップ比、インスリン感受性に独立してベネフィット(便益)を与えることを確証するもので、中年成人での高い身体活動レベルの促進することを、さらに強く支持するものである」と研究者らは結論付けている。


NEWS ■=追加= 1日あたり歩数増で、インスリン感受性増大■


平均年齢51.4歳の成人592人を対象に、1日の歩数と脂肪過多・インスリン感受性の関連を集団ベースのコホート研究で調査。5年間に1日の歩数が増加した群で、BMIの低下(0.08/1000歩)、ウエスト・ヒップ比の低下(0.15)、インスリン感受性の増大(1.38 HOMA units)が見られた。(BMJ online)
<文献>:Dwyer T et al.Association of change in daily step count over five
years with insulin sensitivity and adiposity: population based cohort
study.BMJ 2011; 342:c7249.


NEWS ■ビフィズス菌の酢酸が効果 O157に抵抗力高める■


ビフィズス菌が腸の中で作る酢酸が、病原性大腸菌O157に対する抵抗力を高めるとの研究結果を、理化学研究所の大野博司チームリーダーらが1月27日付英科学誌ネイチャーに発表した。
大野さんは、「酢酸で腸の表面の状態が変わり、O157が出す毒素に対するバリアーが壊れにくくなると考えられる。ただ、お酢を飲むだけでは必要な部分に届かず効果は期待できない」と話している。ビフィズス菌は人間の腸などにいる細菌で、O157に予防効果がある菌とない菌がある。
大野さんらは、無菌状態にしたマウスで実験。予防効果のあるビフィズス菌を投与すると、腸の中の酢酸の量は、効果がない菌を投与した場合の2倍近くになり、炎症や細胞死などを抑える遺伝子がよく働いていた。
予防効果がある菌は、果物などに含まれる果糖を分解して酢酸を作る能力を持っていると判明。O157に感染した場合に炎症が起きる大腸の下部で、酢酸が腸の粘膜を保護するとみられる。


NEWS ■緑茶とアルツハイマー■


「1日1杯の緑茶がアルツハイマーやその他の認知症を予防するようだ」とDaily Telegraphが報道した。さらにがんも予防する可能性があるとも言う。この研究は飲んだときと似たような影響を示すよう実験室で加工された濃縮緑茶抽出物の影響を調べたものである。研究者らはポリフェノールと呼ばれる30以上の主要化合物が「消化」後も活性を保つことを発見した。その抽出物が、ラット神経細胞へのアルツハイマー病と関連するタンパク質やある種の化合物の有害影響から保護するかどうかを調べた。全体としてこの研究は緑茶に関する膨大な研究にさらに付け加えたものではあるが、緑茶ががんやアルツハイマーと闘うという決定的根拠にはならない。51の研究の系統的レビューでは緑茶はがん予防には効果がないことがわかっている。ある種のがんのリスクを減らすには食生活と運動と健康的なライフスタイルが重要である。


NEWS ■老人不眠:簡易行動指導効果あり…テレビは観ない■


brief behavioral treatment for insomnia (BBTI)が老人慢性不眠に有効らしい。さほど難しいわけでもなく、睡眠時間記録と、テレビなどの睡眠障害要素排除、概日リズムなどのリズム一定化、睡眠に対する脅迫的概念の払拭など簡単な指導で効果があるようだ。要約を参考にすると・・・睡眠時間の記録
・就寝の習慣(テレビ視聴、読書、思いふけりetc.)
・睡眠必要時間に個別差があること、加齢の影響、寝付きへの影響、睡眠の概日リズムの影響に関する簡単な睡眠教育
・コントロールテクニックの教育
(a)ベッド及び寝室に睡眠関連でないものをおかない
(b)一定した、睡眠・覚醒スケジュールをつづけること
(c)昼寝を避けること
<文献>:Arch Intern Med. Published online


エンタプライズからのお知せ

■“名著『オステオパシー・スティル・テクニック第2版』が近刊!”
オステオパシーの始祖A.T.スティルが遺した各種テクニックを、現代の識見を加味しその有効性を紹介しています。この版ではページ数、写真を大増量し、四肢と頚椎におけるソマティック・ディスファンクションについてより特異的な運用法が追加され、治療の幅を広げています。

『オステオパシー・スティル・テクニック 第2版』
R.ヴァン・バスカーク原著  森田博也,DO翻訳
・ 発売予定 2月15日(火)
・  A4上製、200ページ、写真約300点
・  定価8,820円
※   予約は下のURL(HP)上からできるようになっています。

【再販売のお知らせ】

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人気のヒーリング・タオシリーズです。書籍が契約上まだ発行できませんので、
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■次号のメールマガジンは2月20日ごろです。お楽しみに。 【編集人:北島憲二】


[発行]産学社エンタプライズ